□■□■□■□■□■□■□■□■□若狭ネット第51(1999/9/18)■□■□■□■□■□■□■
 
敦賀2号事故で日本原電を追及
 
粘りのあるステンレスではギロチン破断しない!?
ギロチン破断しても自動隔離され漏洩が止まる!?
 
 敦賀2号炉で7月に事故を起こした日本原電(正しくは「日本原子力発電株式会社」)と、福井県の敦賀事務所で9月10日朝、2時間の公開交渉をもちました。1ヶ月前に出していた長い公開質問状への回答を求めての交渉です。
 若狭ネット側は6名(福井3名、大阪3名)で臨み、原電側は敦賀事務所次長と敦賀発電所次長など6名が対応しました。原電側は、経営責任者クラスの大物を出し、文書回答を用意するなど、一応「誠意」を示してきたかに見えたのですが・・・・。フタを開けるて見ると、中身は相変わらずの「賞味期限切れ」の回答。防腐剤をいっぱい入れておいたはずの缶詰の中身は、やはり腐りかけていました。腐っていても「腐っていない」と言い張るところが、何とも腹立たしい。事故のたびに聞かされる「反省」とも「居直り」ともとれる言葉の羅列に唖然とし、遂に怒りが爆発。その後の沈黙のひとときが何ともやりきれない思いでした。
 それでも、いくつかの成果を引き出したことは、今後の運動の拡大につながると思います。ここでは、そのいくつかをまとめて紹介します。関心のある見出しを拾って読んでみて下さい。
 
ギロチン破断したら漏洩はすぐ止まる!?
 
 日本原電は今回の事故を小さく見せようと、細かいことにこだわるかと思えば、「暴論だ」と断りながら暴論を吐いたり、必至にこだわりを見せました。
 事故を起こしたのは「再生熱交換器」と呼ばれる装置です。この装置の配管にひび割れが起こり、核燃料を冷やす原子炉冷却水が漏れ出たのです。ここでの事故は大したことがないとでも言いたげに、次のように言い張りました。
@再生熱交換器への抽出水流量は一次冷却水流量の0.03%にすぎない
A充てん/高圧注入ポンプの追加起動で原子炉の水位を維持できる程度の漏洩にすぎない
B例え、配管がギロチン破断しても、加圧器水位の低下で隔離弁が自動的に閉まり、漏洩が止まる
 再生熱交換器は、原子炉と化学体積制御系をつなぐ装置です。化学体積制御系はヒトの腎臓のような働きをし、一次冷却水を浄化し、原子炉での核反応を制御する薬品の濃度を調節しています。一次冷却水が高温のままでは処理できないため、処理後の原子炉へ戻る低温の冷却水を温めることで、逆に高温の抽出水を冷やすのが再生熱交換器の役目です。この再生熱交換器を流れる一次冷却水は毎時全量の約10%に相当し、決して微量ではないのです。また、ひび割れた配管の内径は、美浜事故でギロチン破断した蒸気発生器細管の10本分に相当し、ここでギロチン破断が起こるとたちまち炉心空だきになり、炉心溶融事故に至る危険があるのです。
 日本原電はこれを必至に隠そうとしましたが、それが困難と見るや、配管がギロチン破断すれば、ECCS(緊急炉心冷却装置)が作動し、自動的に隔離弁が閉まるから一次冷却水の漏れはすぐ止まると言い張りました。これには「破断したほうが自動隔離できて良い」という暴論だと私たちは憤激。「そんな暴論は言ってない。結果としてそうなると言ったまでだ」との居直り。
 もし、隔離弁が閉じなかったら、ジャジャ漏れです。もし、ECCSがうまく動かなかったら、炉心溶融は避けられません。ECCSが運良く動いても、原子炉内へうまく水が入るかどうかの保証もありません。詰まるところ、日本原電を信じなさい、信じる者は救われるというのです。
 
粘りがあるからギロチン破断しない!?
 
 日本原電によれば「ステンレス鋼のようなねばりのある材料では、一般的に亀裂が発生しても直ちにギロチン破断に至らない」といいます。ちょっと待って下さい。これとよく似た言葉をどこかで聞きましたね。そうです、8年前の美浜事故の直前まで、あの関西電力が頑強に主張していた言葉です -----「インコネルは粘りがあるから破断しない」----- それが間違いだったことは、美浜事故であっけなく暴かれました。その直後に平身低頭していた関電の姿が今も目に浮かびます。
 ところが、日本原電はこの美浜事故から何も学んでいないかのように、上の言葉を今回繰り返したのです。
 今回の事故では、ひび割れた配管の溶接部に、内周の7割に及ぶ、深さ6割以上の深い亀裂が見つかっています。この亀裂のほうが先に貫通していたら、ギロチン破断またはそれに近い大きな破断事故につながっていたことは間違いありません。ところが、日本原電は「粘りがあるから」という理由で、ギロチン破断の危険を見ようとしないのです。私たちは、今回のような金属疲労による亀裂では、長い亀裂発生期間の末に、急に亀裂が進展し破断に至る場合があることを指摘し、美浜事故の例を挙げて追及しました。その末に、日本原電は、配管の周方向に沿った破断の危険性については認めましたが、ギロチン破断の可能性については解析中だと逃げました。
 
超音波探傷検査でもひび割れは見つからない
 
 今回、配管にひび割れが生じた場所は一次系の重要な場所ですが、原子炉との間に隔離弁がついているため、非常時には隔離できるとの理屈で「第3種容器」と分類され、法令では10年に1度の耐圧漏洩検査(157気圧4時間)でよいとされています。当たり前のことですが、日本原電は「この耐圧試験を毎年実施していても今回の亀裂は発見できなかった」ことを認めています。ではどうするのかというと、「超音波探傷試験を何年かに一度実施する」ことを検討中だと言います。
 超音波試験は配管の外側から超音波を当てて、反射波の乱れで内側の傷を発見しようというもので、微細な傷は当然発見できません。また、超音波が複雑に反射する配管の継ぎ手や管台部などでは検出能力が落ちるため検査できません。肉厚変化の少ない配管での大きな傷しか発見できないのです。
 今回の配管でも、屈曲部に2本ある貫通寸前の大きなひび割れのうち1本(長さ72mm)は検出されませんでした。日本原電は「2つの亀裂はつながって検出された」とか、「液体浸透検査では検出したんだろう」とか、何とかごまかそうとしましたが、最終的には検出できなかったことを認めました。
 
ひび割れの進み方はすべてお見通し!?
 
 また、疲労亀裂の場合には、ひびが入るまでに何年もの時間がかかり、微細な傷が徐々に広がっていくかと思うと、あるとき急速に進んで破断するという特徴があります。美浜2号での蒸気発生器細管ギロチン破断事故がそうでした。この事故では、毎年の渦電流探傷検査で見つからなかった微細な傷が次の定検までに急に進展し破断したのです。
 だけど、日本原電は配管の肉厚が1cmとぶ厚いから大きな傷でも残った肉厚で耐えられる、大きな傷が入ったときには発見できるから破断は防げる、と言い張るのです。ひび割れが急に進んで破断することはないと主張する根拠は、「配管に働く力を設計時に想定できるから、ひび割れの進む速さも予測できる」というものです。私たちが「今回のひび割れは予測できなかったじゃないか」と詰め寄ると、「熱疲労が起こることは予測できなかった」といいわけをする始末。予想外の原因で大事故が繰り返されているのに、「設計時にすべてわかっている」という傲慢な姿勢で、破断の危険を過小評価してきたのです。それに対する何の反省もなく、同じことを繰り返そうとしているのです。
 
死なないと思っていても保険に入るようなもの・・・・???
 
 私たちは、超音波探傷検査を毎年やるべきだが、それをやってもひび割れが検出できないまま、配管が破断する場合もあると指摘しました。すると、それは「死なないと思っていても保険に入るようなもの」とトンチンカンな居直りを決め込んだのです。配管破断事故が起きた直後であるにもかかわらず、二度と破断しないと頭から決めてかかっているのです。これには、「血ヘドを吐くまでほったらかしにせず定期健康診断を受けなさい、それでも見逃されることがあるから、注意しなさいという話でしょう」と私たちにたしなめられる有様でした。
 
金属疲労の検査法はまだ開発できていない
 
 それでは、8年前の美浜事故でその重要性が叫ばれた「金属疲労の検査法」はどうなっているかと言えば、未だに有効なものはなく、「現在なお継続して開発中」との回答でした。結局、美浜事故や今回のような金属疲労は、疲労亀裂が成長して大きくならないと検出できないのです。また、亀裂が短期間にザーッと進んでしまう場合には、次の定期検査を待たずに破断してしまうのです。
 
    「漏洩即停止」になっていない
 
 配管のひび割れを未然に防止できず、それを早期に検出することもできないとなると、破断事故の危険性はなくなりません。それでは、配管が破断したらすぐ止めるようになっているかと言えば、「漏洩即停止」にはなっていないのです。
 日本原電によれば、今回の漏洩開始時刻は火災報知器の鳴った6時5分だということです。日本原電の出したチャートでは6時丁度から加圧器水位が下がり始めており、6時丁度から漏れ始めたように見えるのですが、これは美浜事故でも見られた記録計のペンのずれのようです。6時7分には格納容器に漏れた冷却水がサンプへ流れ込み、警報が鳴りました。運転員は加圧器水位が下がり続けるのを見て、6時10分に充てん/高圧注入ポンプを追加起動させました。この時点で運転員は1次系からの漏洩であることを百%確信していましたが、「即停止」の判断をしていません。充てんライン流量高警報が鳴り(6時11分)、格納容器サンプ水位上昇率異常高警報が鳴った6時12分に初めて、発電長が原子炉停止を決定したのです。ところが、実際に停止操作を始めたのは、それから12分後です。
 この間、運転員は何をしていたのでしょうか?日本原電によれば、判断に迷っていたわけではない、給電司令所等との連絡、運転員の配置、停止手順の確認など停止操作の準備をしていたそうです。別の回答箇所では、「運転員は様々な事故、故障の対応訓練を十分行っている」「判断に迷うことなく、対応操作にもミスがないように繰り返し訓練を受けている」としているのです。だとすれば、発電長は原子炉停止を決定したら、すぐに連絡通報指示を出すと同時に停止操作を始められるはずです。
 ところが、運転マニュアルではそうなっていません。警報が出ても、ガスモニタなどの関連パラメータを確認し、格納容器内サンプ水位が上昇し続けていることを確認し、毎時230リットルを超える漏洩であることを確認してから緊急負荷降下を行うことになっています。じんあいモニタが警報を出したのは、原子炉停止決定から6分後の6時18分でした。原子炉停止は1日2億円の損失を生むため、運転マニュアルは、総合的な停止判断を求め、極微量の漏洩であれば停止時期を遅らせるように指示しているのです。そのため、原子炉停止を決定しながら、マニュアル通りのパラメータ確認のため実際の停止操作が遅れたと考えられます。最後には、「手順書に基づいて慎重を期してやった」とマニュアルの不備を事実上認め、原子炉の早期停止と漏洩の早期停止に向けてマニュアルの修正を検討中といいます。なぜもっと素直に問題点を認めないのでしょうか。
 また、なぜ「緊急スクラム」ではなくて、24分もかかる「緊急負荷降下」なんだと追及すると、「それも含めて検討中です」との答え。どう変わるのか監視する必要があります。
 
火災報知器も漏洩検知システムの一部・・・??
 
 今回の事故では運転マニュアルに定めてある総合的な漏洩判断の元になるガスモニタなどではなく、火災報知器が真っ先に警報を出しました。火災報知器は煙検知器であり、蒸気も煙の一種だからそれを検知したとの説明。ところが、その「煙」がどこから来ているのか、火災報知器によくある誤動作ではないのか、についてはすぐにはわかりません。本来なら、微少漏洩の段階で、火災報知器ではなく本来の漏洩検知システムですばやく検知し、対応すべきところです。ところが、漏洩直後にはじんあいモニタやガスモニタは警報を発しませんでした。漏れた水がサンプに貯って警報が鳴るまで、正確には漏洩を検知できなかったのです。これは明らかに検知システムの不備、欠陥です。ところが、日本原電によれば、火災報知器も検知システムの一環であるかのような答弁をし、総合的に判断するから、火災報知器が鳴ってガスモニタ等が働かなくても欠陥ではないと言い張る始末。漏洩箇所から離れたところにモニタがあれば、漏洩を検知できなかったり、検知に時間がかったりするのは当然です。早く検知するには漏洩しそうな一次系の各所にモニタ等を取り付ける必要があります。それには金がかかるのです。
 日本原電はテレビカメラの一部増設やマニュアルの改訂でお茶を濁そうとしているようですが、それでも漏洩時間を14時間から10時間以内に縮めるのがやっとだというのです。本気で早期漏洩検知システムや早期漏洩停止システムを整備する気があるのかどうか、疑問です。
 また、小規模漏洩の場合には、運転員が格納容器内に入って目視で漏洩箇所を確認するのが原則だとし、このために1次系の隔離が遅れ、14時間もの漏洩が続いたというのですが、漏洩事故時には格納容器内が放射能で汚染されるため被曝の危険があります。このような運転員の被曝を前提としなければ漏洩を確認できないようなシステムは根本的に欠陥のあるシステムなのではないでしょうか。
 
除染作業は経験豊富な会社に委託!?
 
 今回の除染作業では、5日間にのべ 251名が雑巾がけの「除染」作業に従事しました。除染といっても、目立つ汚れがあるわけではなく、ピカピカの床にこびりついた目に見えない放射能を雑巾で拭き取るのです。「科学の粋を集めた原発の中で雑巾がけとは・・・・」とお思いでしょうが、これが現実です。日本原電によれば、除染作業は「作業経験の豊富な会社に委託しております」とのこと。何のことはない、日本原電社員は放射能まみれになる除染作業には従事せず、下請け被曝要員に「ちゃんと拭け」と命じるだけなのです。5日間の除染作業で計19.7人mSv、最大0.81mSv、調査作業で計43.1人mSv、最大0.96mSv。自然放射線が年間1mSvですから、多い人では、自然放射線の約70倍を5日間にわたって浴びたことになります。
 被曝作業には「経験豊富」という言葉は当てはまりません。放射線に被曝して健康が損なわれることはあっても、被曝に習熟することはあり得ないからです。にもかかわらず、「経験豊富な会社に委託」と言ってのける日本原電の態度には空恐ろしいものを感じました。
 
事故中の見学は問題ない、今後も続ける
 
 事故中の見学会は「問題がなかった」「今後も安全が確認されれば同様の対応をします。」日本原電は、一次系から原子炉冷却水が毎時数トンの割合で噴出しており、どこから漏れているのか手探りで調べている真っ最中に、福井県下の老人会や婦人会など合計4団体、約90名に対し、発電所内の見学を実施していました。日本原電いわく。「見学者に説明してご理解を得た上で、漏洩の発生した2号機の見学を変更し1号機の見学を実施しております。」
 「美浜事故の際には見学中に原子炉建屋の外へ放射能を放出させたから問題になったが、今回は格納容器の外へは放射能が漏れてないからいいんだ」というのが日本原電の主張でした。原子炉冷却水が、どこから、どのように漏れだしているのかわからず、事故がいつ拡大するやも知れないのに、この態度。「今回の事故は大したことはない」との認識がアリアリ。常識から外れた居直りとも受け取れる回答に「安全思想がなっとらん!」と一喝。しばらく沈黙が続きましたが、反省している様子は見えません。神妙にうつむいた顔からは「舌」が・・・・。
 
重要度の高い設備を手厚く検査?
 
 今回のひび割れは10年に1回の耐圧検査を毎年やっていても発見できなかったことは、日本原電も認めています。しかし、わずか数十mしか離れていない配管で熱疲労割れが見つかった1996年12月に、この再生熱交換器でも超音波探傷検査など徹底した検査をしていれば、今回ほどの大きなひび割れなら検出できたかも知れません。ところが、敦賀2号でも、事故や故障を未然に発見することよりも、事故などの計画外停止や定期点検による運転停止期間を短くする競争の真っ最中でした。それが今回の事故を引き起こした社会的な原因とも言えます。
 定期点検の手抜きは次のようにして行われています。@重要度の低い機器は10年に1度程度の検査にする、A重要度の高い機器の検査は昼夜突貫工事で行う、B検査方法はできるだけ時間と金のかからない検査に限る、C交換した蒸気発生器は毎年半数だけ検査し、核燃料棒の外観検査も燃焼度の進んだものだけに限るというものです。ところが、日本原電によれば、「これは重要度の高い設備をより手厚く検査することだ」、24時間コンビニ営業のように「基本的には24時間の夜間作業をやっている」というのです。実際に漏れ聞く話では、下請作業員は仮眠も取れないほど「納期に追われる検査・補修作業」の毎日で、クタクタ。人為ミスが起こらないほうがおかしいのです。
 
熱疲労説には裏付けがない
 
 今回の交渉のメインイベントの一つが漏洩原因を解き明かす「熱疲労」説に関する追及でした。新聞やテレビではまことしやかに、内筒と外筒の二重構造になった再生熱交換器の熱変形で高温水と低温水の流れが変動し、配管部での温度が周期的に(10分程度の周期で)変わり、疲労破断したというもの。ところが、日本原電が公開した熱流動解析なるものによると、温度変化は配管入口部で最大でも約50℃、しかも、緩やかな温度変化であり、冷却水の温度変化がそのまま配管の温度変化になるわけでもないので、配管の実際の温度変化はもっと小さいはず。そうすると、わずか数十℃で疲労亀裂が生じたことになります。これでは「疲労限」と呼ばれる疲労亀裂を引き起こす限度の値が異常に下がっていたとしか考えられません。ところが、なぜそんなに疲労限が下がったのかについては、未だに定量的な説明が付いていないのです。
 日本原電によれば「今解析中であり、9月末には報告書がまとまる。それまでは言えない」とのこと。説明できる見通しがあるのなら、概算値でも出して説明すべきところです。にもかかわらず、具体的な数値になると「今解析中です」と逃げ回るだけ。日本原電の出した資料を使って「温度変化は数十℃に過ぎない。これでステンレスに疲労亀裂が入ると言えるのか」「疲労限が異常に下がった原因を説明できるのか」と迫ると、顔色が変わり、自分たちの出した資料を、どれどれと動揺して探し回る始末。
 私たちは、コンピュータ解析だけでは信用できない。モデルのパラメータをいじればどんな結果でも出せるのが、コンピュータ解析の恐いところ。「再現実験で実証されなければ信じられない」と、再現実験の実施を強く求めました。ところが、日本原電は「それをやれば十数年もかかり、現実的ではない」と拒否。これでは、自分たちの描いた空想の世界だけを見せて「これが現実だ」というようなもの。現実を忠実に模写した絵だと裏付ける再現実験がない以上、「絵に描いた餅」と言わねばなりません。
 
公開討論会は貴意に沿い難く・・・・??
 
 私たちは、美浜事故の後で関西電力がやったような公開討論会の開催を日本原電に求めました。ところが、返事は「貴意に沿い難く」と門前払い。これが事故を起こした張本人の言う言葉でしょうか。事故を起こした責任をとって事故の全貌を説明し、二度と同じ過ちを繰り返さないための対策を明らかにし、甘んじて批判を受ける。そういう姿勢が全く見られないのは、一体どういうことでしょうか。私たちは、きちんと説明できる技術者と経営責任者の同席する公開討論会の場で、公開質問状への回答を受けたいと申し入れていたのですが、「ノウハウがない」と言って断られ、仕方なく日本原電敦賀事務所での、新聞記者には公開された交渉となったのです。質問に回答できずに立ち往生するブザマなところを公衆に見られるのがコワイのでしょうか。自分たちのとった措置や原因究明結果に自信があるのなら、堂々と公開討論の場で説明すべきではないでしょうか。私たちは、今後も公開討論会を求めていくつもりです。
 
敦賀3・4号炉増設と敦賀1号の寿命延長が見え隠れ
 
 私たちは、敦賀2号事故に関する質問状の中で敦賀3・4号増設問題と敦賀1号の寿命延長問題にも触れました。それは、敦賀2号事故の起こる直前に敦賀3・4号増設の話が急速に持ち上がり、明日にも敦賀市へ増設願いが提出されようとしていたからでした。敦賀2号事故でそれどころではないという雰囲気になり、今は棚上げ状態になっています。しかし、回答では「これらが解決してから申し上げることと考えております」と、虎視眈々と狙っていることが改めて明らかになりました。
 また、敦賀1号の寿命延長につながる原子炉内のシュラウド交換については事故とは無関係だとして、8月11日には福井県と敦賀市から事前了解を得(事前了解願いは5月末提出)、9月中旬から工事に入ろうとしています。この工事が、日本史上初めての軽水炉原発の30年を超える長期運転につながるにもかかわらず、シュラウド交換は「長期運転との関連で取替えるわけではありません」と大ウソをついてはばかりません。敦賀2号で事故が起きた以上、また、その原因が疲労亀裂という老劣化と関係のある事故パターンである以上、寿命延長につながるシュラウド交換は中止すべきです。
 敦賀事故の技術的原因はもとより、社会的・経済的な原因の徹底糾明を今後も引き続き求めていきたいと思います。今回の交渉はそのほんの一歩です。皆さんのご支援をお願いします。