■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第53号(1999/12/25) □■□■□■□■□■□■□
1999年12月24日
福井県知事 栗田 幸雄 様
JCO東海臨界事故による大内氏の死を悼み、
関西電力の高浜4号プルサーマル延期を機に、
プルサーマル事前了解の白紙撤回を求めます
若狭連帯行動ネットワーク
JCO東海臨界事故で高線量の放射線を被曝し危篤状態にあった大内氏が12月21日深夜、亡くなりました。原発被曝労働者の中からはすでに白血病死者が複数出ていますが、原子力重大事故による犠牲者が生み出されたのは、日本の原子力史上、今回が初めてです。「重大事故は仮想的なものであり、実際には起きない」「絶対安全だ」と言われてきた原子力で、実際に重大事故が起き、死者が出たのです。原子力を推進してきた政府、電力会社、原子力関連産業などの責任は極めて重大です。それを受け入れてきた自治体の責任も問われます。これらの責任は徹底的に追及されねばなりません。大内氏の死を真摯に受け止め、過ちを二度と繰り返さないよう、今後の施策に活かすことが、本当の意味で犠牲者を弔うことになります。そのためには原子力・プルトニウム政策を抜本的に転換する以外にないと私たちは考えます。
関西電力は12月16日、高浜4号炉用MOX燃料ペレットにもデータねつ造があったとして、プルサーマルの延期を発表しました。これは英国原子力施設検査局NIIから日本国大使館への11月8日付書簡および英国核燃料会社BNFLからの12月16日朝の連絡を受けての決定です。関西電力、三菱重工業、通産省、原子力安全委員会などの独自調査による決定ではありませんでした。これらの諸機関も、英国NIIやBNFLが調べたのと同じデータを分析・調査してきたのですが、データのねつ造を発見できず、「4号炉ではデータのねつ造はない」として、このまま欠陥MOX燃料集合体が使用されようとしていたのです。栗田知事、県議会、高浜町長、町議会もこれをそのまま承認する寸前でした。福井県民や国民は欠陥MOX燃料ペレットの使用による原発重大事故の危険にさらされるところだったのです。
知事は即刻、通産省へ出向き、河野博文資源エネルギー庁長官へ再発防止策を求め、「(プルサーマルを認めた)6月17日に戻る。国が(MOX燃料の)安全性を確保するまでプルサーマルの開始は認められない」と記者会見しておられます。高浜町議員団も関西電力本社と国に抗議の申し入れを行っています。しかし、今回の責任は一体誰にあるのでしょうか。
MOX燃料ペレットの製造工程内全数自動測定・選別は、後工程の品質検査で「不良ロット」としてはねられる割合を少なくするための一工程にすぎず、製造工程後の品質検査でその品質が保証される仕組みになっています。現に、品質検査で不合格になり、製造工程へ戻されたロットもあります。このことは、関西電力自身が認めていることであり、私たちの11月8日付申し入れで知事にお知らせしたとおりです。「製造工程内全数自動測定で仕様を満たしているから大丈夫だ」という論理が専門家レベルで通用しないことは明白でした。しかも、関西電力の9月24日付中間報告および11月1日付最終報告に掲載された図3−4〜図3−5を品質管理の専門家が見れば、品質管理データが全数自動測定データと一致しないことは一目瞭然であり、明らかにおかしいと判断できます。つまり、データのねつ造やMOX燃料ペレットの恣意的なサンプリングなどBNFLにおける品質管理の重大な欠陥が科学的に十分推定できるのです。このことは、私たちの11月8日付申し入れおよびその添付資料を見ていただければ明確ですし、県原子力安全対策課にも詳しく説明申し上げたところです。
ところが、関西電力だけでなく知事も私たちの申し入れを無視されました。知事は、関西電力を信用し、私たち県民の主張を顧みることなくむげに退けたのです。その結果が、今回の事態につながったのです。これまでにも、同じ過ちを繰り返してきたのではなかったでしょうか。
9月30日のJCO臨界事故でも、国の安全審査や安全性チェックは事業者の言いなりであったり、危険な事態を野放しにするものであることが明らかになっています。そして、今また、それが再確認された次第です。私たちはズサン極まりない原子力推進・安全管理体制の犠牲になるのは御免です。
知事は、事前了解前のMOX燃料強硬発注を黙認し、中性子遮へい材に欠陥のあるMOX燃料輸送容器のそのままの使用を黙認し、国民合意・県民合意なきプルサーマル事前了解を行い、データ改ざん疑惑のあるMOX燃料輸送武装船の高浜原発への入港を認め、MOX燃料データ改ざん疑惑を否定する関西電力の報告を了承するなど、県民の批判や反対を押し切って関西電力と通産省の言いなりにプルサーマル計画の推進に手を貸してきました。知事の責任は重大です。
事業者や国の言いなりになるのではなく、原子力推進に利害を持たず、安全に暮らしたいと切に望んでいる私たち県民の申し入れをもっと信じて下さい。核燃料税に福井県の未来を託し、原子力を容認することが県政の大前提であるかのようなこれまでの姿勢を改めて下さい。これを強く求めながら、以下の当面の施策を要請いたします。
1.高浜3・4号炉でのプルサーマル計画への6月17日の事前了解を撤回して下さい。
2.使用済燃料輸送容器のレジン・データねつ造事件では原電工事が解散し、JCO東海
臨界事故ではJCOのウラン燃料加工事業許可が取り消されましたが、福井県として、「BNFLが製造したMOX燃料ペレットについては今後一切その使用を認めない」と関西電力に申し入れて下さい。
3.プルサーマル先進国のドイツ、ベルギー、スイスが相次いでプルサーマル撤退の方針
を打ち出したことにならい、今回の事件を機に、日本でも国内外の再処理を中止し、プルサーマル計画を含めすべてのプルトニウム政策を中止するよう関西電力と国に申し入れて下さい。
4.これまでのような「原発15基体制」に依存する県政を転換して下さい。「原子力安
全管理体制の抜本的強化」という空しいお題目を繰り返すのではなく、「原子力・プルトニウム政策の抜本的転換」を国に要請して下さい。
−以上−
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