「放射性廃棄物シンポジウム」第18回(神戸)参加報告
 
おかん 吠える
真野京子
 
 9月29日、久保さんからの一本の電話で科学技術庁主催の廃棄物シンポへの参加が始まった。「特定放射性廃棄物....」などと、一般人をたぶらかせる名称の法案が与党三党のごり押しで決まった後、原子力長計も含めて矢継早にパブリックコメント募集が行われていた。通産省、科技庁の「ご意見」募集が、代わる代わる意見を出そうとしても追い付かないぐらい速いペースで行われ、意見募集の内容やその叩き台となる文書がPDFファイルでしか見られないものなど、およそ市民の声を聞く態勢を取らないまま、形だけのものが多かった。10月に青森県は使用済み廃棄物受け入れ安全協定を結び、このままでは六ヶ所村が日本中の核のごみ捨て場にされてしまうのではないかと危惧していた矢先であった。
 聞けば、公募のパネリストの応募がないということ。だいぶ役不足ではあったが、平日の午後など勤め人には出られる時間ではない。30日のJCO事故の集会で、シンポへの応募者を募ったが、誰も名乗りでる人がいなかった。こうなれば、おばちゃん3人でがんばろうと、腹を括った。Nonukes ML(ノーニュークス・メーリングリスト)でこれまでの参加者に情報を求めると、シンポに出席することに反対するメールが寄せられた。私自身も科技庁のアリバイ作りに役立つだけではないかと危惧していた矢先だけにこたえる内容であった。しかし、科技庁の役人や関電の幹部の前で私自身が再処理や地層処分に反対していることを「吠える」ことができる機会であると考えて、参加することにした。Tさんはじめ、ネットの皆様の知恵を借りて、意見をまとめることができた。下手なしゃべり方を練習していると息子が「おかん、がんばれよ」と言ってくれた。子どもたちのためにも、保身や金もうけしか考えていないオッサンたちに自分の意見をぶつけたかった。
 応募してから決定の通知があり、大部な資料が送られてきた。多くのお金がかかっている様子がありありとわかるものだった。シンポをコーディネートしている三菱総研に、このシンポにいくらお金をかけているか聞いたところ、「クライアントの秘密を守る」ということで答えがなかった。科技庁の中村氏に聞いたところ、人件費を除いて、年間15回程度予定されているシンポジウムや科技庁発行のパンフレットの印刷代、新聞の広告料などで1億円だそうだ。(別の筋の情報によると総額2億円らしい。)
 10月23日、シンポの日がやってきた。パネリスト(以下、敬称略)の久保、田中(公募)、真野(公募)、辻倉米蔵(関西電力支配人、原子力技術担当)、三宅寛(神戸商船大原子力システム工学教授)に加え、原子力委員会専門委員の神田啓治(京大エネルギー科学研究科教授)、徳山明(富士常葉大学長)、中村政雄(元読売新聞論説委員)、事務局として科技庁の岩橋理彦(原子力廃棄物政策課長)と渋谷朝紀(原子力廃棄物政策課専門職)、そして司会の小沢遼子であった。場所は神戸国際会議場で、シンポ前に打ち合わせと称して食事会があったが、私たち3人は食事を断わって打ち合わせをした。会場に向かうポートライナーには、やけに多くの背広姿の年配の男性諸氏が乗り合わせ、会議場向かいのポートピアホテルに入っていった。もしや動員された人々ではないかと思えたが、真偽は不明。
 会場へ入って行くと、三菱総研の担当者がにこやかにお出迎え、「参加者の紹介」と称して出席者の待合室へ。神田啓治氏は上機嫌でしゃべりまくっていた。小沢遼子さんはしゃべりの合間に探りをいれる。昔、この人は「市民派」とか称していなかったか?女性評論家?の変節ぶりは目に余るものがある。自戒せねばと思いながら、会場へ。発言の時間は5分、後半では意見は一回しか言えないと聞いていたので、久保さんが責任論、田中さんが地震の経験を踏まえた地層処分について、私は低レベル、クリアランスレベル廃棄物と子どもの環境権について発言した。毎日、見て考えているごみの問題とリンクさせて、ぜひ取り上げたかったからである。
 後半、司会の小沢さんは私の意見に対して神田啓治氏に反論させ、廃棄物の種類を混同しているだの、製鉄所での放射性物質の使用を知らないのかとか、低線量の放射線は危なくないとか、大学教授という権威を押し付けてこき下ろした。そのなかで、彼は、広島原爆の疫学調査やJCO事故調査に関わってきたことを話し、被害の過小評価につながる主張を述べた(詳細は議事録参照 http:/www.sta.go.jp/genshi/rwsympo/)。小沢さんは新しいことが好きそうで、自分が聞いたことのない部分にこだわり、本質論(責任の問題、再処理の停止、高レベル固化体の安全性など)は避けようとする。劣化ウランが玉野市に放置されていることなどの問題には関心を寄せ、私に質問した。私はそんなに詳しくなく、「なんでこんなことを言わんといかんのか」などと思いながらも、紹介した。他の人も知らない問題については話す時間を多くくれた。これには後で、「もっと本質論に突っ込まねば」と田中さんから怒られてしまった。あちらの手法としては、パネリストが言った部分を専門委員に反論させる形で反対派の意見を骨抜きにしようとする。たとえば、田中さんがバイオマスを材料に代替エネルギーの話をすると、それについて、中村、徳山の両専門委員が散々にこき下ろす。そして反対派には反論させない。最後に一言いう機会もなかった。会場からは牧野さん、藤村さん、重枝さん、久保美恵子さんと心強い発言があった。余裕があれば、参加者と打ち合わせをしていたら、パネリストとして言えなかった部分や言い足りないところを補うことができる。神戸では、皆のつっこみで助けられた。司会者の采配ぶりへの抗議と会場の一般参加者とパネリストとの打ち合わせの大切さを痛感した。
 「核」は改めて「民主主義」の問題だと確認、パブリックコメント募集のあり方も問われねばならない。