■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第53号(1999/12/25) □■□■□■□■□■□■□
1999年12月22日
内閣総理大臣 小渕 恵三様                        
 
JCO臨界事故で被曝した大内久さんの死去を受け、
原発の運転停止とプルトニウム政策の転換を求めます
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 9月30日、東海村JCO転換試験棟でのウラン溶解作業中に臨界事故に遭遇し、18シーベルトとも言われる高線量の被曝を受けた大内久さんが12月21日に死去されました。大内さんの死は日本の原子力災害では初めての急性障害によるものであり、原子力推進が人々の生命を奪うことなしには成り立たないことがあらためて明らかになったのです。
 JCOは国のプルトニウム政策の一環として、MOX燃料の加工にも携わっていたのであり、その工程の中で今回の臨界事故が起きたのです。
 しかも、国が1984年に認可した転換試験棟の設計段階では、20%未満の濃縮ウランでは臨界事故を防ぐための1バッチ最高取扱量を想定していませんでした。そのような中で今回18.8%の濃縮ウランの作業中に臨界事故に至ったのです。
 転換試験棟を認可した科技庁や原子力安全委員会が、臨界事故の評価を見逃していた責任は特に今回免れません。人間一人の人生を奪い、家族や近隣の友人の生活に打撃を加えた点で、国の責任は重大です。
 私たちは、大内さんが国の原子力政策の犠牲になったことを受け国に対して強い憤りを覚えるとともに、人命を犠牲にすることなしには成り立たない原子力政策の根本的な見直しを求め続けるものです。
 大内さんの被曝は、わずか1ミリグラムのウランが核分裂したことにより引き起こされました。通常の原発では1年間にその約10億倍のウランが核分裂反応を起こしています。その原発が重大事故を起こせばどれほど凄惨な結果が引き起こされるかは明白です。
 原発1基が重大事故を引き起こすだけで、数百`にわたって極度に放射能に汚染されます。空気・土壌・食料・飲料水の放射能汚染に起因する、ガン・白血病の多発は不可避でしょう。その他の疾病の発生頻度もあらゆる町で高まるでしょう。
 さらに、高浜原発の欠陥MOX燃料ペレットの英国BNFLによるデータねつ造を国も企業も追認していたことが明らかになっています。電力会社による原発機器の品質管理がデタラメであることが改めて確認されたのです。全国で原発重大事故を引き起こす危険はさらに高まっています。
 しかし、大内さんの死亡後も「原発は別だ」とする深谷通産大臣の発言にあるように、臨界事故を引き起こすまでの事実経過と国の責任をいっさい認めない姿勢は断固として許せないものです。
 こういった事態を受け、まず国として、JCO臨界事故を引き起こした責任を真摯に認め国民に謝罪することを求めます。
 さらに、私たちはこれ以上の核被害者を生み出さないため、国の責任で原発をすべて止め、プルサーマル計画も中止することに、早急に取り組むようここに強く要求します。
 国の責任のもと、原発やプルサーマルの安全性を根本的に点検し、安全が完全に保証されるまで、全ての原発の運転とプルサーマル計画を再開しないよう強く求めます。
 
(この申し入れを深谷通産相、中曽根科技庁長官、佐藤原子力安全委員会委員長にも送付し、関電 にも同趣旨の申し入れを行いました。)