■□■□■□■□■□■□■□■  若狭ネット第60(2000/9/25)  ■□■□■□■□■□■□
 
関西電力がSMP新工場と契約しなければ、
英BNFLはMOX燃料事業から撤退!
 
「契約せず自己責任を果たせ」と関電に圧力を
 
 プルサーマルを中止に追い込む好機が訪れています。英BNFLは、再処理、MOX燃料加工、ガス炉原発、核施設除染の全分野で経済的に追い込まれ、昨年度は大損失を計上し、今後1世紀にわたる空前の累積債務を背負いました。また、昨年発覚したMOX燃料加工でのデータねつ造に続き、BNFLのずさんな安全管理の実態が今年に入ってさらに2件も明らかにされています。英規制当局からのたび重なる改善命令を無視し、危険極まりないずさん管理を続けるBNFLとは、完全に手を切るべきです。今がその絶好の機会です。
 インディペンデント紙によれば、BNFLは9月14日、データねつ造事件のあったMOX燃料加工施設MDFを今後商業利用しないとし、新工場SMPの操業開始に全力を注ぐ意向を表明しました。しかし、新たなMOX燃料加工契約を年末〜年初にとれなければ、SMPの操業開始もできなくなり、MOX燃料事業から撤退しなければなりません。その鍵を握っているのは関西電力など日本の電力会社です。BNFLは新契約獲得のため、この9月末から必死の来日攻勢をかけ始めました。
 私たちも、関西電力への攻勢を一層強め、MOX燃料データねつ造問題での関西電力の責任を継続して徹底的に追及し、「自己責任」をとらせ、MOX燃料加工新契約に対し「ノー」と言わせましょう。
 
空前の損失・累積債務
 
 BNFLは9月14日、1999年度決算(1999.4.1〜2000.3.31)で、課税前損失が3.37億ポンド(約570億円)に上り、累積債務が前年度から
71億ポンド増えて342億ポンド(約5.8兆円)に達したことを明らかにしました。この累積債務は廃炉費やセラフィールド除染費などで、今後85〜100年にわたり必要となる負債です。BNFLはこれらの負債の88%は手当済みだと言っていますが、巨額債務を国民が税金で負担すべきか、民営化後の将来の株主が負担すべきかについて、現在、英政府と協議中です。
 BNFLは、米WH社とABB社を併合して売上高を前年度比32%増の20.6億ポンドへ伸ばしましたが、空前の大損失を出しました。前年度の課税前利益2.18億ポンドから一転して大損失を計上した原因は、BNFLの主要3分野で合計4.11億ポンド(約700億円)の特別損失が発生したためです。MOX燃料データねつ造事件では、関西電力への4000万ポンドの補償と7300万ポンドのMOX燃料返送費(返送には2年かかるとされる)で計1.13億ポンド(約190億円)の損失、これに、米国との核施設除染契約金額の過小見積による損失1.39億ポンド(約240億円)とヒンクレイ・ポイント原発の早期閉鎖に伴う損失1.51億ポンド(約260億円)が加わったためです。
 
SMPと契約させるな
 
 米国との核施設除染契約そのものも解約され、ソープ再処理契約の1/3を占める英BE社が貯蔵契約への変更を申し出るなど見通しは真っ暗です。MOX燃料データねつ造事件を機に、BNFLの「斜陽化」が一挙に表面化し、部分民営化は2002年まで延期され、BNFLは経営危機に陥っています。顧客の信頼を回復し経営建て直しをはかる「救世主」とされるのが新MOX燃料加工工場SMPの操業開始であり、その鍵を握るのが日本なのです。
 BNFLのノーマン・アスキュー社長は「日本の顧客と年末までに新MOX契約を交わし、2001年に商業運転の開始許可を英政府と英核施設検査局から得たい」(9/14)と期待しています。同社長によれば、いくらかの受注契約はすでに日本の電力会社から入っているものの、新工場の操業を始めるには、来年初めまでにもっと多くの受注が必要であり、「もし、新たな受注が得られなければ、経済的に耐えられず、操業を始められないだろう」(9/18)と言います。9月末からのBNFLの来日攻勢はそのためです。新契約を許してはなりません。
 
次々暴かれるBNFLのずさん管理
 
 BNFLは、データねつ造事件発覚以後も、セラフィールドに関する安全規則違反で、すでに今年2件の処罰と告発を受けています。
 一件は、この6月に出た処罰です。昨年3月の1500ガロンの硝酸液噴出事故で労働者2名に負傷を負わせ消防員1名に有毒ガスを吸引させた事件に対し、4万ポンドの罰金と3.5万ポンドの費用支払命令が出ました。昨年の事故は1994年の硝酸噴出事故に続くもので、裁判所によれば、BNFLは1996年末までに改善すると誓約していたにもかかわらず完全には実施せず、昨年の事故につながったのです。
 もう一件は、3500個の密閉された検査用放射線源の管理がずさんなため、核施設検査局が今年3月に改善指示を出したにもかかわらず、BNFLが放置し続けた事件であり、たまりかねた英健康安全局が告発したものです。
 このほか、BNFLは、1996年に健康安全規則違反で3.25万ポンドの罰金を科され、それ以前にも、健康安全規則違反1件、核施設免許条件違反3件で罰金を科されています。
 BNFLの「手抜き文化」はどうしようもなく根深いものです。BNFLと再処理契約を続けるのは危険であり、ましてやMOX燃料加工の新契約を結ぶなんて許せません。皆の力で新契約を阻止し、全契約を破棄させましょう。