福島事故15年を迎え、若狭連帯行動ネットワークとしてアピールを出しました。
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福島原発事故15年を迎え、国・電力の責任を問い糾し、原発回帰に反撃を!
若狭連帯行動ネットワーク(2026.2.12)
今年(2026年)は、福島第一原発炉心溶融事故発生から15年になります。
2011年3月11日14時46分、日本の観測史上最大規模の東北地方太平洋沖地震(M9.0)が発生し、激烈な地震動と巨大津波が沿岸部を襲いました。
福島第一原発は、基準地震動を超える地震動と15.5mの津波に襲われ、外部電源と非常用電源を失って全交流電源喪失に至り、1~3号の原子炉内炉心燃料が次々と溶融・落下し、1・3・4号で水素爆発を起こし、大量の放射能が放出されました。
事故前の2008.3.18には委託先の東電設計から「長期評価に基づき、明治三陸沖地震を福島沖に設定すると、津波高さがO.P.15.7mになる」との報告書が出されていました。ところが、2007年新潟県中越沖地震に被災した柏崎刈羽原発の対策工事で2007年度連結決算△1,501億円の大赤字を出したため、福島第一原発での津波対策は先送りにされたのです。「安全性より経済性優先」の典型例です。
福島事故の教訓を忘れるな!事故を繰り返すな!
原子力ムラが吹聴してきた「日本では原発重大事故は起こらない」という「原子力安全神話」は福島事故で吹き飛び、「国による原子力推進政策と電力会社による独占的利潤追求の下では、重大事故は避けられない」ことが厳然たる事実で示されました。
ところが、2026.1.5に公表された中部電力による基準地震動捏造事件では、福島事故を経験しながら、それでもなお、安全性よりも利潤追求を優先させる「原子力ムラのどうしようもない体質」が改めて露呈したのです。第四次安倍政権が第5次エネルギー基本計画(2018年7月)で「2030年原子力22~20%」を目標に掲げましたが、浜岡原発で最も悪質なデータ捏造が行われたのは、正にこの時期です。2022年8月頃には、自民党が「審査の遅延」を声高に叫び、岸田政権が「審査合理化」を訴えるようになったことも、「基準地震動捏造による審査終結と再稼働促進」を正当化するテコになったと思われます。
「原子力規制委の認可」を新た安全神話にするな
今回の捏造事件は、原子力規制庁への公益通報制度に基づく外部からの情報提供で発覚しました。これがなければ、基準地震動の過小設定で追加の耐震工事も不要となり、浜岡原発の再稼働が早まっていたでしょう。この事実は、「原子力規制委員会による審査合格」を錦の御旗とする新たな「原子力安全神話」を崩壊の危機に陥らせています。なぜなら、原子力規制委員会による審査の中では、基準地震動の捏造を発見できなかったのですから。
原子力規制委員会が不正の検出能力を抜本的に高めるためには、浜岡原発の審査を白紙・凍結するだけでなく、断固たる決意で「審査不合格」にし、かつ、他の原発に対しても運転停止を命じ、基準地震動策定過程の徹底検証を求め、不正がないことを実証できるまで運転を許可しない措置を取ることです。ここまでの本気度を示さない限り、電力会社も、政府も、何ら反省することはないでしょう。この機を逃せば、原子力規制委員会は「この程度のことしかできない」となめられ、「規制の虜」状態が急速に深刻化し、タガの外れた電力会社による「老朽炉の90%への稼働率アップ」という強硬運転を招き、「フクシマを繰り返す」危険性が一層高まるでしょう。
国家賠償責任を否定した司法の責任も重大
当初は運転差止め仮処分決定で原発事故のない社会の構築に貢献した司法においても、東電刑事裁判で国の損害賠償責任を否定した最高裁判決(2022.6.17、三浦守裁判官ひとりが極めて正当な反対意見を述べている)以降、地裁・高裁では、最高裁に忖度する反動化の傾向が強まっています。
福島原発訴訟かながわ原告団団長の村田弘氏によれば(2024.6.30 佐藤嘉幸氏が聞く脱原発シリーズ#10)、原発損害賠償請求の集団訴訟判決は2017年頃から出始め、5年間に出された19の地裁判決のうちほぼ半分の9つで東電と共に国の責任が認められ、最高裁判決(2022.6.17)で上告審の対象となった4つの高裁判決のうち3つで国の責任が認められています。このように国家賠償責任を認める判決が圧倒的であったにもかかわらず、最高裁判決(2022.6.17)は、①万が一にも事故を起こさないために、経産大臣がとるべき対策(防潮堤や扉の水密化など)や対策の有効性について全く判断せず、②上告審では高裁判決の事実認定を前提とすべきところ、「事故を防ぐには防潮堤を作るしかなかった」と勝手に決めつけ、③「事故が万が一にも起こらないように、最新の知見をもとに規制されなければならない」という伊方最高裁判決(1992.10.29)にも反し、国家賠償責任を根拠なく否定したのです。これ以降、4地裁と8高裁の計12判決でこれをコピーする形の判決が出されています。
このような司法の反動化に対抗するには、不当判決を徹底的に批判し、裁判を通じた闘いを粘り強く闘い続けると同時に、より広い大衆的な運動を構築し、両者を結びつけ、政府と電力会社の不正・不当な政策・方針を暴き出し、その根底からの変更を迫る政治的な闘いを作りあげるしかありません。その意味では、今回の浜岡原発での基準地震動捏造問題を徹底して暴露・批判し、電力会社、政府、原子力規制委員会が「いい加減な対応で収束」させないよう、徹底的に責任追及する必要があります。
公衆の被曝限度1mSv/年を超える追加被曝に対し、国の責任で健康と医療を生涯にわたり保障すべき
原子力緊急事態宣言は解除されていません。他方で、「放射性物質による被ばくが年間20mSv以下となることが確実であることが確認された地域については、緊急時被ばく状況から現存被ばく状況に移行したものと判断し、『避難指示解除準備区域』に設定することとした」(原子力災害対策本部「避難指示区域の見直しにおける基準(年間20mSv基準)について」,2012.7)としていますが、政府の依拠するICRPのPub.111では「1~20mSv/年の範囲の下方部分から選定すべき」と勧告しています。国内法令では、「公衆の被曝線量限度1mSv/年」を担保するための線量告示が定められている一方、「現存被ばく状況では1mSv/年を超えてもよい」とは定められていません。「20mSv/年以下で避難指示解除」というのは現行法令違反であり、不当かつ不法な被曝強要にほかなりません。国は事故直後の被曝を含めて、これまでと今後の1mSv/年を超える追加被曝に対し、放射線被曝に起因する健康被害を補償する義務があります。現に、表1によれば、避難指示解除地域でも、主要道路上の空間線量は追加被曝線量で1mSv/年を超えており、さらに、風雨で流されにくく、蓄積されやすい道路脇、側溝、雨溜まりなどではより高くなります。
表1.主要道路上最大空間線量μSv/h(mSv/年)
市町村 1巡(2011.8.2 42巡(2024.11.19
. -2011.8.30) -2025.3.12)
大熊町 夫沢東台 144 (758) 6.6 (35)
浪江町 井手山田前 98.1 (516) 2.6 (14)
双葉町 山田出名子 92.5 (487) 2.9 (15)
葛尾村 葛尾小出谷 32.5 (171) 1.6 ( 8.4)
富岡町 小良ケ浜松ノ前 23.1 (122) 1.5 ( 7.9)
飯舘村 長泥曲田 18.7 (98.4) 1.6 ( 8.4)
南相馬市 小高区金谷 17.2 (90.5) 0.9 ( 4.7)
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川俣町 山木屋広久保山 7.8 (41.0) 0.3 ( 1.6)
川内村 下川内五枚沢 5.9 (31.0) 0.3 ( 1.6)
楢葉町 上繁岡下奥海 4.2 (22.1) 0.2 ( 1.0)
田村市 都路町古道場々 1.1 ( 5.8) 0.2 ( 1.0)
注:二重線より下は避難指示解除区域、二重線より上は帰還困難区域。ただし、飯舘村長泥曲目は、2025.3.31に「肥製造施設用地と燃料ペレット用資源作物を栽培する周辺農地、計約6.2ha」を「特定復興再生拠点区域」として避難指示解除。
表1は、内閣府原子力被災者生活支援チームの走行サーベイ結果(主要道路上を走行しながら測定した車内の空間線量率から、道路上1mの空間線量率に換算)ですが、1巡目に最も高かった地点での42巡目の空間線量率は、避難指示解除区域(楢葉町・田村市・川俣町・川内村)で0.2~0.3μSv/h(追加被曝1.0~1.6mSv/年)、帰還困難区域で0.9~6.6μSv/h(同4.7~35mSv/年)ですが、事故前はいずれも0.04μSv/h前後でした。これを超える線量が事故前と比べた追加被曝線量となり、0.19μSv/hで「公衆の被曝線量限度1mSv/年」に達します〔屋外8h、屋内16h・遮蔽率0.4〕。表1の括弧内の数値がそれで、大熊町では35mSv/年と極めて高い状態が続いているのです。
避難指示解除後の帰還者は17%止まり
福島事故による福島県民の避難者数は、避難指示区域からの約83,940人を含めて2012年5月時点で16万4,865人(県外6万2,038人,県内10万2,827人)でしたが、2025年11月には2万3,701人(県外19,176人,県内4,520人,不明5人)へ減っています(福島県ふくしま復興情報「避難者数の推移」)。しかし、毎日新聞による自治体取材集計(毎日新聞2025.3.10)によれば、避難指示が出た福島県内7町村の直近の居住者数は、楢葉町4,477人(震災当時の56%)、葛尾村461人(30%)、飯舘村1,511人(23%)、富岡町2,590人(16%)、浪江町2,256人(11%)、大熊町878人(8%)、双葉町181人(3%)の計約1万2,300人(17%)に留まり、住民登録者の約8割は避難先での暮らしを余儀なくされています。しかも、富岡、大熊、双葉の3町では、居住者数の約6割を移住者が占め、帰還者は約4割に留まっています。
帰還困難区域の一部を優先的に除染する復興拠点(特定復興再生拠点区域)は6町村で計27.5km2、2022~23年に避難指示が解除されたものの、居住者数は833人(5%)にすぎません。「復興拠点などから外れた帰還困難区域」内でも、国は帰還希望者の宅地周辺に限った「特定帰還居住区域」を新たに設定し、2029年末までの避難指示解除を目指して除染を進めようとしています。しかし、この程度の除染では帰還者の被曝を1mSv/年以下に抑えるのは到底不可能で、これを超える被曝を累積して行かざるを得ないのです。事故直後の被曝線量と合わせた被曝による健康被害は無視できないレベルに達するでしょう。そのとき、誰が責任をとれるのでしょうか。国は、「福島原発事故被害から健康と暮らしを守る会」が求めている原爆被爆者援護法に準じた救済措置を講じ、原発事故被害者に健康手帳を交付し、被曝の事実と被曝線量を記録に残し、健康管理と医療を生涯にわたって保障すべきです。
医療費減免措置廃止による被害者切り捨て
にもかかわらず、厚生労働省は、福島事故発生時点で避難指示区域等に居住していた者のうち、帰還困難区域以外の、避難指示解除区域等の住民(2014.10以降、年収840万円以上相当の所得層を除く)に対して行ってきた医療費等減免措置(①国民健康保険の保険料と窓口負担の免除、②被用者保険の窓口負担免除、③後期高齢者医療の保険料と窓口負担の免除、④介護保険の保険料と利用者負担の免除、⑤障害福祉サービスの利用者負担免除)を段階的に撤廃する方針を打ち出し、「2014年までの避難指示解除地域」については2023年度から実施しています。初年度に保険料半額負担化、次年度から保険料全額負担化、次々年度には窓口負担や利用者負担も全額負担化=減免措置撤廃という段階的措置ですが、帰還者も避難者も徐々に首を絞めつけられる思いでしょう。2015年、16年、17年の各避難指示解除地域はそれぞれ2024年度、25年度、26年度から段階的に縮小され、2028年度には避難指示解除地域のすべてで全廃されてしまいます。
ところが、この政策変更は法令違反であることを厚労省自身が認めざるを得なくなっています。厚生労働省保険局国民健康保険課の2011.3.11付け発出文書(平成32年東北地方太平洋沖地震により被災した国民健康保険被保険者に係る国民健康保険料及び一部負担金の取扱いについて)には、国民健康保険法第44条等の規定に基づき、「特別な理由がある被保険者に対し、減免を行うことができる」と明記されており、これに基づいて減免措置を予算化してきたことを厚労省は遂に認めました。したがって、これを廃止する場合には、「避難指示解除区域に居住していた住民」について、①特別な理由が解消したことの確認と②保険者による①に基づく判断の確認が不可欠ですが、厚生労働省はこれらを確認していないのです。それどころか、関係自治体の意見を聴くと称して、「復興」補助金をちらつかせ、「すでに決定された政府方針」であるかのように町長と保健課長など担当役人幹部に「政府の切り捨て策」の受け入れを迫ったのです。
医療費等減免措置は、地域生活に根付いていた古里と生業を根底的に破壊された原発事故被害者にとって、命を繋いでいくために必要不可欠です。法令違反の医療費等減免措置撤廃を何としても阻止し、減免措置を再開・継続させましょう。
自主避難者への避難住居立退命令は許せない
「20mSv/年以上の避難指示区域」以外の地域からの自主避難者には、東京電力からの損害賠償は未だ出ていません。「みなし仮設住宅」の無償供与だけが権利として与えられていましたが、福島県は2017年3月末でこれを打ち切り、2年限定のセーフティネット契約に切り替えさせました。2年後以降は、退去を迫り、応じない者には2倍の家賃を損害請求し、それでも退去しない33件について住宅明け渡しと2017年3月末以降の家賃支払いを求め提訴したのです。その上告審で、最高裁は2026年1月9日、多数意見で上告棄却決定する一方、三浦守裁判長は「放射能汚染が続く状況にあって避難の継続には合理的な根拠があり、自主避難者だけ一律に(みなし仮設住宅の)供与延長を否定する理由はない」と、自身による反対意見を述べ、国と福島県の対応を厳しく指弾しています(東洋経済オンライン2026.1.20)。
遅々として進まない福島第一原発の廃炉作業
福島第一原発の廃炉作業は困難を極めています。これまでに採取した燃料デブリは1g足らずで、デブリ取出し方針も、二転三転した挙げ句、横アクセス気中工法でデブリ取出しを始め、損傷したシールドプラグと格納容器蓋の間を充填剤で固化して崩落を防ぎ、シールドプラグごと圧力容器底まで貫通させた小開口から格納容器底部に至る上アクセス気中工法との連携を図る方式に落ち着いています。
しかし、「小型の東西架台」または「3号機廃棄物処理建屋解体を伴う大型の南北構台」の設置などの準備に、横アクセスで12年、上アクセスで15年かかるため、デブリ取出し開始は2037~40年になるようです。東京電力も政府も沈黙していますが、「2051年廃炉完了」目標は、すでに破綻しているのです。
格納容器内や圧力容器内は数~数百Sv/h と高線量で耐放射線機器しか使えず、原子炉建屋内も数~数十mSv/hで、滞在時間は限られます。労働者に高線量被曝を強要してまで、デブリを取出す意味はあるのでしょうか。幻想をふりまき続けるのではなく、廃炉作業の在り方を根本から見直すべきです。
トリチウム汚染水の海洋放出は即刻中止すべき
トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出は、「燃料デブリ保管施設等建設用地確保のために敷地を空ける」のが名目でした。しかし、燃料デブリ取出しは2037~40年着手となり、敷地だけ空けて「ほとんど取出せなかった」という結論が見え始めています。他方、汚染水発生量は着実に減っており、「汚染水発生ゼロ・長期貯蔵」へ転換すべきです。
建屋への地下水・雨水等流入量と地下水ドレン・ウェルからの建屋移送量の合計は、2019年(1-12月)に126m3/日でしたが、海洋放出を始めた23年には63m3/日と半減し、25年には57m3/日まで減少しています。1・4号では地下水流入はほとんどなく、雨水浸入が課題でしたが、1号屋根(大型カバー)完成(20
26.1.19)で、汚染水発生量は一層減少するでしょう。2028年度の想定は30~50m3/日ですが、フェーシング拡充に加え、建屋周辺地下水を汲上げるサブドレンの設定水位を数十cm下げて、建屋貫通口以下にすれば、建屋滞留水の外部流出を防ぎながら、劇的に減らせます。これ以外にALPS処理のための薬液注入10~20m3/日が汚染水に加わりますが、雨水と地下水の流入がなくなれば、これもゼロにできます。
他方、1・2・3号原子炉建屋滞留水のトリチウム濃度がそれぞれ227万・55万・65万Bq/Lへ上昇し、雨水・地下水流入で希釈されていた汚染水のトリチウム濃度は70~80万Bq/Lへ上昇しています。これは海洋放出の運用上限の50万Bq/Lを超えていて、貯蔵による減衰を待たなければ放出できなくなっているのです。デブリ取出しの是非や汚染水発生量減少とトリチウム濃度上昇を受けて、トリチウム汚染水海洋放出を根本的に見直し、即刻中止すべきです。
国と東電の責任を問い糾し、原発回帰阻止を
東電は柏崎刈羽6・7号再稼働で賠償・廃炉費約5千億円を確保し、長期的には4,500億円規模の利益創出で株価を2,000円台に引上げ、国有株(33.3億株1兆円)売却による自立を目論んでいます。しかし、福島第一原発の津波対策は柏崎刈羽原発被災による赤字解消のため先送りされたのです。その反省もなく、柏崎刈羽原発で再生を図るなどもってのほかです。中部電力の基準地震動捏造事件は政府の原発回帰への転換にも責任があります。福島事故を繰り返さないため、原発回帰を断固阻止しましょう。