■□■□■□■□■□■□■□■ 若狭ネット第58(200/8/26) ■□■□■□■□■□■□
 
                                   2000年7月6日
関西電力株式会社社長
石川 博志 様
 
「BNFL製MOX燃料問題に関する調査について
(最終報告)」に関する公開質問状
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 貴社は6月14日、「BNFL製MOX燃料問題に関する調査について(最終報告)」を公表しました。その調査結果の内容そのものは3月1日に公表した中間報告とほとんど変わりません。しかし、貴社の責任については、MDFへの「製造中監査を実施していなかった」点に言及してはいるものの、三菱重工業の責任を中間報告より一層強調し、「三菱重工業の品質保証体制が不十分であるとの認識にも欠けていた」点に責任が限定されているかのようです。三菱重工業がもっとしっかり立会検査を行っていれば不正の「抑止力となった可能性がある」と強調してさえいます。これでは居直りではないでしょうか。
 また、再発防止対策として「高い品質意識」と「各組織が一体となった品質保証体制を構築する」と謳っていますが、BNFLでは「製造工程が品質を作り込む工程となっていること」という最も重要な点が満たされていませんでした。この「品質を作り込む工程」との記述は、おそらく社外専門家による指摘を受けて書き込まれた点なのでしょうが、最終報告ではMDFに即した具体的評価がなされていません。ということは、貴社にはこの意味が理解できなかったのではないでしょうか。「品質を作り込む工程」になっていない工程で品質管理・保証を厳しくすれば、作り直しのための失敗コスト、抜き取り検査自動測定・記録システム導入などの評価コスト、工程そのものの改善などの予防コストが高くつき、MOX燃料費は高くなってしまいます。コストアップを抑えるには品質管理・保証を緩くする以外になかったのではないでしょうか。
 品質管理・品質保証の基本は「品質管理システムの厳しさ」にあるのではなく「工程能力の向上と安定化」にこそあるのです。MOX燃料費が高くなるのを避けるため、MDFのバラツキが大きく不安定なペレット研削工程をそのまま用いることを三菱重工業と貴社が認めたところに根本的な問題があると私たちは考えています。だからこそ、貴社は三菱重工業とともに、外径測定箇所の中央よりへの改悪を了承し、抜き取り検査自動化要求を取り下げるなど、品質管理を緩くしてコストダウンを優先させたのではないでしょうか。それが発端となって、BNFL、三菱重工業、そして貴社自身に品質管理を甘くする企業文化が染みついてしまったと思われます。「各組織が一体となった品質緩和体制」ができ、このような企業風土が今回のデータねつ造事件を引き起こしたと言えます。解雇された4名のうち1名は最近、地元紙のインタビューに応え、「自分たちは間違ったことをした」と後悔し反省した上で、「誰でもやっていることだと言われたからやり始めただけだ」と内情を暴露し、BNFLの「システマティックな管理欠陥」が追及されだした途端に解雇され「生け贄にされた」と憤慨しています。BNFLのシフトチームリーダーが品質管理要領書を見たことも読んだこともないという状態で、一般の検査員が品質管理を厳格にやるというようなことが果たして可能でしょうか。このシステマティックな管理欠陥を生み出したBNFLの経営実態への批判がありません。それは貴社の姿を写す鏡です。その意味では、貴社自身に、深刻な反省も自己批判もないのではないでしょうか。
 今回のデータねつ造事件の構図は、JCO臨界事故を引き起こした原子力産業の「安全性より経営効率化を優先させる」構図と非常によく似ています。事件を起こした根本原因が深く掘り下げられないまま、通り一遍の最終報告書を出して終わりにするというのでは、第2、第3のJCO事故がいつ起きても不思議ではありません。
 以下に、最終報告書に関する質問状を提出しますので、文書で2週間以内にご回答の上、昨年12月17日に約束した、社長以下経営責任者と担当技術者が出席する公開討論会を速やかに開き、納得できるまで説明していただきたく、ここに再度強く要求いたします。
 
1.関西電力の責任について
 
(1)最終報告書に書かれている通り、1995年2月〜1998年10月の資格審査において、BNFLのMOX燃料加工実証施設MDFでは「外径のばらつきが小さいペレットを製造する工程性能が十分でなかったこと」(p.31)および「ペレット抜き取り外径検査の自動化が遅れていること」(p.30)など設備に不備がありました。しかも、これらの改善を三菱重工業がBNFLに要求して拒否され、妥協したことを貴社は報告を受けて知っていました。ところが、「妥協した点があった」(p.33)という責任は三菱重工業にあり、貴社にはないかのように書いています。
 貴社は「MDFにおける作業実態の把握・確認、および製造中監査を実施していなかった」し、「三菱重工業の品質保証体制が不十分であるとの認識にも欠けていた」(p.34)としています。これはこれ自身で問題だとしても、MDFのMOX燃料ペレット製造能力に問題があったことは三菱重工業だけでなく貴社も十分認識していたはずです。貴社は三菱重工業から報告を受け、1998年以降3回の立会検査を行っており、「知らなかった」はずはありません。BNFLのMDFではMOX燃料ペレット製造能力や抜き取り検査設備に欠陥があり、その改善を三菱重工業を介して求めながら拒否されて妥協した責任は貴社にもあると私たちは考えますが、いかがですか。
 
(2)BNFLからスイスのベズナウ原発に納入されたMOX燃料で過剰な放射線が漏れ1997年に回収されていたことが昨年末に明らかにされました。貴社はこれを知っていたはずです。にもかかわらず、1998年4月に武生市で開かれた若狭ネットとの公開討論会では、MOX燃料のトラブルや不良は「BNFLのMDFという工場ではない」と断言し、「自分でペレットの品質管理をやっている。具体的には彼らのデータをチェックすること、あるいは直接乗り込んでいって現地で検査すること、その併用をしている」と主張していました。貴社は私たちや福井県民に嘘をついていたのですか。最終報告書でも、スイス向けMOX燃料の欠陥問題に関する記述はなく、MOX燃料発注前の資格審査で製造欠陥の履歴に関する調査を行っているはずですが、何も記載していません。三菱重工業と貴社の資格審査能力にも根本的な欠陥があるように思われますが、いかがですか。
 
(3)再発防止策として貴社が挙げているように、「品質を作り込む工程となっていること」(p.50)、「品質の安定した製造工程であること」(p.51)が品質保証の基本です。ところが、MDFではバラツキが大きく不安定な工程でした。それを三菱重工業も貴社も知りながら、MOX燃料の製造を発注したのです。しかも、福井県から設置変更許可申請を行うための事前了解も得ないまま、1998年1月にMOX燃料加工を強行しました。それは「関西電力としての自己責任において」ではなかったでしょうか。製造能力が不十分であることを知りながらBNFLに発注した最終責任は貴社にあります。貴社には発注者としての第一義的責任があり、その責任は極めて重大であると私たちは考えますが、いかがですか。また、貴社はその責任をどのようにとるつもりですか。
 通産省の電気事業審議会は、貴社報告書のすぐ後の6月22日に報告書を出し、「MOX燃料については設置許可取得前に電気事業者の自己責任で製造が行われていた」(p.12)が、「MOX燃料の製造は、MOX燃料の使用に係る原子炉設置(変更)許可がなされた後に開始されることが必要である」(p.23)と指摘しています。これは、通産省が貴社の自己責任に任せていたのは失敗だったと評価しているからです。通産省は「法制度の原則に従い」製造中および製造されたMOX燃料については適用しないとしていますが、貴社は、貴社の自己責任において、製造中および製造したMOX燃料をすべて破棄すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(4)BNFLでMOX燃料の品質管理データねつ造が行われた時期に、日本ではMOX燃料等輸送容器の中性子遮蔽材レジンのホウ素・水素含有量に関するデータ改ざん・ねつ造事件が発覚し、大問題になっていました。1998年10月の同事件発覚後、貴社は設計に適合しない欠陥輸送容器を破棄するのではなく、設計基準の方を製造欠陥に合わせて修正し、同年末に欠陥輸送容器のまま設計承認の再申請を行い、今回のMOX燃料輸送に用いました。結局、運ばれたMOX燃料も欠陥品でした。MOX燃料の審査、発注、製造、輸送のすべてがいい加減で、品質保証の原則を崩すものだったのです。このままプルサーマルをあくまで強行するようなことは断じて許されません。貴社の自己責任においてプルサーマルを中止すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(5)今回のMOX燃料海上輸送においては、輸送ルート沿岸諸国の輸送反対・憂慮の声を無視し、核拡散の危険を冒してまで輸送し、JCO臨界事故発生直後の昨年10月1日、MOX燃料輸送船の高浜原発への着岸を強行しました。貴社は、運んだMOX燃料のデータ不正が明らかになるや、今度は欠陥MOX燃料を逆ルートで持ち帰れとBNFLに求めています。BNFLに直接的な不正の責任があるとはいえ、すべては貴社の自己責任で行ったことであり、貴社が第一義的責任をとるべきです。それは、海難事故と核ジャックの危険があるMOX燃料輸送を強行して、輸送ルート沿岸諸国住民の命と健康、平穏な生活をもてあそぶことではなく、プルサーマルを中止し、MOX燃料輸送を今後一切行わないことだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(6)貴社はこれまで、BNFLの品質管理・保証システムはISO9002の認証や4回のサーベイランス更新を受けているから大丈夫だと主張してきましたが、それは誤りでした。たとえ経営方針に反することがあっても、システムを厳格に実施できるような企業文化がなければ無意味であることが明らかになったのです。貴社についても、「監査を実施していなかった」ことが問題だったとされていますが、「監査を厳格に行える状況になかった」ことが最大の問題だと私たちは考えますが、いかがですか。
 貴社は、MOX燃料加工費を抑え、プルサーマルを1999年度中に実施するという経営方針を最優先し、スケジュール通りに、福井県の事前了解もないままMOX燃料加工を発注し、三菱重工業とともに、MDFの欠陥設備でのMOX燃料加工を妥協的に認め、品質管理・保証レベルの緩和を妥協的に認め、結果としてデータの不正を招いたのです。もし、品質管理・保証・監査を厳格に行ったとすれば、このような「妥協」を行わず、あくまで工程のバラツキを少なくし工程を安定化させるための技術改良を求め、抜き取り検査データ計測・記録の自動化を求めたはずです。しかし、それはプルサーマルの実施スケジュールを遅らせるだけでなく、MOX燃料加工費を引き上げることにもなります。このような結果を避けたいからこそ、一連の「妥協」を行ったのではありませんか。
 また、BNFLは民営化のためにコストダウンと利益率向上を英国政府等から具体的に求められ、徹底した人員削減と経営効率化を図っていました。貴社も、電力部分自由化を目前にして人員削減をはじめ原発発電原価のコストダウンに奔走していました。MOX燃料加工費のコストダウンとスケジュールを優先させるという両者の一致した経営方針の下で、品質管理や品質保証の手を抜く企業風土が醸成され、品質管理検査員やオペレーターのモチベーションも低下し、品質管理データの不正を招いたと私たちは考えますが、いかがですか。
 品質管理のシフトチームリーダーが品質管理要領書を見たことも読んだこともないという状況では、一般のオペレーターにはデータねつ造がどのような意味を持つのかを理解できなくて当然ではないでしょうか。その構図はJCO事故を招いた構図と非常によく似ています。解雇された4人の作業員に直接的な不正の責任があるとはいえ、最も強く責められるべきは、プルサーマル実施スケジュールとMOX燃料加工費削減を最優先させ、ずさんな品質管理・保証・監査状態を招いたBNFL−三菱重工業−貴社の経営責任だと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(7)貴社は、三菱重工業が立会検査を頻繁に行い、データの統計処理を継続的に行っていたら、不正の「抑止力となった可能性がある」(p.32)と指摘していますが、昨年9月に高浜3号機用ロットの不正が発覚して以降、三菱重工業と貴社が、海上輸送中の高浜4号機用MOX燃料に関する「データの統計処理を系統的に行っ」たにもかかわらず、その不正を発見できませんでした。装荷直前のMOX燃料が使用中止になってから、ようやく「発見」できたのです。このことは、たとえプルサーマルが中止になろうとも、貴社の経営方針に反しても、品質保証を厳格にやろうという技術者の意識性がなければ、不正を見抜けないということを示唆しています。
 昨年9月の貴社の中間報告には、全数自動計測データと抜取検査データの平均値の差の分布図3-4と標準偏差の差の分布図3-5が示されています。私たちはこれらの図から両母集団が別のものであることを一見して見抜きました。つまり、抜取検査データの大半が異常だと判断し、抜取検査時にランダムサンプリングを行わなかったか、データをねつ造したかのいずれか、または、両者が同時に起きている可能性があることを9月29日付け公開質問状で具体的に警告しました。貴社はこれを無視して11月最終報告を出し、プルサーマルを強行しようとしたのです。今回の6月最終報告で、貴社は私たちの警告が正しかったことを追認しています。私たちに判断できたことが、貴社にはなぜできなかったのでしょうか。
 通産省の電気事業審議会報告では、「関西電力の調査体制や能力に問題があったと考えられる」(p.13)と無責任に結論付けています。私たちは、通産省と貴社の「まずプルサーマルありき」の政策と経営方針、それに反する異論を許さない貴社の企業文化に根本的な問題があると考えています。貴社の有能な技術者も品質管理や品質保証の基本技術を修得しているはずです。ところが、彼らは「経営方針を阻害するかも知れない技術的判断は下せない」という状況に置かれていたのです。そのため、本来なら簡単に見抜けるものまで見えなくなったのです。最近の経営効率優先の経営方針が技術者をどのような状態に追い込むかはこの例でも容易に想像できます。その意味では、「無能」呼ばわりされた貴社の技術者も哀れな犠牲者だと言えます。JCO事故はこの顕在化にほかなりません。貴社経営陣にはこの点での深刻な反省が不可欠だと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(8)BNFLのMOX燃料加工では「核物質防護」のため抜き打ち検査が行えず、監査の事前通告が必要であり、しかも、一部の場所しか監査できません。このような態勢で、どうして抜取検査の実態に関する監査ができるというのでしょうか。「核物質防護」の壁の前では、BNFLを頭から信じるか信じないかというレベルでしか品質保証がなされえません。それは最初から明らかだと私たちは考えますが、いかがですか。品質管理・保証・監査に重大な制約が課せられるような工場へは安全を最優先すべき原子力関連製品を発注すべきでないと、私たちは考えますが、いかがですか。
 
2.全数自動検査と抜取検査の関係について
 
(1)通産省の電気事業審議会報告では次のように書かれています:「通商産業省が原子力発電技術顧問の意見を聴取したところ、ロットP824の品質管理データについては統計的に不正を疑うべきであること、また、全数測定データを検査の判断に用いるのであれば不良ペレット選別機能の信頼性等について確認が必要であること等の指摘がなされた。通商産業省は、この指摘内容について関西電力に伝え検討を求めたところ、関西電力としてはロットP824のデータに不正はないと判断するとしつつ、このロットの全数測定データ及び選別機能の信頼性に関するデータを最終報告書に添付することになった。」「その後通商産業省は・・・・ロットP824の品質管理データは合否判断に使用せず、当該ロットの全数測定データ及び選別機能の信頼性を確認することにより判断することを検討していた。しかしながら、・・・・検査申請が取り下げられ法的判断を行うには至らなかった。」(p.14)
 要するに、通産省も貴社も、品質管理データは信用できないが、全数自動検査データが仕様を満足していたらそれで品質を保証できるという見解だったようです。同様に、BNFLも抜取検査を「過剰(2次)検査 an over (secondary) inspection」と呼び、NIIも「外径の2次サンプルチェック(外径の『過剰検査』として知られる)」としています。これは貴社が昨年主張した内容でもあったわけですが、MOX燃料の英国返送を求めた際にNIIが全数検査をやっているから安全上問題ないと主張したことに貴社は納得しませんでした。貴社は上記の見解を撤回したのですか。それとも、今でも同じ見解なのですか。
 
(2)他方では、貴社は昨年11月の最終報告で、全数自動測定は外径仕様外のペレットを除外して歩留まりを向上させるためのものであり「全数自動測定と抜取検査の目的は異なる」(p.3)と明記しています。また、全数自動測定後の抜き取り検査で不合格ロットが出ている事実から判断しても、目的の異なる全数自動測定データで品質保証を行うことはできないと言えます。
 にもかかわらず、法的判断を行っていないはずの通産省も、貴社も、全数自動検査をしているから安全だと主張してはばかりませんでした。昨年11月の最終報告に記載した内容と貴社が福井県等で昨年説明してきた内容とは明らかに食い違っています。文書では、後で追及されないよう慎重に記し、口頭ではウソを含めて無茶苦茶なことを主張するという貴社の二枚舌の体質はBNFLの体質と同様に極めて重大です。これは、国内外の原子力産業が全く同じ腐敗した体質に染まっていることを示すものでもあります。この責任を貴社はどのようにとるつもりですか。
 
3.外径測定位置と端部の欠けについて
 
(1) 貴社は6月最終報告の参考資料Vで、ペレット外径の中央と両端の3点の測定位置について、全数自動選別では中央付近±2mm(両端から3.7〜4.3mm)、抜き取り検査では中央付近±3.5mm(両端から2.2mm〜2.8mm)としている理由として「研削後のペレットには微小な欠け等の発生が考えられ」るため「ペレットかけが発生しやすいペレット端部からできるだけ離した位置にセットしている」と説明しています。これでは両端部の欠けたペレットを検査もせずに合格させているということになります。しかも、両端を測定しない以上、どの程度欠けが発生しているかも計測されていないことになります。また、このような欠けを検出するためにはペレット外周部全体を検査する以外にありませんが、外径の一断面しか測定しない外径計測では一部しか検出できず、目視による外観検査では小さな欠けは検出できません。このような検査法ではペレットの品質を保証できないと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(2)また、貴社は事前に測定位置を中央に寄せることをBNFLから知らされて同意し、9月の現地調査でもその説明を受けています。これでは組織的に一体となって両端の欠けたペレットを合格させていたことになります。このような端部の欠けを検出しない外径測定法をなぜ認めたのですか。ペレットの作り直しを避けてコストダウンを図るためには、多少欠けがあっても合格させる以外にないと判断したためではないのですか。
 それとも、貴社の設計仕様では、MOX燃料ペレットは外周部が多少欠けていても良いとしているのでしょうか。もし、万一そうであるとすれば、どの程度まで欠けていても良いとしているのか、欠けの許容範囲を示す設計仕様を示し、それを満たしているかどうかの検査をどのように行っているのか、また、その結果はどうだったのかを示して下さい。
 
4.抜取検査の方法について
 
(1)最終報告では、「検査員は、測定値が規格値をわずかに超えた場合には、ペレットを90度回転させて再度測定していたことがあった。この方法は要領書に記載されていなかった。品質管理マネージャーは、このことに気づきながら要領書遵守の指導をせず、また、要領書の必要な改訂を行っていなかった」(pp.23-24)と記載しています。90度回転させて再度測定することは重大な手順違反ですが、それ以上に、ペレットの円筒度(テーパがかからず真の円筒形状にどの程度近いかを示す度合)または真円度(断面が真の円にどの程度近いかを示す度合)が悪かったことが推測されます。外径のレーザー計測は影の長さを測定するわけですから、真円度が高くなければ、このような測定方法そのものが間違っています。品質管理の計測システムそのものが製造欠陥を検出できないシステムになっていたのではないかと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(2)貴社は、私たちの9月29日付質問状への昨年11月5日付文書回答で「全数測定と品質管理用測定では測定系が異なるため、平均値や標準偏差がわずかにずれうる」としています。この「測定系が異なる」というのは、全数自動検査と抜き取り検査とで「中央」や「両端」の測定位置が異なるということ、およびVブロック上に置いたペレットの回転角度が異なるということを意味していたのですか。そうでないとすれば、「測定系が異なる」という意味を具体的に説明して下さい。
 
5.再処理・MOX燃料加工契約について
 
(1)今回のMOX燃料品質欠陥問題を受けて、スウェーデン政府は2月29日、昨年夏に決めていた使用済核燃料4.8tのBNFLへの再処理委託計画を中止しました。ドイツ環境省は3月8日、「安全性に懸念がなくなるまで」MOX燃料の輸入を停止すると発表しました。スイスの北東スイス電力は3月初めにBNFLへ調査チームを派遣しています。これらに続き、最近も欧州では再処理を巡る情勢が大きく動いています。
 ドイツでは6月14日、政府と電力会社が平均寿命32〜34年の脱原発と2005年7月の再処理目的の輸送禁止で合意しました。
 OSPAR会議は6月29日、各国主務官庁が再処理を見直して乾式貯蔵等の非再処理選択肢へ転換することを求める決定が加盟国の3/4の多数で可決されました。ドイツ、ベルギー、スイス、スウェーデンも賛成しました。
 イギリス国内では、ブリティッシュ・エナジー社が再処理契約を使用済核燃料貯蔵契約へ変更するための正式交渉をこの5月からBNFLと開始しています。
 日本はますます孤立を深めています。この際、日本もBNFLとの再処理契約を見直すべきです。日本の電力会社はBNFLとはガス炉・軽水炉計約4千tの使用済核燃料の再処理を契約しています。1300tのガス炉分についてはほとんど再処理が終わっていますが、2700tの軽水炉分はまだ20%弱しか再処理されていません。この際、安全確保のずさんなBNFLとの再処理契約を破棄し、再処理中止を申し入れるべきだと、私たちは考えますが、いかがですか。
 フランスCOGEMAとの再処理契約についても現状で再処理を凍結し、残りの契約を破棄すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(2)英仏ですでに回収されたプルトニウムについては、核不拡散性の高いガラス固化管理方式をとり、英仏とのMOX燃料加工契約を破棄し、SMPとも新契約を一切締結すべきでないと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(3)貴社は、BNFLとの契約が中断状態になったため、フランスCOGEMA社と加工契約しているMOX燃料を先に使おうと計画しています。貴社のフランスでのMOX燃料加工状態についてはまだ何も明らかにされていません。BNFLだけでなくフランスでのMOX燃料加工状況についても全情報を明らかにして下さい。
 
(4)貴社は、使用済燃料を原発サイトから搬出するための苦肉の策として、経済性がなくウラン節約効果にも乏しいプルサーマルを強行しようとしてきましたが、プルサーマル後の使用済MOX燃料は再処理できないため搬出できる見通しが全くありません。これも、データねつ造を隠してきたのと同様に、福井県民をだますものです。人々を欺き、再処理による放射能汚染と原発重大事故の危険を高めるプルサーマル計画を白紙撤回すべきだと、私たちは考えますが、いかがですか。その上で、関連データを全面公開し、再処理・プルサーマルの是非について国民的討論を各地で開くよう確約すべきだと、私たちは考えますが、いかがですか。
−以上−