12・8関西電力本社交渉報告
MOX燃料加工工場(MDF)が使えなくても
関電のBNFLとのMOX加工契約は生きている!?
 
 原子力長期計画では高速増殖炉の実用化が事実上無期延期となり、「高速増殖炉実用化までのつなぎ」としてのプルサーマルの位置づけは骨抜きにされました。その下で、若狭ネットは12月8日、関電本社と交渉しました。8月3日の大阪でのプルサーマル公開討論会で明らかにされた点や積み残しの課題を継続的に追及するためです。
 私たちは「ヘビ」のような執念深さで、関電を追及し続けているのです。
 最初に8月の公開討論会を受けて提出した9月4日付「プルサーマル問題に関する」再質問状」に対する11月16日の電話回答を再確認しました。関電は、これまで書面で回答してきたにもかかわらず、今回は電話での回答でした。私たちはそれを書き取り、FAXで関電に送り、「書面」での確認を求めました。その内容は前号でお知らせした通りです。それを今回、改めて確認しましたが、「その通りです」との回答でした。
 
関電は「事故隠し」を隠そうとしている
 
 スイス・ベズナウ原発でのMOX燃料棒事故を武生市でのプルサーマル公開討論会で隠していた点について、関電は「MOX燃料固有の事故ではなかったので説明しなかった。ウソをついて事故隠しをしたのではない」と弁明に必死です。8月の討論会で「事故隠し」「ウソつき」と指弾され、翌日の新聞で大きく報道されたことがよほどこたえたのでしょう。しかし、ウソの上塗りは許せません。ウソつきを反省し、隠していた事実を公開し、真相を説明する義務があるはずです。ひょっとしたら、ベズナウの事故の際すでに、関電はBNFLでのずさんな製造・品質管理体制を知っていたかもしれないのです。それがバレれるのが恐いのでしょうか。「武生での説明がまずかったのではないかという点を含めて本人に確認し後日返答する」とのことでしたが、未だに回答はありません。関電内部でどのように回答するか、もめているようです。
 
返還後にどうするかはBNFLの勝手
 
 関電は、データねつ造のあったMOX燃料集合体8体を英国へ「返還」させようとしていますが、その後どうするのかについては、「BNFLの持ち物だからBNFLがすべて判断してやることになっており、知らない」とのこと。関電の持ち物ではないのかと追及すると、「そもそも再処理工場でできるプルトニウムは再処理に応じて電力への割り当てとして出てくるものだから・・・」と奇妙な弁明。他国のプルトニウムが日本へ帰ってきて、日本のプルトニウムが他国で核兵器に転用されるかもしれないという大問題であるにも関わらず、「そんなことはお構いなし」という風でした。
 
MDFが使えなくても契約は生きている
 
 関電もBNFLも「データねつ造のあったMOX燃料加工工場MDFは今後使わない」ことにしています。そうすると、BNFLには現在使えるMOX燃料加工工場はなく、関電との加工契約は成り立たないはずです。この点を問い質すと、関電は即答できませんでした。後日受けた回答によると、MOX燃料加工契約は現在も存在しており、MDFで製造することになっています。したがって、現契約は事実上なきに等しいのです。ところが、BNFLには、認可申請中の大規模な新工場SMPがあります。「これが認可され、MOX燃料の返送時期や方法が明確になり、社会的に許容される状況になれば、SMPでのMOX燃料加工を検討する」と関電は言っています。しかし、関電がSMPでのMOX燃料加工契約を結ばなければSMPは認可され得ません。正に、鶏と卵の関係なのです。
 
MOX燃料返還交渉は常時やっている
 
 では、BNFLと新加工契約の交渉は進んでいるのでしょうか。これには、曖昧な回答しか返って来ません。関電は、返還協議の中では「SMPで加工するとかの協議はない。返還したMOX燃料をどこで加工するとかの話は返還協議には入らない」と言っています。そこで、「来年1、2月に、新たなMOX燃料加工契約を交わすことはないのか」と詰問すると、「白紙だ。わからない。英政府からの認可があるまで、普通は、契約はありえないと思う。返還とMOX燃料加工契約のどっちが先になるかどうかという話は、今できる段階ではない」との回答でした。
 
珠洲での秘密工作はコメントできない
 
 話は変わって、朝日新聞の1面トップで報じられた珠洲での秘密工作を追及しました。関電は「新聞報道が正しいかどうかも、知りません」と無責任な回答に終始しました。
 
もう使わないから「廃止」した
 
 らちがあかないので、次に、使用済核燃料輸送容器が自主検査の遅れで廃止された件に移りました。「きちんと自主検査していた輸送容器もなぜ廃止されたのか。MOX燃料輸送容器や国内用の輸送容器はなぜ廃止されなかったのか」を問い質すと、関電は「廃止の理由は、運輸省の指導、厳しい措置」と言いながら、「電力会社の勝手な理由になるが、海外再処理用の使用済核燃料の輸送が終わっているから、当面、まずは使うことがないから廃止した」と本音を思わず吐露しました。「国内用は別途40、50基ぐらいあり、廃止していない。海外用MOX燃料輸送容器は検査しているので廃止していない」と意にも介さない様子。廃止した使用済核燃料輸送容器からMOX燃料輸送容器へ改造再申請ができるかどうかについては「法的にはできると思う」とにべもない回答。「厳しい指導」は「痛くもかゆくもない指導」にすぎなかったのです。この件に関する関電の責任を追及すると、「国内法規則の中で自主検査を義務付けられており、関電も申請代理人として責任を持つが、基本的には海外メーカーの責任でやるもの。関電が検査を督促することはない。それに関する監査についてはやっていたんだろうとは思うが、監査の頻度とか監査の内容とかによるので・・・」とまるで他人事でした。
 MOX燃料では監査が不十分だったと「反省」しながら、別の課題になった途端に、どこ吹く風の様子。しかも、データねつ造問題で「沸騰」している最中にこの事件がわかったため、政府とつるんで隠していたのですから、どうしようもありません。同じ品質管理体制が問われているのに、これでは、ますます関電を信用できなくなります。
 
「約束違反」は「認識がわからない」
 
 美浜町長は12月26日、もんじゅを訪れた大島科技庁長官に、「30年を超えて運転するのは約束違反だ」と言っていますが、関電は「私の推測だが」と断りながら、「約束違反というのはその認識がちょっとわからない。町長の思いの言葉とその後ろに交付金の話があったりするのであれば・・・」と、これも、約束違反をものともしない居直りでした。
 21世紀を迎えて、やはり粘り強く追及し続け、ギャフンと言わせるしかないのでしょうか。皆さんのお力をお貸し下さい。
 

 
 

 
12月8日の交渉で事後回答を求めている質問事項と回答
 
(以下の質問項目を12月25日にFAXしたところ12月28日に下記の電話回答があった。)
質問1:BNFLには現在、商業用に利用できる工場は存在しません。BNFLとのMOX燃料加工契約はこの状況を踏まえても、今でも成り立っているのですか。成立しているとすれば、新工場SMPが英政府により認可されれば、現契約のまま、先に加工契約したMOX燃料集合体16体をSMPで加工できるのですか。
 
回答:高浜3・4号機用MOX燃料加工契約については現在も存在しています。この契約内容では、MDFにおいて燃料製造することとなっています。ただし、BNFLのSMPにおける安全・品質体制・方法の確立が客観的に確認され、日本政府の規制上の確認が得られる見通しになっていること。高浜4号機用MOX燃料集合体8体の英国への返送時期や方法が明確化されるなどして、SMPにおいて製造されるMOX燃料集合体を当社の原子力発電所の原子炉に装荷することが社会的に許容される状況になって初めて、SMPでのMOX燃料製造が検討されることとなります。
 
質問2:ベスナウでのMOX燃料集合体事故の件について「武生での説明がまずかったのではないかという点を含めて本人に確認して後日返答します」(大森課長)と約束した件について回答して下さい。
 武生で、燃料棒を含めてMOX燃料の品質管理に関する会場からの質問に答えて「関電も自ら検査しており、MDFではトラブルや事故はない」と関電代表が回答した事実については録音テープで確認済みです。にもかかわらず、今頃になって「ベズナウの事故はMOX燃料に起因する事故ではなかったから武生では説明しなかった」というのは詭弁であり、ウソの上塗りではありませんか。この論理に従えば、今回のBNFLでのデータねつ造事件はMOX燃料に起因する事故には当たらないため、ベズナウの件も含めて、「MOX燃料に関する事故トラブルがないか」と聞かれた場合、今後も説明しないことになりますが、それに相違ありませんか。
 また、他の原発用MOX燃料集合体では存在すると回答したトラブルや事故のすべてがMOX燃料に起因するものであったということを示すデータを示して下さい。
 さらに、商業上の秘密で内容を公開できないものも含めて、MOX燃料に起因しないトラブルや事故は他にないのですか。
 
回答:もう一度検討したい。
 
質問3:今回高浜4号へMOX燃料を運ぶのに使われたMOX燃料輸送容器は輸送前のいつ、自主検査を行ったのですか。
 国内の輸送容器は何基あるのですか、それらの過去2回の自主検査期日についてデータを公開するという約束(大森課長)を果たされるよう求めます。
 
回答:当社は運輸省に申請したもののみ。運輸省の立ち会いの下、検査を行いました。
(1)当社が運輸省から承認を受けている容器
用 途 型 式 製造番号 承認番号 検査日



MOX新燃料


 

EXCELLOX-4(M)
 

 3332A/001
 

 MS194B(M)F
 
 H11.10.12

 H12.9.12

 TN-12P(M))

 
 TN-12/2-209

 TN-12/2-211 
 
 MS198B(M)F

 MS199B(M)F 
 
 未実施

 承認H12.9.14 
 
 
(2)定期自主検査期限遅れのあった容器(20基、H12.3.23廃止)
用 途 型 式 製造番号 承認番号 検査日









使用済燃料










 






EXCELLOX-4







 
 1147/0001
 1147/0002
 1147/0003
 1147/0004
 1147/0005
 1147/0006
 1147/0007
 1147/0008
 1147/0010
 1147/0011
 1147/0012
 1147/0013
 1147/0014
 1147/0015
 1147/0016
 MS15B(M)F
 MS16B(M)F
 MS17B(M)F
 MS54B(M)F
 MS13B(M)F
 MS52B(M)F
 MS53B(M)F
 MS55B(M)F
 MS103B(M)F
 MS104B(M)F
 MS105B(M)F
 MS125B(M)F
 MS126B(M)F
 MS127B(M)F
 MS128B(M)F
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H12. 1.24
 H11. 9. 9
 H11. 8.31
 H11.10.12
 H11. 9. 3
 H11.10. 4
 H12. 1.24
 H12. 1.24


 TN-12A


 
 TN-12/2-207
 TN-12/2-210
 TN-12/2-212
 TN-12/2-216
 TN-12/2-218
 
 
 MS9B(M)F
 MS12B(M)F
 MS14B(M)F
 MS80B(M)F
 MS82B(M)F
 
 
 H11.11.26
 H11.12. 1
 H12. 1.21
 H11.11.15
 H12. 1.25