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国際原子力機関(IAEA)への抗議・要請文

IAEA議長 M.エルバラダイ様

 9月6-7日にウイーンで開催されたIAEA主催(”チェルノブイリ・フォーラム”協賛)の国際会議「チェルノブイリ:未来に向けた回顧」-事故の影響と将来についての国連の共通認識に向けてーでは、「チェルノブイリ事故じよる放射線被ばくによる最終的な死者数は約4000人」とのプレスリリースが出されました。この癌死者数推定は、被災3国だけでも680万人にのぼる汚染地域住民への健康影響を全く無視したものです。私達は、原子力利用推進のために「チェルノブイリ事故被害はたいしたことはなかった」との国際宣伝を「20周年」に向けてさらに強めようとしているIAEAに対し、強く抗議します。  また会議では「今のところ明らかになっているチェルノブイリの放射線健康影響は小児甲状腺癌とロシアの高線量被曝の事故処理作業従事者の白血病増加のみ」であり、他の癌増加などの健康被害については「統計的に有為ではない」「報告によって結果が異なるので評価が定まらない」「被曝量や汚染レベルとの相関関係がみられない」等々の理由で「放射線の影響ではない」となどと断言しました。そして循環器疾患などの癌以外の病気の増加は「社会精神的なもの」「ストレス」「貧困」「アルコール依存やたばこ」などといった生活上の問題であり「放射線の影響ではない」「不安をあおるような誤った情報がかえって人々の健康の悪化を引き起こしている」などと決めつけました。これらは、現実に出ている被害を真摯に受け止めて検討しようといのではなく、「チェルノブイリのような低線量被曝ではそもそも健康影響は出るはずかない」という考えを前提にしたものです。  今後の「支援対策」については、「貧困対策」「経済難からの復興」「生活スタイルの改善」「ストレスの軽減」が強調されました。そして、これまで「汚染地域」に指定されていたところも、「放射能測定をやり直した上でその指定をはずし、再居住や農業の再開、企業の誘致などをして経済の復興をはかるべきだ」ということが明言されました。しかし実際には、私達が支援をしているベラルーシの汚染地では、汚染レベルの測定もなされないまま「被災地の指定」がはずされ、施策がどんどん打ち切られている厳しい現状があります。今回の会議報告は、現地での被害者切り捨ての施策にさらに拍車をかけるものであり、私達としてはとうてい容認することはできません。  会議の討論の中でも、参加した被災3国の医師や研究者達から「チェルノブイリの被害はこれからだ」「これでチェルノブイリ研究を終わらせるようなことをしてもらっては困る」「原子力エネルギーの問題も含めて真剣に考えるべきだ」など、批判的な発言が数多く出されたことは、議長もご存知のはずです。  IAEAと”チェルノブイリ・フォーラム”は、チェルノブイリ事故の被害者と、現地の医師・研究者、被害者の声を真摯に受け止め、チェルノブイリ被害過小評価の見解を撤回するように求めます。  核の軍事利用も「平和利用」も共にヒバクと放射能汚染をもたらすものです。「人類と核の共存」はありえません。私達はIAEAに対し、チェルノブイリ原発事故の教訓を学び、原子力利用の推進をやめるよう強く求めます。

   2005年12月4日

 「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」発足14周年の集い参加者一同


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