■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第53号(1999/12/25) □■□■□■□■□■□■□
 
<<<<<<<<<<< プルサーマル事前了解の撤回を求め、12・24福井県交渉 >>>>>>>>>>>>>>
 
「県として
 やれるだけのことはした」??
 
 関西電力高浜4号炉でのプルサーマル計画が12月16日に中止され、JCO東海臨界事故で被曝した大内氏が21日に亡くなったことを受け、若狭ネットは24日に急遽、福井県知事へ緊急の申し入れを行いました。プルサーマル事前了解の撤回と原発15基体制に依存してきた県政の転換を栗田知事に求めるためです。
 若狭ネット5名で福井県原子力安全対策課へ出向くと、地元テレビ局など報道陣がわんさか。しかし、課長と参事の椅子は空で、長谷川課長補佐が待ち受けていました。立ったまま申し入れを受けようとしたため、いつものように席に座るように促し、「課長と参事はどこへ行ったのか」と追及しました。「10時半の約束で先ほどまで待っていたが、緊急の会議が入った」とのこと。私たちは「課長が戻るまで、いつまでも待つ」と伝え、課長が戻るまで課長補佐を追及することにしました。
 
福井県に事前に申し入れた通りのねつ造
 
 今回新たに発覚したデータねつ造は、若狭ネットが11月8日に申し入れた内容の通りでした。P810ロットの101〜200番の外径測定データが別のロットP814の1〜100番にコピーしたもので、「番号をずらしてコピーする」という新たな手口です。関西電力はデータをねつ造した検査員の証言に基づき「1〜200番のデータを同じ番号の個所にコピーする」やり方だけをチェックしており、これでは番号をずらしてコピーするねつ造やMOX燃料ペレットを恣意的にサンプリングして合格させるずさんな品質管理などはチェックできません。私たちは、関西電力の9月中間報告や11月最終報告に掲載されている図を見れば、品質管理用外径測定データ200個の平均と標準偏差が、製造工程内全数自動測定データ約3000個の平均や標準偏差と余りにも大きく食い違っていることを指摘し、データのねつ造か品質管理そのものがずさんであるは明らかであり、欠陥MOX燃料を使わせないよう強く申し入れていたのです。
 福井県が、もし、私たちの申し入れを真面目に受け取り、再調査を関西電力に強く指示していたら、福井県の指示でデータねつ造が明らかにされた可能性もあったのです。そこで、11月8日の申し入れを受けてどのように処置したのかと、課長補佐を追及しました。すると、「課長が答えます。お待ち下さい。」の一点張り。内容については全く答えられないという不遜な態度でした。
 
「県は8体とも使うなと申し入れた」
 
 11時過ぎに来馬課長が戻るまで、何一つ議論は進みませんでした。待ち受けていた私たちは、早速、県としての責任を追及しました。
 ところが、課長は「MOX燃料の使用をまだ認めたわけではなかった。県議会でも、通産省の燃料検査や高浜町での動きもあり、それらを受けて判断すると答弁している通りだ。その過程で、通産省や関西電力に問い合わせるなど、県としてやれるだけのことは十分した。」「若狭ネットからの申し入れについても、文書で出された質問状と原安課の対応を知事に報告し、関電にもこういう話が来ていると通知した。」というのです。
 「福井県としての責任は感じていないのか。高浜4号炉用MOX燃料にはデータねつ造はないとした関電や通産省の報告を事実上承認してきた県としては、県民に謝罪すべきではないか」と追及すると「関電がデータのねつ造されたロットを含む4体だけを使わないと言ってきたので、県としては『きっちり品質検査するという前提が崩れた以上、8体とも使うな』と関電に申し入れ、そうなった」と県の独自性と努力を強調、「県としては関電や国の判断を確認する責任がある。反省するとしたら、県としても英国原子力施設検査局NIIに直接問い合わせるべきだったかも知れないが、独自の連絡ルートもないしできなかった」と弁明するだけでした。私たちは「関電や国の安全管理や安全審査が信用できないことはJCO事故で明らか。これまでのように国のダブルチェックをそのまま追認するのではなく、県としても、さまざまな県民の声に耳を傾けて自らトリプルチェックする責任があるのではないのか」と詰め寄りましたが、なしのつぶて。「県は十分やっている」との認識を頑として変えようとはしませんでした。
 しかし、「JCO事故が原子力全体に及ぼしている影響は無視できない」と弱気を示し、今回のデータねつ造についてはそれだけに留まらず「BNFLの品質検査の基本的な考え方にさかのぼる」と認識していることを明らかにしました。
 
「事前了解は撤回しない」
 
 私たちは、知事が「プルサーマルを事前了解した6月17日の段階に戻る」と記者会見していることを受けて「それなら、6月17日の事前了解そのものを撤回すべきではないか」と申し入れました。すると「安全審査をひっくり返すところまでは考えていない。したがって、県の事前了解を撤回することは考えていない。」と居直ったのです。私たちは「プルサーマル計画の事前了解は、プルサーマルの安全性だけでなくプルサーマルを行う関電の技術的能力の評価も含めて問題になる。今回、関電はBNFLの品質管理のずさんさを見抜けなかった。英国NIIが分析したのと同じデータを三菱重工業と関西電力が分析して、統計的異常を何も発見できなかった。英国NIIは異常ありとし、若狭ネットは関電の報告書から品質管理のずさんさを指摘した。関西電力はそれを認識することさえできていない。これは、関西電力には品質管理の基本的な能力が欠けているのか、関西電力もBNFLと同じ水準の品質検査しかしていないため『気付かない』のか、そのどちらかだ。県は『このような関電の品質管理水準ではプルサーマル計画を承認できない』として事前了解を撤回すべきではないのか」と執拗に詰め寄りましたが、課長は「プルサーマル計画は今は白紙(中止ではなく、条件が整えばいつでも「了解」の2文字を書き込める状態)になっている」と現状を説明するに留まり、糠に釘でした。「これまでプルサーマル計画については安全審査の確認など時間を掛けてやってきた。それをひっくり返すつもりはない」というのです。
 プルサーマルについては、ウラン資源の節約とか余剰プルトニウムを持たないとか言われてきましたが、もんじゅに続いてプルサーマル計画が「白紙」になった関係で、「プルサーマルの位置づけについては長計の議論を待つ以外にない」と、2000年度末の中間貯蔵施設の候補地点決定ともあわせて気になる様子でした。
 福井県が東海村のように看板から「原子力の街」の文字を消し去るのはまだ先のようです。事故が起こる前に消せるよう2000年も頑張りましょう。