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パブコメ締切間近!原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメに意見を7つ提出・・・あなたも声を上げてください!

パブコメ締切間近!原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメに意見を7つ提出・・・あなたも声を上げてください!

原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメは、目立たない形で進められていて、下記のように締切りが間近です。あなたの声を届けてください。

原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメ
(受付締切日時:2023年1月22日23時59分)

若狭ネット資料室室長による7つの意見を紹介しますので、参考にしてください。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その1)>

該当箇所 2ページ25-31行

意見 「ALPS処理水は関係者の理解なくして海洋放出しない」と確約した経済産業大臣と東京電力社長による各文書回答を遵守し、ALPS処理水の海洋放出方針を撤回し、海洋放出を断念し、百年間陸上保管すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議による今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)(2022.12.23)では、「多核種除去設備等で放射性物質を浄化処理してタンクに保管している水の処分は、廃炉を着実に進める上で先送りできない課題」だと一方的に決めつけていますが、タンクを急いで解体して敷地を空けなければならない理由などありません。2030年代に必要と想定されているのは乾式キャスク仮保管施設ですが、これは5-6号機の使用済燃料2,830体搬入に向けて共用プールを空けるためのものであり、急ぐ理由にはなりえません。燃料デブリを取出せるかどうかも分らない現状で、タンクの存在が廃炉作業の妨げになっていると主張する科学的な根拠は全くありません。「汚染水の発生はゼロにできる」状況が近づいていて、サブドレン水位をT.P.-2mまで下げれば、原子炉建屋滞留水が流出することなく地下水の建屋への浸入をゼロにできます。1号機屋根を2023年度に完成させ、建屋周辺のフェーシングを急げば、雨水の建屋浸入もゼロにできます。汚染水貯蔵容量には計約12万トン分の余裕(ストロンチウム処理水タンク2.5万トンの空きをはじめフランジタンク解体エリアに7.4万トンなど)があります。これらの具体的事実は市民団体との交渉で経産省等の担当者達が渋々認めたことです。
また、「漁業者等への丁寧な説明など、理解が得られるよう取り組む」としながら、「ALPS処理水は関係者の理解なくして海洋放出しない」という福島県漁連への経済産業大臣や東京電力社長による文書確約には全く言及せず、無視し続けています。最大の関係者である福島県漁連など漁民による「断固反対」の一貫した主張を踏みにじって強行された「ALPS処理水の海洋放出を行う方針」の決定は、そもそも一方的な約束違反であり、信義にもとる詐欺的行為であり、「関係者の理解が得られる」目処など全くありません。東京電力は中長期ロードマップの「30~40年後の廃止措置終了」時点(2052年頃)までにALPS処理水の海洋放出が完了すると豪語していますが、これは現実を無視した大嘘にすぎません。建屋内にはタンク内トリチウム量の1.5倍ものトリチウムが残存していて、「30~40年後の廃止措置終了」後も、建屋内からトリチウム濃度が数十万Bq/Lの高濃度汚染水が出続けて、ALPS処理水の海洋放出がさらに続かざるを得ません。このような暴挙は即刻中止し、すでに見えている「汚染水発生量ゼロ」の実現に全力を注ぐべきです。タンク内のALPS処理水はこのまま百年間保管し続けるべきです。
福島県の漁業は、2021年4月から「本格操業へ向けた拡大操業」へ移行し、総水揚数量や総水揚金額に回復の兆しが見え始めています。その矢先の同年4月13日にALPS処理水の海洋放出方針が関係閣僚等会議で決定されたのであり、これさえなければ、漁業も順調に回復していったはずです。にもかかわらず、2052年頃までの30年間どころか、それ以降も延々とALPS処理水の海洋放出が続くとなれば、福島県内で回復し始めた生業(なりわい)とその後継者育成に深刻な影響が出ることは避けられません。世代交代期間にも相当する30年以上にもわたるALPS処理水海洋放出の影響は、「損害賠償」では回復され得ないことを肝に銘じるべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その2)>

該当箇所 6ページ1-20行

意見 福島事故を受けた民主党政権による「革新的エネルギー・環境政策」も原発政策の大転換でした。その際に行われた意見聴取会、討論型世論調査、検証会合などと同レベルの国民対話を実施するまで、今回の「大転換」を棚上げにしてください。

理由 今回の原子力関係閣僚会議による「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)は、それまでの原発政策の「大転換」であるにもかかわらず、国民との対話がほとんどありませんでした。今回のパブリックコメントは、通常国会での「たばね法案」を作成しながら行われており、「国民の声を聞いたというアリバイづくり」のためのものにすぎません。「大転換」の方針を決める前に国民との対話を尽くすべきです。
たとえば、福島事故後の2012年9月14日に当時の民主党政権が決定した「革新的エネルギー・環境政策」では、それまでの原発推進策をやめて、「原発に依存しない社会の一日も早い実現」を掲げ、「2030年代に原発稼働ゼロ」が目標にされました。その決定の前には、パブリックコメントだけでなく、全国11都市で「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」を開き、討論型世論調査で国民各層の意見把握も行ない、「国民的議論に関する検証会合」を行うなど、公開で議論の透明性を高めていました。自民党政権になってからも、この方向性がすぐに変わることはなく、2021年10月に策定された第六次エネルギー基本計画では、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」とされ、原発のリプレースも新・増設も記載されていません。
今回の「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」は、このエネルギー基本計画に示された原発政策からの「大転換」だと言えますが、その決定プロセスは余りにも強引です。結論ありきの、わずか数ヶ月での有識者会議、しかも、反対意見を出す者は2名に限られた有識者会議で事務局方針を押し切り、原子力関係閣僚会議で一方的に決定したものであり、国民との対話はほとんどなされていません。少なくとも、民主党政権が「革新的エネルギー・環境政策」を決定する前に行った国民との対話を行うべきです。これを十分行うまで、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」の原子力関係閣僚会議決定は一旦棚上げにすべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その3)>

該当箇所 7-8ページ(運転期間の延長など既設原発の最大限活用)

意見 「40年で原則廃炉」、「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」を改変せず、「可能な限り原発依存度を低減する」という「現行制度との連続性に配慮」して「可能な限り最大限活用」する方針を撤回すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議は「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)を一方的に決定しましたが、「運転期間の延長など既設原発の最大限活用」という方針は、同指針が配慮すると明記している「東電福島第一原発事故を踏まえて導入された現行制度との連続性」を断つものに他なりません。「40年ルール」で代表される現行制度は、国民的な議論を経た上で、国会で十分審議されて決議されたものであり、原子力関係閣僚会議決定で勝手に変更できるものではありません。
「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、本来、政府や経産省が口出ししたり、行政の都合に合わせて、一方的に、自由に変えられるものではありません。
上記の「行動指針(案)」では「運転期間は40年とした上で、これを超えて運転をする場合には、延長の必要性について以下の事項の認定を受けなければならないことを、条件として明確化する。A:電力の安定供給の選択肢確保への貢献、B:電源の脱炭素化によるGX推進への貢献、C:安全マネジメントや防災対策の不断の改善に向けた組織運営体制の構築」とし、「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする。A:東日本大震災発生後の法制度(安全規制等)の変更に伴って生じた運転停止期間(事情変更後の審査・準備期間を含む)、B:東日本大震災発生後の行政命令・勧告・行政指導等に伴って生じた運転停止期間(事業者の不適切な行為によるものを除く)、C:東日本大震災発生後の裁判所による仮処分命令等その他事業者が予見しがたい事由に伴って生じた運転停止期間(上級審等で是正されたものに限る)」としていますが、これらは原子力規制委員会設置法が導入された際の「法の精神」に反します。「運転期間は40年」という条文の趣旨は、40年で原則廃炉という趣旨であり、その延長は例外中の例外であって容認し難いというのが、福島事故を踏まえた国民の意思、それに従い決議した国会の意思であり、条文に込められた法の精神です。それを踏みにじる「行動指針(案)」は撤回すべきです。
また、「エネルギー供給における『自己決定力』の確保や、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献に資するため、安全性確保を大前提に、運転サイクルの長期化、運転中保全の導入拡大及び定期検査の効率的な実施に取り組む。」としていますが、これは老朽炉を徹底的に駆使して設備利用率を80~90%へ引き上げ、脱炭素電源の「牽引役」にしようというもので、極めて危険です。現在の13ヶ月運転サイクル(次回定期点検までの連続運転期間)を15~16ヶ月へ伸ばし、18ヶ月さらには24ヶ月へ伸ばし、定期点検期間を2~3ヶ月ないし1年以上の現状から大幅に短縮させようというものです。かつて死傷者11名を出した2004年美浜3号配管破断事故は、このような定検短縮競争の結果であり、その二の舞になりかねません。「可能な限り最大限活用」方針を撤回し「可能な限り低減」の現行方針、さらには、「40年で廃炉」の原子力規制委員会設置法の法の精神へ戻るべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その4)>

該当箇所 9-10ページ(新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設)

意見 原発のリプレースや新・増設は、第六次エネルギー基本計画にも参議院選挙公約にもなく、「想定していない」との閣僚答弁だったにもかかわらず、「まずは廃炉原発の建て替え、今後、新増設を検討」へ「大転換」しており、撤回すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)にも注記されているとおり、2021年10月策定の第六次エネルギー基本計画には、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」とあり、原発のリプレースも新・増設も記載されていません。それから1年も経たないうちに、国民との対話もなく、2022年8月からたった4ヶ月間の、反対・慎重意見の委員が2名程度しかいない「有識者」会議で形式だけの検討をして、一方的に「大転換」しました。これは、エネルギー基本計画にも、参議院選挙公約にも、「想定していない」との一連の閣僚答弁にも違反し、国民の常識にも民主主義にも反します。即刻撤回すべきです。
「行動指針(案)」には「将来にわたり、革新技術による安全性向上、エネルギー供給における『自己決定力』の確保、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献といった原子力の価値を実現していくため、そして足下から安全向上に取り組んでいく技術・人材を維持・強化していくためにも、安全性の確保を大前提として、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。」とありますが、現在検討中の三菱重工の革新型軽水炉SRZ-1200は「次世代革新炉」とは名ばかりで、既存の第2世代PWRに第3世代APWRの設計を一部取り入れ、第3世代+のコアキャッチャーなどを取って付けただけです。高性能蓄圧タンクはECCSの追加に過ぎず、電源なしの自然循環で動く受動的炉心冷却装置ではありません。にもかかわらず、「次世代革新炉」を標榜するのは国民だましと言えます。しかも、基本設計から詳細設計にほぼ10年、2030年代初めまでかかるというのですから、その性能が実証されたものでないことは明白です。
また、「震災前と比較した依存度低減という現在の方針も踏まえ、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」、すなわち、リプレースを先行させ、新・増設についても「その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。」と、忍ばせています。「建て替え」であっても、新たに原発が建設されれば、それ以降40年以上、2060年代以降も危険な原発に依存する状態が続きます。「依存度低減という現在の方針」は本来、「原発基数と依存年数の両方を低減」する趣旨であり、21世紀後半以降も原発に依存し続けるのは現行方針に反します。さらに、「原子力発電所の建設や安全対策に係る投資を対象」に「長期脱炭素電源オークションの枠組みを活用・改善、その他の措置による、原子力を含めた計画的な脱炭素電源投資支援等」を「検討・具体化」するとしていますが、「原発は安価だ」と言うのならこのような「電力会社の負担軽減=国民負担」による「原発への投資支援」など不要なはずです。
福島事故を顧みず、国民に重大事故のリスクを受忍させ、約2万トンに達する使用済燃料のさらなる積増しに伴うリスクを後世に押しつけ、1基1兆数千億円もの原発建設費の負担を電力消費者に強要することになります。このような原発依存はもうやめるべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その5)>

該当箇所 14ページ(再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化)

意見 高速増殖炉・高速焼却炉開発破綻の現実を直視し、再処理・プルトニウム利用を中止すべきです。プルサーマルは、核暴走や炉心溶融事故のリスクを高め、プールでの90年冷却が不可避の使用済MOX燃料を生み出すため、即刻中止すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)では、「使用済燃料の再処理について、日本原燃は六ヶ所再処理工場の新たな竣工目標実現に向けて、規制当局との緊密なコミュニケーション等により、安全審査等への対応を確実かつ効率的に進める。」としていますが、このように明記せざるを得ないほど、日本原燃は技術的能力や管理能力に欠けています。日本原燃は2022年12月26日、六ヶ所再処理工場の竣工時期を「2022年度上期」から「2024年度上期のできるだけ早期」へ26回目の変更を原子力規制委員会に届けましたが、その具体的な見通しは立っていません。日本原燃は元々、取締役を含めて職員の多くが電力会社からの出向等によって成り立つ寄り合い所帯であり、プロパー職員が育成されているとは言え、現状でも「国による、工事・審査対応等の進捗や体制の随時確認、事業者に対する指導等」や「電気事業連合会『サイクル推進タスクフォース』等を中心とした、日本原燃の審査対応に対する産業大の支援の強化」など外部からのテコ入れがなくては成り立たない組織です。このような現実を直視するなら、「使用済燃料の受入れ・貯蔵、剪断・溶解、分離、精製、脱硝・製品貯蔵、高レベル廃液冷却貯蔵・ガラス固化」など極めて危険な作業を担う技術的能力や管理能力があるとは到底考えられません。破滅的な重大事故を起こす前に閉鎖し、再処理政策を中止すべきです。
また、「プルサーマルの推進や使用済燃料の貯蔵能力の拡大等に向けて、電力事業者が連携し、地元理解に向けた取組を強化するとともに、国もこうした取組をサポートし、主体的に対応する。」としていますが、電力自由化の下で市場競争を強いられる電力会社自身が、プルサーマルを重荷に感じています。その例が、MOX燃料輸入価格の高騰と仏メロックスMOX燃料加工工場の品質欠陥による操業度低下です。2022年11月に高浜3号へ搬入された輸入MOX燃料価格は12.1億円/体で、約1億円の輸入ウラン燃料価格の10倍以上です。そのため、関西電力の高浜3・4号のプルサーマルは、3年ごとに16体/基ずつしか発注しておらず、認可装荷体数40体/基の4割にすぎません。しかも、仏メロックスMOX燃料製造工場では製造欠陥による生産量低下が急激に進み、2021年には2015年と比べてMOX燃料ペレットで125HMトンから51HMトン、MOX燃料集合体数で295体から106体へ1/3程度へ減っています。これに伴い、再処理量も1205トンから1021トンへ減っていて、使用済燃料プールの満杯問題が浮上しています。
このような現実を無視し、国民の目から隠して、「事業者による、プルサーマルに係る地元理解の確保等に向けた取組の強化」や「国による、プルサーマルを推進する自治体向けの交付金制度の創設」を行うのは国民をだまし、札束で頬をたたくことに他なりません。「国・関係者による、使用済MOX燃料の再処理技術の早期確立に向けた研究開発の加速、官民連携による国際協力の推進、これも踏まえた処理・処分の方策の検討」などはこれまでから主張されてきたことで、全く進展がありません。使用済MOX燃料は使用済ウラン燃料より超ウラン元素による崩壊熱が高く、6~9倍長期間の冷却が避けられません。崩壊熱を2kW/tまたは1kWへ下げるのに使用済ウラン燃料で10年または50年のところ、使用済MOX燃料では90年または300年もかかります。プルサーマルは、核暴走事故や炉心溶融事故のリスクを高め、プールでの永久冷却を要する使用済MOX燃料を生み出すため、即刻中止すべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その6)>

該当箇所 15-16ページ(廃炉の円滑化に向けた取組)

意見 「廃炉」にされた原子力発電所の廃止措置においては、放射能で汚染された原子炉建屋等施設・構造物、機器・配管等の早期の解体撤去は行わず、そのまま密閉管理し、少なくとも100年程度の安全貯蔵期間をとるべきです。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)では、「我が国における着実かつ効率的な廃炉を実現するため、廃炉に関する知見・ノウハウの蓄積・共有や必要な資金の確保等を行うための仕組みを構築する。」としていますが、2001年に廃止措置が開始された東海原発では、2010年、2013年に続き2019年3月14日に3回目の延期が行われ、「2018年3月に解体撤去完了予定」だったものが「2030年度完了予定」へ13年延期されました。ふげん、浜岡1・2 号などでも同様に解体作業は進んでいません。その最大の原因は、解体作業で出てくる放射性廃棄物の処分先がないことです。
現行の廃止措置計画では、10~20年程度、「安全貯蔵」してから解体する方針ですが、原子炉建屋の主な汚染は長年放射線を浴びることによって生じたコバルト60であり、コバルト60は半減期5.27年であることから20年経過しても1桁下がる程度にすぎません。放射能減衰が不十分なまま解体撤去を急げば、高線量下の作業により大量の労働者被曝が避けられず、排出される放射性廃棄物により一般公衆が被曝する危険も高まります。コバルト60は100年経てば100万分の2程度にまで下がり、被ばく労働は大幅に軽減されます。
国際的にも、廃炉後の安全貯蔵期間を50~80年と長くとって放射能減衰を図る方向が主流になっています。イギリス、カナダ等では80年程度の長期貯蔵後に解体の方針がとられ、当初は早期解体撤去が多かった米国でも、60年かけて長期貯蔵した後に解体する方針が増えています。ドイツではグライフスバルト原発5基(すべてVVERで運転中4基、試運転中1基。他に建設中3基も解体)が解体撤去されましたが、労働者被曝低減のため、大型機器は全て解体せず一括撤去し、使用済燃料と共に、隣接する中間貯蔵施設にそのまま保管されています。最終処分先は未定のままです。当初安定だと思われた岩塩層に設けた中低レベル用の処分場に地下水が流れ込むおそれがあると判明し、投棄した廃棄物約20万立方メートルを回収しなければならない事態に陥っているからです。米国では軍事用ハンフォードサイト内のリッチランド処分場でしか解体廃棄物を処分できず、一括撤去した大型機器の長距離運搬リスクが高くなっています。
放射能で汚染された原子炉建屋等施設・構造物、機器・配管等の早期の解体撤去は行わず、そのまま密閉管理し、少なくとも100年程度の安全貯蔵期間をとるべきです。法令では、廃止措置実施方針に、「廃止措置の対象となることが見込まれる発電用原子炉施設及びその敷地」および「前号の施設のうち解体の対象となる施設及びその解体の方法」(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第百十五条の二の第四号及び第五号)を定めることとされていますが、廃止措置期間については「廃止措置期間中に機能を維持すべき発電用原子炉施設及びその性能並びにその性能を維持すべき期間」(同第十一号)とあるだけで、年数の定めはありません。したがって、100年貯蔵後の解体を当面の方針とすれば、法令上の問題は生じません。
「行動指針(案)」では、「クリアランス対象物の再利用のための実証、その安全性確認や再利用方法の合理化の推進」を掲げ、電力会社も「クリアランス物の搬出先確保が困難」だから「フリーリリースの実現が必要」で「クリアランス対象物の拡大、検認保守性の排除、法手続きの簡素化も必要」との声を上げていますが、原発からクリアランスされた鋼材が市民生活の中で使われるような事態は避けるべきです。100年貯蔵へ転換して放射線管理区域の解体撤去をやめればクリアランスそのものが不要になります。
運転年数が長く設備利用率が高いほど、原子炉建屋内の誘導放射能は増え、使用済核燃料内の放射能(死の灰や超ウラン元素)が増えるため、可能な限り速やかにすべての原発を廃炉状態にすることが現世代の最優先の責任です。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その7)>

該当箇所 17ページ(最終処分の実現に向けた取組)

意見 地震・火山国である日本には長期にわたって変動しない安定な地層など存在せず、高レベル放射性廃棄物を深地層処分すべきではありません。使用済燃料を含めた高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないことこそが現世代の責任です。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)では、「最終処分事業に貢献する地域への敬意や感謝の念が社会的に広く共有されるよう、国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働きかけを抜本強化するため、文献調査受け入れ自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築、実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の体制強化、国と関係自治体との協議の場の設置、関心地域への国からの段階的な申入れ等の具体化を進める。」としていますが、これは、高レベル放射性廃棄物の深地層処分を国民が支持していないことの裏返しです。政府もNUMOも「国民理解」が進まない理由と現実を直視すべきです。
地震・火山国である日本には長期にわたって変動しない安定な地層など存在しません。高レベル放射性廃棄物(再処理を放棄すれば使用済燃料も含まれます)の深地層処分は、その危険を見えなくし、将来世代に見えない危険を先渡しするだけであり、実施すべきではありません。使用済燃料を含めた高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないことこそが現世代の責任なのです。
深地層処分実施主体の原子力発電環境整備機構NUMOは2018年11月に包括的技術報告書をまとめ、地層処分は「人間の生活環境に有意な放射線影響を与えるものではない」と主張しています。しかし、半減期28.7年のストロンチウム90(Sr-90)や半減期1,570万年のヨウ素129(I-129)は水に溶けやすく土壌に吸着されにくいため、処分場閉鎖直後から放射能が溶出し始めます。現行の「TRU廃棄物パッケージA」では、わずか10年(Sr-90)ないし数十年(I-129)で地上へ到達し、生活環境の被ばく原因になります。処分場閉鎖300年後から溶出するとされる「TRU廃棄物パッケージB」に取替えても、放射能が溶出し始める」と想定されています。つまり、TRU廃棄物や高レベル放射性廃棄物を深地層処分すれば、早ければ10年程度で、遅くとも1,000年程度で、放射能が処分場から溶け出して生活環境を汚染していく恐れがあるのです。
NUMOは「不確実さを考慮しても公衆の被ばく限度1mSv/年を下回る」と主張していますが、都合のよい仮定に基づくモデル計算にすぎません。また、稀頻度事象シナリオでは、埋設後に震源断層が活動して処分場を断裂するケースや火山マグマが噴出して処分場ごと吹き上げるケースが想定されていますが、これらのケースでは被ばく線量が1mSv/年を超えてしまうため、1年目は「緊急時被ばく状況の参考レベル20~100mSv」、2年目以降は「現状被ばく状況の参考レベル1~20mSv/年」を評価基準とし、この上限を超えなければよいとしているのです。これは、現行法令違反であるだけでなく、「深地層処分で将来世代に深刻な被ばくが生じても構わない」という身勝手な立場であり、高レベル放射性廃棄物を生み出した電力会社、原子力メーカー、国ひいては現世代の責任を顧みないものと言えます。
「絶対安全」と豪語された福島第一原発では、運転開始からわずか40年も経たないうちに、3基が一斉に炉心溶融事故を引き起こしました。国際的に未経験の深地層処分で、NUMOが「10年ないし1,000年は溶出しない」と豪語しても全く信用できません。現に、ドイツでは、安全だとされた岩塩層の低レベル放射性廃棄物処分場が危険だとわかり、その時点までに投棄された放射性廃棄物20万立方メートルを回収することが2010年に決定されています。深地層処分では、処分した後に処分場が危険だとわかっても、処分された高レベル放射性廃棄物を回収するのは不可能です。また、国は、福島事故前は1mSv/年の公衆の被ばく限度を法令で担保しながら、事故後には現存被ばく状況だとして1~20mSv/年の被ばくを強要し、2011年8月時点で約400万人もの人々を放射線管理区域と同様の汚染状況下に放置して1mSv/年以上の被ばくを余儀なくさせ、20mSv/年未満で避難指示を解除して避難者への住宅支援を打ち切り、福島県民の被ばくの犠牲の上に福島事故をなかったことにしようとしています。NUMOによる緊急時被ばく状況や現存被ばく状況に基づく被ばく評価基準はこの立場を踏襲するものであり、許容できません。
日本での深地層処分は不可能だと判断し、使用済燃料を含めた高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないために、原発・核燃料サイクル推進政策を脱原発へ抜本的に転換すべきです。

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