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ニュース

若狭ネット第194号を発行:トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対! 関電は約束違反を認め、高浜・美浜原発の運転を止めよ!

若狭ネット第194号を発行しました。

第194号(2023/7/20)(一括ダウンロード3.7Mb)
巻頭言–トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対!
関電は約束違反を認め、高浜・美浜原発の運転を止めよ!
1. 使用済MOX燃料等の仏搬出・再処理は関西電力の「約束」とは無関係!
関西電力は約束違反を認め、高浜1・2号と美浜3号の運転を停止せよ! 山崎隆敏(越前市)
2. IAEA報告は、ALPS処理水の海洋放出を「正当化」できず、ロンドン条約・国内法令違反を無視し、「害の受忍」を世界に迫るもの
3. 原子力規制委員会は、実施計画の違反容認・不記載の責任をとり、「実施計画違反のALPS処理水海洋放出」を即刻中止せよ!

2023年6月12日ALPS処理水海洋放出に関する10団体主催・東京電力との交渉報告:東京電力は文書確約を遵守し、真水による試験放出など準備作業を直ちに中止し、「福島県漁連などが反対している限り放出しない」と約束せよ!サブドレン及び地下水ドレン運用方針違反、実施計画違反の責任をとり、「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の夏頃海洋放出」を断念せよ!

2023年6月12日ALPS処理水海洋放出に関する10団体主催・東京電力との交渉報告

東京電力は文書確約を遵守し、真水による試験放出など準備作業を直ちに中止し、「福島県漁連などが反対している限り放出しない」と約束せよ!サブドレン及び地下水ドレン運用方針違反、実施計画違反の責任をとり、「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の夏頃海洋放出」を断念せよ!

東京電力への質問書(2023.5.30)
東京電力との交渉報告
東京電力との交渉記録
東京電力との交渉資料

トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に向けた準備作業が「汚染水を真水に置き換えての海洋放出の試験運転」という最終段階に入った6月12日、早朝から試験放出が始まる緊迫した状況の中、私たち、脱原発福島県民会議をはじめ10団体は午後1時半から4時前まで、海洋放出撤回を求め、福島市内で東京電力との交渉をもちました。市民側参加者約50名(マスコミ5名を含む)で、その大半は福島県内の各地から駆けつけた市民で、「これまで何度も、関係者の理解を得ない限りは放出しないと言っていたのに、真水で試験放出を開始するとは、東電は何を考えているのか!」「約束違反ではないか!」と、強い怒りを持って東電に抗議しました。そして、参加者が一体となって東京電力の無責任な姿勢を追及し、海洋放出の撤回を求めました。
東京電力は当初、「マスコミは最初の挨拶までで退席するように」と求めていましたが、会場の強い抗議の声で「一通りの東電回答終了まで取材可」となりました。ところが、東京電力は今回、文書回答の事前提出に応じず、準備した東電回答を次々と読み上げたのですが、「重要な質問項目を飛ばして回答しない」、「全く異なる質問に同じ回答を延々と続ける」など人を馬鹿にした回答が続いたため、回答のいい加減さをデータで具体的に指摘し、質問の趣旨を正確に説明して具体的に回答するよう求めました。すると、東電側出席者4名全員が回答できずに黙ってうつむく「沈黙の時間」が増え、「(指摘された点について)ここでは肯定も否定もできない」、「社へ持ち帰ってしかるべき部門に伝え、すべての質問項目に対して6月末を目途に文書回答を出す」という結果になったのです。結局、一通りの東電回答だけで2時間を費やしたものの、マスコミは最後まで退席せずに取材できました。
不十分な東電回答でしたが、それでも、質問の趣旨を巡るやりとりや東電の「度重なる長い沈黙」・回答姿勢などを通じて、次のように重要な成果が得られました。

ALPS処理水海洋放出に「理解」は得られず、準備作業強行が逆に「理解」を妨げ、不信感を増している

第1に、「ALPS処理水は関係者の理解なしにはいかなる処分もせず、タンクに貯留し続ける」との福島県漁連への文書確約について、私たちは、福島県漁連が「絶対反対」を貫いており、「国内外の関係者の理解」など得られていないこと、海底トンネル掘削工事や真水による試験放出は文書確約違反であり、関係者の理解を一層困難にしていることを改めて示し、「真水による試験放出を直ちに中止し、福島県漁連などが反対している限り放出しない」と約束するよう強く迫りました。司会や会場からの鋭い追及に、東京電力は長く「沈黙」して答えられず、「予め頂いていない質問だ」とかわそうともしましたが、質問内容そのものだと迫られると、「『理解』については、いろんな立場、考えの方がいて一律には言えない」、「準備作業が『理解』を妨げることにはならない」と開き直りました。すると、司会や会場から一層激しく追及され、東京電力は論点を変えようとしたり、「それぞれの立場を尊重して説明させて頂いている」と逃げようとするなど、しどろもどろの対応に終始したのです。結果として、海洋放出に「理解」は得られておらず、準備作業の強行が逆に「理解」を妨げていることが事実で示されました。

地下水ドレン汲上げ水6 .5万 m 3のALPS処理水への混在は「緊急的な対応」の結果だと口裏合わせ

第2に、「サブドレンおよび地下水ドレン汲上げ水の混在するALPS処理水は海洋放出できない」との原子力規制庁担当者の断言(2023.2.9対政府交渉)に基づき、私たちは、ALPS処理水には地下水ドレン6.5万 m 3が混在しており、ALPS処理水は海洋放出できないはずだと迫りました。すると、東京電力は、「地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送」は、海側遮水壁閉合に伴う地下水上昇に対処するための「緊急的な対応のもの」で、集水タンク満水時に「トリチウム濃度が運用目標の 1 ,500Bq/Lを超えないようにタービン建屋へ移送したものではない」と主張し、「タービン建屋へ移送した地下水ドレン汲上げ水6 .5万トンは、混在してはならない地下水ドレン汲上げ水」とは異なるかのように言い繕おうとしました。これに対し、トリチウム濃度が高い場合はタービン建屋へ、低い場合は集水タンクへ移送していることを示すデータを突きつけたところ、「ここでは否定も肯定もできない」と逃げ、「社へ持ち帰り、改めて回答する」ことになったのです。この背景には、東京電力の運用方針違反(「 1 ,500Bq/Lを超える地下水ドレン汲上げ水は希釈しない、排水しない」に違反)・実施計画違反(「地下水ドレン汲上げ水はすべて集水タンクへ移送し、満水時に 1 ,500Bq/Lを超えたらタンクへ移送する」に違反)を覆い隠し、原子力規制委員会・規制庁の実施計画不備の瑕疵を隠蔽しようという目論見があるのです。原子力規制委員会・規制庁については、実施計画では地下水ドレン汲上げ水はすべて集水タンクへ移送することになっていて、タービン建屋への移送は実施計画違反なのにそれを黙認したこと、集水タンク満水時に 1 ,500Bq/Lを超えた場合に移送先となるタンクや移送配管・移送ラインが実施計画に記載されていないことなどが重大な瑕疵となります。これらの責任を追及されないよう、「地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送」について、原子力規制庁は「緊急対応の一環」だと言い、東京電力は「緊急的対応」だと主張するなど、事前に口裏合わせをして逃げようとしていることも明らかになりました。ちなみに、東京電力回答で「緊急対応」とせず「緊急的対応」としたのは、「緊急」とは言えない後ろめたさからからだと思われます。
いずれにせよ、海側遮水壁閉合に伴う地下水上昇は計画段階から予想され、トリチウム濃度の高い地下水が多く含まれることもわかっていましたので、集水タンクへ全量移送すれば、満水時に 1 ,500Bq/Lを超えることは「事前に十分想定」された事態だったのです。実施計画未記載の瑕疵や実施計画違反の責任を「緊急対応」や「緊急的対応」で正当化することなど許されません。

タービン建屋への移送先を2号機と3号機に分けたのは「平準化」のためというが、事実無根である

第3に、「(2015年11月からの)地下水ドレン汲上げ水のタービン建屋への移送先は2号機タービン建屋(実施計画未記載の既設ライン)」である一方、「(2017年2月からの)地下水ドレン汲上げ水の前処理後の濃縮塩水移送先は3号機タービン建屋(実施計画記載の新設ライン)」と異なっている理由について、東京電力は「タービン建屋からの移送ポンプの移送量を平準化すること」が目的だと主張しました。しかし、2号機と3号機の建屋内の滞留水量は2016年平均で16 ,217 m 3と16,558 m 3、2017年平均でも13 ,317 m 3と13 ,255m3でほぼ同程度であり、タービン建屋からの移送ポンプの移送量を平準化しなければならないほどの不均衡はありません。また、地下水ドレン汲上げ水とウェルポイント汲上げ水の2号機タービン建屋への合計移送量は2016年の78 ,029 m 3から2017年に8 ,820m3へ一桁下がり、2018年には地下水ドレン汲上げ水の2号機タービンへの移送がゼロになってウェルポイント汲上げ水の移送量3 ,768 m 3だけになる一方、3号機タービン建屋への濃縮塩水の移送量は2017年に805m3で2号機への移送量の1割弱にすぎず、201 8年には46 m3へさらに減っています。これでは、とても「平準化」などと言えるものではありません。つまり、2号機と3号機の「タービン建屋からの移送ポンプの移送量を平準化」する目的だとは到底言えないのです。
要するに、地下水ドレン汲上げ水前処理後の濃縮塩水移送先を3号機とした本当の理由は、「ウェルポイント汲上げ水と地下水ドレン汲上げ水のウェルタンクを介した2号機タービンへの移送ラインがすでにあり、それが実施計画に未記載の違反状態にあったため、今さら濃縮塩水の2号機タービン建屋への移送を『新設』ラインとして申請できない」という事情があったのではないかと思われます。これも、実施計画違反や実施計画未記載の瑕疵などを隠蔽する行為の一環だと思われます。

ALPS処理水海洋放出は、公衆の被ばく線量限度1 mSv/年を担保するための「線量告示」に違反する

第4に、私たちは、福島第一原発では、2023年6月1日現在なお敷地境界モニタリングポストで空間線量が2.9~8 .9 mSv/年と高く、公衆の被ばく線量限度1mSv/年を担保するための「線量告示」を満たせない違法状態にあり、ALPS処理水の海洋放出など新たな放射能放出は許されないと主張しました。これに対し、東京電力は、原子力規制委員会から措置を講ずべき事項で「追加的な放出等による敷地境界での実効線量を年間 1mSvとすることが求められている」と主張して原子力規制委員会に下駄を預け、この「追加的な実効線量(追加線量)が 1mSv/年以下なら線量告示違反にならない」という法的根拠を示すことはできませんでした。そうである以上、法令違反(線量告示違反)のALPS処理水は海洋放出できないはずです。
かつては、「 ①事故直後には、その前の1年間と比べると1 mSvを超えていて違法状態だったが、 ②次年度からは、敷地外(周辺監視区域外)に存在する放射性物質による放射線量は、「元々あったもの」であり、「自然放射線」と同じとみなされる、 ③事業所内の作業で前年度と比べてどれだけ放射線量が上乗せされたかが法令での規制対象になる。したがって、敷地境界での空間線量のモニタリングの実測値とは関係なく、前年度に比べて、上乗せされる計算上の線量が年 1mSv以内であれば法令遵守である。」(脱原発福島県民会議との 2022.4.12意見交換後のアドバイザーへの東電担当者の説明)という極論を述べていましたが、この点に関する脱原発福島県民会議による2022年5月26日付け質問書への2022年6月17日付け東電回答では、「十分なご説明が出来ず、誤解を与えてしまったと考えております。今後は、資料に基づき、事前に準備のうえ、対応させていただきます。」と前言を撤回し、今回と同じ内容を回答していたのです。線量告示には、現存被ばく状況や計画被ばく状況の区別はなく、実効線量から除外できるのは自然放射線と医療被ばくだけです。「追加線量が 1mSv/年を超えなければ違法ではない」とする根拠法令など存在しないことが改めて明らかにされたと言えます。

ALPS処理水を海洋放出しなければならない3つの理由は、「海洋放出ありき」が前提で捻出されたもの

第5に、東京電力や政府が挙げる「ALPS処理水を海洋放出しなければならない3つの理由」(①タンクは2023年春頃満水になる、②廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、 ③汚染水は今後も発生し続ける)には根拠がないとする私たちの主張に対し、東京電力はまともに答えず、 ①は「タンク増設はしない」方針ありき、②は「不要不急の敷地利用」計画ありき、 ③は「汚染水発生ゼロはめざさない」方針ありき、の回答に終始しました。つまり、3つの理由は、「海洋放出ありきを前提に捻出されたもの」だったのです。

<敷地に余裕があっても、タンク増設せず、不要不急の5・6号機使用済燃料乾式貯蔵施設建設を急ぐ>

①については、「フランジタンク解体エリアには溶接タンク約9万トンが増設可能で、空けた状態の予備タンクが2.5万トンもあり、計12万トンの余裕がある」との私たちの指摘に、東京電力は正面から答えませんでした。その代わりに、 ②との関連で、「燃料デブリ取出しに関連するメンテナンス施設・保管施設や、1~6号機の使用済燃料プールを空にするために必要な乾式キャスク仮保管設備などを2020年代前半頃に着工する」ため、「フランジタンク解体跡地を含め敷地を有効活用する計画」を対置したのです。つまり、「タンクが満杯になる」との主張は、「溶接タンクをこれ以上増設しないという方針ありきの人為的な理由」にすぎなかったことが明らかになったのです。
また、②の敷地利用計画については、事故を起こした1~4号機の使用済燃料の保管だけなら十分すぎる容量(共用プールと乾式キャスク仮保管設備の容量10 ,699体に対し9 ,507体貯蔵中で1 ,192体の余裕あり)がすでにあるのですが、事故を起こしていない5・6号機の使用済燃料2,830体の貯蔵プールからの搬出・保管が必要だとし、共用プール6,595体(容量6,734体)の乾式貯蔵化も進めるという新たな敷地利用計画を持ち出し、敷地が足りない状況を人為的に作り出そうとしたのです。東京電力は、プール貯蔵より乾式貯蔵の方がリスクが小さいと主張していますが、間違いです。使用済燃料をプール貯蔵から乾式貯蔵へ移すには、5~10年以上プールで冷やし、人の発熱量(2~3kW/tU)程度にまで崩壊熱を下げ、空気中でも自然空冷可能な状態にする必要があります。この状態に至ればプール貯蔵と乾式貯蔵のリスクに差はありません。乾式キャスクの表面線量は強い中性子線やガンマ線のため10 μSv/h(年換算88 mSv)程度と高く、コンクリート貯蔵施設で遮蔽しないと85m圏内(伊方原発の場合)を管理区域(3ヶ月当り1.3 mSv)に指定しなければならないほどです。この意味では、共用プールのほうが、放射線を遮蔽できるため、労働者被曝を減らせますし、崩壊熱の高い使用済燃料が今後持ち込まれることもなく、東日本大震災の地震・津波に耐えた共用プールをわざわざ解体して乾式貯蔵へ移行させる必要など全くないのです。
デブリ取出し関連施設もデブリ取り出し作業そのものが止まっていて見通しが全く立たないのが現状です。東京電力は、2号機デブリは横から取出すから原子炉上部のシールドプラグでの高汚染状態は直接影響ないと回答しましたが、これは「極めて能天気な思考」であり、原子炉内に残存するデブリ取出しの困難さを軽視し、当面の場当たり的な取り出し作業しか見ようとしない安直な発想であり、東京電力の「廃炉作業全体を俯瞰しながら作業を進める能力のなさ」を改めて示したものと言えます。

<「地下水の建屋流入」はサブドレン水位を T.P.-2.0mへ下げれば、すぐにもゼロにできる>

③については、「2028年度に汚染水発生量を1日当り50~70m3まで低減することをめざし取り組んでおり、現状において十分管理されていることから、この措置を継続していきます。従って、地下水の流入を完全にゼロとすることはできません。」という回答でした。これも「汚染水発生ゼロはめざさない」方針ありきの回答です。そこで、私たちは、「1号機の建屋貫通部はT.P.2.0m以上と高く、少雨期の地下水の建屋流入量はすでにゼロ、4号機でもサブドレン水位以下の貫通部は2箇所程度で、少雨期の地下水の建屋流入量はほぼゼロ、1号機屋根完成とフェーシングで雨水の地中浸透を防げば、1・4号機では2023年度末頃にかなりゼロへ近づく。2・3号機でも、T.P.-2.0m以下に貫通部はなく、サブドレン水位をそこまで下げれば少雨期の地下水の建屋流入量をゼロにできる。原子炉建屋内滞留水の水位は、2023年3月末に、1号機でT.P.-2.2m程度、2・3号機でT.P.-2.8m程度へ下がっており、サブドレン水位をT.P.-2.0mまで下げれば、貫通部からの地下水流入量はゼロにできる。」と具体的に指摘しました。すると、東京電力は、止水施工をしているとか、原子炉建屋を床面露出させると建屋内の放射性ダスト濃度が上がるとか、サブドレン水位は毎日変化しており建屋内滞留水の水位より低くなると汚染水が漏れ出すとか、汚染水発生量ゼロをめざさない理由を探そうとしました。私たちは、止水施工は雨水対策であり、進めてもらえばいいが、汚染水発生の最大要因である地下水の建屋流入抑制とは関係ないこと、床面露出によるダスト問題は水を低水位で残せばすむこと、建屋内水位と地下水位の逆転防止のために80cmの水位差が設定してあり、これを維持すれば逆転は起こらないこと、などを具体的に示して反論した結果、東京電力は長い沈黙の末に、「ご意見を社へ持ち帰って、しかるべき部門へ伝え、6月末を目途に全質問に対して改めて回答する」ことを約束せざるを得なかったのです。
いずれにせよ、ALPS処理水を海洋放出しなければならない理由など存在せず、東京電力や政府の主張するいずれの理由も、「海洋放出方針ありきの取って付けた理由」に過ぎないことが改めて明らかにされたと言えます。こんな理不尽なトリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出は断じて許せません。

東京電力の不誠実な回答を広く伝え、国内外のすべての反対勢力の総力を結集して、福島県漁連との文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反、線量告示等法令違反、ロンドン条約違反の責任を追及し、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出をなんとしても止めましょう!

呼びかけ10団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン
連絡先:原子力資料情報室(担当:高野聡)< takano@cnic.jp>
チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西(担当:振津かつみ) <cherno-kansai@titan.ocn.ne.jp>

 

若狭ネット第193号を発行:トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対! — 地下水ドレン汲上げ水が混在していればALPS処理水は放出できない — 原子力規制委員会・規制庁は、汲上げ水6.5万トンの混在を認め、海洋放出を中止させよ! 実施計画違反・法令違反の放出認可を撤回せよ!

若狭ネット第193号を発行しました。

下記からご覧ください。

第193号(2023/5/22)(一括ダウンロード5.8Mb
巻頭言–トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対!
— 地下水ドレン汲上げ水が混在していればALPS処理水は放出できない —
原子力規制委員会・規制庁は、汲上げ水6.5万トンの混在を認め、海洋放出を中止させよ! 実施計画違反・法令違反の放出認可を撤回せよ!
1. 原子力規制委は実施計画違反・法令違反の「実施計画変更申請(ALPS処理水海洋放出)」認可を取消し、海洋放出を中止させよ!
2. 送配電会社の「所有権分離」で再エネ優先接続・優先給電の実現を! 発販分離(所有権分離)で、新電力に公平な競争条件の整備を!

チェルノブイリ事故37年、福島事故12年を迎え、公開説明会の開催と脱原発・再エネ優先への転換を求めます・・・関電本社へ申し入れました

チェルノブイリ事故37年、福島事故12年を迎えた2023年4月26日、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西主催の「チェルノブイリ原発事故37年の集い~チェルノフイリとフクシマを経てまだ原発?!~」で採択された集会決議の関電本社提出行動に合わせて、若狭ネットも申し入れ(pdfはこちら)を行いました。

2023年4月26日
関西電力株式会社取締役 代表執行役社長 森 望 様

チェルノブイリ事故37年、福島事故12年を迎え
公開説明会の開催と脱原発・再エネ優先への転換を求めます

若狭連帯行動ネットワーク

本日4月26日は、旧ソ連のチェルノブイリ原発重大事故から37年に当たり、福島第一原発炉心溶融事故発生から12年になります。私たちは貴社に対し、カルテル・顧客情報不正閲覧問題に関する公開説明会の開催を求め、また、老朽原発延命・新型炉共同開発の原発依存経営から転換するよう強く申し入れます。
貴社が原発依存経営を始めてから、もう半世紀になります。この間、貴社による原発推進の利権構造が暴かれ、電力市場独占を維持するためのカルテル締結で公正取引委員会から独占禁止法違反に認定され、顧客情報不正閲覧問題で経済産業省から業務改善命令が出されるなど、腐朽・腐敗が極限に達しています。貴社は、金品受領の「森山案件」で、3年前にも業務改善命令を受けています。当時、「約3.6億円の不正還流はあったが、不正発注、高値発注は絶対になかった。」と弁明した矢先に、原発推進派の高浜町議の事業失敗を救済するための土砂処分・土地賃借等での高値発注が暴かれてもいます。これらに関与していないと思われた森本孝副社長が2020年春に新社長へ抜擢され、どん底に落ちたコンプライアンス(法令遵守)の立て直しを託されましたが、森本氏は2018年10月~2020年10月のカルテル事件の中心人物でした。森本氏は副社長時代に他電力管内での営業縮小を決めた首脳会議に名を連ね、自ら他電力に伝え、社長就任後もカルテルを継続していたのです。他方では、新電力から顧客を取り戻すため、子会社の関西電力送配電のもつ顧客データを不正閲覧し、営業に活かしていました。しかも、カルテルがばれそうになると、自ら主導した不正を公正取引委員会へ密告(自主申告)し、自社だけは巨額の課徴金を免れたのです。世間で、貴社は「不祥事の総合商社」と呼ばれています。私たちは、カルテル・顧客データ不正閲覧問題について、貴社が率先して公開説明会を開き、膿を出し尽くすよう強く求めます。
岸田政権はGX基本方針で原発回帰へ踏み出し、40年で原則廃炉の40年ルール撤廃法案を成立させようとしています。しかし、原発再稼働・40年超運転による利潤追求を続けていては、老劣化による故障・事故を頻発させる一方、事故原因の究明を切り上げての運転再開、次の定検までのひび割れ放置の強硬運転、異常発見時の無理な運転継続や異常対策等が不完全なままでの運転再開前倒しなどで、予想外の危険な事態を招き、福島事故を繰り返すことになりかねません。
原発依存経営から脱却し、原発利権構造を一掃し、再エネ推進のクリーンな経営に転換すべきです。
以上を踏まえ、次のことを強く申し入れます。公益事業者として真摯に対応してください。

1.カルテル問題と顧客情報不正閲覧問題について、公開説明会を開いてください。「送配電会社の所有権分離」と「発電会社の所有権分離」を断行し、新電力との公平な競争環境を保障してください。

2.国内最古かつ原子炉圧力容器の中性子脆化が最も進んで危険な高浜1・2号の6・7月再稼働(並列)計画を断念し、美浜3号と共に40年超運転を中止し、廃炉にしてください。

3.配管のひび割れや蒸気発生器細管の減肉など老劣化の進む高浜3・4号と大飯3・4号を廃炉にしてください。

4.むつ市への使用済燃料中間貯蔵押しつけを断念し、使用済燃料をこれ以上生み出さないでください。 「2023年末に中間貯蔵地を公表できない場合には高浜1・2号と美浜3号の運転を中止する」との貴社の4度目の約束を守ってください。大飯3・4号再稼働の条件であった「2020年末の期限」など、これまで3回も期限を守れなかった責任をとり、大飯3・4号と高浜3・4号も運転しないでください。

5.高浜3・4号でのプルサーマルを即刻中止し、大飯原発にプルサーマルを広げないでください。
プルトニウム利用を断念し、これ以上、MOX燃料の発注・輸送・輸入をしないでください。
3,100ページに及ぶ申請書の落丁・記載漏れや核物質防護監視妨害など技術的能力のない日本原燃への出資をやめ、六ヶ所再処理工場の閉鎖を求めてください。

6.敦賀2号直下断層のデータ無断書換えや1,000箇所以上の審査資料記載ミスなど技術的能力のない日本原子力発電への出資をやめ、約180億円の基本料金契約を破棄し、敦賀2号の廃炉を求めてください。

7.「福島賠償費・原発関連費の今年度分約288億円(一般負担金「過去分」156億円/年と廃炉円滑化負担金132億円/年)」を託送料金に加算して回収するのをやめ、電気料金を下げてください。

8.取替や廃炉による美浜・大飯・高浜原発の蒸気発生器33基をはじめ給水加熱器や核燃料輸送・貯蔵用キャスクなど大型放射性廃棄物の輸出、海外での溶解・再利用の計画を断念し、密閉管理し続けてください。

9.老朽原発の延命や革新軽水炉SRZ-1200の共同開発を断念し、原発依存の経営方針を「脱原発・脱石炭」、「再エネ拡大・優先接続・優先給電」へ大転換してください。

以上

原子力規制委員会の「ALPS処理水の海洋放出時の運用等に係る実施計画認可審査書案」へのパブコメに意見を二つ提出しました

「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出時の運用等)に係る審査書案」に対する意見募集が行われています。(URLはこちら
受付開始日時 2023年2月23日0時0分
受付締切日時 2023年3月25日0時0分

岸田首相は3月11日、福島市で開かれた東日本大震災追悼復興祈念式に出席した後、報道陣の取材に応じ、ALPS処理水の海洋放出は「決して先送りができない課題だ」と根拠もなく断言し、「今年春から夏ごろ」の実施を目論んでいます。「漁業者をはじめ、地元の方々の懸念に耳を傾け、政府を挙げて丁寧な説明と意見交換を重ねていく」と述べてはいますが、「理解」が得られなくても強行する姿勢です。何としてもこれを阻止すべく、力を合わせましょう。
上記の審査書案のパブコメに意見を出しましょう。以下に若狭ネット資料室長の提出意見二つを公開しますので、参考にしてください。(pdfはこちら

「実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出時の運用等)に係る審査書案」への意見募集に対する意見(その1)

該当箇所:3ページ(5~12行目)(第1章 原子炉等規制法に基づく審査の前文)

意見「設計、設備について措置を講ずべき事項の適切かつ確実な実施を確保」することが求められていますが、地下水ドレン汲上げ水に関する実施計画には欠陥があって「確実な実施を確保」できない状態であり、かつ、実施計画通りには実施されていません。その結果、地下水ドレン汲上げ水約6.5万トンがALPS処理されて約65万トンのタンク貯留水に混在しています。その海洋放出は実施計画違反であり、審査書は撤回し、審査をやり直すべきです。

理由:措置を講ずべき事項Ⅲでは、「『Ⅱ.設計、設備について措置を講ずべき事項』の適切かつ確実な実施を確保」することが求められていますが、「確実な実施」は「確保」されていません。措置を講ずべき事項は「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」に反映されており、2015年1月21日に認可(2014年12月25日変更申請(サブドレン他水処理施設の本格運転)の認可)された実施計画には、「Ⅱ-2.35.1.5.4 地下水ドレン集水設備」の項で「地下水ドレン集水設備は,地下水ドレンポンド揚水ポンプ,地下水ドレン中継タンク,地下水ドレン中継タンク移送ポンプ,及び移送配管で構成する。地下水ドレン集水設備により汲み上げた地下水は集水タンクへ移送する。」とされ、そのフローチャート「サブドレン他水処理施設の排水管理に関する運用について」(Ⅲ-3-2-1-2-添1-1)には、「H-3が1,500Bq/Lを下回らない」場合は「タンク等へ移送及び原因調査」となっています。ところが、この実施計画の「確実な実施」は確保されていません。
第1に、汲上げ水のうち約6.5万トンは、地下水ドレン中継タンクから集水タンクへは移送されず、ウェルタンクを介して2号機タービン建屋へ移送されています。
第2に、「H-3が1,500Bq/Lを下回らない」場合の移送先となる「タンク等」や移送配管等の仕様および移送ラインは実施計画のどこにも記載されておらず、そもそも存在せず、「確実な実施」は不可能です。
第3に、汲上げ水を中継タンクから集水タンクまたは2号機タービン建屋のどちらへ移送するかは、「それを集水タンクへ移送した場合にH-3が1,500Bq/Lを超える可能性がない」場合には集水タンクへ、「可能性がある」場合には2号機タービン建屋へと仕分けて移送していましたが、このような管理は実施計画には一切記載されていません。
その結果、第4に、集水タンクで、H-3が1,500Bq/L以上になって「タンク等へ移送及び原因調査」となった汲上げ水は発生しませんでしたが、「仮に集水タンクへ移送していたらH-3が1,500Bq/Lを超えていたであろう汲上げ水6.5万トン」が2号機タービン建屋へ移送され、大量の建屋滞留水と混在してALPS処理され、少なくとも65万トンの処理水となってタンクに貯留されています。つまり、現時点で132万トンのALPS処理水の大半に「H-3が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレン」の汲上げ水が混在しています。
脱原発福島県民会議等10団体との2月9日の意見交換の場で、原子力規制庁担当者は、次のように回答しています。
(1)トリチウム濃度が1500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水は、実施計画のフローチャートでは「タンク等に移送して原因精査」となっていて、そこで作業の手続きは止まらねばならない。
(2)仮に(1)のサブドレン及び地下水ドレンの水が、建屋滞留水等と混在してALPS で処理され、ALPS処理水として混在したままタンクに貯蔵されているとすれば、サブドレン及び地下水ドレンの水が混在しているALPS処理水は海洋放出できない。原子力規制庁としては「混在」していないと考えている。
(3)(1)に該当するサブドレン及び地下水ドレンの水は6.5 万トン程度になると指摘されているが、それが「タンク等に移送して原因精査」された後、実際に、どこにどのような状態で存在しているか、ちゃんと調べて福島みずほ事務所に回答する。
2月17日付けで原子力規制庁原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室から福島みずほ参議院議員事務所へ届いた文書回答は「原子力規制庁としては、御指摘の『トリチウム濃度が1500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』はこれまで発生していないことを東京電力ホールディングス株式会社に確認しています。また、『トリチウム濃度が1500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』が発生した際には、実施計画のとおり、タンク等へ移送し敷地内で貯留されるものと認識しています。」というものでした。
これは、上記の第1から第4に記載した通りの経緯を経た結果、集水タンクでは「H-3が1500Bq/Lを超えなかった」ものの、それを回避するためにトリチウム濃度の高い約6.5万トンの汲上げ水が2号機タービン建屋へ移送され、ALPS処理水と混在するに至ったものであり、海洋放出することはできないはずです。ましてや、このような事態は、実施計画そのものが「確実な実施を確保」できない欠陥を含んだものであり、実際にも「確実な実施」がなされなかったことによる直接的な結果です。
これは原子力規制委員会・原子力規制庁による実施計画認可・検査における重大な瑕疵の可能性を示唆するものであり、審査書そのものを撤回し、根本的に審査をやり直すべきです。
ちなみに、2016年12月8日に認可(2016年11月2日変更申請(地下水ドレン前処理設備の設置及びサブドレン集水設備移送配管の仕様変更)の認可)された実施計画の「Ⅱ-2.35.1.5.4 地下水ドレン集水設備」の項には、「地下水ドレン集水設備」に「地下水ドレン前処理装置」が追加され、「地下水ドレン集水設備により汲み上げた地下水は集水タンクまたはタービン建屋へ移送する。」とされていますが、ここでタービン建屋へ移送されるのは前処理装置出口濃縮水(塩水)であり、移送先も2号機タービン建屋ではなく3号機タービン建屋であり、今までの移送量も約0.2万トンにすぎません。

「実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出時の運用等)に係る審査書案」への意見募集に対する意見(その2)

該当箇所:1ページ12~22行目(2.変更認可申請の内容)および7ページ3~5行目

意見法令では「敷地境界での実効線量が、放出放射能の濃度限度比総和を含めて、1mSv/年であること」が求められていますが、敷地境界線量は今も3~9mSv/年と高く、違法状態が続いています。現状では、ALPS処理水の「故意の海洋処分」による新たな放射能放出は法令違反であり、できないはずです。にもかかわらず、敷地境界の実効線量から「事故由来の放射性物質からの寄与」を除外することで、それを認可しようとしていますが、それを正当化できる法的根拠はありません。「そうしなければ、放射能災害のリスクが高まるため、やむを得ない」という緊急避難的理由もありません。また、ALPS処理水放出に伴う被爆線量「評価の目安」として用いられている「50μSv/年」は線量拘束値ですが、これは計画被ばく状況で用いられる概念であり、現存被ばく状況において適用するのは場違いであり、これをトリチウムの年放出管理値22兆Bqを緩和する根拠とすることもできません。審査書は撤回し、審査をやり直すべきです。

理由:「東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示」(以下「告示」)の「(周辺監視区域外等の濃度限度)第八条」第六項には、次のように記されています。
「外部放射線に被ばくするおそれがあり、かつ、空気中又は水中の放射性物質を吸入摂取又は経口摂取するおそれがある場合にあっては、外部被ばくによる一年間の実効線量の一ミリシーベルトに対する割合と空気中又は水中の放射性物質の濃度のその放射性物質についての空気中又は水中の放射性物質の前各号の濃度に対する割合との和が一となるようなそれらの放射性物質の濃度」。
これは、核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示(以下「線量告示」)の「(周辺監視区域外の濃度限度等)第八条」第六項の条文と一言一句同じです。つまり、いずれの告示においても、「外部被ばくによる一年間の実効線量」は「周辺監視区域」との境界における外部被爆線量で線量限度「一ミリシーベルト」を超えないことが求められています。
この外部被爆線量から「事故由来の放射性物質からの寄与」、いわゆる「現存被ばく状況に伴う線量」を除外できるという規定は、炉規法および関連する政令、規則、告示のどこにもありません。にもかかわらず、措置を講ずべき事項では、「II.設計、設備について措置を講ずべき事項」の「11. 放射性物質の放出抑制等による敷地周辺の放射線防護等」において、放出放射能抑制と敷地周辺線量低減を求め、「特に施設内に保管されている事故後に発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量(発電所全体からの放射性物質の追加的放出を含む実効線量の評価値)を、平成25年3月までに1mSv/年未満とすること。」と指示しています。これを原子力規制委員会は「追加1mSv/年」と称していますが、これは「告示」や「線量告示」の「1mSv/年」に置き換えられるものではありません。
また、この「追加1mSv/年」の措置要求は、達成期限が変更されたり、「追加2mSv/年」へ変更されたり、追加線量からタンク貯留水寄与分が除外されるなど、場当たり的に変更されていて、とても法令と言えるような代物ではありません。具体的には以下に示す通りです。
当初の措置要求は、汚染水の地下貯水槽への移送で実現されたものの、1週間も経たないうちに、地下貯水槽から汚染水の漏洩が発覚し、汚染水をタンクへ移送したところ、2013年4月には追加線量でも7.8mSv/年へ急騰しています。これを受けて、当初の「2013年3月までに追加1mSv/年」が「2015年3月末までに追加2mSv/年、2016年3月末までに追加1mSv/年」へ変更されています。同時に、「2015年3月末までに、タンクに貯蔵された汚染水以外に起因する敷地境界における実効線量(評価値)を1mSv/年未満にすること」が加えられ、「事故後に発生した瓦礫や汚染水等」から最大寄与分の「タンク貯留水」が除外されるなど、「追加線量」の定義さえも変更されています。このように状況次第でコロコロ変わる「追加1mSv/年」が、「告示」や「線量告示」等の法令における「1mSv/年」に置き換わるものだとは到底言えません。
さらに、この「告示」や「線量告示」等の法令において「実効線量の算定から除外できるものは診療及び自然放射線による被ばくのみとなっている」ことは、第37回原子力規制委員会(2020.11.11)での原子力規制庁報告「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(数量告示)第24条の改正方針についての検討結果」で具体的に記されています。すなわち、福島第一原発は線量告示等の「1mSv/年」を満たせない違法状態にあるため、線量低減のために「追加1mSv/年」が措置要求されたのです。これは、あくまで「線量低減のために導入された、暫定的で、期限のある」措置要求にすぎず、「追加1mSv/年」さえ満たしていれば、法令違反にはならず、故意に放射能を放出しても良いというものではありません。ALPS処理水のように、海洋放出しなければならない緊急避難的な理由がなく、海洋放出以外にも代替手段がある場合に、また、関係者等がその放出に「絶対反対」している中で、それを無視して、故意に海洋放出を強行することは、違法行為を積み重ねるものと言えます。
海洋放出に係る放射線影響評価では、「代表的個人に対する被ばく線量は・・・となり、評価の目安である50μSv/年と比較すると極めて小さい」としていますが、この「50μSv/年」は「線量拘束値」であり、第65回原子力規制委員会(2022.2.16)で了承された「放射線影響評価の確認における考え方および評価の目安」に基づいています。実施計画変更申請の審査では、これが、年間トリチウム放出量を年放出管理値22兆Bqから緩和する際の目安として使われていますが、線量拘束値は、計画被ばくにおける事業所毎に割り振る最適化の目標となる制限値であって、現存被ばく状況にある福島第一原発には適用できないはずです。また、国内法令に導入されてもいません。国内法令に導入されていないICRP勧告やIAEAの基準を都合良くつまみ食いして、あたかも国内法令に則ったかのような審査や認可は行うべきではありません。
以上より、審査書の撤回と審査のやり直しを強く求めます。

若狭ネット第192号を発行:ALPS処理水の「春から夏の海洋放出」絶対反対! 文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反を許すな! 「40年ルール」撤廃のGX脱炭素電源法案を廃案に!

第192号(2023/3/11)(一括ダウンロード5.0Mb
巻頭言–ALPS処理水の「春から夏の海洋放出」絶対反対!
文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反を許すな!
「40年ルール」撤廃のGX脱炭素電源法案を廃案に!
1. 「あらゆる選択肢」を軽く求めるGX基本方針は、国民を奈落の底へ突き落とす
2. 原子力規制委員会は三条委員会の責務を放棄し、「規制の虜」へ戻るのか
3. トリチウム汚染水(ALPS処理水)は海洋放出できない!— 「サブドレン及び地下水ドレン」にまつわる3つの理由

政府がALPS処理水と称しているトリチウム汚染水は海洋放出できません。それには、「サブドレン及び地下水ドレン」にまつわる次の3つの理由があります。

第1に、原発事故後、大量に発生する汚染水を抑制するための「サブドレン及び地下水ドレン」の運用開始に向けて、政府は福島県漁連に対し、ALPS処理水は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と文書で確約し、東京電力も「多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。」と文書で確約しています。その最大の関係者である福島県漁連は「絶対反対」を堅持し続けていて、「理解」などしていません。海洋放出を強行すれば、政府と東京電力の文書確約は白紙と化し、今後、彼らが廃炉・汚染水対策で行おうとするいかなる「確約」も全く信用されず、協力は一切得られなくなるでしょう。

第2に、政府と東京電力の文書確約があったからこそ、福島県漁連は、苦渋の判断で、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」に同意したのですが、そこには、「トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える場合には、排出しない、希釈しない、タンクへ移送する」と明記されています。排水されなかった「サブドレン及び地下水ドレン」の汲上げ水は、実は、地下水ドレン中継タンクからウェルタンクを介して2号機タービン建屋へ移送されていて、計約6.5万トンになります。これは、1~4号機建屋滞留水と混ざりあって、多核種除去設備ALPSで処理され、タンクに貯留されています。132万トン(2021/4/1時点では125万トン)のうちの約6.5万トンが「サブドレン及び地下水ドレン」汲上げ水なのです。そのようなALPS処理水を海洋放出すれば、「希釈しない、排水しない」と定めた運用方針に反するのです。サブドレンおよび地下水ドレンによる地下水くみ上げ・浄化処理後の排水は、建屋周辺地下水の水位制御の生命線として今も続けられていますが、トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出を強行すれば、運用方針そのものを破棄するに等しく、「サブドレン及び地下水ドレン」への福島県漁連の同意が根本から揺らぐことになります。

第3に、原子力規制委員会・規制庁は、脱原発福島県民会議など10団体との2月9日の交渉で、「『サブドレン及び地下水ドレン』の水が、建屋滞留水等と混在してALPSで処理され、ALPS処理水として混在したままタンクに貯留されているとすれば、『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在しているALPS処理水は海洋放出できない。」と断言しました。ところが、その後、「原子力規制庁としては、御指摘の『トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』はこれまで発生していないことを東京電力ホールディングス株式会社に確認しています。」との文書回答が届きました。実は、原子力規制委員会が認可し、東電が遵守すべき「実施計画」では、地下水ドレン汲上げ水は中継タンクから「集水タンクへ移送する」ことになっているのですが、東京電力は中継タンクでトリチウム濃度を測り、1,500Bq/Lをはるかに超える場合は「集水タンクへ移送せず、2号機タービン建屋へ直接移送」していたのです。原子力規制庁は、このタービン建屋へ移送された約6.5万トンを無視しようとしていますが、これは「実施計画」違反です。仮に、実施計画通り、汲上げ水を集水タンクへ移送していたら、6.5万トンをはるかに超える水が集水タンクやサンプルタンクから「タンク等へ移送」されていたことでしょう。しかし、実施計画のどこにも、移送先の「タンク等」や移送配管の仕様および移送ラインは全く記載されていないのです。他方、中継タンクからウェルタンクを介した2号機タービン建屋への移送ラインは実在し、実際に約6.5万トンが移送されたのです。ALPS処理水を海洋放出すれば、実施計画に違反してタービン建屋へ移送された約6.5万トンの「サブドレン及び地下水ドレン」汲上げ水の混在したALPS処理水を海洋放出することになり、実施計画違反を重ねることになるのです。

このような文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反をさらに重ねるALPS処理水の海洋放出は断じて許せません。何としても阻止しましょう。

2023年2月9日ALPS処理水海洋放出方針決定に関する10団体主催・対政府交渉報告
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2023年2月9日ALPS処理水海洋放出方針決定に関する10団体主催・対政府交渉報告・・・原子力規制庁は、「ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、ALPS処理水は海洋放出できない」と認め、6.5万トンの所在調査・回答を確約! 経産省は文書回答のみで、意見交換を拒否! 外務省は、ALPS処理水放出用海底トンネルが「人工海洋構築物」ではないとする根拠を明示できず!

2023年2月9日ALPS処理水海洋放出方針決定に関する10団体主催・対政府交渉報告

交渉報告のpdfはこちら交渉議事録はこちら

原子力規制庁は、「ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、ALPS処理水は海洋放出できない」と認め、6.5万トンの所在調査・回答を確約! 経産省は文書回答のみで、意見交換を拒否! 外務省は、ALPS処理水放出用海底トンネルが「人工海洋構築物」ではないとする根拠を明示できず!

私たち、脱原発福島県民会議をはじめ10団体は2月9日午前と午後に分けて、「医療・介護保険等の保険料・窓口負担の減免措置見直し」の撤回および「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出方針」の撤回を求め、対政府交渉をもちました。ここでは、午後に行われた二つ目の交渉の結果を報告します。
年初の1月13日に開かれた「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」(議長は松野官房長官)が、「ALPS処理水の放出開始は今年春から夏ごろを見込む」と打ち出したことから、交渉は緊迫したものとなりました。2021年4月の海洋放出方針決定から2年経っても「関係者の理解」が得られるどころか、福島県漁連・全漁連など福島県内外で「断固反対」の声は揺るがず、太平洋諸国フォーラム等が放出中止を求める中、私たちは昨年4月19日の対政府交渉で暴き出した成果の上に、新たな主張と根拠を積み上げて追い詰め、放出撤回を求めました。恐れをなした経産省は出席を拒否し、ありきたりの文書回答のみに留まりましたが、原子力規制庁からはALPS処理水の放出を阻止できる重大な言質を引き出しました。今回の成果をさらに踏み固め、ALPS処理水の海洋放出を断固阻止しましょう。

1.ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、海洋放出できない

ALPS処理水は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」との経産大臣の文書確約と「多核種除去設備ALPSで処理した水は発電所敷地内タンクに貯蔵いたします」との東京電力社長の文書確約を受けて、福島県漁連は2015年8月末に苦渋の判断で、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」に同意したわけですが、この運用方針の内容は、原子力規制委員会の認可を受けた東京電力の実施計画にも記載されています。私たちは、ALPS処理水の海洋放出は、文書確約に反し、運用方針にも反すると主張したところ、原子力規制庁は初めて、「ALPS処理水にサブドレン及び地下水ドレンの水が混在していたら、ALPS処理水は放出できない」と、次のように認めました。
(1) トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える「サブドレン及び地下水ドレン」の水は、実施計画のフローチャートでは「タンク等に移送して原因精査」となっていて、そこで作業の手続きは止まらねばならない。
(2) 仮に、(1)の「サブドレン及び地下水ドレン」の水が、建屋滞留水等と混在してALPSで処理され、ALPS処理水として混在したままタンクに貯留されているとすれば、「サブドレン及び地下水ドレン」の水が混在しているALPS処理水は海洋放出できない。原子力規制庁としては、このような「混在」はないと考えている。
(3) (1)に該当する「サブドレン及び地下水ドレン」の水は6.5万トン程度になると指摘されているが、それが「タンク等に移送して原因精査」された後、実際に、どこに、どのような状態で存在しているのか、ちゃんと調べて、福島みずほ議員事務所を経由して文書で回答する。
原子力規制庁からの文書回答は2月17日付けで届きましたが(文書回答はこちら)、「原子力規制庁としては、御指摘の『トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』はこれまで発生していないことを東京電力ホールディングス株式会社に確認しています。」というものでした。実は、「サブドレン及び地下水ドレン」の水には、(a)「集水タンク」へ移送され1,500Ba/L未満で浄化処理・排水されるものと、(b)それ以外の1,500Bq/L以上で「希釈しない、排水しない」の運用方針に従って「タービン建屋」へ移送されるものの2種類があります。原子力規制庁は、(a)の「集水タンクへ移送された水で1500Bq/Lを超えたものはなかった」と当然のことを述べただけで、(b)の水を無視したのです。東京電力が実施計画に記載されたとおり、(b)も含めて汲上げ水をすべて集水タンクへ移送していたら、「タンク等に移送」された水は(b)と同等以上の量になっていたことでしょう。その意味でも、(a)と(b)は一体のものであり、切り離せないのです。したがって、タービン建屋へ移送された(b)の水は、集水タンクへ移送された場合に「1,500Bq/Lを超えてタンク等に移送」される水に相当するものであり、ALPS処理水と混合・希釈・排水することは認められません。
東京電力の公表データによれば、2015年9月3日の「サブドレン及び地下水ドレン」汲上げ開始以降、「地下水ドレン中継タンクA~C」から「タービン建屋への移送量」は2020年10月までの累計で約6.5万トンになり、これらはタービン建屋滞留水と混じり合って一緒にALPS処理され、ALPS処理水タンクに混在して貯留されています。というのも、東京電力は、実施計画では「集水タンクへ移送する」となっているのに、中継タンクでのトリチウム濃度等を事前に分析し、集水タンクとタービン建屋のどちらへ移送するかを振り分け、中継タンクからウェルタンクを介して2号機タービン建屋へ移送していたのです(東京電力「サブドレン他水処理施設の状況について」,第24~57回 廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議)。タービン建屋の床面が露出する2020年10月までは建屋滞留水と「混在」した汚染水がALPS処理され続けたのは確実です。ALPS処理水は2015年9月10日の52.8万トンから2020年10月8日には117.5万トンへ増えていますので、少なくとも増分の64.7万トンが「混在」したALPS処理水だと言えます。ALPS処理までのタイムラグを考慮すれば、もう少し多いかも知れませんが、2021年4月時点で125万トンのALPS処理水の大半に「サブドレン及び地下水ドレン」の水約6.5万トンが混在していることになります。実際には、ALSP処理水を混在水と非混在水に分けるのは困難でしょう。サブドレン汲上げ水については、一部で1,500Bq/Lを超えていましたが、これらの井戸からの汲み上げは中止されたため、地下水ドレンと一緒にタービン建屋へ移送されたサブドレン水はありません。いずれにせよ、「サブドレン及び地下水ドレンの水が混在したALPS処理水は海洋放出できない」との原子力規制庁担当者の断言は極めて重大であり、その確実な履行を原子力規制委員会に強く求め、ALPS処理水の海洋放出を中止に追い込みましょう。

2.規制庁はALPS処理水の年間放出量は、政府方針の22兆ベクレルを超える見直しが必要と主張

廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議(議長は菅義偉首相:当時)の「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(2021年4月13日)では、「放出するトリチウムの年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆ベクレル)を下回る水準になるよう放出を実施し、定期的に見直すこととする。」と明記していますが、原子力規制庁は、実施計画の審査で、線量拘束値(50μSv/年)までなら引上げられると主張し、放出管理値22兆ベクレルを上回る年間総放出量の見直しを東京電力に強要していたことが改めて明確になりました。線量拘束値上限まで引上げるとすれば3.7京ベクレル、22兆ベクレルの1,700倍にもなる、とんでもない量です。福島第一原発1~3号炉のタンク貯留量と建屋内汚染水やデブリの中に存在するトリチウム総量は、2,069兆ベクレル(2020年1月1日時点)と評価されていますので、その全量を1年間で放出してもよいことになります。実際には、海水で希釈しなければならないため、ポンプの能力を100倍に増やさねばならず、非現実的ではありますが、これでは「規制」委員会ではなく「放出」委員会です。しかも、線量拘束値は計画被ばく時に各事業所へ割り当てられる制限値であり、原発事故で放射能汚染された事業所に適用すること自体が間違っています。原子力規制委員会が行政から独立した三条委員会であることの意義は、政府や電力会社の原発施策による放射能災害や放射線被ばくから国民を守ることにあります。政府方針や電力会社の意図すら超えて、国民により多くの放射線被ばくを強要する方向へ「規制」を大幅に緩和することではありません。原子力規制委員会の根本姿勢に異議を唱え、その責任を徹底的に追及していかねばなりません。

3.規制庁は「追加1mSv/年」を満たしていれば、線量告示違反ではないと強弁

福島第一原発は、事故直後、公衆の被爆線量限度1mSv/年を担保するための「線量告示」を満たせない違法状態でした。そのため、原子力規制委員会は、線量引き下げのため、「措置を講ずべき事項」で「発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量を2013年3月末までに1mSv/年未満とすること」を東京電力に求めたのです。福島第一原発は今でも敷地境界の空間線量が2.8~9.2mSv/年と高線量で、線量告示を満たせない違法状態にあります。しかし、原子力規制庁は、前回認めたこの明確な事実認定を否定し、「原子炉等規制法関係の法令では事故由来の放射性物質を含んだ基準にはなっていない」と開き直りました。しかし、法令の線量限度から除外できるのは「自然由来と医療被ばくの線量」だけであり、事故由来の放射性物質や放射線量は除外できません。これは法曹界の常識です。そのため、原子力規制委員会は、2年前の放射能分析施設設置審査に際し、特例で事故由来の線量を除外する法令改定(科技庁時代の「数量告示」の改定)を行おうとしましたが、放射線審議会に拒否された経緯があります。原子力規制庁担当者はその経緯も法令の常識も全く知らず、「法令では事故由来の線量は除外できる」と主張したのです。その認識は誤っていると、時間をかけて詳しく説明しても、本人は全く理解できなかったため、「そんな状態でここへ来られては困ります。勉強してきて下さい。」と訓示して議論を打ち切らざるを得ませんでした。事故由来の線量は、事故2年目以降は「元々あったもの」で「自然放射線と同じ」と理解していた東京電力(今は批判されて「理解」を変更している)と同様の認識が、原子力規制委員会・原子力規制庁の中に蔓延しているという、恐るべき実態が暴かれたとも言えます。ALPS処理水海洋放出の審査でも、「措置を講ずべき事項」への適合性しか審査されておらず、線量告示を遵守できていない状態は完全に棚上げ状態です。これは、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の法令の遵守」が大前提であると明記された政府基本方針にも反しています。こんな原子力規制委員会・原子力規制庁には、ALPS処理水の海洋放出の安全性を審査し、認可する資格などありません。

4.ALPS処理水を海洋放出しなければならない「3つの理由」は依然として根拠なしの大ウソである

ALPS処理水を海洋放出しなければならない「3つの理由」、すなわち、①タンクは満水になる、②廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、③汚染水は今後も発生し続ける、のいずれも大ウソだったことは、2021年4月19日の対政府交渉で明らかになっています。①は、満水になるタンク以外に、フランジタンク解体によるタンク増設可能エリアや空き状態の予備タンク等で計12万トンの余裕があり、これらを転用すれば数年は大丈夫。②は、2030年度頃までの敷地利用計画は5・6号機の使用済燃料を共用プールへ搬入するための乾式キャスク仮保管施設だけで、将来的に燃料デブリ一時保管施設等という、緊急性のないもの。③は、現在進めている水位低下作業を続ければ、1~3号原子炉建屋の床面露出は2年以内に可能、というものでした。ただし、経産省は、③については、建屋内滞留水の流出防止のためサブドレン水位と建屋内水位との水位差を80cm空けなければならないという制約がある、また、1号機の屋根からの降水流入(2~4号機には屋根あり)や1~4号機の地中浸透雨水の建屋流入などがあると主張していました。
そこで、今回は、③に関する私たちの主張を補強し、経産省の反論を完全に論破するつもりでしたが、経産省は文書回答のみで出席を拒んだため、かないませんでした。公開質問状に示したその内容は、極めて明快であり、「サブドレン水位は今、年平均T.P. 0.6mだが(T.P.は東京湾平均海面を基準とする標高)、1号機の建屋貫通部はT.P. 2.0m以上と高く、少雨期の地下水の建屋流入量はすでにゼロ、屋根の設置も2023年度完成が目標となっている。4号機でも、T.P. 0.6m以下の貫通部は2箇所程度で、少雨期の地下水の建屋流入量はほぼゼロ、フェーシングで雨水の地中浸透を防げば、1・4号機では2023年度末頃、かなりゼロに近づく。2・3号機でも、T.P.-2.0m以下に貫通部はなく、サブドレン水位をそこまで下げれば少雨期の地下水の建屋流入量をゼロにできる。現に、2022年度末には、原子炉建屋内滞留水の水位は、1号機でT.P.-2.2m程度、2・3号機でT.P.-2.8m程度へ下がるので、サブドレン水位をT.P.-2.0mまで下げれば、貫通部からの地下水流入量はゼロにできる。1号機の建屋内水位との水位差が20cmしかなくなるが、1号機ではすでにサブドレンの水位以下に貫通部はなく、基盤からの地下水流入も見られないことから、仮に水位が逆転しても、流出口がないため、建屋内汚染水が流出する恐れはない。フェーシングを優先的に行えば、汚染水発生量はゼロにできる。」――経産省がこの私たちの主張に反論するのは難しく、今回の文書回答でも、「廃炉作業を安全に進めるための必要な施設を建設できるよう、貯蔵タンクを減らしていく必要があります。建屋内滞留水を建屋の外に流出させないために地下水位を建屋内水位よりも高く維持し続ける必要があります。建屋内滞留水位及びサブドレン水位については、計画的に低下させていくこととしています。1-4号機建屋周辺のフェーシングについては、2028年度に8割程度まで完了できるよう、廃炉作業等と調整を図ることとしています。引き続き、汚染水発生量を減少させる取組を継続し、2028年度に汚染水の発生量を1日当たり約50-70立方メートルまで低減することを目指します。」というもので、具体的ではありませんでした。経産省にとっては、汚染水が発生し続けないとALPS処理水を海洋放出する理由の一つがなくなるため、汚染水対策をサボタージュしようとしているのかもしれません。そんなことは断じて許せません。ALPS処理水の海洋放出を中止し、汚染水発生ゼロを目指すべきです。

5.海底トンネルを人工海洋構築物と見なしロンドン条約に基づきALPS処理水の海洋放出を禁止すべき

ALPS処理水の海洋放出については、福島県内外から反対の声が強く出ているだけでなく、国際的にも、19の太平洋島嶼国・地域からなる太平洋諸島フォーラムPIFが、事務局長声明をホームページで公開し、「日本政府が行ったことは、ごくわずかな限られたデータと情報の提供のみでした。」と経緯を説明し、「すべての関係者が科学的手法を通して汚染水の海洋放出の安全性を立証するまで、それは実施されるべきではない――我々の地域のこの断固たる立場は変わることはありません。」と、海洋放出の中止を求めています。ところが、外務省は、2月2日のミクロネシア大統領と岸田首相の会談や2月7日のPIF代表団と岸田首相の会談での外交辞令的発言で理解が得られたかのような説明を繰り返し、PIFが「緊密なコミュニケーション」を希望したのは、ALPS処理水の海洋放出に納得しておらず、中止を求めているからであることを無視し、「引き続き対話を行っていくことで一致した」と、うそぶき続けました。太平洋島嶼国の主張を踏みにじる、このような対応は、断じて許されません。福島からの参加者は、原発事故被害者として、マーシャル諸島等の核実験被害者と連帯する立場から、外務省の姿勢を厳しく批判しましたが、外務省は全く意に介しませんでした。
ALPS処理水は、放出立坑と海底トンネルを介して海洋放出されようとしています。これは、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当するとの観点から、私たちは、ロンドン条約締約国である日本の国民として、自国の裁量として禁止するよう求めてきました。しかし、外務省は、「何が人工海洋構築物に該当するのか、ロンドン条約締約国の間で共通認識がない。締約国の裁量で決めることはできるが、義務ではない」と屁理屈をこね、「海底トンネルは人工海洋構築物ではない」と主張しましたが、その根拠については全く説明できませんでした。国民への説明も全くできていないのです。こんな状況で、この春から夏にかけてALPS処理水の海洋放出を開始することなど断じて許されません。
対政府交渉の成果を広く伝え、福島との連帯、太平洋島嶼国・地域との連帯を強め、すべての反対勢力の総力を結集して、福島県漁連との文書確約違反、線量告示等法令違反、ロンドン条約違反で、関係者の理解も得られていない、ALPS処理水の海洋放出をなんとしても止めましょう!

(前半の「医療・介護保険等の保険料・窓口負担の減免措置見直し」の撤回の交渉内容は別紙)

呼びかけ10団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

原子力規制委員会のパブコメへの意見は2,016件、提出意見への回答=「考え方」は無責任極まりない!

原子力規制委員会のパブコメへの意見は2,016件でした。これに対する回答=「考え方」は次のように無責任極まりないものでした。

 第1に、現行法は、国会で「科学的技術的見地だけではなく、幅広い観点から議論が行われた上で、立法されたものと認識しています。」としながら、「40年ルールの改変」を科学的技術的見地からのみ正当化しようとしています。2030年代に原発ゼロを目指す「幅広い観点から議論が行われた上で、立法された」経緯を無視し、三条委員会として、原子力規制委員会に課せられた責務を自ら進んで放棄しようとしている姿勢が改めて明らかになりました。

 第2に、運転開始後40年を超えて運転しようとする際、「初めて長期施設管理計画の認可を受けようとする場合」には、「原則として同40年を経過する日までに、現行の『特別点検』と同等の点検を実施する」ことは明記されましたが、長期施設管理計画の認可が「初めて」ではなく、30年を超えて運転しようとする際に長期施設管理計画の認可を受けていた場合の「特別点検の実施」については曖昧なままです。また、特別点検の実施は「原則として同40年を経過する日までに」とされていて、「40年経過後」でもよく、「特別点検を実施しない特例」もあるかのような書きぶりです。「初めて」と「原則として」は特別点検の実施を緩和する巧みな言い回しのように思われ、依然として、40年目の点検が現行の「特別点検」と同等になるかどうかは定かではありません。

 第3に、すでに運転30年超の原発について、40年を超えて運転しようとする際には、「30年を超えて運転する際に必要な長期施設管理計画」の認可を受けている必要がないこと、40年を超えて運転しようとする「10年以内の期間」の「長期施設管理計画」の認可を新たに受ければよいこと、が明らかになりました。この論理に従えば、運転40年超の原発で初めて50年を超えて運転しようとする際には、「40年を超えて運転する際に必要な長期施設管理計画」の認可を受けている必要はないことになります。また、現行では、40年を超えて運転しようとする原発は「40年を経過する前に特別点検を実施して認可を受ける必要がある」のですが、新制度では、40年経過前の特別点検は「原則として」であり、認可が得られないまま40年を過ぎても廃炉にする必要はなくなるのです。

 原子力規制委員会は、国会から託された三条委員会としての責務を自ら放棄することによって、また、「劣化評価という科学的技術的見地」に自らの権限を狭めることによって、「40年で原則廃炉」を定めた「法の精神」を自ら踏みにじり、「40年という節目を気にせず、老朽原発の寿命を延長できる」道を行政と一緒になって切り開いたと言えるのです。

詳しくは、下記の「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)に対する意見及び考え方(案)」をご覧ください。

第71回原子力規制委員会(2023年2月8日)
資料1 高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第8回)
別紙1:高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)に対する意見及び考え方(案)
<意見の概要>—————————————
1-8(提出意見の後半の〔 〕部分が削除された
前文と1および2の項目意見 原子力規制委員会が設置された経緯と原子力規制委員会設置法の原点に戻り、「40年で原則廃炉、延長は例外中の例外」であることを再確認すべきです。2020年7月29日の声明を撤回すべきです。
理由 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、規制委が国民からその遵守を委託されたのであって、2020年7月29日の声明で「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」としたのは、法成立の経緯を無視し、法解釈を誤った見解に過ぎず、原点に立ち返って、同見解を撤回し、現行の法規定を遵守すべきです。
パブコメ案の項目1および2は、30年以降は10年ごとの審査で延々と運転期間を延ばすことが前提になっていますが、これは「40年ルール」の改変であり、撤回すべきです。
削除された箇所:これまで、10年ごとの高経年化技術評価で審査してこなかった添付書類のデータを使って「10年後も技術基準に適合しているか」を審査し、データの測定方法も審査するとしても、「より厳格になる」とは言えません。山中委員長は特別点検は「40年目で実施する予定」だと言いますが、パブコメ案には明記されていません。「40 年目で行われている試験というのは、かなり特殊な、例えば圧力容器の胴回り 100%超音波試験をしなさいとか、あるいはコンクリートのコア抜きをして破壊強度等の試験をしなさいとか、非常に特殊なものが追加されています。むしろ50年に追加して、それぞれの炉で特徴のあるところを私は試験をしたほうがいい。特別点検と比べて劣るかどうかというのは、これはそれぞれ見解を持たれるところだと思うのですけど、私はそれぞれの炉に対して必要なところを50年目に対してプラスアルファで60年見るべきだ。」とも言っています。40年目の特別点検はむしろ強化し、廃炉を前提に、厳格に審査し、20年の延長限度も遵守すべきです。

<考え方>
○今回お示しした「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」は、令和4年12月16日に、利用政策の観点から現行の運転期間制度を改正する方針が明らかにされたことを受け、その改正内容にかかわらず、高経年化した発電用原子炉施設に関する必要な安全規制を引き続き厳格に実施できるようにするため、原子炉等規制法に定める必要のある法的な枠組みの考え方を示したものです。
○現行法の運転期間延長認可制度が導入された際の国会審議(平成24年第180回国会)では、科学的技術的見地だけではなく、幅広い観点から議論が行われた上で、立法されたものと認識しています。
○発電用原子炉施設の経年劣化の程度はその使用履歴や保守管理の状況などにより個々に異なるため、基準適合性が維持できなくなる時期をあらかじめ一律に定めることはできません。高経年化した発電用原子炉については、適切な時期にその劣化の状況を具体的に把握し、その結果に基づいて、基準適合性が維持されているか、適切な保守管理が行われているかを科学的技術的見地から個々に確認する必要があります。
○利用政策の観点から運転期間が現行制度よりも延長されたとしても、今回お示しした規制制度により基準適合性が確認できない発電用原子炉を運転することはできません。原子力規制委員会は、「原子力利用における安全の確保」を図るため、原子力利用に当たって必要な水準の安全性が確保されるよう、最新の科学的・技術的知見も取り入れながら規制基準を定め、それへの適合性について、原子力規制委員会が行う審査・検査等を通じて厳正な確認を実施していきます。
○なお、設置許可申請書添付資料等において、原子炉圧力容器又は原子炉容器に対する中性子照射量を推定する際の期間として「四十定格負荷相当年時点」等と記載されていますが、これは設計する上での中性子照射量を設定したものであり、個々の原子炉の基準適合性が維持できなくなる時期を示すものではありません。
○よって、原案のとおりとします。

<意見提出者コメント>
現行法は、国会で「科学的技術的見地だけではなく、幅広い観点から議論が行われた上で、立法されたものと認識しています。」としながら、「40年ルールの改変」を科学的技術的見地からのみ正当化しようとしている。そのことによって、2030年代に原発ゼロを目指す「幅広い観点から議論が行われた上で、立法された」経緯を無視し、三条委員会として、原子力規制委員会に課せられた責務を自ら進んで放棄しようとしている。

<意見の概要>—————————————
6-2(提出意見の全文が引用されている)
「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」を堅持し、40年の特別点検の抜本的強化を求めます。また、40年時点の特別点検がどのように改変されるのか、その具体的内容を明示した上でパブリックコメントをやり直すべきです。
理由 項目6では、「長期施設管理計画の認可の基準は、劣化評価が適確に実施されていること、発電用原子炉施設の劣化を管理するための措置が災害の防止上支障がないものであること及び計画の期間において生じる劣化を考慮しても技術基準に適合することのいずれにも適合していることとする。」としていますが、「災害の防止上支障がない」との基準は「高経年化技術評価」であり、「劣化を考慮しても技術基準に適合すること」との基準は「運転期間延長認可」です。ところが、その前提となる項目1と2に基づけば、30年時点での認可後、「運転開始後40年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならない」ことになり、10年先の「50年運転時点」までの技術基準適合性評価になります。これは、現在の運転40年までに20年先の「60年運転時点」までの技術基準適合性評価とは明らかに異なります。また、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」に定められた「申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検」(以下「特別点検」という。)が、項目6の「劣化評価」とも異なり、「特別点検」の中身が弱められるのではないかと危惧されます。「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は福島事故を踏まえた国民の意思を反映させた原則であり、これを堅持し、延長する場合には例外中の例外とするにふさわしい「40年時点での特別点検」の抜本的強化を求めます。また、現在の案には、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」第四十三条の三の三十二(運転の期間等)の変更に伴い、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第百十三条および第百十四条が変更され、さらには、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」も変更されるにもかかわらず、それらには一切言及されていません。法律が変更されることに伴う40年時点での特別点検がどのように変えられるのかについて国民への説明が一切ないままに、このような法律の変更だけに留めたパブリックコメントを行うのは、重大な変更内容を隠蔽するに等しいのではないでしょうか。法律変更後に規則以下を検討するというのは、国民だましもいいところではないでしょうか。40年ルールをどのように変更しようとしているのかについて、明確にした上で、パブリックコメントをやり直すべきです。

<考え方>
○御指摘の「特別点検」は、現行制度において、運転開始後40年を経過する日までに行う高経年化技術評価(40年目)のために実施する必要がある点検に加えて、同40年目の運転期間延長認可申請の際に実施する必要がある点検であり、両者はいずれも、劣化評価を行う際の前提となる劣化状況把握のために必要となるものです。
○新たな制度はこれら現行の2制度を統合するものであり、劣化評価の方法などの技術的内容は、同60年を超えない範囲については変更する必要はないと判断しています。したがって、新たな制度においても、従来実施してきた「特別点検」の技術的な意義や目的が変わることはありません。
○すなわち、新たな制度では、運転開始後40年を超えて運転しようとする発電用原子炉について初めて長期施設管理計画の認可を受けようとする場合には、原則として同40年を経過する日までに、現行の「特別点検」と同等の点検を実施することになります。
○なお、同60年を超えて運転しようとする発電用原子炉に関する劣化評価の方法等については、今後、原子力規制委員会において議論していくこととしています

<意見提出者コメント>
運転開始後40年を超えて運転しようとする際、「初めて長期施設管理計画の認可を受けようとする場合」には、「原則として同40年を経過する日までに、現行の『特別点検』と同等の点検を実施する」ことは明らかにされたが、長期施設管理計画の認可が「初めて」ではなく、30年を超えて運転しようとする際に長期施設管理計画の認可を受けていた場合の特別点検の実施については何も言及していない。また、特別点検の実施は「原則として同40年を経過する日までに」ではあるが、「40年経過後」でもよく、「特別点検を実施しない特例」もあるかのような書きぶりである。「初めて」と「原則として」は特別点検の実施を緩和する巧みな言い回しのように思われ、依然として、40年目の点検が現行の「特別点検」と同等になるかどうかは定かではない。

<意見の概要>—————————————
12-2(提出意見の前後の〔 〕部分が削除された
削除された箇所:原子力規制委員会記者会見録(2023.1.11)によれば、泊1号機と2号機は現在、運転33年と31年ですが、黒川総務課長は「30年を超えていますけれども、運転をするときまでに認可を受ければよい」とし、また、柏崎刈羽1号機と2号機は運転37年と32年ですが、黒川総務課長は「経済産業省が恐らく法改正をしまして、運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正をされますので、40年でもう一切運転できないというくびきはなくなる」とも答えています。ところが、原子力規制委員会の運転期間は暦年によるのであって、休止期間も含むはずです。また、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23原子力関係閣僚会議)でも、「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする」とし、「運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正」ではありません。国民を混乱させるような記者会見での上記発言を撤回し、正確に説明し直すべきです。
1および2によれば、40年を超えて運転しようとする場合は、(1)30年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けていなければならず、さらに、(2)40年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けなければならず、これらが満たされない限り40年を超えては運転できないことになるはずです。たとえば、柏崎刈羽1号機が(1)の認可を受ける期限は2025年9月18日(運転開始40年後)であり、これを過ぎても(1)が認可されていなければ、40年を超えての運転はできないというのが、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」の1および2の趣旨のはずです。ところが、黒川総務課長の発言によれば、(1)の認可を受けていなくても40年を超えた段階でも申請があれば、(1)と(2)の認可を段階的に、または、同時に受けて、40年を超えての運転が可能であるかのように見えます。
削除された箇所:さらに、同11では「新たな制度への円滑な移行を図るため、次のような準備行為その他所要の経過措置を設ける」とし、「新制度施行までの一定の期間中、あらかじめ長期施設管理計画の申請及び認可ができ」、「新制度の施行前に認可を受けたときは、新制度が施行された日に、新制度下での認可を受けたものとみな」し、「新制度の施行前に認可を受けていないときは、新制度が施行された日に、新制度下の申請とみなす」ともされています。これは、40年を超えていても「新制度施行までの一定の期間」内に(1)の認可を受ければ、(1)の条件は満たされたものとし、(2)の認可は50年を超えるまでに受ければよいということになります。つまり、「新制度施行」日を(1)の長期施設管理計画の策定と認可に必要な経過措置期間後に設定することで、1と2の規制が事実上効かないようにできることを意味しています。「新制度施行」日を明示した上で、その妥当性についてもパブリックコメントで問い直すべきです。

<考え方>
○御指摘の「1および2の趣旨」については、今回お示しした概要案の2.に「1.の認可を受けた長期施設管理計画の期間を超えて」と記載しているように、2.は1.により最初に認可を受けた長期施設管理計画の期間を超えて運転しようとするときについて定めたものであることは明らかです。
○したがって、御指摘のような例では、運転開始後40年を超えて運転しようとするときに受ける認可が最初のものとなる場合には、御指摘の「(1)と(2)の認可を段階的に、または、同時に受けて」いる必要はありません。この場合、40年を超えて最初に認可を申請する際に、30年目までに生じた劣化を含めた最新の劣化状況を把握した上で、40年を超えて運転しようとする期間(10年以内に限る。)についての劣化予測を行うこととなりますので、新たな制度において「(1)と(2)の認可」両方を求めることは合理的でなく、その必要性もありません。
○よって、原案のとおりとします。

<意見提出者コメント>
 すでに運転30年超の原発について、40年を超えて運転しようとする際には、「30年を超えて運転する際に必要な長期施設管理計画」の認可を受けている必要がないこと、40年を超えて運転しようとする10年以内の期間の「長期施設管理計画」の認可を受ければよいこと、以上が明らかになった。この論理に従えば、運転40年超の原発で初めて50年を超えて運転しようとする際には、「40年を超えて運転する際に必要な長期施設管理計画」の認可を受けている必要はないことになる。
 また、現行では、40年を超えて運転しようとする原発は40年を経過する前に特別点検を実施して認可を受ける必要があるが、新制度では、40年経過前の特別点検は「原則として」であり、認可が得られないまま40年を過ぎても廃炉にする必要はなくなる。

 

パブコメ締切間近!原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメに意見を7つ提出・・・あなたも声を上げてください!

原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメは、目立たない形で進められていて、下記のように締切りが間近です。あなたの声を届けてください。

原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)に関するパブコメ
(受付締切日時:2023年1月22日23時59分)

若狭ネット資料室室長による7つの意見を紹介しますので、参考にしてください。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その1)>

該当箇所 2ページ25-31行

意見 「ALPS処理水は関係者の理解なくして海洋放出しない」と確約した経済産業大臣と東京電力社長による各文書回答を遵守し、ALPS処理水の海洋放出方針を撤回し、海洋放出を断念し、百年間陸上保管すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議による今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)(2022.12.23)では、「多核種除去設備等で放射性物質を浄化処理してタンクに保管している水の処分は、廃炉を着実に進める上で先送りできない課題」だと一方的に決めつけていますが、タンクを急いで解体して敷地を空けなければならない理由などありません。2030年代に必要と想定されているのは乾式キャスク仮保管施設ですが、これは5-6号機の使用済燃料2,830体搬入に向けて共用プールを空けるためのものであり、急ぐ理由にはなりえません。燃料デブリを取出せるかどうかも分らない現状で、タンクの存在が廃炉作業の妨げになっていると主張する科学的な根拠は全くありません。「汚染水の発生はゼロにできる」状況が近づいていて、サブドレン水位をT.P.-2mまで下げれば、原子炉建屋滞留水が流出することなく地下水の建屋への浸入をゼロにできます。1号機屋根を2023年度に完成させ、建屋周辺のフェーシングを急げば、雨水の建屋浸入もゼロにできます。汚染水貯蔵容量には計約12万トン分の余裕(ストロンチウム処理水タンク2.5万トンの空きをはじめフランジタンク解体エリアに7.4万トンなど)があります。これらの具体的事実は市民団体との交渉で経産省等の担当者達が渋々認めたことです。
また、「漁業者等への丁寧な説明など、理解が得られるよう取り組む」としながら、「ALPS処理水は関係者の理解なくして海洋放出しない」という福島県漁連への経済産業大臣や東京電力社長による文書確約には全く言及せず、無視し続けています。最大の関係者である福島県漁連など漁民による「断固反対」の一貫した主張を踏みにじって強行された「ALPS処理水の海洋放出を行う方針」の決定は、そもそも一方的な約束違反であり、信義にもとる詐欺的行為であり、「関係者の理解が得られる」目処など全くありません。東京電力は中長期ロードマップの「30~40年後の廃止措置終了」時点(2052年頃)までにALPS処理水の海洋放出が完了すると豪語していますが、これは現実を無視した大嘘にすぎません。建屋内にはタンク内トリチウム量の1.5倍ものトリチウムが残存していて、「30~40年後の廃止措置終了」後も、建屋内からトリチウム濃度が数十万Bq/Lの高濃度汚染水が出続けて、ALPS処理水の海洋放出がさらに続かざるを得ません。このような暴挙は即刻中止し、すでに見えている「汚染水発生量ゼロ」の実現に全力を注ぐべきです。タンク内のALPS処理水はこのまま百年間保管し続けるべきです。
福島県の漁業は、2021年4月から「本格操業へ向けた拡大操業」へ移行し、総水揚数量や総水揚金額に回復の兆しが見え始めています。その矢先の同年4月13日にALPS処理水の海洋放出方針が関係閣僚等会議で決定されたのであり、これさえなければ、漁業も順調に回復していったはずです。にもかかわらず、2052年頃までの30年間どころか、それ以降も延々とALPS処理水の海洋放出が続くとなれば、福島県内で回復し始めた生業(なりわい)とその後継者育成に深刻な影響が出ることは避けられません。世代交代期間にも相当する30年以上にもわたるALPS処理水海洋放出の影響は、「損害賠償」では回復され得ないことを肝に銘じるべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その2)>

該当箇所 6ページ1-20行

意見 福島事故を受けた民主党政権による「革新的エネルギー・環境政策」も原発政策の大転換でした。その際に行われた意見聴取会、討論型世論調査、検証会合などと同レベルの国民対話を実施するまで、今回の「大転換」を棚上げにしてください。

理由 今回の原子力関係閣僚会議による「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)は、それまでの原発政策の「大転換」であるにもかかわらず、国民との対話がほとんどありませんでした。今回のパブリックコメントは、通常国会での「たばね法案」を作成しながら行われており、「国民の声を聞いたというアリバイづくり」のためのものにすぎません。「大転換」の方針を決める前に国民との対話を尽くすべきです。
たとえば、福島事故後の2012年9月14日に当時の民主党政権が決定した「革新的エネルギー・環境政策」では、それまでの原発推進策をやめて、「原発に依存しない社会の一日も早い実現」を掲げ、「2030年代に原発稼働ゼロ」が目標にされました。その決定の前には、パブリックコメントだけでなく、全国11都市で「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」を開き、討論型世論調査で国民各層の意見把握も行ない、「国民的議論に関する検証会合」を行うなど、公開で議論の透明性を高めていました。自民党政権になってからも、この方向性がすぐに変わることはなく、2021年10月に策定された第六次エネルギー基本計画では、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」とされ、原発のリプレースも新・増設も記載されていません。
今回の「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」は、このエネルギー基本計画に示された原発政策からの「大転換」だと言えますが、その決定プロセスは余りにも強引です。結論ありきの、わずか数ヶ月での有識者会議、しかも、反対意見を出す者は2名に限られた有識者会議で事務局方針を押し切り、原子力関係閣僚会議で一方的に決定したものであり、国民との対話はほとんどなされていません。少なくとも、民主党政権が「革新的エネルギー・環境政策」を決定する前に行った国民との対話を行うべきです。これを十分行うまで、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」の原子力関係閣僚会議決定は一旦棚上げにすべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その3)>

該当箇所 7-8ページ(運転期間の延長など既設原発の最大限活用)

意見 「40年で原則廃炉」、「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」を改変せず、「可能な限り原発依存度を低減する」という「現行制度との連続性に配慮」して「可能な限り最大限活用」する方針を撤回すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議は「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)を一方的に決定しましたが、「運転期間の延長など既設原発の最大限活用」という方針は、同指針が配慮すると明記している「東電福島第一原発事故を踏まえて導入された現行制度との連続性」を断つものに他なりません。「40年ルール」で代表される現行制度は、国民的な議論を経た上で、国会で十分審議されて決議されたものであり、原子力関係閣僚会議決定で勝手に変更できるものではありません。
「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、本来、政府や経産省が口出ししたり、行政の都合に合わせて、一方的に、自由に変えられるものではありません。
上記の「行動指針(案)」では「運転期間は40年とした上で、これを超えて運転をする場合には、延長の必要性について以下の事項の認定を受けなければならないことを、条件として明確化する。A:電力の安定供給の選択肢確保への貢献、B:電源の脱炭素化によるGX推進への貢献、C:安全マネジメントや防災対策の不断の改善に向けた組織運営体制の構築」とし、「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする。A:東日本大震災発生後の法制度(安全規制等)の変更に伴って生じた運転停止期間(事情変更後の審査・準備期間を含む)、B:東日本大震災発生後の行政命令・勧告・行政指導等に伴って生じた運転停止期間(事業者の不適切な行為によるものを除く)、C:東日本大震災発生後の裁判所による仮処分命令等その他事業者が予見しがたい事由に伴って生じた運転停止期間(上級審等で是正されたものに限る)」としていますが、これらは原子力規制委員会設置法が導入された際の「法の精神」に反します。「運転期間は40年」という条文の趣旨は、40年で原則廃炉という趣旨であり、その延長は例外中の例外であって容認し難いというのが、福島事故を踏まえた国民の意思、それに従い決議した国会の意思であり、条文に込められた法の精神です。それを踏みにじる「行動指針(案)」は撤回すべきです。
また、「エネルギー供給における『自己決定力』の確保や、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献に資するため、安全性確保を大前提に、運転サイクルの長期化、運転中保全の導入拡大及び定期検査の効率的な実施に取り組む。」としていますが、これは老朽炉を徹底的に駆使して設備利用率を80~90%へ引き上げ、脱炭素電源の「牽引役」にしようというもので、極めて危険です。現在の13ヶ月運転サイクル(次回定期点検までの連続運転期間)を15~16ヶ月へ伸ばし、18ヶ月さらには24ヶ月へ伸ばし、定期点検期間を2~3ヶ月ないし1年以上の現状から大幅に短縮させようというものです。かつて死傷者11名を出した2004年美浜3号配管破断事故は、このような定検短縮競争の結果であり、その二の舞になりかねません。「可能な限り最大限活用」方針を撤回し「可能な限り低減」の現行方針、さらには、「40年で廃炉」の原子力規制委員会設置法の法の精神へ戻るべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その4)>

該当箇所 9-10ページ(新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設)

意見 原発のリプレースや新・増設は、第六次エネルギー基本計画にも参議院選挙公約にもなく、「想定していない」との閣僚答弁だったにもかかわらず、「まずは廃炉原発の建て替え、今後、新増設を検討」へ「大転換」しており、撤回すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)にも注記されているとおり、2021年10月策定の第六次エネルギー基本計画には、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」とあり、原発のリプレースも新・増設も記載されていません。それから1年も経たないうちに、国民との対話もなく、2022年8月からたった4ヶ月間の、反対・慎重意見の委員が2名程度しかいない「有識者」会議で形式だけの検討をして、一方的に「大転換」しました。これは、エネルギー基本計画にも、参議院選挙公約にも、「想定していない」との一連の閣僚答弁にも違反し、国民の常識にも民主主義にも反します。即刻撤回すべきです。
「行動指針(案)」には「将来にわたり、革新技術による安全性向上、エネルギー供給における『自己決定力』の確保、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献といった原子力の価値を実現していくため、そして足下から安全向上に取り組んでいく技術・人材を維持・強化していくためにも、安全性の確保を大前提として、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。」とありますが、現在検討中の三菱重工の革新型軽水炉SRZ-1200は「次世代革新炉」とは名ばかりで、既存の第2世代PWRに第3世代APWRの設計を一部取り入れ、第3世代+のコアキャッチャーなどを取って付けただけです。高性能蓄圧タンクはECCSの追加に過ぎず、電源なしの自然循環で動く受動的炉心冷却装置ではありません。にもかかわらず、「次世代革新炉」を標榜するのは国民だましと言えます。しかも、基本設計から詳細設計にほぼ10年、2030年代初めまでかかるというのですから、その性能が実証されたものでないことは明白です。
また、「震災前と比較した依存度低減という現在の方針も踏まえ、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」、すなわち、リプレースを先行させ、新・増設についても「その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。」と、忍ばせています。「建て替え」であっても、新たに原発が建設されれば、それ以降40年以上、2060年代以降も危険な原発に依存する状態が続きます。「依存度低減という現在の方針」は本来、「原発基数と依存年数の両方を低減」する趣旨であり、21世紀後半以降も原発に依存し続けるのは現行方針に反します。さらに、「原子力発電所の建設や安全対策に係る投資を対象」に「長期脱炭素電源オークションの枠組みを活用・改善、その他の措置による、原子力を含めた計画的な脱炭素電源投資支援等」を「検討・具体化」するとしていますが、「原発は安価だ」と言うのならこのような「電力会社の負担軽減=国民負担」による「原発への投資支援」など不要なはずです。
福島事故を顧みず、国民に重大事故のリスクを受忍させ、約2万トンに達する使用済燃料のさらなる積増しに伴うリスクを後世に押しつけ、1基1兆数千億円もの原発建設費の負担を電力消費者に強要することになります。このような原発依存はもうやめるべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その5)>

該当箇所 14ページ(再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化)

意見 高速増殖炉・高速焼却炉開発破綻の現実を直視し、再処理・プルトニウム利用を中止すべきです。プルサーマルは、核暴走や炉心溶融事故のリスクを高め、プールでの90年冷却が不可避の使用済MOX燃料を生み出すため、即刻中止すべきです。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)では、「使用済燃料の再処理について、日本原燃は六ヶ所再処理工場の新たな竣工目標実現に向けて、規制当局との緊密なコミュニケーション等により、安全審査等への対応を確実かつ効率的に進める。」としていますが、このように明記せざるを得ないほど、日本原燃は技術的能力や管理能力に欠けています。日本原燃は2022年12月26日、六ヶ所再処理工場の竣工時期を「2022年度上期」から「2024年度上期のできるだけ早期」へ26回目の変更を原子力規制委員会に届けましたが、その具体的な見通しは立っていません。日本原燃は元々、取締役を含めて職員の多くが電力会社からの出向等によって成り立つ寄り合い所帯であり、プロパー職員が育成されているとは言え、現状でも「国による、工事・審査対応等の進捗や体制の随時確認、事業者に対する指導等」や「電気事業連合会『サイクル推進タスクフォース』等を中心とした、日本原燃の審査対応に対する産業大の支援の強化」など外部からのテコ入れがなくては成り立たない組織です。このような現実を直視するなら、「使用済燃料の受入れ・貯蔵、剪断・溶解、分離、精製、脱硝・製品貯蔵、高レベル廃液冷却貯蔵・ガラス固化」など極めて危険な作業を担う技術的能力や管理能力があるとは到底考えられません。破滅的な重大事故を起こす前に閉鎖し、再処理政策を中止すべきです。
また、「プルサーマルの推進や使用済燃料の貯蔵能力の拡大等に向けて、電力事業者が連携し、地元理解に向けた取組を強化するとともに、国もこうした取組をサポートし、主体的に対応する。」としていますが、電力自由化の下で市場競争を強いられる電力会社自身が、プルサーマルを重荷に感じています。その例が、MOX燃料輸入価格の高騰と仏メロックスMOX燃料加工工場の品質欠陥による操業度低下です。2022年11月に高浜3号へ搬入された輸入MOX燃料価格は12.1億円/体で、約1億円の輸入ウラン燃料価格の10倍以上です。そのため、関西電力の高浜3・4号のプルサーマルは、3年ごとに16体/基ずつしか発注しておらず、認可装荷体数40体/基の4割にすぎません。しかも、仏メロックスMOX燃料製造工場では製造欠陥による生産量低下が急激に進み、2021年には2015年と比べてMOX燃料ペレットで125HMトンから51HMトン、MOX燃料集合体数で295体から106体へ1/3程度へ減っています。これに伴い、再処理量も1205トンから1021トンへ減っていて、使用済燃料プールの満杯問題が浮上しています。
このような現実を無視し、国民の目から隠して、「事業者による、プルサーマルに係る地元理解の確保等に向けた取組の強化」や「国による、プルサーマルを推進する自治体向けの交付金制度の創設」を行うのは国民をだまし、札束で頬をたたくことに他なりません。「国・関係者による、使用済MOX燃料の再処理技術の早期確立に向けた研究開発の加速、官民連携による国際協力の推進、これも踏まえた処理・処分の方策の検討」などはこれまでから主張されてきたことで、全く進展がありません。使用済MOX燃料は使用済ウラン燃料より超ウラン元素による崩壊熱が高く、6~9倍長期間の冷却が避けられません。崩壊熱を2kW/tまたは1kWへ下げるのに使用済ウラン燃料で10年または50年のところ、使用済MOX燃料では90年または300年もかかります。プルサーマルは、核暴走事故や炉心溶融事故のリスクを高め、プールでの永久冷却を要する使用済MOX燃料を生み出すため、即刻中止すべきです。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その6)>

該当箇所 15-16ページ(廃炉の円滑化に向けた取組)

意見 「廃炉」にされた原子力発電所の廃止措置においては、放射能で汚染された原子炉建屋等施設・構造物、機器・配管等の早期の解体撤去は行わず、そのまま密閉管理し、少なくとも100年程度の安全貯蔵期間をとるべきです。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)では、「我が国における着実かつ効率的な廃炉を実現するため、廃炉に関する知見・ノウハウの蓄積・共有や必要な資金の確保等を行うための仕組みを構築する。」としていますが、2001年に廃止措置が開始された東海原発では、2010年、2013年に続き2019年3月14日に3回目の延期が行われ、「2018年3月に解体撤去完了予定」だったものが「2030年度完了予定」へ13年延期されました。ふげん、浜岡1・2 号などでも同様に解体作業は進んでいません。その最大の原因は、解体作業で出てくる放射性廃棄物の処分先がないことです。
現行の廃止措置計画では、10~20年程度、「安全貯蔵」してから解体する方針ですが、原子炉建屋の主な汚染は長年放射線を浴びることによって生じたコバルト60であり、コバルト60は半減期5.27年であることから20年経過しても1桁下がる程度にすぎません。放射能減衰が不十分なまま解体撤去を急げば、高線量下の作業により大量の労働者被曝が避けられず、排出される放射性廃棄物により一般公衆が被曝する危険も高まります。コバルト60は100年経てば100万分の2程度にまで下がり、被ばく労働は大幅に軽減されます。
国際的にも、廃炉後の安全貯蔵期間を50~80年と長くとって放射能減衰を図る方向が主流になっています。イギリス、カナダ等では80年程度の長期貯蔵後に解体の方針がとられ、当初は早期解体撤去が多かった米国でも、60年かけて長期貯蔵した後に解体する方針が増えています。ドイツではグライフスバルト原発5基(すべてVVERで運転中4基、試運転中1基。他に建設中3基も解体)が解体撤去されましたが、労働者被曝低減のため、大型機器は全て解体せず一括撤去し、使用済燃料と共に、隣接する中間貯蔵施設にそのまま保管されています。最終処分先は未定のままです。当初安定だと思われた岩塩層に設けた中低レベル用の処分場に地下水が流れ込むおそれがあると判明し、投棄した廃棄物約20万立方メートルを回収しなければならない事態に陥っているからです。米国では軍事用ハンフォードサイト内のリッチランド処分場でしか解体廃棄物を処分できず、一括撤去した大型機器の長距離運搬リスクが高くなっています。
放射能で汚染された原子炉建屋等施設・構造物、機器・配管等の早期の解体撤去は行わず、そのまま密閉管理し、少なくとも100年程度の安全貯蔵期間をとるべきです。法令では、廃止措置実施方針に、「廃止措置の対象となることが見込まれる発電用原子炉施設及びその敷地」および「前号の施設のうち解体の対象となる施設及びその解体の方法」(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第百十五条の二の第四号及び第五号)を定めることとされていますが、廃止措置期間については「廃止措置期間中に機能を維持すべき発電用原子炉施設及びその性能並びにその性能を維持すべき期間」(同第十一号)とあるだけで、年数の定めはありません。したがって、100年貯蔵後の解体を当面の方針とすれば、法令上の問題は生じません。
「行動指針(案)」では、「クリアランス対象物の再利用のための実証、その安全性確認や再利用方法の合理化の推進」を掲げ、電力会社も「クリアランス物の搬出先確保が困難」だから「フリーリリースの実現が必要」で「クリアランス対象物の拡大、検認保守性の排除、法手続きの簡素化も必要」との声を上げていますが、原発からクリアランスされた鋼材が市民生活の中で使われるような事態は避けるべきです。100年貯蔵へ転換して放射線管理区域の解体撤去をやめればクリアランスそのものが不要になります。
運転年数が長く設備利用率が高いほど、原子炉建屋内の誘導放射能は増え、使用済核燃料内の放射能(死の灰や超ウラン元素)が増えるため、可能な限り速やかにすべての原発を廃炉状態にすることが現世代の最優先の責任です。

<原子力関係閣僚会議パブコメへの意見例(その7)>

該当箇所 17ページ(最終処分の実現に向けた取組)

意見 地震・火山国である日本には長期にわたって変動しない安定な地層など存在せず、高レベル放射性廃棄物を深地層処分すべきではありません。使用済燃料を含めた高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないことこそが現世代の責任です。

理由 原子力関係閣僚会議決定「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23)では、「最終処分事業に貢献する地域への敬意や感謝の念が社会的に広く共有されるよう、国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働きかけを抜本強化するため、文献調査受け入れ自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築、実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の体制強化、国と関係自治体との協議の場の設置、関心地域への国からの段階的な申入れ等の具体化を進める。」としていますが、これは、高レベル放射性廃棄物の深地層処分を国民が支持していないことの裏返しです。政府もNUMOも「国民理解」が進まない理由と現実を直視すべきです。
地震・火山国である日本には長期にわたって変動しない安定な地層など存在しません。高レベル放射性廃棄物(再処理を放棄すれば使用済燃料も含まれます)の深地層処分は、その危険を見えなくし、将来世代に見えない危険を先渡しするだけであり、実施すべきではありません。使用済燃料を含めた高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないことこそが現世代の責任なのです。
深地層処分実施主体の原子力発電環境整備機構NUMOは2018年11月に包括的技術報告書をまとめ、地層処分は「人間の生活環境に有意な放射線影響を与えるものではない」と主張しています。しかし、半減期28.7年のストロンチウム90(Sr-90)や半減期1,570万年のヨウ素129(I-129)は水に溶けやすく土壌に吸着されにくいため、処分場閉鎖直後から放射能が溶出し始めます。現行の「TRU廃棄物パッケージA」では、わずか10年(Sr-90)ないし数十年(I-129)で地上へ到達し、生活環境の被ばく原因になります。処分場閉鎖300年後から溶出するとされる「TRU廃棄物パッケージB」に取替えても、放射能が溶出し始める」と想定されています。つまり、TRU廃棄物や高レベル放射性廃棄物を深地層処分すれば、早ければ10年程度で、遅くとも1,000年程度で、放射能が処分場から溶け出して生活環境を汚染していく恐れがあるのです。
NUMOは「不確実さを考慮しても公衆の被ばく限度1mSv/年を下回る」と主張していますが、都合のよい仮定に基づくモデル計算にすぎません。また、稀頻度事象シナリオでは、埋設後に震源断層が活動して処分場を断裂するケースや火山マグマが噴出して処分場ごと吹き上げるケースが想定されていますが、これらのケースでは被ばく線量が1mSv/年を超えてしまうため、1年目は「緊急時被ばく状況の参考レベル20~100mSv」、2年目以降は「現状被ばく状況の参考レベル1~20mSv/年」を評価基準とし、この上限を超えなければよいとしているのです。これは、現行法令違反であるだけでなく、「深地層処分で将来世代に深刻な被ばくが生じても構わない」という身勝手な立場であり、高レベル放射性廃棄物を生み出した電力会社、原子力メーカー、国ひいては現世代の責任を顧みないものと言えます。
「絶対安全」と豪語された福島第一原発では、運転開始からわずか40年も経たないうちに、3基が一斉に炉心溶融事故を引き起こしました。国際的に未経験の深地層処分で、NUMOが「10年ないし1,000年は溶出しない」と豪語しても全く信用できません。現に、ドイツでは、安全だとされた岩塩層の低レベル放射性廃棄物処分場が危険だとわかり、その時点までに投棄された放射性廃棄物20万立方メートルを回収することが2010年に決定されています。深地層処分では、処分した後に処分場が危険だとわかっても、処分された高レベル放射性廃棄物を回収するのは不可能です。また、国は、福島事故前は1mSv/年の公衆の被ばく限度を法令で担保しながら、事故後には現存被ばく状況だとして1~20mSv/年の被ばくを強要し、2011年8月時点で約400万人もの人々を放射線管理区域と同様の汚染状況下に放置して1mSv/年以上の被ばくを余儀なくさせ、20mSv/年未満で避難指示を解除して避難者への住宅支援を打ち切り、福島県民の被ばくの犠牲の上に福島事故をなかったことにしようとしています。NUMOによる緊急時被ばく状況や現存被ばく状況に基づく被ばく評価基準はこの立場を踏襲するものであり、許容できません。
日本での深地層処分は不可能だと判断し、使用済燃料を含めた高レベル放射性廃棄物をこれ以上生み出さないために、原発・核燃料サイクル推進政策を脱原発へ抜本的に転換すべきです。

原子力規制委員会の「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」のパブコメに怒りの意見を出そう!(その2とその3を追加提出しました。)

原子力規制委員会は12月21日、第59回原子力規制委員会で、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」を決定し、翌22日0時から2023年1月20日深夜までのパブコメを始めました。これは、岸田政権の「GX実現に向けた基本方針」に呼応するもので、原発の「40年で原則廃炉」と「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」が、2023年初めの通常国会で改変(=事実上の撤廃)されようとしています。理不尽な「大転換」を許してはなりません。
大晦日と正月をはさんで1ヶ月間ですので、意見提出がしにくい期間に敢えてぶつけたとしか思えません。この点での怒りも込めて、2023年1月20日深夜締切までに怒りの意見を提出しましょう。
以下は若狭ネット資料室長が本日提出した意見です。今後も追加提出する予定です。(その2とその3を追加提出しました。)
参考にしてください。

<原子力規制委パブコメへの意見例(その1)>

該当箇所 前文と1および2の項目

意見 原子力規制委員会が設置された経緯と原子力規制委員会設置法の原点に戻り、「40年で原則廃炉、延長は例外中の例外」であることを再確認すべきです。2020年7月29日の声明を撤回すべきです。

理由 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、規制委が国民からその遵守を委託されたのであって、2020年7月29日の声明で「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」としたのは、法成立の経緯を無視し、法解釈を誤った見解に過ぎず、原点に立ち返って、同見解を撤回し、現行の法規定を遵守すべきです。
パブコメ案の項目1および2は、30年以降は10年ごとの審査で延々と運転期間を延ばすことが前提になっていますが、これは「40年ルール」の改変であり、撤回すべきです。これまで、10年ごとの高経年化技術評価で審査してこなかった添付書類のデータを使って「10年後も技術基準に適合しているか」を審査し、データの測定方法も審査するとしても、「より厳格になる」とは言えません。山中委員長は特別点検は「40年目で実施する予定」だと言いますが、パブコメ案には明記されていません。「40 年目で行われている試験というのは、かなり特殊な、例えば圧力容器の胴回り 100%超音波試験をしなさいとか、あるいはコンクリートのコア抜きをして破壊強度等の試験をしなさいとか、非常に特殊なものが追加されています。むしろ50年に追加して、それぞれの炉で特徴のあるところを私は試験をしたほうがいい。特別点検と比べて劣るかどうかというのは、これはそれぞれ見解を持たれるところだと思うのですけど、私はそれぞれの炉に対して必要なところを50年目に対してプラスアルファで60年見るべきだ。」とも言っています。40年目の特別点検はむしろ強化し、廃炉を前提に、厳格に審査し、20年の延長限度も遵守すべきです。

<原子力規制委パブコメへの意見例(その2)>

該当箇所 1、2および6の項目

意見 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」を堅持し、40年の特別点検の抜本的強化を求めます。また、40年時点の特別点検がどのように改変されるのか、その具体的内容を明示した上でパブリックコメントをやり直すべきです。

理由 項目6では、「長期施設管理計画の認可の基準は、劣化評価が適確に実施されていること、発電用原子炉施設の劣化を管理するための措置が災害の防止上支障がないものであること及び計画の期間において生じる劣化を考慮しても技術基準に適合することのいずれにも適合していることとする。」としていますが、「災害の防止上支障がない」との基準は「高経年化技術評価」であり、「劣化を考慮しても技術基準に適合すること」との基準は「運転期間延長認可」です。ところが、その前提となる項目1と2に基づけば、30年時点での認可後、「運転開始後40年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならない」ことになり、10年先の「50年運転時点」までの技術基準適合性評価になります。これは、現在の運転40年までに20年先の「60年運転時点」までの技術基準適合性評価とは明らかに異なります。また、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」に定められた「申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検」(以下「特別点検」という。)が、項目6の「劣化評価」とも異なり、「特別点検」の中身が弱められるのではないかと危惧されます。「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は福島事故を踏まえた国民の意思を反映させた原則であり、これを堅持し、延長する場合には例外中の例外とするにふさわしい「40年時点での特別点検」の抜本的強化を求めます。
また、現在の案には、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」第四十三条の三の三十二(運転の期間等)の変更に伴い、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第百十三条および第百十四条が変更され、さらには、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」も変更されるにもかかわらず、それらには一切言及されていません。法律が変更されることに伴う40年時点での特別点検がどのように変えられるのかについて国民への説明が一切ないままに、このような法律の変更だけに留めたパブリックコメントを行うのは、重大な変更内容を隠蔽するに等しいのではないでしょうか。法律変更後に規則以下を検討するというのは、国民だましもいいところではないでしょうか。40年ルールをどのように変更しようとしているのかについて、明確にした上で、パブリックコメントをやり直すべきす。

<原子力規制委パブコメへの意見例(その3)>

該当箇所 1、2および11の項目

意見 1および2の認可はそれぞれ40年および50年を超えるまでに行われなければならないことを明記し、11の新制度施行日によっては1と2が骨抜きにされるため、新制度施工日を明記し、パブコメをやり直すべきです。

理由 原子力規制委員会記者会見録(2023.1.11)によれば、泊1号機と2号機は現在、運転33年と31年ですが、黒川総務課長は「30年を超えていますけれども、運転をするときまでに認可を受ければよい」とし、また、柏崎刈羽1号機と2号機は運転37年と32年ですが、黒川総務課長は「経済産業省が恐らく法改正をしまして、運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正をされますので、40年でもう一切運転できないというくびきはなくなる」とも答えています。ところが、原子力規制委員会の運転期間は暦年によるのであって、休止期間も含むはずです。また、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23原子力関係閣僚会議)でも、「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする」とし、「運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正」ではありません。国民を混乱させるような記者会見での上記発言を撤回し、正確に説明し直すべきです。
1および2によれば、40年を超えて運転しようとする場合は、(1)30年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けていなければならず、さらに、(2)40年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けなければならず、これらが満たされない限り40年を超えては運転できないことになるはずです。たとえば、柏崎刈羽1号機が(1)の認可を受ける期限は2025年9月18日(運転開始40年後)であり、これを過ぎても(1)が認可されていなければ、40年を超えての運転はできないというのが、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」の1および2の趣旨のはずです。ところが、黒川総務課長の発言によれば、(1)の認可を受けていなくても、40年を超えた段階でも申請があれば、(1)と(2)の認可を段階的に、または、同時に受けて、40年を超えての運転が可能であるかのように見えます。
さらに、同11では「新たな制度への円滑な移行を図るため、次のような準備行為その他所要の経過措置を設ける」とし、「新制度施行までの一定の期間中、あらかじめ長期施設管理計画の申請及び認可ができ」、「新制度の施行前に認可を受けたときは、新制度が施行された日に、新制度下での認可を受けたものとみな」し、「新制度の施行前に認可を受けていないときは、新制度が施行された日に、新制度下の申請とみなす」ともされています。これは、40年を超えていても「新制度施行までの一定の期間」内に(1)の認可を受ければ、(1)の条件は満たされたものとし、(2)の認可は50年を超えるまでに受ければよいということになります。つまり、「新制度施行」日を(1)の長期施設管理計画の策定と認可に必要な経過措置期間後に設定することで、1と2の規制が事実上効かないようにできることを意味しています。「新制度施行」日を明示した上で、その妥当性についてもパブリックコメントで問い直すべきです。