福井県小浜から池野正治さん
 
 小浜の池野といいます。大飯、高浜のことをしゃべれということだったんですが、小浜にいても実は大飯、高浜に遠いもんで。私もさきほど松下さんが言われたように、1991年の美浜事故から原発にかかわるようになって、まだ日も浅いもので前のことはわからないんですが。この10年だけ振り返ってみても高浜2号機の裁判で、蒸気発生器の細管が非常に施栓率が上がって非常に危険な段階に至ったということで、あれでPWRの危険性がみんな広く知れ渡るようになったんじゃないかなあというのが一つの、あれは事故には至りませんでしたが。高浜2号機の裁判。
 それとあと、美浜事故が起こったちょうど4年後に1995年の2月に大飯2号機で細管が、破断はしてなかったんですが大きな放射能漏れ事故を起こしまして、小浜におって知らなかったら久保きよ子さんから電話いただいて、「あんた知っとんか?」。全然知らなくて、都会にいる人の方が先にキャッチされる。あれも美浜事故と同じようにECT、渦電流探傷装置というやつですが、ECTで検査しながら見つからなかった。それでいて、放射能漏れを起こして、ヒビ割れを起こして貫通したんです。美浜1号機と同じ事が大飯2号機でも起こったわけで、もう少しで破断するところだったんです。
 そういう事故があって、関電もやっぱり冷や汗をかいたと思うんですけど、それで蒸気発生器を、古いのを全部交換し終わって、あと圧力容器の上蓋ですね。これの交換、これも全部終わりました。それで一応関西電力としても、おそらく内心ホッとしたんじゃないかなと思うんですけど。
 それであと、一番大きなのが去年、おととしのプルサーマル計画ですけれども。高浜4号機にプルサーマルが始まるということでイギリスのBNFLという所で最初のMOX燃料8体を製造したわけですが、それを持って来たんですけれども、持ってくる輸送の途中でデータが改ざんされているんではないかという、これは高浜4号機が一番最初の予定で、それ運んできたんですけれども、その後すぐ高浜3号機の燃料も作ってあったわけです。そのデータが改ざんされているというのが発覚して、「今日本へ向かっている4号機用のMOX燃料もおかしいんではないか」ということが発覚したんですけれども、もうすでに日本に向かっているものでいやいやそんな事はないということで、通産省と関西電力が一緒になって最後までウソを押し通したわけなんです。おととしの12月にデータがねつ造されているというを認めてご存じのように装荷が中止になったということです。それ以降、未だに高浜4号機のプールの中に8体残したままで、一応これはイギリスへ持って返るということになっていますけれども、どうなるかわかりません。
 そういうことで、日本で最初に商業利用は関西電力がやるということだったんですが、これでけつまずいて、東京電力がご存じのようにトップバッターになるところだったんですけれども、福島のこの前も佐藤知事が「ここらで日本の原子力政策をもう少し腰据えてゆっくり考えてみたい」ということになって、ちょっとまた福島も延びそうですし、柏崎・刈羽の方も知事が、市長さんでしたかね、ベルギーの工場に視察に行くとかいうことで、またこれも延びそうで日本のプルサーマル計画は最初からけつまずいたいうことで。そういう意味では、高浜のこのMOXのデータ改ざんというのは大きかったんじゃないかと思います。
 高浜の場合はそれ以降、それを受けて町民の方が投票条例、プルサーマルを実際やるかどうかということで投票条例を制定してほしいという直接の署名を始めたわけです。まあこれは有権者の、あれは4分の1くらいでしたかね。議会にかけられたんですけれど。これは否決されたということで、その後町長選挙があったんですが、そのときに保守系の方なんですけれど、議員さんの方で、その時にプルサーマルは町民は、さきほども石地さんの話にあったように、お上が決めたものがそのままトップダウンで降りてくるというそういう地方の政治に対して、やっぱりこういう問題は町民が自らの意志でやっぱり決めるべきだということで、保守系の議員さんが議員を辞められて町長選挙に立候補されたんです。その方とも話してみたんですけれど、比較的若い方ということで頑張られたんですけれども、現職の町長が再選されました。結果は再選ですが、これは実はもう一人有力な町長選挙に立候補された方が実はとんでもない方で、それで町民の方はとんでもない方が当選したらよけいに高浜町がひどくなるということで、それだったら現職の方がましだろうという町民の判断が働いて再選されたという風に、地元の方はそういう風に分析されています。
 それで、町議員を辞められて立候補された方は非常に少ない投票で終わったわけなんですけれども、そういう意味では高浜町の良識というのでしょうか、町民の方のそれは生きているという風に私なんかは見ています。ただ、高浜町にしても、大飯町にしても、関電の城下町ですし、そういったボスが支配している構造がありますんで、なかなか町民の方が思っていることを表に出せないという、そういう現状があります。特に、大飯町の場合はそうですし、そういう中で隣の小浜町というところは比較的声に出しやすいというところもあって、私なんかは細々とやっているんですけれども。そういうことで、高浜町はプルサーマルでの投票条例がつぶれて、それ以降反動というのがあったのかも知れませんが、やってるときも締め付けが非常にきつかった所ですし、そいうことでその後は動きがありません。
 それであと、小浜のことなんですが、ご存じのことかと思うんですが、今小浜の商工会議所が動いて小浜に使用済燃料の中間貯蔵施設を誘致しようと、割に必死になって動いています。これはご存じかと思いますが、小浜市というのは今まで大飯町とか高浜町に入る前に原発誘致ということで、ずっとあった所で、私なんかは新参なもんで当時のことは聞くだけでしか知らないんですが、小浜の方たちが必死の思いで原発誘致というのを阻止してきたところなんです。しかし、結果というとあれなんですけど、目の前に大飯原発というのがあるんですけど、ここに4基巨大な原発470万kwになるんですけど、これができたわけなんです。小浜でその誘致をしていた人たちはずっとそれであきらめたわけじゃないもので、原発の目がつぶれた後は火力発電所の誘致も動いていましたし、それはつぶれて、今度は中間貯蔵施設を誘致しようということで、3月末が一応手をあげる期限になっていますので、今それに向けて必死に工作しています。この商工会議所の裏にいるのが市長です。これは去年無投票で選ばれた人で、もと県議の方で県議時代から着々と小浜に原発誘致のために動いていた男なんです。今市長になって、市長が動くわけにいかんもんで、商工会議所が動いているですけども。もうこれも、小浜に中間貯蔵施設が実際に誘致されるかどうかは、その可能性はいろいろありますし、とにかく手をあげようとしているのが現状で。先日も15日に京大原子炉の中込という男を引っ張ってきて、中間貯蔵施設の勉強会ということを言ってますけど、これは誘致のための打ち合わせみたいなもんで、この中込というのはもと科技庁の役人です。それで安全委員会の原子力安全基準専門部会の中に中間貯蔵施設の安全審査指針の検討分科会というのが去年の12月にできたんですけど、それの有力なメンバーです。そういう男を連れてきて、商工会議所は中間貯蔵施設の勉強をやったんです。ここでも中込というのが、「早く手をあげろ、誘致したいんだったら」と言っているんです。そういうことを言っている男なんです。そういう状態で、ちょっと緊迫した状態にあります。
 あと、もう一点は、原子力防災の問題なんですけど、これは今度3月22日に高浜原発3号機で原子力防災を大々的にやります。去年は敦賀であったんですけれども、今度は高浜でやって、京都府、舞鶴市、綾部市も参加しての訓練になるんですけれども、やっぱり原発を抱えている現地としては原発があるということは原子力防災と同時に取り組まなきゃいけない問題だと思いますので、おととし原子力防災の特別措置法もできて、今福井県の原子力防災計画が策定中で今月中に出来上がります。それと同時進行で市町村の原子力防災計画が策定中なんですけれど、恥ずかしいことに小浜市、ほかの市町村のことはわかりませんので、小浜市は原子力防災計画をつくる能力もスタッフもおりません。それをどうするかというと、民間のコンサルタント会社に丸投げしてます。そして民間企業がつくってそれを持ってきて、それを手直しして、市の原子力防災計画をつくったという。そういうスケジュールになってます。そういう状態で、原発を目の前にして現地の人は暮らしているわけです。
 そういう中で、難しい問題があるんで、共存、ある意味では共存しているわけで、その中で何ができるかということですけど、なかなか芦浜、南島町の方とか、和歌山の方がおっしゃられたように、笑い顔で「昔は昔だったなあ」と、そういう日が来るんかどうかと、そういう見通しも立たない状況が現地にはあるんで、これが非常に頭の痛い問題なんです。
 それでちょっと福井県全体として、今度の県議会、2月の終わりからあるんですけれど今回問題になるのがもんじゅの問題なので、今もんじゅについては福井県民会議が取り組んでいますが、これに対する働きかけも若狭ネットの方でもお願いしたいと思うんですけど。
 それとあと、敦賀3・4号機のことですけど、増田さんから報告がありましたように、これも今年大変なことを迎える、ピークになると思うんですけど、私もずっと去年、一昨年と、敦賀1号機の、ご存じのシュラウドという中の円筒形のステンレスの交換で、被曝の問題で何回も日本原電へ行って交渉もしたんですが、その中で敦賀3・4号機のことをいろいろ話してたんですが、現実に日本原電は迷ってますね。つくるかどうか。これは作りたいのは山々なんでしょうが、作れるかどうかですね。これは建設費がご存じのように8300億円という金額ですけど。この金額で作っても、誰も買ってくれないというところで。これをいかに削減できるかというのが建設できるかどうかのポイントになるんじゃないかと思ってます。現在、日本原電が、あそこは送電網も小売り部門もないので電力3社に買ってもらってるんですが、今8円80銭で卸しています、卸価格が。これを5円台にしないと買ってもらえない。だからそうするためにはどういうふうな方策ができるかということを今日本原電は必死になって考えてます。これが5円台に行かなければ日本原電は厳しいということを彼らは言ってますし、既に日本原電の社員の給料のカットが始まっています。そういう面からはかなり厳しいのではないかなと思います。
 取り留めもない話ですけれどどうもありがとうございました。