■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第48号(1999/3/9) □■□■□■□■□■□■□
 
欠陥輸送容器を使わすな!MOX燃料輸送反対!
 
関西電力のプルサーマル7月実施断念をバネに、
年内強硬実施を阻止しよう!
 
福井県知事・高浜町長に最終了解させるな!
 
 関西電力の7月プルサーマル計画は、遂に実施断念に追い込まれました。日本政府が1月29日に米国政府へMOX燃料輸送計画案を提出したのを受け、関西電力が「高浜発電所プルサーマル計画の変更」を公表したのです。
 これは、データ改ざん問題で欠陥輸送容器が「不承認」になったという国内問題と、MOX燃料輸送を経済的な軽武装の輸送船改造ですますための日米原子力協定の国際問題が大きなネックになっているためです。そのため、2〜3月が焦点と見られていた福井県知事や高浜町長の最終了解が得られないという状態が続いているのです。関西電力は「この最終了解がなければMOX燃料輸送は行わない」と約束しており、事実上、これらの3問題がプルサーマルの7月実施を阻んだのです。
 それには、福井をはじめ全国の皆さんの「プルサーマル反対、欠陥輸送容器を使わすな」の広範な声とそれを具体化する粘り強い運動の力が功を奏したと言えます。また、MOX燃料輸送に反対する輸送ルート諸国の動きとそれを一つ一つ掘り起こし続けている国内外の市民グループの成果でもあります。
 これをバネに、関西電力の「今秋MOX燃料輸送、高浜4号の一時運転停止、MOX燃料装荷による年内プルサーマル実施」計画を阻止しましょう。そのために、国内では運輸省と福井県・高浜町への働きかけを一層強めましょう。
 
欠陥輸送容器は運輸省が「審査」中
 
 欠陥輸送容器問題は、昨年末に関西電力等が容器承認書を運輸省へ返却し、設計承認申請を出し直すことで形式上は「振り出し」に戻りました。しかし、その「振り出し」は、設計から製造まですべてやり直すというものではなく、製造欠陥を改造によって補うというものでもなく、欠陥に合わせて設計のほうを変えるというズサンなものです。そのため、関西電力は設計基準値を欠陥品に合わせて引き下げることの承認を運輸省に求めているのです。この「設計承認」が得られれば、関西電力は続いて、今のままの欠陥輸送容器が「新しい設計」に適合しているからと、「容器承認申請」を出すつもりなのです。余りにもヒトを馬鹿にし、国民を愚弄した姿勢ではないでしょうか。
 この設計承認申請を審査している運輸省海上技術安全局は2月23日、「核燃料輸送容器の安全審査の強化について」を発表しました。「輸送容器の製作に係る品質管理の審査の強化及び容器製作時の検査の強化を柱とする再発防止策をとりまとめ、今後これに沿って『危険物船舶輸送及び貯蔵規則』に基づく核燃料輸送容器の安全審査の強化を図ることとした。」というものです。しかも、「容器製作に係る品質管理の方法に関して、事前にその内容を十分に審査するとともに、製作中における品質管理の実施状況について確認を行う。」また、「重要部分に使用される材料の検査及び容器の性能検査は、国の職員が立ち会うことを原則とし、品質管理の審査の結果を踏まえて立会検査項目を決定する。」としています。
 しかし、これらは今後製作される容器が対象であり、すでに製造されている欠陥輸送容器については製造時の立ち会い検査などできません。そこで、「なお、データ改ざんのあったMOX燃料輸送容器以外の運輸省で承認済の放射性物質の輸送容器(5型式115基)についても、事業者の材料・性能データの取扱いについて元データの確認等により調査を行ったが、適切な処理が行われており、問題はなかった。」と事後調査で済ませています。問題があったらどうするつもりだったのでしょうか。
 データ改ざんのあったMOX燃料輸送容器では一体どのような審査姿勢をとるのでしょうか。「欠陥品を作っても設計を変えれば承認してもらえる」という前例を作って再発防止策を自らホゴにするつもりなのでしょうか。欠陥MOX輸送容器については、「設計変更不承認、設計から製造まですべてやり直し」が本筋ですが、運輸省はこれには何も触れていません。運輸省に対する働きかけを一層強めましょう。
 
経済的な2隻の軽武装船での相互護衛案
 
 関西電力と東京電力は、今回のMOX燃料輸送では、日米原子力協定に定められた「武装護衛船による護衛」を代替手段ですまそうとしています。その内容は1月中旬に英と米で一部記者発表され、米国務省による議会説明の内容が3月初めにリークされて明らかになりました。それによれば、英国籍の2隻が、30mm機関砲を3門(船首1、船尾2)装備し、緊急時用に小型高速艇を1隻ずつ積載し(ヘリコプターは搭載されず)、英国政府が2隻の輸送船を管理し、特別に訓練され機関銃で武装した英護衛者が両船に乗船するというものです。グリーンピースによれば、英国籍の2隻とはBNFL所有のパシフィック・ティールPacific Teal(4709t)とパシフィック・ピンストライプPacific Pinstripe(5087t) です。BNFLによれば、改造には5ヶ月かかると言います。
 1992年に日本国籍の「あかつき丸」が仏からプルトニウム粉末を輸送したときには、日本の海上保安庁の巡視船「しきしま」(6500t、25ノット)が 203億円をかけて建造され、35mm機関砲と25mm機関銃で武装し、ヘリコプター2機を搭載し、空域監視装置など航空レーダー・システムが装備されていました。このときも、米国防省がこれでは不十分だとし、「しきしま」へのレーダー管理・対ミサイル防御システムの装備を日本に求めたほどです(実現しませんでしたが)。今回の日本の護衛案は、護衛という軍事的観点からは明らかに後退です。
 日米原子力協力協定・実施取極・附属書五「回収プルトニウムの国際輸送のための指針」(1988.7.2)では「輸送船は出発から到着まで、武装護衛船によって護衛される。ただし、輸送計画に記載される代替安全措置が、武装護衛船による護衛のないことを効果的に補填する場合には、この限りではない」とされており、今回の護衛案が代替手段として効果的かどうかが米国で問われているのです。
 米国務省は「今回の護衛案は妥当だ」と米議会に説明していますが、議会では反対意見や疑問の声が続出しています。米下院外交委員会のギルマン委員長は2月11日、オルブライト国務長官に書簡を送り、「私は、この代替輸送計画が1988年の日米合意で規定された物理的防護手段に適合せず、または等価でないということを憂慮しています。最小限の武装で最高13ノットの護衛船では、軍や沿岸警備隊の護衛船の機動力や速度と比べて非常に劣り、十分な防衛・抑止能力があるとは思えません。装備については、どの護衛船計画においてもレーダー管理・対ミサイル防御システムが含まれるよう期待します。国防省による1992年の評価では、高速小型船による攻撃から防衛するにはこのようなシステムが必要だと私は理解しています。・・・ 少なくとも、1992年の回収プルトニウム輸送時に用いられた手段が、全輸送航路での武装護衛船の使用を含めて、今回のMOX燃料輸送でも用いられるべきです」と強く主張しています。そして、国務省に外交委員会で直ちに説明するよう求め、国防省、統合参謀本部(とりわけ海軍)、軍備管理軍縮局およびエネルギー省からの説明も求め、今回の代替輸送計画について、国防省による1988年の評価報告書「欧州から日本への安全なプルトニウム輸送のための代替輸送」のような評価報告書の委員会への提出を求めています。
 MOX燃料輸送船の緊急寄港地になりうるハワイやグアム出身の議員の間では特に、明確に反対する議員や憂慮を表明する議員が続出しています。国務省は、この動きに対し「議会には今回の輸送計画に関する権限はない」と開き直る姿勢を見せていますが、事態は複雑です。
 「プルサーマルには印パの核実験で示された核拡散の危険が常につきまとう」という点が、事柄の本質です。MOX燃料輸送に金を掛けたくない電力会社と責任をかぶりたくない日本政府の利害が合致し、「MOX燃料は核兵器には転用できない」などと国際的に非常識なことを敢えて唱え、「軽装備の護衛で十分だ」と主張して事態を混乱させているのです。
 
4月の統一地方選以降が焦点
 
 MOX燃料輸送容器のデータ改ざん問題で不信感が広がっていたにもかかわらず、高浜町議会は1月18日に突然、関西電力のプルサーマル事業を認める議案を可決しました。私たちは、この動きに唖然とし、一時危機感を募らせました。しかし、これは当初の計画が延び延びになっていたことに焦った関西電力の勇み足だったと思われます。統一地方選を控え、栗田知事が自民党とプルサーマル推進の政策協定を結び、年始挨拶で関西電力社長に「今度の選挙ではよろしく」と話したことも気がかりでした。
 プルサーマル計画が延期されたことで、すべては4月の統一地方選以後に持ち越されました。
 折しも、原子力長期計画の見直し作業が進み始めており、4月には科技庁が原子力産業会議に委託した論点取りまとめの報告書が出てきます。改めてプルサーマルの位置づけが問題になります。私たちは、これをもう一度議論の遡上にのせ、国民的合意なきプルサーマルの中止を政府に求め、福井県知事には国民的合意がない以上最終了解するなと要求していきたいと思います。