■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第48号(1999/3/9) □■□■□■□■□■□■□
1999年3月7日
運輸大臣
川崎 二郎 様
 
MOX燃料輸送容器
設計承認審査に関する申し入れ
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 貴省は現在、関西電力のMOX燃料輸送容器の設計承認申請書を審査中です。この設計承認申請の対象となっている輸送容器は、設計基準値(中性子遮へい材レジンのホウ素・水素含有量の設計仕様値)を満たせないという重大な製造欠陥が生じ、それを隠すためにデータ改ざんが行われ、容器不承認となった代物です。世の中の常識では、このような欠陥輸送容器は廃棄して新品を作り直すか、設計基準値に合うよう改造するしかないはずです。ところが、今回の設計承認申請では、設計基準値を製造欠陥に合わせて書き換え、欠陥品をそのまま使おうとする前代未聞のことが目的意識的に行われています。このような「設計基準値の書き換えによる欠陥品のそのままの使用の承認」がまかり通るようでは、原子力の安全審査など「なきに等しい」のではないでしょうか。また、被曝をできるだけ少なくするという先のレジン設計仕様値の考え方を踏みにじることにもなります。
 運輸省海上技術安全局は2月23日、「核燃料輸送容器の安全審査の強化について」を発表しました。そこでは、事前に品質管理の方法を十分審査し、製作中に立ち会うなど実施状況の確認を行うとあります。この立場から承認済の輸送容器を調査し、今回のMOX燃料輸送容器以外では異常がないことを確認しています。ところが、異常があった場合の処分については何も決められていません。今回のMOX燃料輸送容器に対する処分が最初であり、今後の規範になるべき「先例」になるのは明らかです。
 もし、仮にこのような「設計基準値の書き換え」を承認するようなことがあれば、今回取り決めた再発防止策を自ら根底から覆すことになります。「設計通りに製造できず、欠陥品になっても設計基準値を書き換えればそのまま使える」という風潮が原子力界に蔓延することでしょう。いや、すでに蔓延しているからこそ、このような「設計基準値の書き換え」が平然と行えるのかも知れません。
 貴省はこのような風潮をなくし、それを助長しない厳正な措置をとるべき立場にあります。そこで、運輸大臣に対し、以下の項目を強く要請します。
1.容器不承認となったMOX燃料輸送容器をそのまま使うための設計承認申請を不承認とするこ
と。
2.放射性物質輸送従事者の被曝線量データを公開し、健康調査を実施すること。
3.輸送容器の法的な安全基準である「表面線量率2mSv/hおよび1m離れた位置での空間線量率100
μSv/h」(100μSv/hは自然放射線の1000倍に相当します)を、広島・長崎の被曝のリスク評価見直しを考慮して引き下げること。
4.MOX燃料輸送容器設計承認申請書の安全解析書を公開し、輸送容器データ改ざん問題とそれ
に対する運輸省の再発防止策について、安全審査結果を出す前に公開討論会を開き、国民の意見を聞くこと。
 これらは、昨年12月28日に申し入れた内容でもあります。これらはまた、全国の31団体127個人と共に12月2日、貴省との直接交渉で申し入れた内容でもあります。
 貴省からは未だこれらに対する真摯な対応がみられません。上記の申し入れに対し、文書による
誠実な回答を再度強く求めます。