■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第50号(1999/6/20) □■□■□■□■□■□■□
栗田福井県知事のプルサーマル受入に
断固抗議する!
MOX輸送中止とプルサーマル中止を
関電に迫ろう!
関西電力高浜3・4号炉でのプルサーマル計画に対し6月17日、福井県知事が「事前了解」を出しました。3年前から一貫して反対運動に取り組んできた私たちは、憤懣やるかたない思いで、これに断固抗議しました。
私たちは、今年に入ってからも、1月と5月に知事に公開質問状を出し、6月11日には県庁へ出向いて申し入れ、16日には緊急要請を出し、直前まで懸命の努力を尽くしましたが、18日には知事に抗議文を送りつける結果となりました。
しかし、「栗田知事の事前了解」は、決して県民合意に基づくものではありません。
4月の知事選で3選を果たした栗田氏の得票率は、過半数をわずかに上回る55.5%にすぎず、前回より「25%」も下がっていました。プルサーマルに関する選挙中の公約では「安全性について十分確認する必要がある」「県民の皆様の安全安心の確保を第一に総合的に判断する」と慎重姿勢に終始し、プルサーマルへの賛成・反対が争点化するのを避けていました。ところが、当選するや「6月県議会までには結論を出す」と記者会見。しかも、この2ヶ月間の議論は、取り引き材料となる「核燃料税率の2001年改定時の引き上げを確約させるか否か」に終始し、安全性論議は一切ありませんでした。県議会与党3会派の県会自民党、県民連合(民主党・社民党など)、公明党はいずれも異例の「知事一任」とし、直接の責任を回避しました。県会自民党の内部でも、プルサーマル反対の新人を中心に意見が割れたのです。これでは、県議会の議論を尽くしたとは到底言えず、「県民合意が得られた」などと言うのはおこがましいのです。
まだ決まったわけではない
福井県知事の事前了解でプルサーマル実施が決まったわけではありません。まだまだ、関電が超えなければならないハードルは高いのです。
関西電力は、@輸送開始1ヶ月前の運輸省への運送届提出、AMOX燃料輸送船の7月末〜8月初め英出港、B東電用MOX燃料輸送船との「2隻相互護衛」による約2ヶ月間の海上輸送(ルート不明)、C高浜原発岸壁への10月入港接岸、D約1ヶ月間のMOX燃料検査、E高浜4号の約1ヶ月間運転停止・MOX燃料装荷、F11月運転再開=プルサーマル実施のスケジュールを立てています。
これにはMOX燃料輸送ルート沿線諸国も黙ってはいません。「あかつき丸」による1992年末〜1993年初のプルトニウム輸送時には、輸送ルートに関係する30ヶ国以上が経済水域内通航拒否・抗議・懸念等を表明しています。ドイツやベルギーなどプルサーマル先進諸国で脱再処理・脱プルトニウムの流れが具体化する中で、プルトニウム災害の危険を高め、核拡散の危険を促す日本の強引なプルトニウム利用への国際的な批判が高まるのは必至です。
しかも、関西電力の輸送容器は中性子遮へい材が当初の設計通りに製造されなかった欠陥品です。別の試験体による燃焼試験では外付けになっている中性子遮へい材が焼け焦げたと言います。これで本当に大丈夫なのでしょうか?万一海難で沈没すれば回収できるのでしょうか?
また、今後年数回に及ぶMOX燃料輸送の経済性を考慮して案出された変則的な「武装輸送船2隻による相互護衛方式」には核拡散防止上問題があると指摘されています。
国際的な動きと連帯し、日本国内でもMOX燃料輸送反対の声を上げていきましょう。
イギリスとの再処理契約破棄を
関西電力の高浜4号で使われる予定のMOX燃料はイギリスの再処理工場で再処理されたものです。この再処理工場は深刻な放射能汚染をもたらしており、再処理工場周辺で小児白血病を多発させ、北欧諸国沿岸で放射性物質を蓄積させ続けています。
再処理工場で100mSv以上被曝した父親から生まれた子供に白血病が発生する割合は通常の約6倍であることが、この5月末に出された英政府委託研究報告で改めて確認されています。
ノルウェー沿岸では英再処理工場から出たと推定されるテクネチウム99が蓄積され続けています。また、英政府科学者の4月調査報告では、英再処理工場から放出されたプルトニウムの4割が、予想に反してアイリッシュ海の海底土には滞留しておらず、どこへ拡散していったのかわからないことも明らかになりました。昨年7月の OSPAR委員会(欧州15ヶ国)では「英再処理工場の放出放射能量を2000年までに実質削減または除去する」ことが英政府に委託されており、この6月21〜25日の OSPAR委員会年次会議でその具体的計画が問われると思われます。
英再処理工場ソープの海外契約分の大半は日本とドイツで占められ、日本の責任は重大です。幸い、ソープは事故続きで満足に動いておらず、日本の軽水炉委託分は2割弱しか再処理されていません。解約するのなら今がそのチャンスです。ドイツと共に解約すべきです。すでに再処理・回収されたプルトニウムは、プルサーマルせず、核不拡散性の高いガラス固化またはセラミック固化し、密閉貯蔵し続けるべきです。
曖昧なプルサーマルの位置づけ
プルサーマルは、政府・電力会社によるプルトニウム利用の本命ではなく、「高速増殖炉までのつなぎ」にすぎません。その高速増殖炉も技術的・経済的展望がなく、プルサーマルの位置づけは結局、英仏再処理委託から出てくる余剰プルトニウム対策でしかないのです。六ヶ所再処理工場の建設計画は2年半延期されました。高速増殖炉の展望がなく電力自由化でコストダウンが迫られれる中、ウラン資源の節約にもならない高価なプルサーマルのために再処理を行う意味は益々乏しくなっています。電力会社にとっては、原発サイトから使用済核燃料を搬出できれば再処理しない方がいいに決まっています。電力会社にとっては「中間貯蔵施設を立地させるためにプルサーマルが必要だ」という転倒した位置づけになっているのです。
原産会議による長期計画改定のための原子力委員会委託調査報告では、「自国内の核燃料サイクル確立を大原則」としながらも、初めて「今後、海外再処理を活用する可能性の有無」の検討を課題に挙げました。それほど「自国内の確立」に自信がなく、動揺しているのです。
六ヶ所再処理工場建設は元より、これ以上の海外再処理委託も許すことはできません。一切の再処理を止めさせ、プルトニウム利用を止めさせるため、プルサーマルに徹底して反対しましょう。国際的な動きと連帯し、MOX燃料輸送中止、プルサーマル中止を関西電力と東京電力に迫る運動を共に作り上げましょう。
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