2000年11月16日
福井県知事
栗田 幸雄 様
 
敦賀3・4号増設計画および「福井県内の
原子力発電所における安全対策・地域振興等
の状況と課題の評価」に関する公開質問状
 
若狭連帯行動ネットワーク
 
 台湾政府は10月27日、第四原発2基(各135万kW)の建設を中止すると発表しました。脱原発の流れは、欧米に続き、止まることなくアジアへも押し寄せてきたと言えます。それは国内へも波及しています。歴史の分岐点に立つ私たちは、これらを直視し、そこから真摯に学ぶべきではないでしょうか。
 日本原子力発電の阿比留会長と鷲見社長が年頭挨拶に県庁を訪れた際、貴職は自ら、敦賀3・4号増設願い提出の「時期を含めて原電内部でよく検討してもらい、それを受けて我々としても対応したい」、「議論できる環境をまず整えることが重要だ」と前向きに取り組む姿勢を表明しました。これを受けて、日本原子力発電は2月22日、敦賀3・4号増設計画の事前了解願いを福井県と敦賀市に提出しました。そして、貴職はこの9月に「福井県内の原子力発電所における安全対策・地域振興等の状況と課題の評価」(以下「評価報告書」)をとりまとめ、県議会へ提出したのです。その目的は、敦賀3・4号増設計画に関する「議論を進めるため、平成6年6月に行った県内の原子力発電所における安全対策や地域振興等の状況と課題およびそれに基づく要望に対する国や施設設置者の対応について、改めて評価するとともに、その後に生じた新たな課題を明らかにすること」とされています。
 ところが、1995年1月に約21万人の増設反対県民署名が提出された際、貴職は「署名を重く受け止める」、「増設については白紙だ」との立場でした。その直後に、阪神・淡路大震災が勃発し、もんじゅ事故、東海再処理工場アスファルト固化処理施設火災・爆発事故、MOX燃料輸送容器のデータ改ざん、敦賀2号再生熱交換器破断事故、JCO事故およびBNFLのデータねつ造事件によるプルサーマル中止と続きました。これらの結果、貴職も評価報告書の中で認めているように、国民の間では「原子力発電の恩恵や意義、さらには将来における役割等について、その必要性を肯定する意見は少なく、またその安全性に対して不安や疑問視する声が大き」くなっています。実際に、巻では住民投票で原発新設が拒否され、芦浜では原発新設計画が白紙撤回されました。にもかかわらず、なぜ今、貴職は敦賀3・4号増設を誘致するかのように発言されたのでしょうか。
 全国各地で原発新設は行き詰まり、既設地点でも原発では地域振興できないことが一層明らかになり、「毒を食らわば皿まで」という原発増設「たかり」路線をとるのか、福井県に固有の地域振興政策を掲げて原発依存からの脱却を図っていくのか、という選択が迫られています。福井県では、美浜1号と敦賀1号が運転開始30年を迎えます。今がその転換のチャンスです。
 仮に、「ふげん」と敦賀1号を廃炉にして敦賀3・4号を誘致するとすれば、原発の基数は変わらなくても、敦賀半島の原発容量はほぼ倍増します。また、欧米が脱原発の流れにある中で、今後50年以上にわたり、これまで以上の苦しみを繰り返すことになります。その先にはまだ、さらに数十年間にわたる廃炉措置と放射性廃棄物保管の苦悩が続きます。まさに「福井県の百年の計」がかかっているのです。
 電力の大消費地でもある都市部では、これまでのような利益誘導型の公共事業に対する批判が高まり、政府も硬直化しすぎた公共事業を一部見直さざるを得なくなっています。原発による地域振興の夢が崩れ、国民と県民の間に原発増設反対の声が高まっているときに、またぞろ原発を誘致するというのであれば、原発立地点の「痛み」を電力消費地に理解してもらうというどころではなく、今度こそ誘致したものの責任が問われることでしょう。
 福井県を「自信と誇り」のもてる故郷として子々孫々へ引き継いでいくために、今、敦賀3・4号増設を拒否する英断をぜひとも下していただきたいと切に要請いたします。
 ここに、公開質問状を提出いたしますので、誠意あるご回答を頂けるようお願い申し上げます。
 
1.敦賀3・4号炉増設に対する姿勢について
 
(1)台湾政府は第四原発2基の建設を中止しましたが、その主な理由は「核燃料廃棄物を最終的に処理する方法はまだない」、「原発重大事故の発生確率は百万分の一と低くても受け入れられない」というものです。また、張俊雄行政院長(首相)は「この決定は、今はすべての人を満足させるとは言えないが、我々の子孫には台湾のために勇敢に正しい選択をしたと言えると信じている」と結んでいます。貴職は、福井県での原発建設に係る政策決定を行う立場から、この決断をどのように受け止めているのですか。
 
(2)東海JCOで臨界事故が起き、関西電力のプルサーマルが中止されて間もない今年1月、貴職は、「敦賀3・4号増設は白紙」としてきたこれまでの姿勢を翻し、日本原電に増設願い提出を促すような態度を示しました。貴職は、原発増設反対の21万県民の声を無視し、敦賀3・4号増設を推進する方向に転換したと考えて良いのですか?
 「白紙」の姿勢を「推進」へ転換するにはそれなりの理由があるはずです。原子力への不安と不信が高まっているこの時期に、一体なぜ、あのような発言をしたのですか?
 
2.敦賀3・4号増設計画について
 
(1)評価報告書では、原発15基による電源地域の振興は、社会資本整備(とくに道路延長、道路舗装、医療施設、文化施設など)、企業誘致、地元産業の育成、製品出荷額、地元発注・地元雇用の拡大などで不十分なものに留まり、恒久的福祉の実現にはほど遠く、逆に、相次ぐ原子力事故で電源地域での観光産業が深刻な打撃を受けてきたことを認めています。
 40年前に原発を誘致した当初の夢では、原子力発電所が関連企業を呼び込み、電気料金が安くなって他業種の企業をも呼び寄せ、電源地域の産業・経済が繁栄し、雇用が増え、観光客も増えるはずでした。ところが、40年後の今、そうなってはいません。それは、原発が電力生産という特殊な装置産業であり、製品在庫や物流がほとんどなく、関連産業も少ないというだけなく、危険な放射能と放射性廃棄物を日夜生み出すため、大量の被曝労働が不可欠であり、事故時はもとより日常的にも放射能汚染や「負の遺産」である放射性廃棄物というマイナス効果が伴う、いびつな産業だからです。
 評価報告書では、このマイナス効果を「生産地の痛み」(p.43)と呼んでいるようですが、これは原発そのものが持っている性質であり、原発を廃棄する以外に「痛み」を解消することなどできません。それは「消費地に理解を求める」(p.43)筋合いのものではないと私たちは考えますが、いかがですか。
 また、「事故やトラブルが発生する度に地域のイメージが損なわれている。このため、今後とも住民が電源地域に住んでいることに自信と誇りをもてるよう、日頃から積極的に地域全体のイメージアップに努めることが必要」(p.56-
57)だとしていますが、最大のイメージアップは、原発に頼ってきた県政を反省し、「脱原発の福井県」へ転換し、「電力消費地と共に脱原発社会を追求する」と宣言することであり、これこそが「自信と誇り」を取り戻す最良の手段だと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(2)原子力先進諸国では、日本以外に、今から原発を建設しようとする国はありません。むしろ、台湾での原発建設中止決定に見られるように、脱原発の歴史的な流れは確実にアジアへも押し寄せています。これらの国々では、どのようにして脱原発社会へ進むかという苦悩を背負いながら、国民の理解を得て脱原発への道を着実に歩んでいます。日本では、国民の理解が得られないまま、原発増設が進められようとしています。原発による重大事故や放射性廃棄物処分を巡る問題点が顕在化した今となっては、福井県が政府や電力会社の安全宣伝を「信じて」原発立地に協力し「わが国におけるパイオニア的役割を果たすとともに、長年にわたり大規模な電力移出県として電力の安定供給に大きく貢献」(p.1)するという美辞麗句はもはや通用しません。
 国民の間に「原子力発電の恩恵や意義、さらには将来における役割等について、その必要性を肯定する意見は少なく、またその安全性に対して不安や疑問視する声が大きい」(p.58)のは、決して国民が理解していないからではなく、理解しているからこそこのような世論が生まれているのです。この厳しい現実を福井県当局が正面から受け止めて「理解」することこそが先決だと私たちは考えますが、いかがですか。
 この世論に抗して、未だどこにも建てられたことのない世界最大規模のAPWR、敦賀3・4号をあくまで誘致するというのであれば、それに伴う放射能汚染、労働者被曝、放射性廃棄物処分に係る責任は国や電力会社だけでなく、誘致する側の福井県も負わねばなりません。「原発の安全については国が一元的に責任を負う」などという責任逃れは、もはや許されないと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(3)原発誘致によっては必ずしも社会資本整備が進まなかった事実を評価報告書では認めていますが、それがたとえ進んだとしても直ちに地域振興につながらないことも認めています。たとえば、「電源地域全体の産業振興や交流人口の拡大を図るためには、道路、鉄道等の広域的交通網の整備が特に重要であることから、基幹道路の整備を強く求めてきた」(p.47)が、その整備が一定進み始めると、今度は「当該地域が通過地にならないよう」(p.49)という課題が挙げられています。
 観光客入込数の推移を見れば、県内の電源地域以外では増加傾向から停滞状態にありますが、電源地域では1990年以降減少傾向にあり、ここ数年で激減しています。その原因は相次ぐ原子力事故にあり、JCO事故のように福井県外の事故であってもその影響が出ることは避けられません。この影響は原発がそこに建っていることから生じるのであり、「より一層魅力的な通年型観光拠点施設の整備や新たな観光資源の開発」(p.48)で解決できるとは思えません。それとも、電源地域以外と比べて電源地域では努力が足りないとでもおっしゃるのでしょうか。
 この上、敦賀3・4号を増設すれば、消費地で「理解」されるどころか、ますます見放され、電源地域での観光客離れに拍車がつくと私たちは考えますが、いかがですか。
 ましてや、原発を誘致しても地域振興が図れず、電源三法交付金でも足りないからと言って、さらに「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」の「早期成立」(p.46)を求めるなどもってのほかです。原発立地県が、原発誘致の失政を事実上認めながら、それを真摯に反省するどころか、国民の血税を国民の支持していない原発推進に一層注ぐよう求めるのは筋違いも甚だしいと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(4)1995年1月に提出された敦賀3・4号増設反対署名は、県民の多数の声を反映しています。その後の各種新聞による県民アンケート調査でもそれは明らかです。この県民の声を無視して、「生産地の痛み」を一層ひどくするだけの敦賀3・4号炉増設をなぜ誘致するのですか。県民や国民が納得できる根拠を示してください。
 私たちには、高木前敦賀市長の「毒を食らわば皿まで」という無責任な路線を栗田県政も引きずっているような気がしてなりません。「釣った魚には餌をやらない行政では困る」との数年前の貴職の発言も気になるところです。毒と一緒に「皿まで食う」のも、釣られた魚として「養われる」のも、まっぴらです。
 新たな原発を誘致しなければ、県内で今後2〜3年に1基の割合で順次閉鎖され、原発の寿命を仮に30〜40年としても、重大事故が起こらなければ、2020〜30年頃には脱原発県になれるのです。私たちは「自信と誇り」のもてる原発のない県を子孫に残したいのです。
 貴職は、今後もずっと原発のある県を維持していくつもりなのですか。貴職の原発政策の基本的立場を教えてください。
 貴職は今こそ、脱原発へ進むという英断を下し、台湾政府や三重県知事のように、敦賀3・4号増設計画の白紙撤回を求めるべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(5)折しも、敦賀市にある民間のごみ最終処分場で当初認可容量の13倍もの違法投棄が判明しましたが、これも、県が事情を知りつつ見て見ぬふりをし、ごみを搬入する自治体も違法と知りつつ知らぬ顔を決め込み、問題を先送りしてズルズルと処分場の増設を認めるところまで至り、厚生省の「指導」で県が方針転換するという経緯がありました。このまま行けばどうなるかということは、この場合も容易に判断できる状況でした。状況把握と行政判断を誤った結果と言えます。
 敦賀3・4号増設問題についても、誘致すればその結果がどうなるかは十分見通せる状況にあると私たちは考えますが、いかがですか。
 
3.プルサーマルについて
 
(1)関西電力の輸入MOX燃料についてBNFLのデータねつ造が発覚し、関西電力から「関連する燃料集合体4体だけを使用中止にする」との提案があった際、貴職は、燃料集合体8体すべての使用を中止するよう関西電力に指示しました。これは私たちも評価します。しかし、その前後がいけません。
 1998年1月、県の事前了解前に、関西電力がBNFLにMOX燃料を加工発注する際、貴職は、関西電力の責任で行うことだと容認しました。本来なら「事前了解する前の発注は認めない」とするのが基本です。データねつ造事件が起きて初めて通産省も安全審査後でなければ発注を認めない方針へ転換しましたが、関西電力から加工発注の連絡を受けたとき、県は国に対し輸入燃料体についても安全審査後でなければ輸入を認めないとの厳しい姿勢を求めるべきでした。貴職はこれをどのように反省しているのですか。それとも、県には、監督官庁としては元より、県民に対して道義的にも、その責任は全くないという見解のままなのですか。
 
(2)品質管理データのねつ造が高浜3号用MOX燃料で見つかった際、私たちはいち早く「品質管理そのものに問題がある」と公表データに基づいて具体的に指摘し、プルサーマルの実施を中止させるよう求めました。それを知らされながら、BNFLの品質管理そのものの再チェックを関西電力に指示しなかった責任は貴職にあります。関西電力や国の言うことを鵜呑みにして、県民や国民からの提言を無視したために、データのランダムサンプリングができていないことや、行をずらしてデータをコピーするなど他の方法によるデータねつ造の可能性があることなど、品質管理のずさんさを県のイニシアティブでいち早く発見することができなかったのです。すべてが後手後手に回り、その結果として、県民の安全を確保する姿勢の欠如が明らかになっているのです。もはや責任転嫁は許されません。貴職はこの責任をどのように受け止めているのですか。それとも、県は国や電力会社の言うことを信じておればよいのであり、県民や国民からの提言は握りつぶしてもかまわないとでもお考えなのですか。
 
(3)関西電力は、BNFLのMDFで製造したMOX燃料集合体には過去に事故やトラブルはなかったと、1998年4月5日に武生で開かれた若狭ネットとのプルサーマル公開討論会で強弁しましたが、それが真っ赤な嘘であったことが明らかになりました。8月3日に大阪で開かれた公開討論会で関西電力は、ベズナウ原発へ納入されたBNFL製のMOX燃料で事故があったことを当時知っており、隠していたことを認め、それは「BNFLから外に出すなと言われていたからだ。約束があって、外に出していくと社会的信頼を失うからだ」と弁解しました。貴職は、もちろん事前に、関西電力からBNFL製MOX燃料には事故もトラブルもないと説明されていたと思いますが、いかがですか。それが嘘だったと知った今、この事実をどのように受け止めていますか。
 
(4)評価報告書では、プルサーマルについて「国の責任において、計画の意義、安全性やその進め方について、さらに国民合意の形成に努める」ことを求めていますが、高速増殖炉の実用化が遠のいた今、高速増殖炉までのつなぎと位置づけられてきたプルサーマルには、それを進める大義名分もありません。フランス以外はプルサーマルから撤退する方針が明確になっています。また、使用済MOX燃料を再処理するはずの第2再処理工場もますます遠のき、原発サイト内での永久貯蔵がほぼ確定です。プルサーマルを事前了解した時期とは大きく異なる状況が出てきた現在、事前了解を白紙撤回すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(5)「高浜発電所4号機用MOX燃料の英国への返還について、早期に具体化することが必要」(p.60)としていますが、送り出したものや送り返したものは必ず帰ってきます。それを前提として送り返すのですから、それを実施する前にプルサーマルの福井県での実施を受け入れるべきか否か、県民との「対話・双方向コミュニケーション」(p.23)を図る公開討論会を開催すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
4.「もんじゅ」の運転再開について
 
(1)評価報告書では、「もんじゅ」について「現在策定作業が行われている原子力長期計画の中で、明確に位置づけ、国民合意の形成を図ることが必要」(p.41)としています。県としては、「平成9年12月の高速増殖炉懇談会報告書」(p.41)のように高速増殖炉の実証炉建設計画を含めて高速増殖炉の実用化を明確にすべきであり、それが明記されない現在の長期計画(案)のままでは、「もんじゅ」の運転再開は認められないとの方針だと受け止めてもよろしいですか。
 
(2)「国において、研究開発段階にある原子炉の安全確保の在り方も含め、『もんじゅ』全体の安全性を再確認すること」(p.41)とは、具体的にはどのような再確認を求めているのですか。
 ナトリウム漏えい事故の再現実験では床の鉄板に穴が開き、床下のコンクリートと漏えいナトリウムが反応して事故が拡大する危険のあることがわかりました。このような事態は安全審査では考慮外でしたが、このような想定外の事故の可能性を全面的にしらみつぶしに調べ上げない限り、「もんじゅ」全体の安全性を再確認することはできず、県民も国民も安心できないと私たちは考えますが、いかがですか。
 
5.原発の安全規制について
 
(1)評価報告書は、電力会社による原発の経済効率追求とそれを追認する国の安全規制を容認しています。たとえば、「設備利用率が向上した要因は、平成9年度までに7基の加圧水型炉で蒸気発生器の取替工事が完了した結果、定期検査における蒸気発生器伝熱管の補修作業期間がなくなったこと、また施設設置者は定期検査作業の効率化や工程管理の徹底等に努めてきた結果、定期検査期間の短縮化が図られたため」(p.4)としていますが、取り替えた蒸気発生器の検査は毎年半数だけ実施すればよいと簡略化されたことや定検期間短縮のしわ寄せが下請けに過酷な要求となって跳ね返っていることなどの実態を隠しているとしか思えません。定検期間短縮の実態を県として独自に抜き打ち検査などで調査し、県民に公表すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
(2)「高経年化した原子力発電所については、経年変化に対応した設備の維持を図るとともに、国の安全規制について新たな許認可制度の明確化を図ることが必要」(p.59)だとしていますが、この「新たな許認可制度」とは一体どのような制度のことを指しているのですか。
 敦賀1号および美浜1号については今年で運転30年を完了します。「原子炉の寿命は、一般的に30〜40年といわれている」(p15)としていますが、原発建設当初は「30年の運転」と言われていたのではなかったのですか。敦賀1号および美浜1号については即時廃炉を求めるべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 県としては、40年を超える運転は認めない方針だと受け止めても良いのですか。それとも、申請があればズルズルと運転延長を認める方針なのですか。
 
(3)原発の耐震安全性について「国民の不安が多いことから、安全性に係る説明や、耐震信頼性実証試験の充実など、信頼性の一層の向上に積極的に取り組むとともに、国民の理解が得られるよう必要な措置を講ずることが必要」(p.59)としています。折しも、伏在断層によるM7クラスの鳥取県西部地震が発生しましたが、この地震も「地表に活断層のないところでもM7クラスの地震がいつ起きても不思議でない」ことを実証しました。このクラスの規模の直下地震に、今の原発は耐えられません。なぜなら、国の原発耐震設計審査指針ではM6.5の小規模な直下地震しか考慮していません。しかも、震源断層からの距離に応じて地震動が強まるという地震学界の最近の定説があるにもかかわらず、上記指針ではお墓の倒壊に関する古いデータに基づいて震央付近では地震動が一定だと勝手に解釈し、直下地震の地震動を過小評価しています。入倉孝次郎日本地震学会会長も「現行(の原発耐震設計)指針は1978年に制定されたもので、今回の大震災の経験と20年間の地震学および地震工学の研究成果を踏まえた検討が必要と考える」(科学1月号p.49)と述べています。
 地震予知連絡会は10月11日「西日本は地震の活発な時期に入った可能性が高いので注意が必要」と発表しており、事態は差し迫っています。
 活断層の多くが原発近くを走っている原発立地県として、国に耐震設計審査指針を見直し、全原発の耐震安全審査をやり直すよう求めるべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
6.ふげんについて
 
(1)2002年度末閉鎖が決まっている新型転換炉「ふげん」では、廃炉決定後、運転員のモラル低下による事故が続発しています。ところが、評価報告書は、閉鎖後の廃炉計画と廃止措置の安全管理を言うだけで、「ふげん」発電所長自ら嘆いているこの事故続発については黙っています。これは、福井県が「ふげん」の運転停止時期を延期させたことによると思われますが、「ふげん」には運転する意義もなく、運転するほど赤字を生みます。運転員のモチベーションが失われた危険な「ふげん」は、このまま閉鎖すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
7.中間貯蔵施設について
 
(1)台湾政府は第四原発の建設を中止する理由の一つに「核燃料廃棄物を最終的に処理する方法はまだない」ことをあげています。現に、原発の商業開発から40年経った今なお、世界のどこにも、使用済核燃料など放射性廃棄物を安全に処理・処分できている国はありません。危険な放射性廃棄物を安全に処理・処分できない原発は建設すべきでないと、私たちも考えますが、いかがですか。
 
(2)使用済核燃料の貯蔵増強策を了承する条件として、貴職は2000年度内の立地点具体化をあげていましたが、評価報告書ではそれに全く触れず、「2010年までに確実に中間貯蔵施設の操業が開始できる」(p.17)こととしか記されていません。産業廃棄物処分場以上に危険な使用済核燃料の中間貯蔵施設を喜んで受け入れるような自治体は県外にはないと私たちは考えます。もし、今年度中に中間貯蔵施設の立地点を具体化できない場合には、承認した貯蔵増強策を白紙撤回すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
 
8.原子力防災について
 
(1)評価報告書では、1999年3月に「地域防災計画原子力防災編を全面修正」(p.19)したと簡単に記されています。しかし、それは「国より厳しい退避・避難基準」だと、当時新聞で大きく取り上げられた基準を「退避・避難の初動開始基準」というわけの分からない基準に格下げし、「県の退避・避難基準」案を事実上骨抜きにする修正でした。県独自のこの厳しい「退避・避難基準」案が新聞で取り上げられて以降、これを政府に打診したとも聞きますが、なぜ、この基準案が大幅に改悪されたのですか。政府からどのようなクレームが付いたのですか。具体的にその経緯を説明して下さい。
 
(2)JCO事故後、国の一元管理による原子力災害対策特別措置法制定を契機に、さらに修正を加えていると記されていますが、何をどのように修正しようとしているのか、具体的には何も触れられていません。どのような修正を検討しているのか教えてください。
 国に求めている「各立地地域の特性等を踏まえた災害想定、訓練シナリオ」(p.62)の中身も不明です。チェルノブイリのような重大事故を想定した場合には、「広域にわたる避難訓練」そのものが実施不可能です。そのため、避難訓練ができるように災害想定を小さく設定しているのではないか、と危惧されます。
 以前は「避難訓練をすると不安をあおるからできない」ということでしたが、JCO事故の後は、「この程度の災害なんだから大丈夫だと住民を安心させるための避難訓練を実施する」方針へ転換したかのようにも受け取れます。どのような災害想定や訓練シナリオを国に求めているのですか、具体的に教えてください。
 
−以上−