■□■□■□■□■□■□■□■  若狭ネット第57号(2000/4/11) ■□■□■□■□■□■□
 
2000年3月28
 
関西電力株式会社社長
石川 博志 様
 
TMI原発事故21年
BNFLとの契約を破棄し、
プルサーマル計画の白紙撤回を強く求めます
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 1979年3月28日、米国のスルーマイル島原発で、炉心溶融事故という原発重大事故が起こりました。小さな子どもを抱え、出産間近のお母さんたちが、バスで避難する場面が報道されました。私たちは大きなショックを受けました。やっぱり原発はアカンと思いました。あれから21年経ちました。米国では今なお、2000人にものぼる周辺住民のみなさんが、健康を害され、補償を求めて裁判をしていると聞き、胸を痛めます。
 この21年間、関西電力は、原子力発電所を若狭に11基建設し稼働し続けてきました。そして、貴社は、プルトニウム利用も推進してきました。私たちは、貴社がすすめるプルサーマル計画は原発重大事故の危険をいっそう高めるものであり、貴社にとってもなんらのメリットもないと話してきました。残念ながら、今まで十何回と本社交渉を重ねたにもかかわらず、貴社は、私たちの疑問や質問に対して真摯に答えていただけませんでした。
 
 1998年1月20日 貴社はMOX燃料製造を地元福井県の了解をえないまま、BNFLに発注しました。そのとき、貴社は、「自分で決めたことは自分で責任を持ってやる」と、強弁しました。ズサンきわまりない品質管理しかできないBNFLとわかってしまった今、貴社はどのように責任をとるというのでしょうか。
 
 1998年4月5日 プルサーマル公開討論会が福井県武生市で開かれました。その中で、貴社は、「BNFLでつくったMOX燃料では放射能漏れはない」と回答しています。しかし、1996年スイスのベズナウ原発では、BNFLの作ったMOX燃料ペレットで放射能がもれていたことがわかっていたのです。貴社が知っていて隠したのか、BNFLが隠したのか、いまだにわかりません。
 
 1998年12月 MOX燃料輸送容器の製造欠陥が発覚しました。私たちは、まさか欠陥容器をそのまま使うなんてことはないだろう、作りなおすのが当たり前であろうと思っていましたが、貴社は、「古い設計基準にはあわないが、新しいのにはあう」として、そのまま使用したのです。欠陥容器だとばれてしまったら、元々の基準を変えたらいいということを平然とやってのけるのが、貴社なのです。
 1999年10月20日 英国から高浜4号炉用のMOX燃料に「データ改ざんの疑いあり」との報告を受けながら、製造元のBNFLの「大丈夫」を鵜呑みにして、国、福井県、高浜町に報告をしませんでした。11月1日には「問題なし」との最終報告書を提出したのです。貴社独自の調査では、原発の安全の根幹にかかわる問題をきちんと見抜けないことを明らかにしたのです。
 
 2000年3月1日 貴社は、「BNFL製MOX燃料問題に関する調査について(中間報告)」を公表しました。これは、2月18日に公表された英国核燃料会社BNFLと英国原子力施設検査局NIIの各BNFLレポートを受け、関西電力としての調査結果を中間的にまとめたものです。それは、私たちが、「BNFLの品質管理データは全数自動測定データと母集団が違う」という統計的事実から「データねつ造」か「恣意的なサンプリング」が行われていると警告した内容を全面的に認めるものでした。私たちが昨年9月29日付質問状で指摘し、10月26日の関西電力本社交渉で説明し、11月6日付け再質問状で念を押し、11月30日と12月13日の関西電力本社交渉でも繰り返し説明してきたことが真実であったことを、貴社がやっと正式に認めたことになります。ところが、そこでは、これら私たち市民の主張を一貫して無視してきた貴社の責任は明らかにされず、自己批判もなされず、私たち市民への謝罪も一切ありません。
 
 2000年3月7日 英国インデイペンデント紙が、「MOX燃料ペレット全数自動検査でも検査法が改悪されていた」という事実を報じました。貴社は、MOX燃料ペレットが植木鉢状になっていること、そして、「中央を挟んで上下2ミリの位置で直径を測っている」のを知っていて、「ペレットの上端、中央、下端の3カ所で測る」と説明してきたことをどのようにウソではないと言い逃れするのでしょうか。
 また、中間報告に「検査員は、測定値が規格値をわずかに超えた場合には、ペレットを90度回転させて再度測定した」と書かれてあります。これでは、実際に欠陥ペレットであっても、検査をすれば、何のことはない合格ペレットに大変身するというトリックなのです。もし、わるい物があれば使わせないというのが、安全検査だと思っていたのですが、そうではないのです。貴社が考えている安全検査とは、わるい物を大手を振って合格させるものだったのです。
 
 昨年12月17日 私たちへの釈明時に「調査結果が出れば説明させて頂く」と約束したにもかかわらず、中間報告に関する公開説明会を早期に開く計画も示されていません。
 貴社には「社会的常識」、「説明責任」、「企業の誠意」というものがあるのでしょうか。あきれて、ものが言えません。貴社にも、BNFLと同様に「原子力安全の手抜きと居直りの文化」が支配しているのでしょう。
 私たちは、貴社の全面的な自己批判とプルサーマル計画の白紙撤回を強く求めます。
 同時に、3月20日付けの公開質問状を提出しましたので、公開討論会を即刻開き、社長以下経営責任者と担当技術者が出席し、真摯に誠実に回答するよう強く求めます。