■□■□■□■□■□■□■□ 若狭ネット第57号(2000/5/22) ■□■□■□■□■□■□
ようこそ「原子力の街」敦賀へ
東海村で下ろした看板を敦賀で揚げさせるな!
敦賀原発増設反対!立地地域振興法を廃案に!
臨界事故被害者の会の大泉昭一さんのお話
9月30日の10時35分に事故が起きたとき、私たちは事故現場からわずか120mしか離れていない会社で働いていました。当日は非常に暑かったので、全部窓を開けて仕事をしていました。事故を知らされたのは午後1時10分です。消防署員の方がヘルメットに長靴という出動態勢を整えて来られ、「目の前の会社が事故だ」と言われました。私ども、「また、動燃の会社が爆発でもしたんじゃないか」と思っていました。「窓を閉めて下さい」と言われて窓を閉めましたが、「一体何の事故なんだ?」と、原因が一つもつかめないままでした。それで、3時に村役場へ電話を入れました。すると「これから村役場の職員が連絡に行きますから、そのままお待ち下さい」と言われまして、待っていたんですけれども、4時過ぎになっても来ないんですね。たまたま食堂の窓が閉まってなかったんで、裏道を2人の職員の方が作業服を着て通りがかるのが見え、話を伺いました。そして「1km先の舟石川のコミュニティセンターへ避難して下さい」と言われましたが、私たちは自宅が日立市で、たまたま会社が東海村だったものですから、4時40分に退社し、日立市の自宅へ帰りました。中性子がドンドン出ている状況の中を何も知らず自動車で帰ったんです。道路という道路はもう警察の車で寸断されていて、事情を説明しないと出られない状況だったんですけれども。家へ帰って、夕方7時に、ちょうど夕飯時にテレビを見て初めて「臨界」という言葉を知ったわけです。これはエライ問題だとわかり、7時15分頃に東海村の役場へ連絡しましたところ、「すぐに、作業衣、通勤服、靴、携帯品をビニール袋に入れて、舟石川のコミュニティセンターへ来て頂きたい」ということでした。社員の方にもご連絡しまして、妻と一緒にすぐに行きましたところが、会場はテレビ局、新聞記者、避難者でごった返すような状況でした・・・・・・。
生々しい事故時の様子が伝わってきます。この次は福井かも知れない ---- そういう危機感を抱き、4月29日、茨城県東海村「臨界事故被害者の会」代表世話人の大泉昭一さんと、その息子さんで事務局長の大泉実成さんを福井県武生市に招き、福井県武生市で、若狭ネット主催の講演会を開きました。約70名の方々が参加され、3時間に及ぶ熱い講演と討論が続きました。
安心です!心配ない!
大泉昭一さんの話は続きます・・・・
事故の翌朝、6時30分でしたか、封鎖が解除されて、夜の9時半になってようやく行政の人と4人で一緒に私たちの会社に入って、ガイガーカウンターで測って「異常なし」と言われて、ほっとしましたが、これからが大変なんです。
約2週間かかりまして放医研から健康診断の結果が参りました。私の場合は白血球の数が高く、リンパ球が逆にマイナスということで、村役場の窓口へ相談に行ったところ、診断書はこのような状況なんだということで、国やお医者さんからどういうことを言われたかといいますと、「安心です。心配ありません」という言葉でした。私たちがこれだけ中性子を体に受けている状況で、被曝線量の個人調査もやってない中で、「安心です。心配ありません」ということは、到底考えられません。
役所に私の診断書を持っていくと、「掛かり付けの医者へ行ってそれを見せて下さい」と言われて、掛かり付けの医者へ行きましたら、「中性子に関する設備はありません。診ることもできません」と言われました。
科学技術庁へ行くと50mSv(ミリシーベルト)以上でないと今回の被曝として認定しませんと言われました。科技庁は「心配ありません。絶対安全です」を繰り返すだけでした。
国から「私の浴びた線量は6.5mSvだ」という数値を頂きましたが、「6.5mSvの被曝では直ちに健康に影響がない。心配ありません」というだけです。
消防署の救急隊員の方は「転換試験棟で」という話を「テンカンで」と聞いて飛んで来て、素手のまま救助して被曝しました。
私たちが受けた中性子の影響は今すぐに出る問題ではありません。5年、10年、20年、30年と年数がたつと出てくるのです。息子とは「お父さんが亡くなっても、息子の代にバトンタッチしていく」という先の長い話をしておりますけれども。中性子を被曝しているという事実はいつまでも変わらないのです。
ショックで寝たきりに
大泉昭一さんの奥さんも同じ会社で働いていて被曝され、精神的にも大きなショックを受けられました。大泉さんのお話は奥さんと被害者の会の方々の話へ移ります・・・・
妻は被曝した翌日から5日間ほど下痢が続きました。下痢が治まれば良くなるだろう、明日は良くなるだろうと思いましたが、40日間寝たっきりで、外へ出るのもイヤ、人に話すのも電話もイヤ。2週間着たきりでお風呂にも入らない。精神的にショックを受けてしまったんです。「胃が痛い」というので急遽、息子に医者へ連れて行ってもらったら、胃に2ヶ所ほど穴が開いていて、すぐ入院させました。20日間入院して胃は治って帰ってきましたが、食事をとることもできない、寝るだけの、入院前と同じ状態が続きました。精神科医へも通いました。医者からは「治るときが一番危ない」と言われていましたが、5ヶ月間たってようやく80%ぐらい治ったときに、「1週間死ぬことばかり考えていた」という話を妻から聞かされて、息子と一緒にショックを受けました。電話の受け答えぐらいはできるかなと思って安心していましたら、先週からまた同じ様な状態に戻っています。今後も繰り返すのかなあと心配です。
私たちと同じように知らないまま被曝させられた方々の中には、妊娠している母親、若い女性、子どもを持つ若い夫婦などがおられます。被曝によって今後どのような影響を受けるのか、不安と苦しみの中で、悩んでいる人たちと一緒に「臨界事故被害者の会」を結成しました。
私たちは国の責任で定期的に健康診断するよう求めています。原爆被害者手帳のような健康手帳、またはそれに代わる手帳を発行してもらいたいと要求しています。
住民の健康被害は切り捨て
被害者の会事務局長の大泉実成さんも、住民の健康被害が切り捨てられようとしている現状について、さらに具体的な話をして下さいました・・・・
国は、オーソライズされた(権威付けられた)専門家の意見に基づき、「健康診断はやるけれども、あくまでも住民の不安を解消するためだけに健康診断をするんだ」と言い張っています。また、2億円ものお金をつぎ込んで1500万部の宣伝ビラを1都7県に印刷・配布し、東海臨界事故では「住民の健康被害はない」との広報キャンペーンを行っています。
JCOは、近隣住民45人ほどを対象に二人の「専門家」の講演会を開き、「本来なら年1回の健康診断はやる必要はないんだ。これは国の温情なんだ。ガンになる危険は微々たるもので、絶対、あなた方の身体に影響は出ない」とし、「絶対」という言葉を十数回使ったといいます。そして、「それでも心配だというのなら、この場所であなたの血液を採取して測ってあげましょう。線量問題に疑問があるのなら、墓石を砕いて測れば今でも分かります」と言うのです。参加された近隣の方は非常に怒っていて「これは住民への侮辱発言だ」と抗議の申し入れをされました。「絶対、影響は、100%ない」と、住民の健康問題を完全に無視し、どう喝して「そんなことはなかったことにしよう」と強制しようとしているのです。
補償切り捨ての強引な示談書
住民は風評被害と健康問題を切り離して考えており、風評被害に対して補償の示談をしていきました。実は、示談書の中に「これによってあなた方との債権・債務はないことにする」との一行が入っており、それと知らずにサインしたため、将来健康問題が生じても補償を求められなくなった人もいるのです。また、JCOは示談書を勝手に送りつけ、それにサインもしていないのに、勝手に送金して終わりにしようとしています。
陰ながら増える協力者
東海村というのは地縁、血縁、原子力縁が非常に強く、東海村の人の60%は動燃あるいは原子力に勤めています。
原子力に対して発言すると血縁関係の人が首になったり、飛ばされたり、賃金がカットされたり、子会社の場合は仕事が得られなくなったりするので、原子力に人質に取られているから発言したくてもできないという方がおられて、「名前を出さないけれども」という形で情報の提供をして頂いています。そういう人達の怒りを被害者の会で反映させていきたいと思っております。
東海村と福井の連帯強化を
大泉さん親子はそろって、東海村と福井の共通点に言及され、これからの連帯強化に期待を表明されました・・・・
福井には原発や「もんじゅ」などという原子力施設がありますが、「2次3次の被害を出してはならない」というのが私たちの心境です。そういう気持ちで皆さんと話し合いたいと思って、今朝7時間かかってここへ来たわけです。
もうあってはならない。皆さんも身近にある原子力を完全に閉鎖して、新しいものに姿を変えていって頂きたい。ヨーロッパでは風車とか新しいものにかわっていっている。通産省もこれから原発を16基ないし20基増設とかバカげたことを言っていますけれども、私たちはこれを阻止して、もう原子力に頼る時代じゃないと思います。地元の皆さんも、原子力については大きく声をそろえて、一丸となって、そういう時代は必要ないんだと。原子力によってどれだけ被曝しているか、地元の皆さん方の中にも被曝して泣かされている方はたくさん居ると思います。
私は6.5mSv被曝していますが、0.001mSv被曝しても被曝したという事実に変わりはありません。
私たちはこれからも闘いますので皆さんもお力を貸して頂きたいと思います。
あれだけのJCO事故を起こしながら、私たちの健康被害については、隠して隠して、切り下げて切り下げて、結局は何もしないということがはっきりしました。「そういう対策を何もしないで、また、核施設を動かすというのはどういうことだ」と、核燃料サイクル開発機構の再処理工場の操業再開に反対しています。これは、こちらの「ふげん」の燃料の流れと関係しており、東海村と福井とはつながっています。被害者の会の人達はそういうことにも反対するようになっております。そういうことを考えると、大変深い間柄になりますので、今後ともよろしくお願いします。
国の責任で健康被害への補償を
私たちは今回の講演会で大泉さん親子から様々なことを学びました。「原子力のメッカ=東海村」と「原子力の実験場=福井」とは、遠く離れていても、互いにつながっており、そこに住む住民の思いは一つであることが一層はっきりしました。いつも被曝させられ、被害を受けるのは、何も知らない、知らされない労働者と住民なのです。また、「地縁、血縁、原子力縁」の強い風土の中にありながら、原子力に反対または批判的な声が高まっているのも共通しています。東海村と福井が手を携え、全国の立地点や都市部の運動と結びつけば、日本の原子力推進政策を転換させていくことも可能です。
チェルノブイリ事故以来の深刻なJCO重大事故で、昨年末には大内さんが急性放射線障害による痛ましい犠牲者となり、4月27日には、ついに篠原さんも2人目の犠牲者となりました。私達は相次いで被曝の犠牲になられたお二人に深い哀悼の意を表します。このような犠牲者を生み出した国はその責任を認め、原子力推進策を根本から転換すべきだと私たちは考えます。日本の原子力開発は、広島・長崎やビキニでの尊い犠牲の上に、「安全確保を旨」とし「絶対犠牲者を出さない」ことが大前提だったはずです。今回の臨界事故は、この前提が崩れさったのです。原子力の推進はもう許されません。
しかし、国はあくまでも原子力を推進しよとしています。「絶対安全とは言いません」「でも、原発は必要です。事故でなくなる人を金勘定して、原子力を推進する方が儲かるなら推進すべき」という、人の命を軽んじる論理を振りかざしてきています。今回の事故に関する国の責任を認めさせ、国の責任で住民の健康管理を行わせ、健康手帳を公布させ、健康被害への長期的な補償体制を整えさせることが必要です。
「臨界事故被害者の会」は全国の原爆被害者団体や反原発団体などと一緒に「国はJCO事故の責任を認め、住民・労働者の健康被害を補償せよ」の署名運動を展開しています。私たちもこれに全面協力し、署名運動を大きく盛り上げていきたいと考えています。署名への賛同と署名の取り組みにご協力をお願いします。
敦賀3・4号炉建設反対! プルサーマル計画撤回!
原発等立地地域振興特別措置法反対!
私たち若狭ネットは、今回の講演会を敦賀3・4号炉増設反対運動の一環と位置づけています。丹南、敦賀、美浜、三方で約10万世帯に新聞折込を入れました。「東海村で下ろした看板を敦賀で掲げさせるな」を合言葉に新聞折込で一斉に宣伝しました。これには全国から寄せられた一口500円の新聞折込基金が使われました。その意味では、今回の講演会の成功は全国の支援に支えられたものです。ご支援いただいた方々に改めてお礼申し上げます。
敦賀3・4号炉増設は、環境影響評価の方法書が5月10日、福井県環境審議会へ諮問されました。栗田知事は今後、審議会答申、敦賀市長と美浜町長の意見、県議会での議論を踏まえて7月中旬にも通産省へ「意見書」を提出する意向を表明しています。
また、プルサーマルに関して栗田知事は、関電と国の最終報告では、不正の経緯、再発防止策、新たな燃料加工法の3点について明確な結論が出ればプルサーマル再開の議論の前提になると指摘し、BNFLへの欠陥MOX燃料集合体が実際に返還されなくても、返還の方向性が固まれば別の新燃料の装荷があり得るとの考えを示唆しています。高浜4号でのMOX燃料装荷中止時の慎重姿勢を転換させています。
栗田知事のこれら一連の動きの背景には、今国会で自民党が議員立法による成立を目指している「原発等立地地域振興特別措置法」案の成立を促す意図がありそうです。
このような法案はそもそも、原発誘致による地域振興が成り立たないことの裏返しです。このような法案が一時しのぎにすぎず、一部の人達の利益にしかつながらないことは30年の歴史が証明していることではないでしょうか。栗田知事は「政府の言いなり」のこれまでの原発誘致政策を反省し、原発に頼らない地域振興政策に転換すべきです。
関西では、若狭ネットを中心に粘り強く関西電力本社との交渉を進めています。BNFLのMOX燃料品質管理データねつ造問題等で公開説明会を開くよう毎月押し掛けています。プルサーマル反対署名も1万8千名を集約しています。これをさらに拡大し、公開説明会を早期に開かせ、BNFLやコジェマとの再処理契約を破棄させ、高浜3・4号炉のプルサーマル計画を中止に追い込みましょう。
電力自由化の下で原発は益々厳しい競争下に置かれ、重大事故の危険が高まっています。福井では引き続きこの問題でシンポジウムを開き、栗田福井県知事と河瀬敦賀市長等を揺さぶり、敦賀3・4号炉増設を阻止していくつもりです。引き続きご支援をお願いします。
東海臨界事故を高浜でくり返させないため
対関電署名
現在1万8千名を集約しています。2万名を超えたものです。
福井県への新聞折込ができました。みなさんの基金のおかげです。
☆ 今後も新聞折込は、続けていきます。基金は1口500円ですので、よろしくお願いします
東海村の「臨界事故被害者の会」に連帯して、
健康被害への補償を求める署名にご協力下さい
編集後記
☆ 東海村の事故について大泉さんから直接お聞きすることができ、改めてヒバクの恐怖を感じました。チェルノブイリの子どもが描いたベットの周りを恐ろしい怪物で取り囲まれている絵を思い出しました。毎日毎日、ヒバクの恐怖と闘わねばならない苦しさ。
今なお原子力を推進する人たちはこの張り裂ける苦痛を感じているのでしょうか。
この責任は、国策と位置づけた国にあるはずです。 (きよ子)
出てきた!!
スクラップ廃材からプルトニウム!
5月16日付の英国ガーディアン紙によればシェフィールドの精錬工場でリサイクルされた金属廃材50トンの中からプルトニウム1グラムが発見されました。この百万分の1を吸い込めば肺ガンになるという極めて危険な物質です。廃材の受け入れ時には検出されず、製錬工程で処理中に突然、放射線検知器が鳴り響いたといいます。核施設とは無関係の場所でプルトニウム汚染が見つかったのは世界でも初めてです。3月31日に放射能汚染が検知されていましたが、秘密にされ、汚染物質がプルトニウムだと分かったのはその後になってからでした。プルトニウムの発生源は核施設と医療 設備が考えられますが、不明のままです。汚染された50トンの廃材は核廃棄物として処分されますが、うち16トンは放射能汚染の度合がひどく長期にわたる厳重な保管が必要だと伝えられています。
イギリスでは同じ3月に、他に2件の核物質汚染事件が起きています。ウラン燃料棒が廃材企業の倉庫から定期検査で見つかった事件と、廃材企業のマネージャーの車の中に9キロのウランが半年間も入ったままになっていた事件です。日本でも放射性廃棄物のすそ切り処分を行う動きがありますが、これらの経験を踏まえて、核施設からの廃材は再利用せず、すべて核廃棄物として厳重管理すべきではないでしょうか。
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