■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第53号(1999/12/25) □■□■□■□■□■□■□
 
1999年12月18日
通商産業大臣 深谷 隆司 様
 
関西電力の高浜4号プルサーマル延期を機に、
プルサーマル計画を白紙撤回して下さい
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 関西電力は12月16日、高浜4号炉用MOX燃料ペレットにもデータねつ造があったとして、プルサーマルの延期を発表しました。これは英国原子力施設検査局NIIから日本国大使館への11月8日付書簡および英国核燃料会社BNFLからの12月16日朝の連絡を受けての決定です。関西電力、三菱重工業、通産省、原子力安全委員会などの独自調査による決定ではありませんでした。これら諸機関でも、英国NIIやBNFLが調べたのと同じデータを分析・調査してきたのですが、データのねつ造を発見できず、「4号炉ではデータのねつ造はない」として、このまま欠陥MOX燃料集合体が使用される寸前でした。福井県民や国民は欠陥MOX燃料ペレットの使用による原発重大事故の危険にさらされるところだったのです。
 通産省・資源エネルギー庁は12月16日、関西電力からの4号機用燃料の使用中止と輸入燃料体検査申請の取り下げを了承し、関西電力に詳細な報告を求めました。深谷通産大臣は「今回の問題は極めて遺憾である」「プルサーマル計画は遅れざるを得ない」と記者会見し、河野資源エネルギー庁長官も来訪した福井県知事に対し「データの不正を(11月1日の)最終報告の時点で見つけだせなかったことは誠に遺憾。品質管理に関することを含めて適切な対応策を講じたい」と述べました。しかし、今回の責任は一体誰にあるのでしょうか。
 MOX燃料ペレットの製造工程内全数自動測定・選別は、後工程の品質検査で「不良ロット」としてはねられる割合を少なくするための一工程にすぎず、製造工程後の品質検査でその品質が保証される仕組みになっています。現に、品質検査で不合格になり、製造工程へ戻されたロットもあります。このことは、関西電力自身が認めていることであり、「製造工程内全数自動測定で仕様を満たしているから大丈夫だ」という論理が専門家レベルでは通用しないことは明白でした。しかも、関西電力の9月24日付中間報告および11月1日付最終報告に掲載された図3−4〜図3−5を品質管理の専門家が見れば、品質管理データが全数自動測定データと一致しないことは一目瞭然であり、明らかにおかしいと判断できます。つまり、データのねつ造やMOX燃料ペレットの恣意的なサンプリングなどBNFLにおける品質管理の重大な欠陥が科学的に十分推定できるのです。このことは、私たちの関西電力への9月29日付け質問状および11月6日付再質問状で明確に指摘されています。
 関西電力は私たちの9月29日付質問状に11月5日付けで文書回答しましたが、その中で、全数自動測定は品質を保証するものではないこと、および品質管理データと全数測定データの平均値と標準偏差が統計的にずれていることを明確に認めています。「測定系の違い」や「外観検査による選別」がそのずれの原因であると関西電力は「説明」していますが、「品質管理の専門家の説明」とはとても思えません。専門家ならここから直ちに「データをねつ造している」または「ランダムサンプリングを行わず恣意的にサンプリングしている」と判定するでしょう。各界の専門家を擁し、関西電力の報告書を厳重に審査している通産省、資源エネルギー庁が、このレベルの内容すらチェックできなかったとは、とても信じられないことです。
 9月30日のJCO臨界事故でも、国の安全審査や安全性チェックは事業者の言いなりであったり、危険な事態を野放しにするものであることが明らかになっています。そして、今また、それが再確認された次第です。
 私たちはもう我慢できません。以下の当面の施策を真摯に検討し、直ちに実施するよう強く要求いたします。
 
1.今回のデータねつ造を見抜けなかった通商産業省としての責任を明らかにし、国民にわかる形できちんと自己批判して下さい。その下で、2〜6の施策を緊急に実施して下さい。
 
2.事業者である関西電力にはMOX燃料ペレットの品質管理を厳正に行う能力に欠けていることが明らかになった今、高浜3・4号炉でのプルサーマル計画を認めた高浜原子力発電所原子炉設置変更許可を撤回して下さい。
 
3.関西電力からMOX燃料を受注しBNFLへ発注していた三菱重工業には品質監査・品質管理を厳正に行う能力に欠けていることが明らかになった今、三菱重工業の関連する事業許可を取り消して下さい。
 
4.プルサーマルをめぐる国民の不信は極めて厳しいものがあることを真摯に受け止め、プルサーマル計画を白紙撤回して下さい。
 
5.使用済燃料輸送容器のレジン・データねつ造事件では原電工事が解散し、JCO東海臨界事故ではJCOのウラン燃料加工事業許可が取り消されましたが、これにならい、BNFLが製造したMOX燃料ペレットについては今後一切その使用を許可しないと関西電力に申し入れて下さい。
 
6.プルサーマル先進国のドイツ、ベルギー、スイスが相次いでプルサーマル撤退の方針を打ち出したことにならい、今回の事件を機に、日本でも国内外の再処理を中止し、プルサーマル計画を含めすべてのプルトニウム政策を中止して下さい。
−以上−
(添付資料)
1.関西電力:「9月29日付公開質問状に対する回答について」(1999年11月5日)
2.若狭連帯行動ネットワーク:「BNFLによるMOX燃料品質管理データねつ造に関す る『公開質問状への回答』への再質問状」(1999年11月6日)
 
(資源エネルギー庁長官 河野 博文氏 および 原子力安全委員会委員長 佐藤 一男氏 にも 同趣旨の申し入れを行いました。)