■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第48号(1999/3/9) □■□■□■□■□■□■□
 
高レベル放射性廃棄物の地層処分に反対し、
処分地につながる研究をやめさせよう
 
 
 今年は、高レベル放射性廃棄物の地層処分を巡る重要な年になろうとしています。2000年には高レベル放射性廃棄物の地層処分のための実施主体の設立が予定されており、総合エネルギー調査会原子力部会は1月14日、法制度の整備を図るため、中間報告案「高レベル放射性廃棄物処分事業の制度化のあり方」を発表しました。この報告書案について意見を聞くため、各地で意見交換会を行い、3月には報告書をまとめることになっています。来年の2月の通常国会には、処分事業の制度化についての法案が提出されようとしています。また、2000年までに、核燃料サイクル開発機構が、技術報告書「地層処分研究開発第2次取りまとめ」を国に提出するための準備を行っています。
 これらの動きの一つ一つと対決し、批判・反撃し、東濃、岡山、北海道、青森等の現地の反対運動と連帯して闘うことが求められています。東濃では、核燃機構の深地層研究所が最終処分場につながるとして、研究所計画を撤回する運動が粘り強く大衆的に展開されています。私たちも微力ながら、これらの運動と可能な限り連帯していきたいと思います。
 

仏で花崗岩の亀裂が問題に

 
 フランスでは、深層貯蔵試験場サイトの候補地が3カ所(花崗岩層1カ所、粘土層2カ所)に絞り込まれ、認可の手続きが進められてきました。しかし、そのうちの花崗岩層の候補地において、「花崗岩質は亀裂と水の浸透性により深層貯蔵に不適当」との報告が出されました。また、粘土層においても、地層の亀裂が問題になり、深層貯蔵の研究に時間をかけ慎重な対応が迫られています。候補サイトでの反対運動も
活発になっています。
 このような状況の下、国家評価委員会は、昨年6月、高レベル放射性廃棄物は「再回収可能性」を考慮し、浅層貯蔵すべきとの報告をジョスパン首相や関係大臣に提出しました。仏では、深地層処分計画を見直す動きが出てきています。
 

米で放射能の地下水による移動が問題に

 
 ネバダ州の使用済核燃料など高レベル放射性廃棄物処分場予定地のネバダ州ユッカマウンテンにおいては、米エネルギー省(DOE)により1986年から「特性調査」が行われ、これまで「万一放射性物質が漏れ出ても、地下水面までは1千年以上かかるので問題ない」とされていました。昨年12月にエネルギー省が出したユッカマウンティンの実現可能性評価報告書でも「数千年間は公衆の健康と環境を守れる」との結論でしたが、エネルギー省に2月11日に出された専門家パネル報告、昨年末に公開されたネバダ州委託研究、昨年春から今年にかけて出された専門家によるさまざまな研究報告の中で、以下のような問題点が指摘されています。
 
@放射能を閉じこめる第1の防護壁となる使用済燃料の燃料棒被覆管がそれほどもたない。
 
A地下水から300m上の処分場予定地はかつて熱水に没していた証拠が見つかった。
 
B数十年前の核実験による放射能が処分予定地で発見され、地表から処分予定地へ浸透水が予想以上に速く移動することがわかった。
 
C漏れだした放射能は地下水中の浮遊粒子に付着すれば、遠くへより速く移動する。
 
D長期の地下水核種移動シナリオによれば5km下流の住民は高線量被曝を被る危険がある。
 
 2001年にはユッカマウンテンの適格性が判断されることになっていますが、地元のネバダ州知事は猛反対し、処分場計画の撤回をエネルギー省に何度も強く迫っています。
 

現地の運動と連帯し、地層処分計画の撤回を

 
 わが国においては、原子力委員会は、1984年に「未固結岩以外であればどのような地層でもよい」とし、「有効な地層の選定」を終了しました。どんな地層でも人工バリアとの組み合わせにより安全に処分できるというのです。
 日本の場合は安定した地層など存在しません。また、日本の地下水脈は非常に発達しており、地下水と無縁な地層も存在しません。一例を挙げると、岐阜県東濃の超深地層研究所予定地の花崗岩の960m付近のボーリングの資料は、亀裂だらけですし、地下水が湧き出ているのです。仏では亀裂が問題になって予定地の計画が撤回され、米国では地下水の存在が大問題になっています。日本では、地層の亀裂や地下水の存在を前提にするしかありません。これでは、日本で高レベル放射性廃棄物を「安全に深地層処分する」ことなど最初からできないはずです。
 人工バリアや天然バリアはやがて破壊され、放射能が生活環境の中にかえってきます。その頃には、埋め捨てた世代は死に絶えていますが、放射能は生きています。放射能災害が起きても埋め捨てた世代は責任をとれないのです。
 何よりもまず、放射性廃棄物を生み出す原発を停止することが先決です。その上で、出来てしまったものは、電力や原子力産業の責任と負担で「回復可能」な形で現在の技術で可能な限り安全に厳重に密閉管理し続けるしかないと私たちは考えます。深地層処分場の建設は高レベル廃棄物問題を解決するどころか、ますます大量の高レベル廃棄物を生み出させ、事態をより深刻化させるだけです。深地層処分反対運動と反原発運動を一体のものとして闘いましょう。