■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第48号(1999/3/9) □■□■□■□■□■□■□
 
関電はプルサーマル計画7月実施を断念!
さらなる攻撃で、中止に追い込もう!
 
スリーマイル島原発炉心溶融事故から20年
成果を確認し、今後の闘いを話し合おう
 
 関電のプルサーマル計画は、「7月実施」が中止され、年内へと延期されました。
 私たちは、皆さんと共に、この2年間、関電のプルサーマル計画をストップさせるため、全力で闘ってきました。今回の7月実施計画の断念は、国内外の市民運動の成果です。
 運動をさらに広げ、プルサーマル計画そのものの中止を勝ち取りましょう。
 関電のプルサーマルをめぐっては現在、次のような点が問題になっています。
 
@中性子遮へい材の製造欠陥からデータ改ざん事件の起きた欠陥MOX燃料輸送容器を、運輸省が「厳正なる審査」で「欠陥品のまま使っても良い」と判断するのかどうか。
 
AMOX燃料の輸送について日本政府は「2隻の軽武装の輸送船がお互いに護衛しあう」という案をアメリカ政府に出しましたが、MOX燃料は核兵器に転用できるためこれでは不十分だとする米議会の反発もあり、日米間の話し合いがいかに進展するのか。
 
Bこれらが足かせとなり、福井県知事と高浜町長の最終了解が得られない状態ですが、4月の統一地方選後にこれがどう展開するのか。
 
 さらに、「原子力長期計画」の改訂作業が4月以降具体的に始まろうとしており、プルサーマルの位置づけが、原発で生み出される使用済燃料の(中間)貯蔵・再処理および高速増殖炉の戦略的位置づけとの関連で改めて問題となるでしょう。私たちは、プルサーマルには国民的合意が得られていない点を追及し、福井県知事と高浜町長にプルサーマルへの最終合意を下さないよう働きかけていきたいと考えています。
 ヨーロッパでは、脱再処理・脱プルトニウムから脱原発への流れが大きく形成されつつあります。この流れは日本での原子力長計の改訂をめぐる暑い夏に大きな影響を与えるでしょう。
 私たちは、スリーマイル島原発2号炉の炉心溶融事故から20年を機に、3月27日、討論会を開きます。そこでは、国内外で焦眉の課題となっている再処理・プルトニウム政策をめぐる動きと対立を整理し、日本での原子力長期計画の抜本的転換を求めるための一助にしたいと考えています。また、TMI事故から20年間の息長く粘り強い闘いとその成果を確認し、これからの闘いに臨みたいと考えています。
 次のような問題意識を持って大いに議論を深めたいと思っています。皆さんもぜひ、この集会に参加してください。よろしくお願いします。
  
ヨーロッパの脱原発・脱プルトニウムの動き
 
 最近ヨーロッパでは、脱原発・脱プルトニウムの動きが高まっています。ドイツの新政権では、再処理中止と脱原発の方針を打ち出しました。その「撤退時期」を巡る熱い闘いが今、展開されています。ドイツに続き、ベルギーも再処理とMOX利用の中止を決めました。イギリスやフランスでも、再処理工場の運転やプルトニウム政策を今後どうしていくのかが問題となっています。ヨーロッパでは、再処理とプルサーマルの中止が現実的課題となり、原発廃棄が歴史的課題としてのぼってきているのです。
 
日本での長計改訂をめぐるドロドロした動き
 
 しかし、日本に目をうつしますと、あいもかわらず、原発・プルトニウムの推進が声高に叫ばれています。「地球温暖化防止(CO2削減)のために原発を!」と、平然とウソの宣伝をしたり、ボロボロになった蒸気発生器を丸ごと取り替えたり、原子炉容器の上ブタを交換したりしながら、いわゆる「だましだましの運転で原発を60年運転しても大丈夫」などという、とんでもない動きが出てきています。世界一の「原発長寿国」をめざそうというのです。
 福島県知事はプルサーマルを受け入れましたが、県民合意は得られていませんし、プルサーマルについての国民合意もありません。日本のプルサーマル実施にはMOX燃料の輸送が問題となりますが、輸送ルート諸国は危険なMOX輸送に反対しています。今、高レベル放射性廃棄物輸送船がフランスから日本へ向かっていますが、カリブ海諸国が輸送反対を表明しています。日本の英・仏再処理委託により労働者が被曝し、工場周辺の放射能汚染が広がり被害が出始めていることに心が痛みます。輸送ルート諸国にも放射能災害の危険を押しつけるようなことは一日も早くやめさせたいと思います。これは、私たちの責任でもあるのです。
 
プルサーマルなどによる原発重大事故の危険
 
 TMI事故は、原発の炉心が溶融するという、絶対にあってはならない重大事故が実際に起こることを事実でもって示しました。しかも、ささいな故障から事態が進み、原発のかなめである核燃料棒が冷やせない状態に陥り、ドロドロに融けたのです。アメリカでは、この事故により脱原発の流れが強まり、これ以降、原発新増設の動きはなくなりました。
 福井では1981年に敦賀原発事故が起き、1991年には美浜事故が起きました。そして、高速増殖原型炉「もんじゅ」でナトリウム火災事故が起きるなど、原発事故が多発しています。プルサーマルや原発の老朽化が進めば、重大事故の危険が一層高まります。阪神淡路大震災を初め、最近の活断層の活発な動きの中で、直下地震による原発重大事故の危険が迫っています。地震は避けられませんが、原発を止めれば、地震による重大事故は防げます。プルサーマルや原発の寿命延長をやめさせ、一日も早く原発を止めていかねばなりません。
 
TMI原発周辺でのガン死急増
 
 原発を推進する人たちは、TMI事故で「だれ一人死なず、人体への影響もない」とウソの宣伝をしてきました。私たちは、この事故で放出された大量の放射性希ガスによって、乳児死亡率が増えていることを暴露し、TMI事故による放射能災害の危険を訴えてきました。
 このような事故が日本で起これば、原発が立地された現地だけでなく、遠く離れた都市部も放射能災害に見まわれ、深刻な被害がもたらされることになります。
 和歌山県の日高原発計画反対運動の中で、私たちは、「これは現地だけの問題ではなく、もし、原発重大事故が起これば、都市部の大阪・兵庫・奈良・京都なども、放射能汚染で、健康や生活がめちゃくちゃになる」と訴えてきました。このような運動がじわじわと浸透し、また1986年のチェルノブイリ事故で被害の深刻さが目のあたりに明らかになった結果、日高原発計画を撤回させることに成功し、勝利したのです。
 TMI原発事故では、20年経った今も、放射能災害を含めさまざまな被害を受けた約2千人の人々が損害賠償を求め、裁判で闘い続けています。TMI原発周辺では事故後ガンの発生率が急増しており、これをめぐって裁判の原告(被害者)の立場からガン死急増と被曝との因果関係を科学的に解明しようと努力する科学者と、被告の利益を守る立場から因果関係を頭から否定してかかる御用学者との間で熱い論争が繰り広げられています。同じ様な論争が、チェルノブイリ事故でも展開されており、これを27日の討論会でも取り上げたいと思います。
 
事故後20年の運動をふりかえって
 
 TMI事故は、原発が運転される限り、重大事故が起こることを明らかにしました。これに対し、今の原発は「アメリカからの技術導入だからダメ」なのであり、日本で独自に研究を重ね、「安全な原発」を開発すべきだと主張する政党もありました。そして、「反原発は反科学だ」と決めつけ、反原発運動に敵対し、運動への徹底した妨害を行ったのでした。私たちが都市部で始めた日高原発反対運動でも、執拗な妨害をしてきたのは、この政党の人たちだったのです。この苦い経験から、私たちは、「安全な原発を!」と主張する人たちに対しては、極力の警戒心を持っています。なぜなら、こういう人たちは必ずどこかで原発推進の幻想をふりまく役割を果たしているし、放射能被害を過小評価したり、ヒバクはそんなにこわくないというデマをふりまいたりしているからです。
 私たちは、この20年間、日高原発・日置川原発反対運動、そして、若狭の原発を止める運動へと闘いを広げてきました。関西の都市部と現地とを結んだ運動を進めてきました。学習会、毎月の現地行動、署名運動、福井県交渉、関電交渉、政府交渉など、そのつどそのつど、重要なことがらをとりあげ、運動を広げてきました。
 日高町へ初めてビラを持って入ったときも、美浜事故以降に美浜町へ入ったときも、「よそ者が何しにきた?」との雰囲気がありましたが、毎月の戸別ビラ入れを粘り強く取り組んだことで、徐々に信頼が得られ、運動に共感する人々が着実に増え、敦賀3・4号炉増設反対の福井県21万人署名、もんじゅ反対の22万署名へとつながっていったのだと自負しています。
 「ローマは1日にしてならず」のことわざどおり、運動とは地道で粘り強い闘いの積み重ねであること、そして、反原発こそが私たちの健康や生活を守ることであることを訴えていくことではないでしょうか。
 27日の討論では都市部や福井での運動について、今後の運動の広げ方についても討論を深めたいと思っています。多くの方の参加を呼びかけます。