2001年4月26日
関西電力株式会社社長 石川博志様
 
チェルノブイリ核暴走事故15年に当たっての申し入れ
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
                    関西電力本社で申し入れを提出する若狭ネット代表
 
 ウクライナのチェルノブイリ原発で核暴走事故が起こって、本日で15年が経ちました。原子炉から大気中に飛び出したセシウム137で比較すると、チェルノブイリ事故の放出放射能量は広島原爆の約600倍と見られます。事故後4ヶ月以内に31人が急性死し、事故炉から120キロ離れたキエフ市や、130キロ離れたゴメリ市から合わせて30万人以上の児童が避難しました。ロシアでは3万人以上の事故処理作業員がすでに死亡したことが昨年明らかになっています。
 ベラルーシで小児甲状腺ガンが事故後100倍に増えたことは周知の事実で、それにとどまらず、ベラルーシ・ウクライナでは大人の肺ガン、乳ガン、腎ガン、膀胱ガンなどが増加しています。さらに、ドイツ、ブルガリア、ギリシアなどヨーロッパ各地で、周産期死亡増、死産増、乳児白血病増などの影響が報告されています。
 人口の密集する日本の原子炉で重大事故が起これば、急性死が続出し、何百万人、何千万人もの人々が被曝で苦しみます。放射能汚染は近畿圏を超えて数百キロに及び、琵琶湖など貴重な水源や農地などが使えなくなり、幾世代にもわたってその被害が続きます。私たちは、チェルノブイリ事故後何度も何度も貴社を訪れ、これらのことを警告し、貴社の11基の原発を停止するよう強く要請してきました。
 しかし、貴社は、原発を運転し続け、原発の新増設を進めています。貴社は、ベラルーシの高汚染地から移住せざるを得なかった住民から、本日訪問を受けたことを真摯に受け止め、原発事故のおそろしさを真剣に学び、脱原発の英断を下すべきです。
 チェルノブイリ事故や美浜事故、JCO事故などを通じ、日本の国民の多数は原発や核施設の運転に深刻
な恐怖を抱くようになったのです。新潟県の刈羽村では品田村長が、4月18日に村議会で可決された「プルサーマル導入計画の是非を問う住民投票条例案」を尊重する姿勢に転じざるを得なくなっています。刈羽村は柏崎刈羽原発3号のプルサーマル計画住民投票条例を、25日ついに公布、施行しました。5月27日の投票で刈羽村民がプルサーマル計画を拒否することが濃厚な情勢となっています。
 「原子力は『絶対に』安全」とは誰にもいえない ---- 3月に発表された原子力安全白書はこのことばから始まっています。日本政府は「原発事故を国民は受忍せよ」と迫ってきたのです。このような開き直りを許すことはできません。
 このような中で、貴社はプルサーマル計画を降ろすことなく、MOX燃料を英国に返還したのち、新たなMOX燃料をイギリスのBNFLやフランスのコジェマから購入しようと頑なに目論んでいます。各地の原発立地計画地点であくどい手を使って画策しています。
 原発を稼動させることが公益企業としての当然の営為であるかのように強弁するのは、もうやめるべきです。私たちは次の点を特に要請します。すぐさま実行されるよう切に望みます。
 
@貴社が、小中学生向けに、大阪府教育委員会認知の下に作製し、各校に配布した、ビデオとパンフ
レットを即刻回収し、チェルノブイリ事故による深刻な被曝と被害、原発重大事故の危険性や放射性廃棄物の危険性について記述し直すこと。
Aプルサーマル計画を中止すること。BNFLとの契約を破棄し、SMPなどMOX施設との新契約を結
ばないこと。また「将来契約する」との意思表示やそれを約束するような書簡を出さないこと。すでに出したものは撤回すること。MOX燃料の高浜原発から英国への返還計画をやめること。
Bベズナウ原発でのMOX事故について、1997年の福井県武生市での公開討論会で隠したことを認
めた以上、これを謝罪する広告を、福井県下の各紙に早急に掲載すること。
C日本原電が計画中の敦賀3・4号炉からの発電電力量の1/2買電計画を撤回し、今後一切増設に
加担しないこと。珠洲から貴社の社員を引き揚げること。
D貴社が関電管内4ヶ所で策動している使用済核燃料の中間貯蔵施設立地計画を中止すること。
E美浜1号と高浜1号の13ヶ月を超える連続運転を中止すること。2次系高圧給水加熱器から冷却水
が漏えいしている高浜1号を直ちに停止すること。運転30年を超える美浜1号をすぐに廃炉とすること。
F大飯4号での定期点検最短期間36日を更新するための昼夜突貫検査・補修など、定期点検短縮
競争をやめること。
Gチェルノブイリ級事故の危険があり、危険な使用済燃料を生み出し続ける貴社の原発を全て停止す
ること。若狭をはじめ阪神・淡路、鳥取県西部、芸予など各地で地震が相次ぐ事態を重く受け止め、直下地震への耐震性のない貴社の全原発を即刻止めること。
H青森県六ヶ所への使用済核燃料持ち込みをやめること。使用済核燃料を再処理しないこと。