もんじゅ事前了解は一時棚上げ 2月県議会が焦点!
 
もんじゅ事前了解をみんなの力で阻止しよう!
 
 もんじゅ運転再開に向けた12月8日の事前了解願受理は、県議会側の意外な反発を食らって棚上げ状態に陥り、科技庁や核燃料サイクル開発機構などが目論んだ年内決着は頓挫した形になっています。
 私たちは、もんじゅ運転再開阻止を勝ち取る時間的な猶予を得たわけです。21世紀を日本の脱原発の世紀にする手始めに、福井と関西の力を合わせて栗田知事らの目論見を押さえつけ、総力でこれを打ち砕きましょう。
 ここでは、もんじゅを人質として、福井空港拡張工事や福井県内での北陸新幹線工事に垂れ流される金に、知事や県会議員、政府・与党が露骨にしゃぶりつこうとする生々しい実態を概観しましょう。
 
動き始めた栗田知事
 
 昨年8月の新原子力長期計画案発表と、9月の「福井県内の原子力発電所における安全対策・地域振興等の状況と課題の評価」発表を受け、自治省出身で県民からは「おとなしい」と揶揄されてきた栗田知事は、人が変わったかのように、それまでの慎重姿勢から一転、臆面もなく積極的に動き始めました。
 10月7日に知事は福井市で開かれた長計策定会議の「ご意見を聞く会」に出席し、もんじゅ容認への姿勢を見せつけ、このあたりから今回の騒動が始まったのでした。
 知事は10月23日、県議会議長や県議らとともに上京し、科技庁の大島長官を訪れ、長計に県の意見が反映されるよう求めた要望書を提出しました。知事はもんじゅについて、「『将来の原子力の主流』から『非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢』へと位置付けが大きく変更された。新長計を踏まえ、位置付けと今後の進め方を明確にしてほしい」と求めました。知事は同日、平沼通産相、河野資源エネルギー庁長官を訪れ、福井空港整備の事業採択、北陸新幹線の早期全線建設、リゾート新線や小浜線電化の早期整備、近畿自動車道敦賀線の早期完成も要望書で求めました。また、福井県選出の国会議員5人全員と会合し、政府与党に要望書の内容を働きかけるよう要請しました。知事は、北陸新幹線は当面金沢止まりとの意見もある中、南越(武生)までの一括工事認可を自民党が政治的に決めてほしいと要望しました。知事と国会議員の涙ぐましい暗躍が始まったのです。
 10月28日には自民党福井県連の政経文化パーティーが福井市で開かれ、栗田知事は福井空港拡張計画が政府与党の公共事業見直しリストに含まれていることに触れ「年末に対象から外していただき、2002年度には事業着手を」と要望しました。自民党野中幹事長は「(原発集中立地点に)こたえる政策を着実に進めたい」と強調したのです。
 北陸新幹線の福井県内分の実現については、財政危機の中でもありその膨大な予算から当面実現は困難と見られていました。また、福井まで実現するにはまず先に石川県内で実現させる必要があります。ところが、石川県を前に出すと、人気のない森首相の地元に利益誘導したことがあからさまになり、自民党にとっては今年夏の参院選にますます悪影響を及ぼすというジレンマもあったわけです。
 11月9・10日には核燃機構主催で敦賀国際エネルギーフォーラムが開かれました。米仏など海外の原子力関係者と地元の研究者、経済団体、福井新聞社などが参加したこの催し物は、長計策定を見越して、もんじゅ運転再開をブチ上げる「決起集会」のようでした。
 11月13日、栗田知事は定例会見で、「新長計に関して大島長官の説明に納得がいけば12月県議会前にも事前了解願いを受け取る」と、もんじゅ容認へ傾斜した姿勢をあからさまにしました。
 11月15日、福井県は2001年度政府予算編成に向けて、重要要望事項を発表しました。その中には原発周辺地域への観光振興向け交付金創設や、福井空港整備、北陸新幹線早期全線建設が含まれています。
 
新長計発表後、国も動き出す
 
 新長計が原子力委員会によって正式に発表された11月24日には、さっそく科技庁の小中審議官らが栗田知事と敦賀市の河瀬市長を訪れ、もんじゅの今後の進め方や高速増殖炉開発計画を説明しました。
 科技庁が文部省に吸収される前に、もんじゅ再開の道筋を作りたいとの科技庁の意気込みが感じられます。
 その2日後の11月26日には、大島科技庁長官も県知事を訪れ、もんじゅ早期運転再開への理解と協力を求めました。ところが、県議会では「軽々しく判断すべきでない」「(もんじゅ反対の22万人署名をあげ)県民の理解は深まっていない」などと反論が飛び出しました。地域振興への不満も噴出し、北陸新幹線の南越(武生)までの一括工事認可などを求める要望書が手渡されました。あてが外れたか、知事は「県議会の議論も見極める」と、慎重な言い回しに変わりました。
 県議会の厳しい空気に接し、若干傷ついたか、大島長官は「(今日は)お願いの第1歩」と低姿勢を示しました。
 次の27日、栗田知事は、自民党の亀井政調会長に会い、福井空港を公共事業中止対象から外すよう念を押しました。大島科技庁長官も森田運輸大臣に「福井の件をよろしく」とわざわざ要請し、もんじゅを中心に政局が回った感のある数日でした。
 その結果、28日には、公共事業見直しを進めた亀井政調会長ら与党3党の協議の中で、運輸省から中止の方針を突き付けられていた福井空港拡張工事だけが全国で唯一「保留」扱いとの「優遇」措置を受けたのです。これはもんじゅがらみの政治判断でした。
 栗田知事は当初もんじゅ事前了解願を11月末にも受け取る予定でしたが、空港と取り引きしたと思われることを懸念し、12月県議会中に受理することにしたのです。
 12月1日には、原発立地特別措置法案が可決成立してしまいました。これは9月の福井県報告が求めた地元への財政的支援要求に答えた形になっており、札束で地元民の頬をたたく露骨な原発推進策動がなされたのです。
 
北陸新幹線でもめる県議会
 
 同日始まった県議会の開始直前、県会自民党のベテラン議員が「もんじゅカードを福井空港だけに使ってもらっては困る」とまくしたてました。政府・与党が来年度予算で北陸新幹線着工区間を富山止まりと決めそうだとの観測が強まったことに対する焦りの声だったのです。県会自民党が「ここでもんじゅ再開を認めれば、北陸新幹線県内着工の担保はいつまでも取れないのでは?」と、判断したに違いありません。もんじゅに群がる諸勢力の利害が、複雑に絡んでいるのです。
 12月5日、県を訪れた敦賀の河瀬市長と栗田知事は、もんじゅ事故5周年の12月8日に事前了解願いを受理することを決めました。
 6日には県議会の超党派でつくる北陸新幹線整備促進連盟が理事会を開き、政府・与党に働きかけ、南越までの延伸を担保することに全力をあげることを決めました。理事会では「新幹線予算でない福井駅舎整備ではダメだ」「一括工事が無理なら駅舎整備、アクセス道路でも良い」などと、新幹線問題でも連盟がまとまっていない状況を露呈しました。
 同じ6日、県議会では県会自民党議員が「(もんじゅは)しかるべき条件がそろった時に論議すべきだ」と先送りを示唆しました。
 もんじゅ事故5周年の12月8日、核燃機構は福井県と敦賀市に、もんじゅの改造工事計画に関する安全審査入りを了解してほしいと、事前了解願いを提出しました。栗田知事は前日の午後8時、政府・与党の整備新幹線検討委の作業部会が8日に開かれることを知って急遽上京したため、副知事が事前了解願を受け取りました。
 しかし、会期中に県が事前了解願いを受け取ったことへの県議会の反発は予想外に大きく、「論議する時間がないと言っているのになぜ受け取った」と県会自民から非難の声があがりました。8日の突然の上京も、北陸新幹線への姿勢の甘さを県議会側から突き上げられたからだと言われています。19日の県議会終了までもんじゅの実質審議はなされないままでした。
 これは、空港や新幹線、もんじゅなどの個別の議論が深まる前に12月8日時点でこれらがリンクしてしまって、論点が整理しにくくなったためとも言われています。
 空港問題では地権者同意取付のタイムリミットをめぐり、県側は先延ばし戦術を示したのに対し、県議会では「ずるずる引きずるのか」「期限を示せ」「退路を断て」などの意見が出ました。これを受け県側は2001年5月の国への予算要求後の概算要求の時期までが同意取得のメドと示すしかなかったと言われます。県が示した、空港による振興ビジョンにも「乗客が集まるメドはない」と、県会側は厳しく指摘し、県民世論を得るように求めています。
 実は事前了解願いは当初11月末に提出する予定で内部連絡用書類は日付を埋めるだけでした。そして福井空港拡張工事見直しが「保留」となった11月28日時点では栗田知事は安全審査受け入れの意向を固め、12月1日開会の県議会冒頭に事前了解願受理を表明する方向で調整が進んでいました。にもかかわらず、事前了解願受理が1週間ほど遅れ、事前了解が棚上げ状態で、2月県議会以降になったのは、空港拡張工事や新幹線県内着工利権をめぐるこうした議論と暗闘があったからです。
 12月20日内示された2001年度予算の大蔵原案では全国の整備新幹線に当初の2倍以上の750億円を計上し、北陸新幹線では上越−糸魚川、魚津−富山間が来年度着工されることが決まりました。福井県については福井駅周辺の整備費が付いたのみでした。
 結局、もんじゅの改造工事事前了解は、2月の県議会で仕切り直しとなったのです。
 
旧長計の破綻とほころび始めた核燃料サイクル
 
 今を遡ること2年前、1999年4月統一地方選で3選された栗田知事は選挙戦では、もんじゅについて運転再開などお首にも出していませんでした。
 もんじゅ事故、JCO事故、使用済燃料容器レジンのデータねつ造やMOX燃料外径データの改ざんなど、諸事故や事件の頻発する中で、日本の核燃料サイクルに関して旧長計(1994年策定)の破綻が確実に進行していきました。
 もんじゅまでのつなぎ役とされたプルサーマルでも、BNFL社でMOX燃料データの改ざんが発覚し、高浜原発での実施は中止されています。
 また、8月の若狭ネットなど関西の市民グループとのプルサーマル公開討論会で、関電は、1998年4月の福井県武生市での公開討論会でスイス・ベズナウ原発でのMOX燃料事故を隠し、県民にウソをついていたことを認めました。プルサーマルも計画延期を余儀なくされています。
 
無理矢理もんじゅ運転再開を打ち出した新原子力長期計画
 
 そのような中、国や福井ではもんじゅ再開への布石が打たれ始めます。昨年8月長計策定会議が長計案をまとめました。その中では、「『もんじゅ』については、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付け・・・早期に運転を再開し」として、もんじゅの「必要性」が強引に語られています。
 しかし、高速増殖炉開発に関しては、軽水炉と経済性で競争できるような炉型選択、再処理法、燃料製造法等に関して何の見通しもないのです。新長計は、それを明確に示唆しています。もんじゅのような「ループ型」ではダメだとして出されていた「トップエントリー型」の実証炉建設は新長計では落とされ、実用化は事実上無期延期され、炉型はこれから考え直すと言うのです。
 こんな状態で、もんじゅの「位置付け」が明確にされたと言えるのでしょうか。新長計ではもんじゅは、高速増殖炉開発の上で、確固とした「位置」を与えられていないだけでなく、推進してきた側にとってさえ実証炉建設や実用化を見通せなくなっているのです。その結果、「『もんじゅ』の所期の目的を達成することは他の選択肢との比較評価のベースともなる」とし、もんじゅ以外の炉型や燃料製造法と比較するためにもんじゅを動かすとの位置付けにトーンダウンしています。危険極まりないもんじゅを、単に比較のために動かしてみるというのです。許されるものではありません。栗田知事は新長計を一体どのように理解しているのでしょうか。
 
「原発による地域振興」の失敗を逆手に空港・新幹線で取り引き
 
 昨年9月に福井県の出した「福井県内の原子力発電所における安全対策・地域振興等の状況と課題の評価」報告書は、80ページを超え、原発立地点の敦賀市、美浜町、高浜町、大飯町など嶺南地方の様々な産業の発展と、県内の他の市町村の産業の発展をくわしく分析して比較しています。その結果「(電源地域では)新規企業の立地も十分に進んでいるとはいえない」「観光客の減少が続いている」などと、原発推進地域振興につながらず、逆に地域の発展が阻害されていることを認めています。
 しかし、その結論は、広域的交通網の整備や一層の財政支援による長期的恒久的な地域振興を国に求めるものになっています。
 原発立地と引き替えにこの30年間福井県が国に求めてきた「おねだり」の姿勢は、結果として嶺南地方の産業育成の遅れを自ら後押ししてきたという、真摯な反省がここには全く見られません。
 
2月県議会に向け、知事に圧力を
 
 もんじゅは2月県議会が当面最大の焦点になります。以下の点を争点に、福井と関西の力で、県知事や県議会を厳しく追及し、もんじゅ事前了解を阻止し、脱原発の21世紀を勝ち取る出発点としましょう。
@空港や新幹線で、危険なもんじゅ再開を許すな
A高速増殖炉実用化無期延期を機に、もんじゅを廃炉に
Bこれ以上の税金のムダ使いを許すな