平成13年2月16日
若狭連帯行動ネットワーク 様
 
敦賀3・4号増設計画および「福井県内の原子力発電所
における安全対策・地域振興等の状況と課題の評価」
に関する公開質問状に対する回答
 
福井県 県民生活部 原子力安全対策課
 
1.敦賀3・4号炉増設に対する姿勢について

(1)台湾の第四原発2基の建設中止の決断について県はどう考えるのか。
(2)昨年2月に「敦賀3・4号機は白紙」としてきた姿勢を「推進」に転換したと受け取っても
  良いか。また転換したのであれば、その理由は。
 
 エネルギー政策は、それぞれの国のエネルギー構造、保有する資源、地理的条件や政治的な面を含めた種々の条件の中で、各国政府が検討し、決定しているものと認識しています。
 敦賀3・4号機の増設計画については、県議会での建設促進請願の採択や地元敦賀市の意向などを総合的に勘案し、増設問題についての議論をスタートする段階に至ったと判断し、昨年2月22日に増設計画について安全協定に基づく事前了解願いを受理したところです。
 
2.敦賀3・4号増設計画について

(1)原発の立地によるマイナス効果は、消費地の無理解が原因ではなく、消費地に理解を求める
  のは筋違いである。
(2)脱原発の世論は世界的な流れであり、県もその事を認識すペきである。
(3)原発を誘致しても地域振興がなされていない。「原子力発電施設等立地地域の振興に関する
  特別措置法」の成立を求めるのは、国民の血税を世論に反する形で使うことになり容認でき
  ない。
(4)敦賀3・4号炉増設反対は、県民多数の声を反映している。増設を認める根拠は何か。
(5)敦賀3・4号炉を誘致すれば、敦賀市のごみ最終処分場問題と同様の状況になるのではない
  か。
 
 電力消費地においては、原子力発電が日常の関心事になっておらず、事故・故障により大電力供給地としての本県の地域イメージが低下するなど、肩身の狭い思いをしなければならない現状は誠に遺憾であると思っています。県としては、原子力発電所が立地している立地地域と電力の消費地との共生を目指した、国や事業者の具体的な取り組みが必要であると考えています。
 地域振興については、これまで国における財政支援制度の拡充により、生活環境の改善、社会基盤の整備が図られており、施設設置者による関連企業の誘致により地元雇用や地元発注の拡大が図られるなど、地域社会にプラスの影響を与えているものと認識しています。
 昨年は12月に「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」が制定され、県としては電源地域の広域的かつ総合的な地域振興に結びつくものであると評価しています。
 敦賀3・4号機の増設については、本年1月16日に環境影響評価準備書が国県等に揖出され、環境影響評価法に基づく手続きが行われています。県としては今後、この審査手続きを進めるとともに、数賀3・4号機そのものの安全性の確認をはじめ、現在の15基体制を維持するのかどうかの議論等を行っていきたいと考えています。増設問題については、県民の間に様々な意見がありますので、安全の確保、住民の理解と同意、恒久的福祉の実現の三原則を基本に、地元敦賀市の意見、県議会での議論、関係市町村の動向や県内の諸情勢の進展等を十分踏まえ、慎重に対処していきたいと考えています。
 
3.プルサーマルについて

(1)県は事前了解前に関西電力に対しMOX燃料の発注を認めたが、その責任は。
(2)県民や国民からMOXデータねつ造について具体的指摘がなされていたにもかかわらず、こ
  れを無視し関西電力に対して再チェックを指示しなかった責任は。
(3)ベズナウ原発でのMOX燃料事故を関西電力が隠していたことについてどの様に考えている
  のか。
(4)プルサーマルを事前了解した時と状況が異なってきた現在、事前了解を白紙撤回すべきであ
  る。
(5)プルサーマルの実施の受け入れを判断する際には、公開討論会を開催すべきである。
 
 原子力の安全規制については、国が一元的責任を有していますが、県としては、県民の立場に立って、MOX燃料集合体のベレットデータねつ造問題について内容の正確な把握と安全性の判断ばかりでなく、県民の不安を解消するために必要な措置を国や事業者に対して求めるなど積極的に取り組んできました。今回輸入されたBNFL製MOX燃料集合件8体については、平成11年12月に新たな不正が明らかとなったことから、県として使用の取りやめを関西電力に求め使用の中止が決定しました。今回のデータ不正問題については、今後の品質管理体制や再発防止策についての最終報告が取りまとめられ、昨年8月には国のMOX燃料に係る輸入燃料体検査制度の改善が行われました。さらに、高浜4号機使用済燃料プールに保管されているMOX燃料8体については、イギリスに返還することで日英政府間において昨年7月に合意されました。
 県としては、プルサーマル計画について、その安全性を十分慎重に確認した上で、県議会での議論や高浜町の意見を踏まえ、最終的に了解するとの判断を行ったものです。今後の装荷計画については、関西電力の品質保証体制の強化対策の確立や、国の輸入燃料体検査制度の改善など具体的な対応を十分確認しながら、MOX燃料集合体の具体的な返還計画、地元高浜町の意見や県議会の議論などを踏まえ、厳正に対処していきたいと考えています。
 
4.「もんじゅ」の運転再開について

(1)高速増殖炉の実証炉建設計画を含め実用化が明記されない長計が出された場合は、「もんじ
  ゅ」の運転再開は認められないとの方針と受け止めて良いか。
(2)『「もんじゅ」全体の安全性を再確認すること』とは具体的に何を求めているのか。
 
 昨年11月24日に決定された原子力長期計画において、核燃料サイクルについては『使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを基本とすることは適切である。』としています。また、原型炉「もんじゅ」については、『高速増殖炉サイクル技術のうち最も開発が進んでいるMOX燃料とナトリウム冷却を基本とする原子炉でかつ発電設備を有するプラントであり、発電プラントとしての信頼性実証という目的の達成にまず優先して取り組むことが今後の技術開発において特に重要である。このことから、「もんじゅ」は高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付け、早期の運転再開を目指す。』としています。
 また、高速増殖炉の実用化については、『実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、具体的計画の決定が行われることが適切であり、実用化への開発計画については実用化時期を含め柔軟かつ着実に検討を進めていく。』とされています。
 昨年12月8日、核燃料サイクル開発機構から安全協定に基づく「高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい対策等に係る改造工事についての事前了解願い」が提出され、県は改造工事の着手や運転再開の判断とは明確に切り離してこれを受理しました。受理の際、県は核燃料サイクル開発機構に対し、『「もんじゅ」の安全性が確認されなければ了解しないこと、安全性が確認された場合でも県と敦賀市が安全協定に基づき了解しなければ、改造工事には着手させないこと。』を明確に申し入れました。
 県としては、県議会の議論や敦賀市の意見等を十分踏まえ、国への原子炉設置変更許可申請を認めるかどうかについて慎重に判断していきたいと考えています。
 「もんじゅ」は冷却材にナトリウムを使用しており、高速増殖炉の原型炉であることから、平成7年の2次系ナトリウム漏えい事故やその教訓等を十分踏まえ、「もんじゅ」全体の安全性を確認することがまず何よりも重要であると考えています。
 
5.原発の安全規制について

(1)定期検査の短縮により検査の簡略化や下請への過酷な要求が行われているものと思われる。
  県として独自に抜き打ち調査をすべきではないか。
(2)「新たな許認可制度」とはどのようなものか。また、原子炉の寿命を30〜40年と書いている
  が、40年を超える運転は認めないのか。
(3)鳥取西部地震により、地表に活断層がないところでも直下型地震が起こることが分かった。
  国の耐震安全審査をやり直すように求めるべきではないか。
 
 国は電気事業法に基づく定期検査について、各機器の機能や安全上の重要度、これまでの検査実績等を踏まえ、検査対象設備や機器、検査項日、検査内容等について明確に定めています。また過去に発生したトラブルの再発防止として、平成11年の敦賀2号機事故を踏まえた供用期間中検査の強化や熱疲労割れの知見を反映した点検など、充実強化に努めています。
 県内の加圧水型炉では、蒸気発生器の取替工事が完了したことから、定期検査期間中の計画外の補修作業がなくなり、作業の計画的な効率化が図られるようになりました。具体的には、作業環境の改善とともに全体工程管理の徹底、熟練作業員の確保や作業体制の強化、点検方法や検査時期の効率化等に努め、法律に基づく検査や自主検査を確実に実施した上で、停止期間の短縮化に努力しているものと考えています。
 我が国の現行法では、原子力発電所の運転期限は定められていません。国は運転開始後30年を迎える発電所設備について、長期運転を仮定した技術評価と保全計画に関して事業者から報告を受け安全性の確認を行うこと(定期安全レビュー)としています。県としては、運転開始後30年を迎える発電所が今後増えていくことから、経年変化に対応した設備の維持を図るため、技術基準の整備や供用期間中検査の充実について国に求めるとともに、現在事業者が自主保安として実施している定期安全レビューについて、法に基づく国の安全規制として明確に位置付けるなど、許認可制度の明確化を国に対して強く要望しています。また事業者に対しては、運転開始後30年を迎える前に、今後の運転方針を県民に明らかにし、理解を得るよう求めています。
 原子力発電所の耐震安全性については、原子力安全委員会が兵庫県南部地震に鑑み設置した「原子力施設耐震安全検討会」において耐震設計に関する関連指針類の妥当性等について検討を行い、指針の妥当性は損なわれるものではないとの報告書を取りまとめています。また、原子力施設の耐震安全性に対する信頼性を一層向上させるため、今後ともその調査、研究、検討を行い、その結果について適切に反映するとしています。
 
6.ふげんについて

(1)[ふげん」は運転する意義もなく、早期に閉鎖すべきである。
 
 「ふげん」は、平成14年度末まで運転を継続し、運転終了後は廃炉に向けた研究を行うこととなっています。現在は、これまでの運転や燃料に関する研究開発の総括的な評価を行うとともに、廃炉に向けて基本計画の策定や廃棄物の処分方法の検討など準備作業を行っており、県としては、これらの取り組み状況を十分確認していきたいと考えています。
 
7.中間貯蔵施設について

(1)世界中のどこでも最終処分技術は確立していない。この様な状況の中で原発は建設すべきで
  はない。
(2)使用済核燃料の貯蔵増強策を了承する際に、中間貯蔵施設の立地点の具体化を条件としてい
  た。立地点が具体化しない場合には、増強策の了承を白紙撤回すペきである。
 
 高レベル放射性廃棄物の最終処分については、世界各国で研究が進められていますが、日本でも最終処分費用の拠出制度、最終処分を実施する主体の設立など、最終処分の実施に必要な枠組みを制度化するものとして、昨年5月に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立しています。これを受けて、電力事業者は、昨年10月高レベル放射性廃棄物処分の事業主体として、「原子力発電環境整備機構」を設立するなどの取り組みが行われています。
 使用済燃料の中間貯蔵施設は、電気事業者において平成22年の操業開始にむけて、具体的な建設候補地の検討を行っており、平成22年に確実に操業できるよう更に積極的な取り組みを求めていきたいと考えています。
 
8.原子力防災について

(1)地域防災計画の退避・避難基準が当初案から後退したがなぜか。
(2)地域防災計画の修正の中身、訓練を行う場合のシナリオを具体的に教えて欲しい。
 
 平成11年2月に修正した「福井県における原子力災害時の退避・避難基準」を追加した福井県地域防災計画(原子力防災編)については、原子力防災対策の技術的、専門的事項を取り扱う原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について(防災指針)」との整合性を図るため、表題と内容を一部修正しましたが、国より厳しい退避および避難措置をとる考え方は変えておりません。
 本県では、原子力災害対策特別措置法、原子力安全委員会の防災指針および国の中央防災会議の防災計画(原子力災害対策編)の内容を踏まえ、福井県地域防災計画(原子力防災編)の修正作業を行っています。現在検討している内容については、オフサイトセンタ一の整備および活用、原子力防災専門官との連携、オフサイトセンターにおける緊急時活動の強化、風評被害等の影響の軽減などを新たに盛り込む予定です。なお、当該修正案については、「県民パブリックコメント制度」を活用した意見募集を行うため、昨年11月28日まで県のホームページ、県政情報センターおよび地区県政情報コーナーで公表を行いました。
 原子力防災訓練の災害想定や訓練シナリオの内容については、立地地域の地理的特性、原子力発電所の炉型等により、災害の及ぶ範囲等が異なると想定され、地元自治体で災害想定を行うことは困難であること、また、原子力災害特別措置法の制定により、災害応急対策における国の責務が明確化されたことから各原子力施設ごとに、災害の及ぶ範囲など、地域や施設の特性を踏まえた災害想定および原子力防災訓練シナリオを策定するよう、国に対して強く要望しているところです。
 
注:若狭ネットの2000年11月16日付公開質問状の全文はこちらをご覧下さい。