2000.10.15「反原子力デー」に向けた反原発のつどい
「福井県内の原子力発電所における安全対策・地域振興等の状況と
課題の評価」(福井県平成12年9月)に関する批判
今回の報告書は、敦賀3・4号炉増設計画を契機として行った1994年6月の原発15基体制の総括を再評価したものである。そこでは、15基体制を礼賛することもできず、かといって15基体制からの脱却政策を打ち出すこともできない中で、国民の不安・不信と県民の草の根の反対運動をも逆手に取りながら、敦賀3・4号炉増設を認めるための取引条件をできるだけ引き上げようとする県当局の意図が露骨に出ている。これまでの原子力政策が国民にも県民にも支持されていないことを認めながら、それは正しい理解が得られていないからだとし、正しい理解を得るためには、福井県には地域振興法などによる広域的、長期的、総合的な地域振興の実施、電力大消費地には正しい理解を促すための広報宣伝と双方向コミュニケーションを求めている。
(1)原子力事故への不安と原子力推進政策への不信が国民・県民の間に広がっており、これに対応する必要がある。
国民:「国民の間では、原子力発電の恩恵や意義、さらには将来における役割等について、その必要性を肯定する意見
は少なく、またその安全性に対して不安や疑問視する声が大きい。」(p.58)
県民:「県内においては、平成7年1月に約21万人の敦賀3・4号機増設反対署名が、平成9年12月には約22万人の『もん
じゅ』運転再開反対署名が県に提出された。また、立地市町で住民投票を求める活動も行われるなど、草の根的な運動が行われた。」(p23)
しかし、県はその原因を「正しい理解の不足」にあるとし、客観的な事実を見ようとしていない。「国民がエネルギーや原子力について正しい理解を持つことが重要であるため、小学校など早い時期からの教育が必要」(p43)であり、「原子力広報活動の強化」(p.61)を行い、「国民合意の形成を図るため、一方的な説明会ではなく、対話、双方向コミュニケーション等の活動を積極的、継続的に取り組むことが必要」(p.23)と結論づけている。
(2)原発15基による電源地域の振興は、社会資本整備(とくに道路延長、道路舗装、医療施設、文化施設など)、企業誘致、
地元産業の育成、製品出荷額、地元発注・地元雇用の拡大などで不十分なものに留まり、恒久的福祉の実現にはほど遠く、逆に、相次ぐ原子力事故で電源地域での観光産業が深刻な打撃を受けてきたことを認めている。
・原発は地域振興をもたらさなかった
@原発は広大な自然を長期間占有し破壊する:美浜町の観光用宣伝ポスターから原発が消された
A原発の関連産業は少なく、雇用効果も薄い:特殊な装置産業、製品在庫・物流はほとんどなし、被曝労働のみ
B地域振興とは無縁な「箱モノ」整備:道路・箱モノ公共事業では地場産業は育成されない、歪な都市化の物差し
C原発が残す負の遺産:使用済核燃料(高燃焼度燃料、MOX燃料)、廃炉、取り替えたSG、放射性廃棄物
「電源地域全体の産業振興や交流人口の拡大を図るためには、道路、鉄道等の広域的交通網の整備が特に重要であることから、基幹道路の整備を強く求めてきた」(p.47)が、その整備が進むと今度は 「当該地域が通過地にならないよう」(p.49)という問題が出てきた。県は、観光産業の最大の障害物は原発であることを認めるべきである。
・「生産地の痛みを消費地に理解を求める」(p.43)という場合の「痛み」とは何か?
消費地に理解されれば解消するようなイメージの悪さか?:「事故やトラブルが発生する度に地域のイメージが損なわ
れている。このため、今後とも住民が電源地域に住んでいることに自信と誇りをもてるよう、日頃から積極的に地域全体のイメージアップに努めることが必要」(p.56-57)
原発重大事故の不安、日常的汚染や被曝労働の犠牲を甘受していることか?
原発を誘致しても地域振興が進まないことの不満か?
なら、なぜ、痛みを一層ひどくする敦賀3・4号炉の増設を誘致するのか?
「毒を食らわば皿まで」(前高木敦賀市長)
「釣った魚には餌をやらない行政では困る」(現栗田県知事)
・原発商業運転30年の歴史を総括して、推進する方だけでなく、誘致する方の責任も問われる。
(3)にもかかわらず、県は脱原子力の選択肢には全く触れず、原子力を福井県で推進するためには、国の主導で、原子力政策について国民的合意をとり、交付金の拡充、核燃料税の税率引き上げ、特別措置法の制定などを実施し、電源地域の総合的かつ恒久的な振興を図る必要があると提言している。
原発推進のパイオニア的役割を果たしてきた福井県が、それによっては地域振興が進まず、県内でも原子力への不安と行政不信が拡大するだけだったに関わらず、その責任を国と施設設置者に転嫁し、原発を誘致し推進してきた地方自治体の責任を回避している。国に過去の責任を預け、国民や県民の不安・不信を逆手にとって、自らは敦賀3・4号炉増設に伴う利権を得ようとする「狡獪(こうかい)な狐」である。
(4)電力会社による原発の経済効率追求とそれを追認する国の安全規制を容認している
(i) 国の安全規制体制:安全審査とその体制には具体的に触れず、原発の運転状況チェックの強化に期待
(ii)老朽原発の寿命延長:「原子炉の寿命は、一般的に30〜40年といわれている」(p15)とだけ記述し、判断を棚上げ
(iii)原発の定期点検期間短縮と長期連続運転:経済効率追求を全面容認する一方、異常時に直ちに運転停止を要求
(iv)原発の耐震安全性:国民の不安が多く一層の信頼性向上が必要と指摘。
伏在断層によるM7クラスの鳥取県西部地震、原発の耐震設計ではこれは考慮外
(5)もんじゅの運転再開問題
高速増殖炉の実証炉建設計画を含めて高速増殖炉の実用化を明確にした「平成9年12月の高速増殖炉懇談会報告書も踏まえ、現在策定作業が行われている原子力長期計画の中で、明確に位置づけ、国民合意の形成を図ることが必要である。」(p.41) つまり、長計(案)では高速増殖炉の実用化時期も実証炉計画も曖昧で、実用化されるべき高速増殖炉ともんじゅの関係を明らかにするように求めている。ここはもんじゅ再開をめぐる最大の矛盾点の一つである。
(6)プルサーマル
「国の責任において、計画の意義、安全性やその進め方について、さらに国民合意の形成に努める」ことや「高浜発電所4号機用MOX燃料の英国への返還について、早期に具体化することが必要である。」(p.60) これは、プルサーマルに事前了解を行った県の責任を回避するものである。県は事前了解前のMOX燃料加工発注を容認したことや事前了解を与えたことを反省し、事前了解を撤回して県民との対話・双方向コミュニケーションを図る公開討論会を開催すべきである。プルサーマルを中止することになればMOX燃料の英国への返還は不要であり、プルサーマル実施の県民合意・国民合意が得られまで、これを含めてすべてを白紙へ戻すべきである。
(7)ふげん
2002年度末閉鎖が決まっているが、閉鎖後の廃炉計画と廃止措置の安全管理を言うだけで、廃炉の決まったふげんでの運転員のモラル喪失による事故続発については黙っている。これは福井県がふげんの運転停止時期を延長させたことに起因すると思われる。運転する意義もなく、運転するほど赤字になる、危険なふげんは、直ちに運転停止すべきである。
(8)中間貯蔵施設
使用済核燃料の貯蔵増強策を了承する条件として2000年度内の立地点具体化をあげていたが、それには触れず、「2010年までに確実に中間貯蔵施設の操業が開始できる」(p.17)ことしか触れていない。中間貯蔵施設を受け入れるような自治体はなく、立地点を具体化できない以上、貯蔵増強策を白紙に戻すべきである。
(9)原子力防災
1999年3月に「地域防災計画原子力防災編を全面修正」(p.19)したが、それは国より厳しかった福井県の退避・避難基準を初動開始基準という訳の分からない基準に改悪する修正であった。JCO事故後、国の一元管理による原子力災害対策特別措置法制定を契機に、さらに修正を加えているというが、具体的には何も触れられていない。国に求めている「各立地地域の特性等を踏まえた災害想定、訓練シナリオ」(p.62)の中身も問題である。チェルノブイリのような重大事故を想定した場合には、避難訓練そのものが無意味である。
(10)原発の寿命延長
原発の固定資産税は16年の減価償却期間を超えるとなくなるため、県は償却期間の延長や電源三法の原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金の拡充等を求めている。今のままで寿命を延長するのは県にとっても経済的メリットは薄く、「原子炉の寿命は、一般的に30〜40年といわれている。」(p15)と指摘するに留まり、県独自の判断は示していない。地域振興策との取引条件として寿命延長を捉えているかのように見える。
<福井県内の原子力発電所における安全対策・地域振興等の状況と
課題の評価」(福井県平成12年9月)抜粋>
はじめに (p.1)
第1章 安全対策・地域振興等の状況 (pp.2-35)
第2章 要望に対する国や施設設置者の対応の評価 (pp.36-57)
第3章 現状における課題 (pp.58-67)
まとめ (pp.68-69)
<原子力発電所立地の3原則>
「本県は、原子力発電所の立地に関し、わが国におけるパイオニア的役割を果たすとともに、長年にわたり大規模な電力移出県として電力の安定供給に大きく貢献してきた。原子力発電所の立地に際しては、「安全性の確保」、「住民の理解と同意」、「恒久的福祉の実現」を三原則として慎重に対処してきたが、原子力発電所を取り巻く諸情勢は大きく変化し、安全性の確保や地域の広域的・恒久的福祉の実現について、立地市町はもとより周辺市町村を含む幅広い地域住民の理解と協力を得ることが必要となってきた。」(はじめにp.1)
「県としては、敦賀発電所3・4号機の増設計画について議論を進めるため、平成6年6月に行った県内の原子力発電所における安全対策や地域振興等の状況と課題およびそれに基づく要望に対する国や施設設置者の対応について、改めて評価するとともに、その後に生じた新たな課題を明らかにすることを目的として調査検討を行った。」(はじめにp.1)
<原子力長期計画と国民理解>
「まず、原子力発電所の安全性の確保と住民の理解と同意については、平成6年6月以降、『もんじゅ』事故、兵庫県南部地震、JCO事故、海外のエネルギー政策の転換、新エネルギーへの期待等によって、国民の間に原子力の安全性に対する不安感、国や施設設置者に対する不信感が大きくなったことから、原子力に対する国民の信頼確保が最も重要となっている。・・・ 今後、国や施設設置者は、今回の原子力長期計画策定に至るまでのさまざまな議論等を踏まえ、原子力政策の基本的な方向について、国民合意の形成を図ることが是非とも必要である。」(まとめp.68)
「国民の間では、原子力発電の恩恵や意義、さらには将来における役割等について、その必要性を肯定する意見は少なく、またその安全性に対して不安や疑問視する声が大きい。」(3章p.58)
「原子力長期計画案については、今後、国会内外のさまざまな場で議論が行われるなど、幅広く国民に理解され、国民合意の形成が図られる必要があると考えている。」(1章p.16、関連3章p.58)
「兵庫県南部地震、『もんじゅ』事故、東海再処理工場アスファルト固化処理施設事故、旧動燃事業団での事故やその際の不適切な対応、JCO事故、敦賀2号機一次冷却材漏えい事故、核燃料輸送容器のデータ問題やBNFL製MOX燃料データ問題等の品質管理に係る問題等が発生し、国民全体に原子力に対する不安と不信を与える結果となっている。また、プルトニウム利用に係る安全性の議論、欧米諸国での原子力開発の停滞、新エネルギーに対する期待、高レベル放射性廃棄物の処分の問題等から、わが国がこれ以上の原子力発電や核燃料サイクルの推進に取り組むことに懸念を抱く人が多くなっている。このような中、国は、平成8年1月の三県知事提言を踏まえ、原子力政策に関する国民的合意の形成を目指す政策として、原子力政策円卓会議の開催、シンポジウムやフォーラムの開催、情報公開と国民参加の推進に取り組むこととした。県は、県民の原子力に対する安全性への不安や疑問に応え、正しい理解を深めるため、平成7年6月に『原子力問題を考える県民フォーラム』、同年11月に『耐震安全性県民説明会』、平成10年2月に『プルサーマルを考えるシンポジウム』、平成11年8月に『プルサーマル説明会』等を開催している。県内においては、平成7年1月に約21万人の敦賀3・4号機増設反対署名が、平成9年12月には約22万人の『もんじゅ』運転再開反対署名が県に提出された。また、立地市町で住民投票を求める活動も行われるなど、草の根的な運動が行われた。今後とも、国や施設設置者は、原子力政策を進めるに当たって、国民合意の形成を図るため、一方的な説明会ではなく、対話、双方向コミュニケーション等の活動を積極的、継続的に取り組むことが必要である。」(1章p.23)
「国は、一日資源エネルギー庁や全国講演キャラバン、フォーラム、シンポジウムの開催を継続して実施しており、施設設置者は、県民に対する理解活動はもとより、生産地の痛みを消費地に理解を求めるため、電力消費地と生産地との交流活動を継続して実施している。しかし、エネルギー供給に果たす原子力の役割や意義について、さまざまな場において議論や検討を行い、国民の理解を一層深める必要があり、さらには、国民がエネルギーや原子力について正しい理解を持つことが重要であるため、小学校など早い時期からの教育が必要である。」(2章pp.42-43)
「特に、大量の電力消費地において原子力広報活動の充実強化を図ることが必要である。」(3章p.61)
「原子力政策円卓会議に引き続き、国民各界各層の意見収集や政策提言を行う新たな場を早期に設置し、十分な議論と検討を行うなど、国民の視点から適宜適切にチェック・アンド・レビューを行うことができる体制を確立することが必要である。」(3章p.60)
<安全規制>
「原子力発電所におけるより一層の安全確保を図るため、安全確保の第一義的責任を有する施設設置者において、全ての従業員に対する安全意識の徹底、職業倫理の向上に努めることが必要である。さらに、国の安全規制体制を強化するとともに、原子炉等規制法や原子力災害特別措置法に基づき設置された原子力保安検査官や原子力防災専門官がその責務を厳格に果たすとともに、自治体との連携を十分に図ることが必要である」(3章p.58)
「ア 国や施設設置者においては、原子力発電所の安全審査、定期検査および品質保証活動の充実・強化ならびにヒューマンエラー防止等に積極的に取り組み、原子力発電所の安全性、信頼性の向上を図ることが必要である。
イ 高経年化した原子力発電所については、経年変化に対応した設備の維持を図るとともに、国の安全規制について新たな許認可制度の明確化を図ることが必要である。
ウ 運転中に異常が検知された場合は、直ちに運転を停止するなど安全最優先のための適切な措置を講ずるとともに、関係自治体への通報義務を原子炉等規制法に盛り込むなど、迅速かつ的確な通報連絡体制の確立を図ることが必要である。また、事故原因の徹底究明を行うとともに、これを貴重な教訓として、徹底した水平展開を図り、事故発生の未然防止に努めるなど安全確保対策に万全を期することが必要である。
エ 原子力施設の耐震安全性については、国民の不安が多いことから、安全性に係る説明や、耐震信頼性実証試験の充実など、信頼性の一層の向上に積極的に取り組むとともに、国民の理解が得られるよう必要な措置を講ずることが必要である。」(3章p.59)
<定期検査・点検・補修>
「今後は、約80%台の設備利用率で安定な運転が期待される。設備利用率が向上した要因は、平成9年度までに7基の加圧水型炉で蒸気発生器の取替工事が完了した結果、定期検査における蒸気発生器伝熱管の補修作業期間がなくなったこと、また施設設置者は定期検査作業の効率化や工程管理の徹底等に努めてきた結果、定期検査期間の短縮化が図られたためである。」(1章p.4)「近年の事故事象のうち、敦賀2号機化学体積制御系熱交換器での熱疲労損傷や、もんじゅ2次系温度計の流力振動による疲労損傷、敦賀1号機シュラウドサポート部の応力腐食割れ等については、今後とも各発電所で、的確に点検を実施していくことが必要である。・・・ ヒューマンエラーの発生防止については、これまでの発生事例を分析し、積極的な水平展開や発生防止活動の強化に努めるよう各事業者に対して、再三要請している。」(1章pp.5-6)
「平成11年5月、通産省は電気事業法に基づく定期検査について各機器の機能や安全上の重要度、これまでの検査実績等を踏まえ、検査内容を見直すとともに、敦賀2号機第一次冷却水漏えい事故を踏まえ、検査内容を強化するなどの見直しを行った。施設設置者は、国内外で発生した事故等を踏まえ、定期検査で類似箇所の点検を行い、事故防止に努めている。また高経年化を踏まえ、シュラウド取替工事等の予防保全工事、点検範囲や点検頻度の見直し、点検手法等の改善を実施している。」(2章p.36)
<老朽原発・寿命延長>
「現在のところ原子炉容器の健全性を含め問題ない状況にあるが、これまでの試験結果等から、原子炉の寿命は、一般的に30〜40年といわれている。・・・ 県内最初のプラントが運転開始後30年を迎える2000年(平成12年)過ぎには、原子炉の廃止措置(廃炉)が重要な課題となることが予想される。」(1章p.14-15:旧評価)「敦賀1号機は、今後10年程度運転を継続し、運転停止時期については、平成11年度から具体的な検討を開始している。美浜1号機は、今後10年程度運転を継続し、その後の運転については、10年後に実施する定期安全レビューの中で再評価することとした。・・・ 県内では、今後高経年化した発電所が増加し、県民の間に高経年化に対する不安等もあることから、国や施設設置者は、高経年化報告書の内容等について、積極的に情報を公開するなど、県民の理解活動に努める必要がある」(1章p.15)
「国は、経年変化に対応した技術基準の整備や教養期間中検査の充実を図り、電気事業者の保全計画実施状況を確認することとしている。今後、県内では高経年炉が増加することから、国の安全規制において、高経年化に対応した許認可制度の明確化を図ることが必要である。」(2章p.37)
<廃炉・放射性廃棄物処分>
「高経年炉への対策や原子力発電所の運転終了から完全撤去までの対策が、今後重要な課題となってくる。これらの課題に対しては交付金の創設、延長等を含め、対策を講ずる必要がある。」(3章p.66)
「現在、国は、廃止措置に伴う放射性廃棄物の処分について、処理基準や関係法令等の整備に向けて取り組んでいるが、特に、放射性物質として取り扱う必要のない廃棄物のリサイクル利用に対する国民の理解等を得る必要がある。」(2章p.38)
「蒸気発生器や原子炉容器上部蓋等の大型の放射性固体廃棄物については、発電所内の専用保管庫で保管しているが、今後、これらの大型放射性廃棄物に対しても所外で処分するなど、適切に対処する必要がある。」(2章p.39)
<もんじゅ>
「県としては、今回の事故の教訓等を充分踏まえ、国において『もんじゅ』全体の安全性を再確認するとともに、わが国の原子力政策のビジョンである原子力長期計画で、『もんじゅ』を含めた高速増殖炉開発の位置付けを明確にし、国民合意の形成を図ることが何よりも必要であると考えている。」(1章p.18)
「『もんじゅ』を含めた高速増殖炉の位置付けについては、平成9年12月の高速増殖炉懇談会報告書も踏まえ、現在策定作業が行われている原子力長期計画の中で、明確に位置づけ、国民合意の形成を図ることが必要である。さらには、事故の原因調査や安全性総点検の結果等を踏まえ、国において、研究開発段階にある原子炉の安全確保の在り方も含め、『もんじゅ』全体の安全性を再確認することが必要である。」(1章p.41)
「国の責任において、研究開発段階の原子炉の安全確保の在り方の検討や最新知見の反映策等への具体的な取組みの強化に努め、『もんじゅ』全体の安全性を再確認することが必要である。」(3章p.61)
<プルサーマル>
「電気事業者は平成11年から平成22年までに16から18基でプルサーマルを順次導入する計画を公表した。・・・県は、国の安全審査の結果や国民合意の形成、地域振興の充実等への国や電気事業者の取組み等を踏まえ、平成11年6月に事前了解した。高浜4号機用の英国BNFL製MOX燃料は平成11年10月に搬入されたが、燃料製造時の品質管理データに不正が認められたことから、同年12月、関西電力はMOX燃料の使用を取りやめた。国や関西電力は、このデータ不正問題について、事実の解明や再発防止対策、国の輸入燃料体検査制度の改善策をとりまとめた。今後、これらの改善策が確実に実施されるとともに、県民の理解を求める活動を幅広く行うことが必要である。・・・ 具体的な返還の方法や時期が速やかに決定されることが必要である。」(1章p.17、関連2章p.41)
「軽水炉でのプルサーマル計画については、国の責任において、計画の意義、安全性やその進め方について、さらに国民合意の形成に努めるとともに、安全性の確保を第一とし、立地地域の十分な理解と同意を前提に慎重に対処することが必要である。プルサーマル計画における輸入MOX燃料の安全規制については、抜本的強化対策を講じ、信頼性の向上に努めるとともに、既に搬入された高浜発電所4号機用MOX燃料の英国への返還について、早期に具体化することが必要である。」(3章p.60)
<ふげん>
「新型転換炉ふげん発電所は、平成14年度末に運転停止することを踏まえ、具体的な廃炉計画について明確に示し、県民の理解を得ることが必要である。原子炉の廃止措置は段階的かつ長期にわたる措置が必要となることから、この間においても、国や施設設置者は、徹底した安全管理に努めることが必要である。」(3章p.59)
<使用済燃料中間貯蔵施設>
「県内の発電所では、使用済燃料の貯蔵能力の増強工事や共用化を行っているが、今後、六ヶ所再処理工場への搬出が計画どおり行われても、平成22年頃には逼迫した状況となる。国や電気事業者においては、平成22年までに確実に中間貯蔵施設の操業が開始できるよう、引き続き積極的に取り組む必要がある。」(1章p.17、関連2章p.40)
<原子力防災>
「県は、平成7年12月の『もんじゅ』ナトリウム漏えい事故を契機に、職員の動員基準や住民の避難・退避基準等を明確にするなど、平成11年3月に地域防災計画原子力防災編を全面修正した。また、平成11年12月、JCO事故を契機に、本県が国に求めていた『原子力災害対策特別措置法』が制定されたことに伴い、地域防災計画原子力防災編の修正に取り組んでいる。」(1章p.19)「オフサイトセンターの整備、モニタリング体制の強化、被ばく医療や防護用資機材の充実等 ・・・・ これら施設、設備の維持管理経費については。自治体負担となっており、また、住民参加を得た総合的訓練実施に必要な被害想定についても、実現に至っていない。今後、国は、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金の拡充と弾力的な運用を図るとともに、立地地域の特性を踏まえた被害想定を早期に策定する必要がある。」(1章p.19、関連2章pp.44-45)
「ふげん、もんじゅについては、原子炉等規制法に基づく原子炉施設保安規定に関係自治体への通報連絡が明記されたが、県内の他の発電所については、保安規定に明記されていない。一方、平成11年12月、原子力災害対策特別措置法の制定により、原子力災害発生時においては、関係自治体等への緊急通報が義務づけられた。今後、運転中に異常が検知された場合の関係自治体への通報義務を原子炉等規制法に盛り込むなど、迅速かつ的確な通報連絡体制の確立を図ることが重要である。」(2章pp.37-38)
「国が主体となった原子力総合防災訓練を継続的に実施する必要がある。・・・ 訓練の成果や実効性を高めていくためには、各立地地域の特性等を踏まえた災害想定、訓練シナリオの策定を行う必要がある。」(3章p.62)
<電源三法と社会資本整備>
「電源三法交付金等が昭和49年度から平成11年度までに約1310億円、県原発関連税収が昭和51年度から平成11年度までに約3610億円、市町村原発関連税収が昭和46年度から平成11年度までで約2560億円となっており、県および電源地域の市町村における重要な財源となっている。」(1章p.24)「面積当たりの道路延長、道路舗装率は、県平均を下回っており、道路施設の充実が課題として残されている。上水道普及率は、前回では県平均を下回っていたが、整備が進み県平均を上回った。保育所、児童館、体育館の整備数(各指標とも住民の単位人口当たり)は県平均を上回っている。また、医療施設、文化施設整備数の伸び率は、県平均を上回っているものの、整備水準は県平均を下回っている。」(1章pp.25-26)「電源地域全体について言えることであるが、幹線道路、鉄道など広域的視野に立った社会資本整備が必ずしも十分ではなく、生活圏の拡大に伴う地域住民ニーズを充足していないため、住民の生活水準向上の実感に結びついていない面もある。・・・ 電気事業者においては、引き続き地元発注や地元雇用を積極的に拡大することも必要である。」(1章p.27:旧評価)
面積当り道路延長、道路舗装率、上水道普及率、医療施設数、保育所・児童館・文化施設・体育館整備数の推移
年度
|
面積当道路延長 km/km2
|
道路舗装
率 %
|
上水道
普及率%
|
医療施設数 千人当たり
|
保育所
6歳未満児
千人当たり
|
児童館
児童千人
当たり
|
文化施設
10万人
当たり
|
体育館
1万人当たり
|
電源地域 |
全県
|
電源地域 |
全県
|
電源地域 |
全県
|
電源地域 |
全県
|
電源地域 |
全 県
|
電源地域 |
全県
|
電源地域 |
全県
|
電源地域 |
全県
|
1972
1975
1980
1985
1992
1998
|
1.614
1.760
1.815
1.911
|
1.842
2.158
2.295
2.412
|
40.9
72.0
79.1
81.4
|
43.4
80.2
87.3
89.1
|
67.3
84.4
93.1
95.6
|
82.6
90.9
94.1
95.1
|
0.84
0.93
1.01
|
0.96
1.03
1.10
|
4.979
6.592
7.296
|
4.014
5.804
6.117
|
1.397
2.308
2.040
|
0.626
1.358
1.756
|
0.613
2.359
2.933
3.588
|
1.034
1.712
2.059
4.094
|
0.851
1.467
1.854
|
0.554
1.066
1.252
|
「電源地域全体の産業振興や交流人口の拡大を図るためには、道路、鉄道等の広域的交通網の整備が特に重要であることから、基幹道路の整備を強く求めてきた。その結果、近畿自動車道敦賀線は、・・・ 平成10年4月に小浜西・小浜間、平成10年12月には小浜・敦賀間が加えられ、全線で施行命令が出された。現在、舞鶴東・小浜西間で平成14年度供用開始をめざして工事が進められており、また、小浜西・敦賀間についても測量や土質調査および一部用地買収等に向けた地元との設計協議が進められている。・・・ 長年の課題であった小浜線の電化工事が平成12年7月15日に着手された。しかし、今津・上中間の新線建設、敦賀までの直流化、さらに北陸新幹線の敦賀以西のルート公表などは、今後とも積極的に取り組まなければならない重要課題である。」(2章p.47)
「平成9年度には、既設地域の長期的な振興を図るため、原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金が創設されたのをはじめ、平成12年度には周辺地域も含めた交付金として電源地域特別交付金が10.5億円増額された。しかし、電源三法交付金制度は立地地域中心であるため、周辺地域に対する財政支援の必要性は課題として残されている。」(1章p.33)
「交付額の頭打ち制度については・・・ 廃止されるべきものである。また、交付対象事業の拡充については、平成9年度に道路、都市公園等の公共用施設が交付対象となったほか、平成11年度には公共施設の維持運営費が、平成12年度には福祉対策事業が交付対象となるなど使途の弾力化が図られている。今後とも、交付対象事業の拡充や設備に対する維持運営費も交付対象とするなどのより一層の弾力化が必要である。」(2章pp.50-51)
「原子力発電所の償却期間の見直しは行われていないが、15年以上経過した原子力発電所を有する市町村に対しては、平成4年度から原子力発電施設周辺地域福祉対策交付金が創設された。さらに、平成9年度からはこの交付金が原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金に改められ、15年以上経過した原子力発電所には交付額が加算されることになった。しかし、償却期間の見直しは課題として残されている。」(1章p.32)
「償却資産の耐用年数は地方税法上、『減価償却資産の耐用年数等に関する省令』によるものとされているが、現実的には耐用年数の2倍に当たる30年以上運転している原子力発電所もあることから、実態に沿った年数に延長する必要がある。」(2章p.49)
「発電用施設の建設に当たっては、電源地域の恒久的な福祉の向上を図るため、着工年度から運転開始後5年までを交付期間とした電源立地促進対策交付金が交付される。また、これとは別に・・・ 原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金が・・・ 立地市町村全てに交付されるとともに、交付金の大幅な増額も認められた。また、この交付金は、運転開始から運転終了まで交付され、運転開始後15年以上経過した原子力発電所には交付額が加算されるほか、使用済燃料の貯蔵量に対しても交付されるなど交付要件の緩和、拡大が図られた。さらに、平成12年度には交付単価も増額された。また、平成11年度からは施設の維持運営費が交付対象として認められるなど使途の弾力化も図られた。今後は、周辺市町村も交付対象に含めることや交付対象事業を一層拡大する必要がある。」(2章pp.51-52)
「社会資本の整備では、周辺地域は立地地域や全県と比べて必ずしも十分ではないことから、電源地域全体の均衡ある社会資本の整備を図るためにも、今後、周辺地域に対する新たな交付金の創設など財政支援制度の確立が必要である。」(3章p.66)
<原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法>
「電源地域の総合的かつ恒久的な振興を図るため、電源三法交付金制度をさらに充実することや特別措置法の早期制定が課題として残されている。」(1章p.32)「特別措置法の制定については、平成11年1月に自由民主党政務調査会の『電源立地推進等に関する調査会』に『立地地域振興プロジェクトチーム』が設置され、ここで、『原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法』が今春まとめられた。当該法案は、内閣総理大臣が地域振興計画を決定することや国の負担・補助割合の特例が定められるなど、これまで以上に国を挙げて支援する仕組みとなっている。電源地域の広域的かつ恒久的な地域振興を図るためには、当該法の制定が不可欠であることから、早期に成立することが望まれる。」(2章p.46)
<観光>
「電源地域の観光客の減少率は全県よりも大きく、また、夏季の観光客割合が県平均と比較しても高い。このため、通年型観光拠点施設の整備などの観光振興策が課題として残されている。」(1章p.29)「電源地域の宿泊施設数は全県の約3分の2を占め、その約8割が民宿である。電源地域の宿泊施設の減少率は全県に比べて大きい。民宿は施設規模が小さく、経営基盤も脆弱であることなどから、経営基盤の強化、観光客のニーズにあった施設整備が課題として残されている。」(1章p.30)「観光産業は、電源地域の基幹産業の一つであるが、原子力発電所の事故等による風評の影響を最も受けやすい。電力事業者も日頃から積極的に地域のイメージアップに努めているが、観光客数が減少するなかで、より一層の地域PRやイメージアップの推進が課題として残されている。」(1章p.31) 電気事業者への要望として、「原子力発電所の事故やトラブルが発生する度に地域のイメージが損なわれている。このため、今後とも住民が電源地域に住んでいることに自信と誇りをもてるよう、日頃から積極的に地域全体のイメージアップに努めることが必要である。」(2章pp.56-57)
年度
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観光客入込数の推移 |
宿泊施設数の推移 |
電源地域 |
電源地域以外 |
全 県 |
電源地域 |
電源地域以外 |
全 県 |
1975年
1980年
1985年
1990年
1992年
1994年
1999年
|
8,131,200人
8,175,300人
8,817,400人
9,287,100人
8,986,900人
8,853,500人
6,821,800人
|
10,350,500人
11.309,700人
13.328,700人
15,845,200人
17,068,800人
17,361,400人
17,266,800人
|
18,481,700人
19,485,000人
22,146,100人
25,132,300人
26,055,700人
26,214,900人
24,088,600人
|
1,858
1,781
1,396
1,091
|
388
399
431
421
|
2,246
2,180
1,827
1,512
|
「観光産業は電源地域の基幹産業の一つであるが、観光客は平成3年をピークに減少の傾向にある。これは、当該地域は夏季中心型観光地が多いうえ、観光客の多くは気象状況に左右されやすい海水浴客が中心であるためで、今後は地域全体として、より一層魅力的な通年型観光拠点施設の整備や新たな観光資源の開発が必要となっている。特に、近畿自動車道敦賀線の開通や小浜線の電化など交通網の整備に伴い、観光客の増加が期待される中、当該地域が通過地にならないよう受け入れ体制の整備が必要となっており、広域的地域を視野に入れた集客施設等の整備に対する支援など広域的な観光レクリエーションネットワーク化の推進を図ることができるよう観光振興を目的とした交付金の創設等の支援策が必要である。」(2章pp.48-49)
<企業誘致・電気料金割引>
「電源地域の商品販売額、製造品出荷額はここ数年横ばい状態が続いており、新規企業の立地も十分に進んでいるとはいえない。今後、地域産業の活性化を図るためには、企業の誘致や地域産業の育成を進めるための支援措置が必要である。」(3章p.64)
「企業立地の促進を図るための制度として、平成11年度から電源地域では原子力発電施設等周辺地域企業立地支援事業、また、平成12年度から電源地域以外では電源立地特別交付金(電力移出県等交付金枠)を活用した進出企業等に対する電気料金の半額相当分の補助制度が創設されるなど企業立地支援制度の充実が図られた。さらに、平成12年度から越前町に対する電気料金の割引が行われることとなるなど制度の充実が図られている。しかし、電気料金割引の全県下適用、既設地域への新設特例単価の適用などは課題として残されている。」(1章p.33)
「大規模発電県として電力の安定供給に特に貢献している本県としては、企業立地を促進して、全県的な産業振興が図れるよう、電気料金割引の全県下適用および既設地域への新設特例単価の適用を引き続き求める必要がある。」(2章p.50)
商品販売額と製品出荷額の伸び率(基準年100の指数)、新規企業誘致数、嶺南地域の魚介類養殖収穫量の推移
年度
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商品販売額推移 |
年度
|
製造品出荷額推移
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年度
|
新規企業誘致数
|
年度
|
嶺南地域の魚介類
養殖収穫量 t |
電源地域
|
全 県
|
電源地域
|
全 県
|
電源地域
|
全 県
|
1966年
1974年
1985年
1991年
1997年
|
100
416
1158
1608
1607
|
100
331
713
948
934
|
1965年
1975年
1985年
1992年
1998年
|
100
431
816
968
856
|
100
448
1047
1356
1273
|
1975〜1984
1985〜1989
1990〜1992
1993〜1998
計
|
26
17
20
21
84
|
218
178
154
158
708
|
1965年
1980年
1992年
1998年
|
204
578
1312
602
|
<電力関連企業誘致・地元雇用>
「電力関連企業の誘致や原子力発電所の持つ技術力・人材を活用した地域産業の育成が図られてきているが、製造品出荷額は低迷しており、新規企業の立地も十分に進んでいるとはいえない。今後とも、地場産業の活性化は大きな課題であり、関連企業の誘致、地域産業の育成、また、地元雇用と地元発注の拡大が必要である。」(3章p.67) 事業者への要望としての電力関連企業の誘致に関して、「県内関連企業数は平成5年度末現在、33事業所(14社)であったが、その後、平成11年度末までに3事業所(3社)が県内に進出した。また、関連企業の全従業員数に占める本県出身者の割合は約8割で、地域住民の雇用の創出に大きな役割を果たしている。さらに、地域産業の育成については、原子力発電所が持つ技術力や人材を活用して地元企業と技術交流会を開催するなど、技術移転や情報提供を行っている。今後とも、若者の地元での就業の場を確保する意味からも、電力関連企業の誘致や地域産業の育成に積極的に努めることが望まれる。」(2章p.56)
「平成9年から11年までの平均従業員数に占める県内出身者率は発電所および協力会社とも平成6年から8年までの県内出身者率を上回っているが、従業員数全体では減少している。また、平成6年から10年までの年平均県内発注額は平成元年から5年までの額を大きく上回っているが、発注率は若干下回っている。今後とも、地元雇用の拡大と地元発注は課題として残されている。」(1章p.34)
発電所等従業員数および協力会社従業員数、発注額の推移(括弧内は「うち県内の従業員数」)
年 度 |
発電所等 |
協力会社 |
合 計 |
年 度 |
発注額 |
平成6〜8年平均
平成9〜11年平均
|
2639(1183)
2694(1234)
|
8810(4722)
8507(4722)
|
11449(5905:51.6%)
11201(5956:53.2%)
|
平成元〜5年平均
平成6〜10年平均
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1345(266:19.8%)
2049(398:19.4%)
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<核燃料税の税率引き上げ>
「核燃料税は昭和51年に本県が創設した課税期間5年間の法定外普通税である。昭和56年11月の期間更新の際、税率を5%から7%に引き上げ、現在に至っている。しかし、原子力発電所の立地に伴う道路や公園、上水道や福祉・医療施設、教育文化施設などの整備に必要な財政需要に対処するためには、税率の引き上げが必要である。」(3章p.66)