若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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経産省に「託送料金への原発コスト転嫁反対」の公開質問状を提出

経産省に「託送料金への原発コスト転嫁反対」の公開質問状を提出

本日(2017年10月5日)、「託送料金への原発コスト転嫁反対」署名提出に際しての公開質問状を経産省へ提出しました。
衆議院選挙(10月10日公示、22日投票)が急に入ったため、署名の提出・交渉は11月初旬になりますが、パブリックコメントへの回答を踏まえて下記の公開質問状を提出し、11月10日までの経産省の都合良い日を選ぶように求めています。
署名は6月28日の提出以降も増え続けており、10月5日現在累計3万6千筆強に達しています。
10月31日が第4次締切ですので、今回の署名提出・交渉に間に合うよう、早めに久保(連絡先は署名用紙に記載)までお送り下さい。

呼びかけ団体:若狭連帯行動ネットワーク(事務局)、双葉地方原発反対同盟、原発の危険性を考える宝塚の会、日本消費者連盟関西グループ、関西よつ葉連絡会、安全な食べものネットワーク オルター、サヨナラ原発福井ネットワーク、福井から原発を止める裁判の会、吹夢キャンプ実行委員会、福島の子供たちを守ろう関西、さよなら原発神戸アクション、さよならウラン連絡会、おかとん原発いらん宣言2011、原発ゼロ上牧行動、STOP原子力★関電包囲行動、とめよう原発!!関西ネットワーク、さよなら原発なら県ネット、地球救出アクション97、ヒバク反対キャンペーン、さよなら原発箕面市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、環境フォーラム市民の会(豊中)、科学技術問題研究会、さかいユニオン、大阪自主労働組合、社民党福島県連合、フクシマ原発労働者相談センター、日本消費者連盟、原子力資料情報室
(事務局連絡先:〒591-8005 堺市北区新堀町2丁126-6-105 若狭ネット資料室 長沢啓行)

2017年10月5日
経済産業大臣 世耕 弘成 様

「託送料金への原発コスト転嫁反対」署名提出に際しての公開質問状

(公開質問状のpdfはこちら)

私たちは、「福島事故関連費と原発コストを『電気の託送料金』に転嫁しないでください」の署名3万3,328筆(累計)を6月28日に第3次提出し、担当職員と意見交換しました。その後、電気事業法施行規則改定案と廃炉等積立金管理業務省令案が提示され、1ヶ月間のパブリックコメントを経て、9月15日に回答が出されました。しかし、回答の内容は新味に乏しく、説得力に欠け、到底納得できません。また、廃炉費6兆円を捻出するための「託送料金高止まりの基準」は未だに示されていません。「福島事故関連費と原発コストの託送料金による回収」に反対する声は着実に広がっており、署名はその後も続々と集まってきています。つきましては、署名を第4次提出し改めて意見交換したく、ここに今回のパブコメ回答を踏まえた公開質問状を提出致します。署名提出・意見交換の日時については、衆議院議員選挙も考慮して10月30日~11月10日の間で、担当者出席のうえ十分質疑可能な午後1時半~3時とし、経済産業省の方でご指定ください。

<質問事項>

1.損害賠償費一般負担金「過去分」について
(1)商法違反・民法違反ではないか?
商法第502条三項には「電気又はガスの供給に関する行為」を「営業としてするときは、商行為とする。」と記され、民法第173条には「次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。」と記され、その第一項に「生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権」とあります。1966~2010年の電気料金に計上すべきだったとする一般負担金「過去分」の請求は、当時の代金に基づきすでに完了した商取引に関するものであり、「当時の代金の未収分に関する債権」はそもそも存在しませんが、仮に未収分に係る債権が存在していたとしても消滅しています。そこで質問します。

(1a)一般負担金「過去分」を当時の電気料金の未収分=債権として回収するのは明らかに商法違反および民法違反だと私たちは考えますが、いかがですか。

(1b)過去の電気料金の過小算定が後日判明し、その分をそれ以降の電気料金に算入すること自体は許容されると言えます。ただし、一般負担金「過去分」の場合には、電気料金原価の中の原発コストの増分として回収すべきであり、託送料金の中に「ユニバーサル料金」と見なして算入するのは、原発の電力を受電しない消費者(商取引のない消費者)に原発のコストを強制的に負担させるものであり、商法違反だと私たちは考えますが、いかがですか。

(1c)施行規則パブコメ回答No.79では、「規制料金の下では、一般的な商取引のように将来に追加的な費用が発生するリスクを勘案し、あらかじめその費用を回収することは認められておらず、料金の算定時点で現に発生している費用等、合理的に見積もられたもののみを原価に算入することを認めるという運用を行ってきました。このため、元来、合理的に算定できない時点では回収していなかったものも、費用の発生が明らかになった時点で、その時点の料金原価として算入するという考え方を採っており、今回の措置に御指摘の問題があるとは考えておりません。」としています。この回答でも「その時点の料金原価として算入する」としており、「債権の回収」という考え方を取っていません。これは上記質問(1a)には「イエス」と回答し、質問(1b)の「電気料金原価の中の原発コストの増分として回収すべき」という点については「イエス」と回答するものだと私たちは考えますが、いかがですか。

(1d)結局、原発コストを「料金原価」として回収すべきところ、今回の「電気事業法施行規則」改定案では、託送料金の「ユニバーサル料金」として「商取引のない消費者にも負担させる」ことになっており、明らかに商法違反だと私たちは考えますが、いかがですか。もし、商法違反ではないと主張するのであれば、原発コストの一部である一般負担金「過去分」を「ユニバーサル料金」として託送料金へ転嫁できるという法的根拠を示して下さい。
私たちの資料請求への経産省回答(2017.4.6)では、「託送料金については、電気事業法上、送配電網の維持・管理にかかる費用などに加え、離島の発電費用を含むユニバーサルサービス料金など、『全ての消費者が広く公平に負担すべき費用』を含めることができる制度となっております。」「今回の議論は、あくまで今後の託送料金の原価にどのような費用の算入を認めるかというものであり、何らか商法上の問題が生じるとは考えておりません。」とされていますが、電気事業法には「離島ユニバーサルサービス調整制度」の規定はあるものの、公租公課とは異なる原発コストのような個別の料金原価をユニバーサル料金として託送料金に原価として計上できるという規定は存在せず、法的根拠のない無理な拡大解釈だと私たちは考えますが、いかがですか。

(1e)「過去分」以外の一般負担金(5.4兆円の損害賠償金のうち東電の負担する特別負担金以外のもの)はこれまで通り、原子力事業者の原発コストの中に計上され、「託送料金以外の電気料金」として回収され、新電力契約者からは今後も回収されません。他方、一般負担金「過去分」2.4兆円については託送料金に計上され、2020年度以降、40年にわたって、新電力契約者からも回収されます。つまり、新電力契約者は、原子力事業者に現在課されている一般負担金については支払う必要がなく、一般負担金「過去分」については支払う義務を課せられることになります。ところが、一般負担金も一般負担金「過去分」も「その時点での料金原価」であり、両者に料金原価としての差異はありません。両者を回収法において区別できるという法的根拠を説明して下さい。

(2)一般負担金「過去分」2.4兆円は、東電と大手電力の負担軽減に使われるのでは?
第6回東京電力改革・1F問題委員会(2016.12.9)参考資料では、損害賠償費が5.4兆円から7.9兆円へ2.5兆円増えています。そのため、新たな負担分として、東京電力に1.2兆円(特別負担金0.67兆円と一般負担金0.53兆円)、大手電力に一般負担金1.0兆円、新電力に一般負担金0.24兆円が課されています。ところが、特別負担金の増分0.67兆円を除く一般負担金の増分は約1.8兆円弱であり、一般負担金「過去分」2.4兆円はこれより0.6兆円強も多いのです。この分が当初の損害賠償費5.4兆円のうち一般負担金約4.1兆円(東電1.4兆円と大手電力2.7兆円)の減額=負担軽減に使われるのではないかと私たちは疑っています。そこで質問します。

(2a)私たちの資料請求への経産省回答(2017.4.6)では、一般負担金「過去分」2.4兆円の割当は、東電約0.8兆円、大手電力約1.4兆円、新電力0.24兆円となっており、これらは2020年度以降、託送料金として新電力契約者を含む全消費者(沖縄電力管内を除く)から回収され、この割合で東電と大手電力に譲渡されます。新電力のシェアが想定の10%から増えて、新電力分の0.24兆円を超えても、その超過分は東電と大手電力にそれぞれの管内での託送料金に含まれますので、事実上、東電と大手電力への譲渡金額はほとんど変わらないと考えられます。すると、東電は1.4兆円から0.53兆円増額のところ、0.3兆円弱の減額(=0.53兆円-0.8兆円)、大手電力は2.7兆円から1.0兆円増額のところ、約0.4兆円の減額(=1.0兆円-1.4兆円)になります。これに相違ありませんか。

(2b)施行規則パブコメ回答No.25では、「2011年の機構法制定当時、同法に基づく一般負担金について、規制料金が続くことを前提に電気料金に転嫁し、消費者から広く薄く公平に回収するということを決定しました。しかし、自由化の進展に伴って新電力への切り替えが進んでいることを受けて、『福島を支える』という観点や、新電力へ切り替えた方々を含め原子力の電気を広く消費者が利用していた実態があること等も勘案し、消費者間の公平性の観点から、託送制度を利用した、公平な回収措置を講じることといたしました。」としています。しかし、質問(2a)で指摘したように、一般負担金「過去分」の託送料金としての回収によって、東電と大手電力の一般負担金はそれぞれ0.3兆円弱と約0.4兆円が減額され、新電力だけが新たに0.24兆円を負担させられます。「公平な回収措置」の結果、東電や大手電力を優遇し、新電力に新たな負担を強いる結果になっていますが、それに相違ありませんか。

(2c)東北電力の東通1号と女川3号、東京電力の柏崎刈羽1号と福島第二原発3・4号、北陸電力の志賀2号、日本原電の敦賀・東海については複数の電力会社で「共同開発」(各電力会社の供給力に算入して受電・購入契約を締結)しており、複数の一般送配電事業者を通って送電されるため、託送料金が複数課され、一般負担金「過去分」も複数課されることになります。このようなケースについて、施行規則パブコメ回答No.28では「当該原子力発電事業者から受電していた旧一般電気事業者の供給区域に応じて、各一般送配電事業者に按分されることになります。」としていますが、これは100万kWを1/2ずつ受電する場合、一般負担金「過去分」の100万kW相当分を1/2ずつ一般送配電事業者に按分するという意味だと私たちは考えますが、いかがですか。
これらの複数の一般送配電事業者を経由して送電される場合、それぞれに対して託送料金が発生し、その都度、一般負担金「過去分」が回収されるため、一般負担金「過去分」の過剰な回収になるのではありませんか。このような矛盾は一般負担金「過去分」を託送料金で回収するところから来るものであり、一般負担金「過去分」を託送料金で回収するのではなく、これまで通り、新電力には課さず、小売事業者の電気料金として回収すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。

(3)そもそも、東電を破産処理すべきでは?
今回のパブコメ意見でも、その多くが、東電の責任で損害賠償すべきであり、それが不可能なら東電を破産処理し、東電役員、株主、金融機関にも私財提供や債権放棄などで責任をとらせ、国会で十分議論すべきだと指摘しています。そこで質問します。

(3a)施行規則パブコメ回答No.8では「仮に東電を破綻させ、法的整理を行った場合、破綻処理により資産を売却しても多額の売却益を見込めない」としていますが、東電役員による私財提供や株主・金融機関の債権放棄を行わせれば、現状でも9兆円相当の資金を捻出できると私たちは考えますが、いかがですか。

(3b)施行規則パブコメ回答No.8では続けて「東電が将来の収益をもって責任を果たすべき廃炉・汚染水対策や賠償の費用相当が国民負担となります。また、国が出資した東電株も無価値化するため、結果的に国民負担が増加することとなります。」としていますが、今回の電気事業法施行規則改定案と廃炉等積立金管理業務等省令案などは、以下の通り、東電救済のために8.6兆円を託送料金へ転嫁する「国民負担」の仕組みそのものだと私たちは考えますが、いかがですか。
一般負担金「過去分」2.4兆円は、納付義務のある原子力事業者が自らの経営努力で賄うべきであり、託送料金を介して、納付義務のない電力消費者から強制的に回収し、また、原発とは無縁な新電力契約者からも回収するのは新たな「国民負担」そのものだと私たちは考えますが、いかがですか。
これらを立替えるための13.5兆円の交付国債(損害賠償7.9兆円、除染4兆円、汚染土等中間貯蔵施設1.6兆円)は銀行からの借金で運用されており、その利子は一般会計から賄われています。2016年度の利払いは132億円に上り、これまでに325億円、今年度予算で400億円が利払勘定(原子力損害賠償支援資金)に追加され、累計725億円に上ります。本来、東電破産処理で債権放棄させるべき金融機関であるにもかかわらず、損害賠償資金等貸付で儲けさせるのは新たな「国民負担」の仕組みの結果だと私たちは考えますが、いかがですか。しかも、政府は帰還困難区域の除染費等(今年度事前調査費で309億円、累計数兆円に上る)を東電に求償せず、税金で賄う方針ですが、これも新たな「国民負担」だと私たちは考えますが、いかがですか。
廃炉費不足分6兆円は、東電が自らの責任で賄うべきであり、それが不可能なら東電を破産処理し金融機関等の債権放棄で9兆円程度を回収し、不足分は原発で潤った原子力メーカーや電力多消費企業等への課税や富裕層中心の累進課税で賄うべきです。にもかかわらず、東電管内での託送料金高止まりの特別措置や柏崎刈羽原発再稼働などによって捻出しようとするのは新たな「国民負担」そのものだと私たちは考えますが、いかがですか。
廃炉会計制度に関する原発コスト0.2兆円は、関西・中国・四国・九州の各電力と日本原電がこれまで通り電気料金から賄うべきであり、託送料金を介して強制的に回収し、また、原発とは無縁な新電力との契約者からも回収するのは新たな「国民負担」そのものだと私たちは考えますが、いかがですか。

2.福島原発廃炉費について
(1)託送料金高止まりによる利潤確保ではないか?
廃炉等積立金パブコメ回答No.7では「託送料金の値下げ命令の対象としない東京電力パワーグリッドについては、本基準とは別途、託送料金を高止まりさせないための措置を講じる予定です」とし、廃炉等積立金パブコメ回答No.16では「託送料金が高止まりすることがないよう、東電に対しては、福島事故関連の資金を捻出するのみにとどまらず、消費者還元も生み出すような最大限の合理化を求めることとし、また実際に託送料金が高止まりしないための措置を講じる予定です」としています。しかし、東電管内の託送料金を高止まりにしないと、廃炉費6兆円に相当する2千億円程度の超過利潤を毎年捻出することは不可能です。そこで質問します。

(1a)廃炉等積立金管理業務等省令案では、託送料金の営業費用に「廃炉等負担金」、営業利益に「廃炉等負担金収益」を項目として挙げることにしていますが、これらは託送料金の原価ではなく、廃炉等積立金パブコメ回答No.7でも認めているように、この省令案だけでは託送料金から廃炉費6兆円を回収することはできません。託送料金を高止まりにさせるためには、「電気事業法に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準等」(20170605資第46号)の「第2 処分の基準」「(14)第19条第1項の規定による託送供給等約款等の変更の認可の申請命令」を出す基準を変更する必要があります。現在は、「(1)託送供給等約款が、物価の大幅な変動や需要構成の著しい変化があるなど社会的経済的事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認められる場合、(2)当期超過利潤累積額が一定水準額を超過している場合、(3)補正後乖離率が一定の比率(マイナス5パーセント)を超過している場合」が列挙されていますが、この基準をどのように変えるつもりですか。具体的に説明して下さい。その際、他の送配電事業とは別に、東京電力パワーグリッドだけに特別な巨額の超過利潤取得を認めること(事実上の東電による独占価格の設定)が許されるという法的根拠を示して下さい。
廃炉等積立金パブコメ回答No.16にある「実際に託送料金が高止まりしないための措置」とは上記基準の変更を指しているのですか。それとも、他の「措置」があるのなら、それを具体的に説明して下さい。

(1b)これほど重大な基準の改定が国民の目の届かないところで秘密裏に行われるのは許せません。基準変更の議論はいつ、どこで行われ、変更案の国民への提示はいつ、どのように行われる予定ですか。電力・ガス取引監視等委員会などで検討される予定はあるのですか。それとも、経産省内だけで一方的に決められるのですか。パブコメ意見の多くで指摘されているように、原発コスト8.6兆円の託送料金による回収については、国会の場で慎重に議論すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。

(2)今の5倍が必要な送電網更新を妨げないか?
託送料金の原価の大半は減価償却費であり、鉄塔・架線など耐用年数が50~30年の送配電網の更新が待ったなしです。鉄塔は1960年代後半から大増設され、2015年末で24.8万基になりますが、今の年1千基の更新ペースでは全更新に200年以上もかかってしまいます。50年サイクルで更新するには毎年5千基、今の5倍増にしなければ追いつきません。この減価償却費急増を考慮すれば託送料金は2倍にも跳ね上がる可能性があり、廃炉費を毎年2000億円レベルで捻出するのは不可能に近いといえます。無理をすれば送配電網の更新が繰り延べされ、送配電トラブルが頻発し、大停電が起きる可能性もあります。このような現状で、廃炉費6兆円を託送料金で賄うのは無謀です。そこで質問します。

(2a)耐用年数ベースで送配電網を更新する場合、託送料金に占める減価償却費がどの程度増えると経産省は試算しているのですか。

(2b)送配電網の5倍以上のペースでの更新を考慮した場合、託送料金は実際に値上がりし、さらに毎年2千億円相当の超過利潤を捻出するには託送料金の高止まりが避けられないのではありませんか。そうならないという保証は一体どこにあるのですか。

(3)廃炉費は6兆円をはるかに超えるのでは?
廃炉費不足金6兆円は、米国スリーマイル島原発炉心溶融事故の燃料デブリ取出・輸送費約10億ドルに基づき、燃料デブリ量が6倍、高線量環境による遠隔操作の必要性から5倍、30~40年間の物価上昇で2倍、計60倍で約600億ドルと見なした結果です。原子力損害賠償・廃炉等支援機構による「東京電力HD福島第一原発の廃炉のための技術戦略プラン2017」(8.31)によれば、気中・横アクセス方式による格納容器下部のデブリ取出も困難を極め、圧力容器内部のデブリは気中・上アクセスで行うしかないものの難度が高く、格納容器下部ペデスタル外のデブリ取出はさらに難度が高いとされています。廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議で9月26日に了承された「東京電力HD福島第一原発の廃止措置に向けた中長期ロードマップ」(第4回改訂版)では、1~3号燃料プールからの使用済核燃料取出が3年繰り延べられ、第3期(燃料デブリ取出開始~廃止措置完了)も開始時期がずれ込み、期間が長引くのは避けられません。燃料デブリ取出・輸送費に限っても6兆円をはるかに超える可能性が高く、全デブリ取出の可能性も不確かです。そこで質問します。

(3a)6月28日の私たちとの意見交換では、福島第一原発の放射性廃棄物処分費を含めた廃炉費について「現時点で総額いくらかかるのか見積もりを示すことは困難です」と回答されましたが、政府は燃料デブリ取出・輸送費だけで廃炉費不足分を6兆円と見積り、毎年2千億円を30年間かけて積立てることを想定しています。つまり、廃炉費不足分が6兆円を超えることは当然のこととして、廃炉に伴う放射性廃棄物処分費は第3期に移ってから東電が計画を策定し見積もるものと理解してよろしいでしょうか。

(3b)廃炉費不足分が6兆円を超えた場合、その分も託送料金高止まりによる超過利潤(事実上の独占利潤)で賄う予定だと理解してよろしいでしょうか。

3.廃炉に関する会計制度について
(1)原発コストはユニバーサルサービス料金か?
廃炉会計制度による廃炉費積立不足金と廃炉時未償却資産は、現在、原子力事業者の原発コストに計上され、規制料金契約者には「託送料金以外の電気料金」として回収され(自由料金契約者の電気料金から回収できる保証はない)、新電力契約者からは回収されていませんが、2020年度以降、新電力契約者からも回収されます。この原発コストは、託送料金におけるユニバーサルサービス料金とは無関係であるにもかかわらず、託送料金の原価として計上されようとしています。そこで質問します。

(1a)廃炉会計制度による原発コストは、「廃炉円滑化負担金」として託送料金の原価に算入されようとしていますが、施行規則パブコメ回答No.85では「電気事業法上、送配電網の維持・管理にかかる費用等に加え、ユニバーサル料金等『全ての消費者が広く公平に負担すべき費用』を含めることができる制度」の「趣旨に照らし」という以上の説明がありません。原発コストをなぜ「ユニバーサル料金」として「託送料金の原価」に計上できるのか、その法的根拠を電気事業法に沿って具体的に説明して下さい。

(1b)施行規則パブコメ回答No.82では、「ユニバーサル料金等」とは無関係に、「原発依存度の低減、廃炉の円滑な実施といったエネルギー政策の目的を達成するために必要な例外的な措置」だとしていますが、このような例外的な措置を導入できるという電気事業法上の法的根拠を説明して下さい。
すでに「使用済燃料再処理等既発電費」等が託送料金の原価に計上されていますが、2019年度で終わります。これも「例外的な措置」だったはずであり、今回も「例外的な措置」だというのなら、例外が通例になってしまうと私たちは考えますが、いかがですか。そうならない法的制限措置があるというのであれば、その法的規定を具体的に説明してください。

(2)廃炉になっても未償却資産を回収できる?
施行規則パブコメ回答No.82では「廃炉会計制度は、自由化により競争が進展した環境下においては、廃炉に伴って一括して巨額な費用が生じることにより、事業者の合理的な廃炉判断が歪んだり、円滑な廃炉の実施に支障を来し、原発依存度の低減が進まないといった懸念に対応するため、規制料金による費用の着実な回収を前提として措置したもの」だとしていますが、事実は違います。廃炉会計制度が導入されてから廃炉になった6基はいずれも小型で最も古い設計であり、巨額の対策工事を行っても投資効果に乏しいと判断された結果にすぎません。現に、高浜1・2号と美浜3号ではそれぞれ2千~3千億円もの工事費を注ぎ込んで40年超運転を行おうとしています。そこで質問します。

(2a)廃炉会計制度は、高浜1・2号や美浜3号のように巨額の対策工事費を投じて再稼働できなかった場合や再稼働後早期に廃炉になった場合に、未回収資産を回収できる制度と化しており、事実上、40年超運転を促し、「合理的な廃炉判断を歪め、円滑な廃炉の実施に支障を来している」と私たちは考えますが、いかがですか。

(2b)廃炉費は運転開始40年で回収する方針に変更されたため、廃炉費積立不足金は今後ほぼ発生せず、廃炉時未償却資産だけが対象になります。これは電力会社の原発に限ってその資産回収を支援する制度にほかなりません。このような制度を導入できるという電気事業法上の法的根拠はないと私たちは考えますが、いかがですか。もし、法的根拠があるというのなら、それを具体的に説明して下さい。
以上

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