2000年4月26日
関西電力株式会社社長 石川博志 様
 
チェルノブイリ原発事故14周年に当たっての
関西電力への申し入れ
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 本日は、チェルノブイリ原発で核暴走事故が勃発してちょうど14年目に当たります。事故当初のチェルノブイリ原発4号の衝撃的な姿を私たちはいまでも鮮明に覚えています。事故後ロシアで事故処理作業員3万人以上が死亡したことが最近明らかとなっています。ウクライナ、ベラルーシを含めるとその何倍にも達します。今でも、数百キロにおよぶ地域で子供たちや住民、家族がヒバクし続け、ガン・白血病や各種疾病に苦しみ、犠牲となっています。そういった事実を受け、「チェルノブイリをくり返すな」を合い言葉に日本でも、福井、関西でも原発を停止させる運動が強まってきました。
 貴社は、そういったはば広い市民、住民の願いを踏みにじり、あざ笑うかのように原発の運転・増設を進め、目論み、プルサーマル計画を強行してきました。
 一方、1991年には美浜2号でSG細管破断事故、1994年には美浜1号でSG放射能漏れ事故を引き起こし、1998年10月には貴社の使用済燃料・MOX燃料の欠陥輸送容器でのデータ改ざんが発覚し、昨年9月に貴社のMOX燃料でのデータ改ざんが発覚しました。これらをとおして、貴社の原発に対する姿勢が経済性を優先し安全性を無視するものであることが社会全体に明らかとなり、貴社の社会的信頼は地に落ちています。
 昨年9月30日の東海村JCO事故は、住民のヒバク、労働者の犠牲を通じて、原発に対する国民の不安感を、「原発への嫌悪、拒否」へと質的に転換させたと言っても過言ではありません。
 このような中で、高浜原発3・4号へのプルサーマル計画を強行し、福井県に計画の容認を迫ってきた貴社は、断じて許せません。世界的に信頼を失った英国のBNFLとの再処理・MOX燃料加工契約を維持し続けようとしています。アイルランド、デンマークが停止を求めているセラフィールドの核施設で、BNFLが北海を核汚染させている責任の多くは、再処理を委託している貴社をはじめ日本の電力会社にあります。貴社は国際的な責任も問われているのです。MOX燃料データ改ざん発覚後も、若狭ネットなど市民グループが求めるプルサーマル問題での公開討論会開催を、口先だけの空約束で逃げ回るなど、貴社の姿勢は極めて悪質です。
 また、貴社は鷲見副社長を日本原電社長に送り込み、今年度の電力供給計画ではじめて敦賀原発増設計画の推進を明確に打ち出しました。これは、「これ以上原発はいらない」との21万人の福井県民署名の願いを踏みにじるものです。世界で未経験の超大型のA−PWR型原発を若狭で実験の形で商業利用しようとする貴社の狙いは、世間の常識とはかけ離れた危険なものです。1991年の美浜2号事故後、市民グループの前で陳謝してみせた貴社の幹部の意図がその場しのぎのものであったと今になって言われるのも当然です。電力自由化を契機に貴社の経済性追求の姿勢がますます純化し、居直りの姿勢すら見られるのはどういうことでしょうか。
 貴社は、最近何度も報道されているチェルノブイリ周辺何百キロにおよぶ放射能汚染と被害の実態を、真摯に受け止め、教訓を学び取るべきです。貴社の原発が重大事故を引き起こし、関西だけでなく日本全体が破局を迎える危険をすぐさま取り除くべきです。
 私たちはここに以下の要求を申し入れます。即刻実施されることを強く望みます。
 
@私たちが提出している3つの公開質問書(昨年11月6日付、今年1月24日付、3月20日付)に対して文書で回答すること。そして、昨年12月17日に確約した公開討論会を即刻開くこと。
 
Aプルサーマル計画を撤回し、高浜3・4号へのMOX燃料装荷を断念すること。
 
BBNFLとの再処理およびMDFでのMOX燃料加工の両契約を破棄し、SMPでの新たなMOX燃料加工契約を行わないこと。
 
CコジェマとのMOX燃料加工契約を破棄し、今後一切契約しないこと。
 
D使用済核燃料の中間貯蔵施設を一切計画しないこと。これ以上使用済核燃料を生み出さないこと。
 
E敦賀3・4号増設のための、日本原電への一切の協力を行わないこと。
 
F美浜1号等老朽原発の長期連続運転、定期点検短縮、長寿命化をやめること。
 
Gチェルノブイリ原発事故を教訓として、原発を即刻停止すること。