■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第48号(1999/3/9) □■□■□■□■□■□■□
 
□■□■□■□ 美浜2号SG細管破断事故8周年で関電交渉 ■□■□■□■
 
プルサーマル中止を求め、
大飯2号事故等で追及
 
 
 美浜2号事故8周年(2月9日)を控えた2月8日、関電本社への申し入れを行いました。午後4時半から、若狭ネット、原発の危険性を考える宝塚の会、京都原発研究会、ヒバク反対キャンペーンなどから約15名が参加し、8周年目も一向に反省しない関電安部広報課長と谷副長ら3名を厳しく追及しました。
 初めに4団体から申し入れ文を読み上げ、手渡しました。安部課長は小さな声で「安全」から「安心」へと考え方は変わったと答弁しましたが、「申し入れの趣旨は今おすぐ受け入れられない」とすげない姿勢でした。
 
「原発の危険性は神のみぞ知る」
 
 まず、関電の技術的過信の問題で問い詰めました。1991年に美浜2号で蒸気発生器(SG)細管の破断事故が起こる前に、1989年頃から関西の反原発団体がSG細管の劣化の問題に絞って、何度も関電交渉で追及したにもかかわらず、「インコネル600は粘りがあって破断しない」と関電の技術者たちが口々に豪語していたことを追及すると、「確かに破断は想定していなかった」と認めざるを得ませんでした。
 答えに窮した安部課長は、原発の危険性の問題は「神のみぞ知るという所があるかも知れない」と発言しました。これは重大発言であり、原発において人間には知り得ない未知の危険性があり得ることを関電が公に認めたのです。
 このような姿勢で原発の運転を強行して、何とも感じない関電には、空恐ろしいものを見る思いがします。
 また、この言葉は「危険性は今わからないんだから黙っておけ」という挑戦的姿勢にも見えます。関電に対する追及をより広く強化していく必要を感じました。
 
「クリアランスレベル導入は専門家が検討」
 
 今導入が検討されているクリアランスレベルについては、「専門家に検討してもらっている」との答弁。
 これまで「専門家」の「大丈夫」発言が事故発生で何度も裏切られ、「専門家」が事実をねじ曲げて「原発は安全だ」と言い放ってきたことを考えると何とも空虚な主張です。今後具体的な問題で「専門家」等を追及するべきだと思いました。
 
「地元の合意がないから、やれない」
 
 プルサーマルについては、「皆さんのご理解を得ながら進めて行く」との見解をくり返しました。
 昨年の今頃、「来春にはどうしてもプルサーマルを開始する必要がある」と胸を張って強弁してきた関電が、今年になって手のひらを返したように「低姿勢」を装っています。
 関電・電事連は昨年の今頃、「MOX燃料はウランの資源節約効果がある」、「MOXはコストが高くない」など、今となっては顔を赤く染めるべきほど恥ずかしい屁理屈で、宣伝・広報に努めていました。福井県下でもウソだらけの色刷りの新聞折り込みが関電によりなされました。
 県民合意や国民合意はわずかに触れるだけ。「プルトニウム政策については国会の議論はいらない」と言い放ったのは、当時の梶山官房長官でした。
 去年福井や関西での一方的な説明会や討論会で、「自信」溢れる答弁を行った関電や科技庁の調子はどこへ行ったのでしょうか。
 平然とウソをつく関電でしたが、欠陥輸送容器データ改ざん問題でつまずき、MOX燃料の輸送船が相互に監視し合う方式に米国国内でクレームがついたことから、今春プルサーマル開始が不可能となってしまいました。
 「今春のプルサーマル開始は緊急の課題だ」と主張していた関電は自らの様々な失態を隠すため、「地元の理解が一番大事」とトーンダウン。福井県民の大半はプルサーマルに反対していることは福井新聞のアンケートでも明らかです。
 いつまでたっても、関電のわがままな態度は直りません。
 しかも、ドイツ、スイス、ベルギー、フランスなど欧州各国で高速増殖炉やプルサーマルなどプルトニウム利用からの縮小・撤退が相次いだ中で、日本のプルトニウム利用が突出したことも計画の遅延の、基盤的要因になっています。
 とにかく、関電は使用済燃料対策としてプルサーマルの火を消さぬよう必死に今の事態を繕っているのです。行き当たりばったりも極まれりです。
 
「大飯の制御棒落下から制御不能もありうる」
 
 大飯2号で起きた制御棒落下事故では、「落下しても安全側に働くから大丈夫」と超楽観的態度を示していました。しかし、電磁式の制御棒駆動装置には電流がちゃんと流れていて、落下したのは制御棒を磁力で挟むラッチの不具合であり、ラッチの爪が破断している可能性を追求すると、「現在調査中だがその可能性はゼロではない」と認めました。
 ラッチの破断片が駆動装置の隙間に詰まれば、制御棒が落ちなくなることについても「有り得るかも知れない」と認め、核反応の制御不能事故につながる可能性についても「おっしゃるとおり」と答えました。
 制御棒は安全側になっているとは言えないという認識を持つべき点についても「おっしゃるとおり」と首を縦に振ります。
 しかも、今回の事故は新品に交換したばかりの原子炉上蓋についている、新品の制御棒駆動装置で起きたのです。
 美浜2号の事故以来、事故が起こる度に「おっしゃるとおり」をくり返してきた関電は、口先だけで一向に反省していません。
 大飯2号のこの事故は、スリーマイル島原発のような炉心溶融事故や、チェルノブイリのような核暴走事故が日本の原発でも起こりうることを改めて示したものとも言えます。危険性を認めた以上、関電は11基の原発を止めて、制御棒とその駆動装置を全て点検し、その部材の組成等についてもとことん調べ、原因を究明すべきです。
 
「秋に高浜原発を止めればコストがかかる」
 
 7月にも装荷する予定だった高浜4号のMOX燃料8体は秋まで届きません。MOX燃料装荷までの数ヶ月は代わりに新ウラン燃料8体を装荷して運転する計画であることを関電は認めました。
 しかし、これは新ウラン燃料の「ムダ使い」であり、ウラン資源節約効果に反します。しかも秋に一旦止めると石油燃焼分が「持ち出し」になりコストがかさむことも認めました。
 こうまでしてなぜプルサーマルをやる必要があるのでしょう。行き当たりばったりのプルトニウム利用。その先に見えるのは空恐ろしく無責任な関電や政府の「逃げ出す姿」です。
 今秋に延びたプルサーマル計画を阻止し、原発の停止を早く達成しなければ、大変です。今後も関電追及を強めていきましょう。