■□■□■□■□■□■□■□■  若狭ネット第55号(2000/3/2)  ■□■□■□■□■□■□
 
高レベル放射性廃棄物の地層処分反対!
 
高レベル放射性廃棄物を生み出す     
       原発・核燃料サイクル停止!
 
高レベル放射性廃棄物の発生源を絶とう
 
 日本では原子力発電所から発生する使用済み核燃料を再処理する政策をとっています。その際発生する高濃度の放射能の廃液をガラスと混ぜてステンレス容器に詰めたもの(ガラス固化体)を、高レベル放射性廃棄物といいます。100万kW級原発1年間の使用済み核燃料を再処理すると30本のガラス固化体が発生し、日本全体では毎年1000本ずつ増えます。原発が運転してから現在まですべてを再処理すると、12600本ものガラス固化体が使用済み核燃料の再処理から発生することになります。
 これまでに発生した使用済み核燃料の内約7000トンは英仏と再処理契約を結び、すでに送られています。契約量すべてが再処理されると、合計で約3500本のガラス固化体が返還されることになります。残りは、原発サイトの使用済み核燃料貯蔵プールに保管しています。原発の運転に伴い毎年約1000トンの使用済み核燃料が生み出されます。2005年に六ヶ所村の再処理工場操業しても、2010年には原発のプールが満杯になり、原発の運転ができなくなるために中間貯蔵施設の建設を計画しています。
 2月23日にはフランスから高レベル放射性廃棄物のガラス固化体104本が返還され、六ヶ所村に搬入されました。英仏からの輸送は今回で5回目になります。国内のガラス固化体は合計334本、その内272本は六ヶ所村の貯蔵センターにあります。今後約3000本が返還され運び込まれるのです。さらに、再処理工場が操業すれば、さらに増え続けるのです。再処理による放射能汚染と高レベル放射性廃棄物を押しつけることになるのです。われわれ都市部に住むものの責任が問われています。
 高レベル放射性廃棄物の問題は日本の核燃料サイクル全体に関わる問題です。原発・核燃料サイクルを一層推進し、新たに放射性廃棄物ががどんどん生み出されるのです。放射性廃棄物の発生の元を絶たねばなりません。英仏との再処理契約を破棄し、六ヶ所再処理工場の建設を中止し、中間貯蔵施設の建設計画を中止し、原発の新増設を許さず、一刻も早く原発の運転をやめさせることが必要です。
 
地層処分とは
 
 ガラス固化体は、強い放射能と高温のため30〜50年間中間貯蔵の後、地下500〜1000メートルの地層に埋める=地層処分の計画があります。地下処分場は、2キロメートル四方の大きさで、4万本のガラス固化体を埋設します。埋設後、坑道を埋め戻して閉鎖し、地上設備も撤去し処分するというものです。
 
高レベル放射性廃棄物は、政府と電力会社の責任の下、厳重に管理せよ!
 
 処分を行う地層について原子力委員会放射性廃棄物専門部会は1984年、「未固結岩以外であれば、岩石を特定する必要がない」との考えを示し、「有効な地層」の選定は終了しました。「変動帯に位置する」日本には割れ目のない安定な地層・岩盤は存在しないのです。人工バリアとの組み合わせにより放射能を閉じこめることができるというのです。
 日本には安定した地層など存在しません。また、日本では地下水脈が発達しており、地下水と無縁な地層などはありません。フランスでは花崗岩の亀裂が問題になり、アメリカでは、放射能の地下水による移動が問題になっているのです。
 昨年(1999年)11月、核燃料サイクル開発機構は「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分研究開発第2次取りまとめ−」(第2次取りまとめ)を国に提出しました。放射能は地下水により人間環境に運ばれるとのシナリオで、ガラス固化体を厚さ19cmの鋼鉄製のオーバーパックで覆い、その周りを厚さ70cmの緩衝材と呼ばれる粘土で包むなどの人工バリアと岩盤などの天然バリアとの組み合わせにより、放射能を長期間にわたり閉じこめることができ、人間環境に達する頃には自然放射能の10分の1ぐらいになっており影響はないとしています。そのシナリオによると、オーバーパックは千年間は腐食に耐え、その後ガラス固化体の放射能が全て地下水に溶けきるのに約6万年、溶け出た放射能は緩衝材に捕獲され数十万年遅れ(放射能の移動は拡散による)、その後岩盤中を拡散により移動し、地下200mの帯水層に達し、地下水により人間環境に達するというのです。
 この「第2次取りまとめ」の評価は国が行うことになっています。評価のスケジュールは、今年(2000年)の3月頃に「中間評価報告書のとりまとめ」、5月頃に「国際ワークショップの開催」が、秋には「評価報告書の取りまとめ」が行われることになっています。
 動燃(核燃料サイクル開発機構)は岐阜県東濃や岩手県釜石の鉱山を利用して研究を行ってきました。研究施設と処分施設は一体のもの、研究だけでは終わりません。岐阜県東濃の住民は「超深地層研究所は最終処分場につながる」として反対しています。北海道幌延町、青森県六ヶ所村、岡山県などでも、地層処分やそれを目的とする地下研究施設に反対しています。
 安全性は実証的には証明されておらず、まだ地下水の流れなど未解明な部分も多く、地層処分は安全であるとは言えません。地層処分して放射能が漏れ出れば取り返しがつきません。問題が生じればいつでも対策がとれる状態で、国と電力会社の責任で厳重に密閉管理すべきです。
 
地層処分フォーラムに参加して
 
 2月3日、核燃料サイクル開発機構は第2次のとりまとめを受けて、一般市民への理解を深めることを目的に「地層処分フォーラム  高レベル放射性廃棄物の後始末を考える」を東京で開催しました。500人規模の予定に対し、410人が参加し、その内310人が一般参加者でした。会場はネクタイを締めた男性の姿が多く見られ、一般市民というより多くは動員で来ている人が多いとの印象を強く受けました。
 日本の電気エネルギーの3割を原子力発電所がまかなっており、電気を使っている以上そこから出てくる高レベル放射性廃棄物の問題は国民一人一人が考える問題であり、生活圏から切り離し、有効な資源から遠ざけ、自然の力に任せることが地層処分の基本的な考え方であるとの主張です。地下深くに埋めて、管理を放棄することは、後世代に放射能の影響を押しつけることになるのです。
 専門家、大学講師、マスコミ関係者、学生によるパネルディスカッションが行われました。そこで述べられた意見を一部紹介します。
 鳥井弘之日経新聞論説委員は「廃棄物の量と質」の問題について自論を述べました。「廃棄物には質と量の両面があり、質がよくても量が多いと始末に負えない。質が悪くても(非常に危険)量が少ないものは始末ができる。」「高レベル放射性廃棄物ガラス固化体は年間50トン、産業廃棄物は4億トン発生する。高レベル放射性廃棄物は量が少ないからこそ地層処分が行える。」等と。このような発言は、危険で膨大な量の放射能を取り扱うことの自覚にかけています。ガラス固化体表面からは強烈な放射線が出ており、そばに近寄ると死に至るのです。しかも、日本で1年間に生み出されるガラス固化体は、これまでの大気圏内と地下の全核実験でばらまかれた死の灰等の40倍にもなります。
 大学で「エネルギーと地球環境」を教えている犬飼英吉講師は、「正しい知識を伝える必要がある」として、「原子力は知識の不足と誤解が非常に多い。日本のエネルギー事情から原子力について、知識の不足と誤解を解いて、地層処分について公正に評価できるエネルギー教育を小学校でやらなければいけない。」特に「原子力発電では放射線に対する誤解が非常に多い。」とのことで、チェルノブイリ原発事故を例にあげ、ヒバクシャを愚弄する発言をしました。その中で、「チェルノブイリの事故でたくさん死んだと大騒ぎしているが、死者は31人である。」「小児甲状腺ガンは出ているが、白血病が多発しているというのは嘘である。」「広島・長崎では原子爆弾による放射能で汚染されたのにすぐあとから人が住んでいる。そのことから考えると汚染地区に人が住めないというのは本当なのか」等。原子力を推進するIAEA(国際原子力機関)の主張そのままで、放射能の被害を過小評価し、チェルノブイリや広島・長崎のヒバクシャを愚弄するこのような主張は許すことができません。このような人をパネラーに選んだ核燃料開発サイクル機構の姿勢は糾弾されなければなりません。
 会場からは、地層処分に賛成する発言は一つもなされず、「放射能を過小評価している」、「500m〜1000mの地下水の流れは生活圏とつながっており、地下処分場は地下水の流れを変えること、未解明なことが多くあること」「自然に任せることは、管理を放棄するものである」との疑問や意見が出ました。
 
「高レベル放射性廃棄物処分推進法(案)」に反対し、処分場受け入れ拒否を
 
 「高レベル放射性廃棄物処分推進法(案)」が、今通常国会に上程されようとしています。この法案は、高レベル放射性廃棄物の処分を推進するため、実施主体や資金の確保を制度化し、その法の下で実施主体による処分地選定や費用の電気料金からの徴収が行われることになります。通産省によると、法が成立すると1キロワット時当たり約2.5銭を電力料金に今年の10月から上乗せすることが報道されました。
 この法案の廃案に向けて現地と都市部の運動が連帯して闘うことが求められています。
 昨年12月7日には通産大臣、科技庁長官、内閣総理大臣宛に北海道、青森、茨城、岐阜、岡山で地層処分の研究に反対するグループ共同で「高レベル放射性廃棄物の地層処分に反対する申し入れ」を行いました。若狭ネットも呼びかけに応え申し入れに賛同しました。
 処分懇談会の最終報告書(1998.5)では「発生した廃棄物は現世代の責任で処分し、後世代に負担を残さない」「処分場立地地域と電力消費地域との共生が必要」との考えを示しています。後世代や処分地域への押しつけをまじめに考えるなら、危険な放射性廃棄物を生み出す原発・核燃料サイクルそのものを止めなければなりません。そのためには、全国各地で処分場の受け入れを拒否すべきだと考えます。
 高レベル放射性廃棄物の地層処分に反対する運動を、プルサーマル反対、原発新増設反対、あらゆるヒバクに反対する運動と結合し、共に強めていきましょう。