若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

大阪連絡先 dpnmz005@ kawachi.zaq.ne.jp
若狭ネット資料室(室長 長沢啓行)
e-mail: ngsw@ oboe.ocn.ne.jp
TEL/FAX 072-269-4561
〒591-8005 大阪府堺市北区新堀町2丁126-6-105
ニュース
このエントリーをはてなブックマークに追加

ニュース

若狭ネット第193号を発行:トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対! — 地下水ドレン汲上げ水が混在していればALPS処理水は放出できない — 原子力規制委員会・規制庁は、汲上げ水6.5万トンの混在を認め、海洋放出を中止させよ! 実施計画違反・法令違反の放出認可を撤回せよ!

若狭ネット第193号を発行しました。

下記からご覧ください。

第193号(2023/5/22)(一括ダウンロード5.8Mb
巻頭言–トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出絶対反対!
— 地下水ドレン汲上げ水が混在していればALPS処理水は放出できない —
原子力規制委員会・規制庁は、汲上げ水6.5万トンの混在を認め、海洋放出を中止させよ! 実施計画違反・法令違反の放出認可を撤回せよ!
1. 原子力規制委は実施計画違反・法令違反の「実施計画変更申請(ALPS処理水海洋放出)」認可を取消し、海洋放出を中止させよ!
2. 送配電会社の「所有権分離」で再エネ優先接続・優先給電の実現を! 発販分離(所有権分離)で、新電力に公平な競争条件の整備を!

チェルノブイリ事故37年、福島事故12年を迎え、公開説明会の開催と脱原発・再エネ優先への転換を求めます・・・関電本社へ申し入れました

チェルノブイリ事故37年、福島事故12年を迎えた2023年4月26日、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西主催の「チェルノブイリ原発事故37年の集い~チェルノフイリとフクシマを経てまだ原発?!~」で採択された集会決議の関電本社提出行動に合わせて、若狭ネットも申し入れ(pdfはこちら)を行いました。

2023年4月26日
関西電力株式会社取締役 代表執行役社長 森 望 様

チェルノブイリ事故37年、福島事故12年を迎え
公開説明会の開催と脱原発・再エネ優先への転換を求めます

若狭連帯行動ネットワーク

本日4月26日は、旧ソ連のチェルノブイリ原発重大事故から37年に当たり、福島第一原発炉心溶融事故発生から12年になります。私たちは貴社に対し、カルテル・顧客情報不正閲覧問題に関する公開説明会の開催を求め、また、老朽原発延命・新型炉共同開発の原発依存経営から転換するよう強く申し入れます。
貴社が原発依存経営を始めてから、もう半世紀になります。この間、貴社による原発推進の利権構造が暴かれ、電力市場独占を維持するためのカルテル締結で公正取引委員会から独占禁止法違反に認定され、顧客情報不正閲覧問題で経済産業省から業務改善命令が出されるなど、腐朽・腐敗が極限に達しています。貴社は、金品受領の「森山案件」で、3年前にも業務改善命令を受けています。当時、「約3.6億円の不正還流はあったが、不正発注、高値発注は絶対になかった。」と弁明した矢先に、原発推進派の高浜町議の事業失敗を救済するための土砂処分・土地賃借等での高値発注が暴かれてもいます。これらに関与していないと思われた森本孝副社長が2020年春に新社長へ抜擢され、どん底に落ちたコンプライアンス(法令遵守)の立て直しを託されましたが、森本氏は2018年10月~2020年10月のカルテル事件の中心人物でした。森本氏は副社長時代に他電力管内での営業縮小を決めた首脳会議に名を連ね、自ら他電力に伝え、社長就任後もカルテルを継続していたのです。他方では、新電力から顧客を取り戻すため、子会社の関西電力送配電のもつ顧客データを不正閲覧し、営業に活かしていました。しかも、カルテルがばれそうになると、自ら主導した不正を公正取引委員会へ密告(自主申告)し、自社だけは巨額の課徴金を免れたのです。世間で、貴社は「不祥事の総合商社」と呼ばれています。私たちは、カルテル・顧客データ不正閲覧問題について、貴社が率先して公開説明会を開き、膿を出し尽くすよう強く求めます。
岸田政権はGX基本方針で原発回帰へ踏み出し、40年で原則廃炉の40年ルール撤廃法案を成立させようとしています。しかし、原発再稼働・40年超運転による利潤追求を続けていては、老劣化による故障・事故を頻発させる一方、事故原因の究明を切り上げての運転再開、次の定検までのひび割れ放置の強硬運転、異常発見時の無理な運転継続や異常対策等が不完全なままでの運転再開前倒しなどで、予想外の危険な事態を招き、福島事故を繰り返すことになりかねません。
原発依存経営から脱却し、原発利権構造を一掃し、再エネ推進のクリーンな経営に転換すべきです。
以上を踏まえ、次のことを強く申し入れます。公益事業者として真摯に対応してください。

1.カルテル問題と顧客情報不正閲覧問題について、公開説明会を開いてください。「送配電会社の所有権分離」と「発電会社の所有権分離」を断行し、新電力との公平な競争環境を保障してください。

2.国内最古かつ原子炉圧力容器の中性子脆化が最も進んで危険な高浜1・2号の6・7月再稼働(並列)計画を断念し、美浜3号と共に40年超運転を中止し、廃炉にしてください。

3.配管のひび割れや蒸気発生器細管の減肉など老劣化の進む高浜3・4号と大飯3・4号を廃炉にしてください。

4.むつ市への使用済燃料中間貯蔵押しつけを断念し、使用済燃料をこれ以上生み出さないでください。 「2023年末に中間貯蔵地を公表できない場合には高浜1・2号と美浜3号の運転を中止する」との貴社の4度目の約束を守ってください。大飯3・4号再稼働の条件であった「2020年末の期限」など、これまで3回も期限を守れなかった責任をとり、大飯3・4号と高浜3・4号も運転しないでください。

5.高浜3・4号でのプルサーマルを即刻中止し、大飯原発にプルサーマルを広げないでください。
プルトニウム利用を断念し、これ以上、MOX燃料の発注・輸送・輸入をしないでください。
3,100ページに及ぶ申請書の落丁・記載漏れや核物質防護監視妨害など技術的能力のない日本原燃への出資をやめ、六ヶ所再処理工場の閉鎖を求めてください。

6.敦賀2号直下断層のデータ無断書換えや1,000箇所以上の審査資料記載ミスなど技術的能力のない日本原子力発電への出資をやめ、約180億円の基本料金契約を破棄し、敦賀2号の廃炉を求めてください。

7.「福島賠償費・原発関連費の今年度分約288億円(一般負担金「過去分」156億円/年と廃炉円滑化負担金132億円/年)」を託送料金に加算して回収するのをやめ、電気料金を下げてください。

8.取替や廃炉による美浜・大飯・高浜原発の蒸気発生器33基をはじめ給水加熱器や核燃料輸送・貯蔵用キャスクなど大型放射性廃棄物の輸出、海外での溶解・再利用の計画を断念し、密閉管理し続けてください。

9.老朽原発の延命や革新軽水炉SRZ-1200の共同開発を断念し、原発依存の経営方針を「脱原発・脱石炭」、「再エネ拡大・優先接続・優先給電」へ大転換してください。

以上

原子力規制委員会の「ALPS処理水の海洋放出時の運用等に係る実施計画認可審査書案」へのパブコメに意見を二つ提出しました

「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出時の運用等)に係る審査書案」に対する意見募集が行われています。(URLはこちら
受付開始日時 2023年2月23日0時0分
受付締切日時 2023年3月25日0時0分

岸田首相は3月11日、福島市で開かれた東日本大震災追悼復興祈念式に出席した後、報道陣の取材に応じ、ALPS処理水の海洋放出は「決して先送りができない課題だ」と根拠もなく断言し、「今年春から夏ごろ」の実施を目論んでいます。「漁業者をはじめ、地元の方々の懸念に耳を傾け、政府を挙げて丁寧な説明と意見交換を重ねていく」と述べてはいますが、「理解」が得られなくても強行する姿勢です。何としてもこれを阻止すべく、力を合わせましょう。
上記の審査書案のパブコメに意見を出しましょう。以下に若狭ネット資料室長の提出意見二つを公開しますので、参考にしてください。(pdfはこちら

「実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出時の運用等)に係る審査書案」への意見募集に対する意見(その1)

該当箇所:3ページ(5~12行目)(第1章 原子炉等規制法に基づく審査の前文)

意見「設計、設備について措置を講ずべき事項の適切かつ確実な実施を確保」することが求められていますが、地下水ドレン汲上げ水に関する実施計画には欠陥があって「確実な実施を確保」できない状態であり、かつ、実施計画通りには実施されていません。その結果、地下水ドレン汲上げ水約6.5万トンがALPS処理されて約65万トンのタンク貯留水に混在しています。その海洋放出は実施計画違反であり、審査書は撤回し、審査をやり直すべきです。

理由:措置を講ずべき事項Ⅲでは、「『Ⅱ.設計、設備について措置を講ずべき事項』の適切かつ確実な実施を確保」することが求められていますが、「確実な実施」は「確保」されていません。措置を講ずべき事項は「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」に反映されており、2015年1月21日に認可(2014年12月25日変更申請(サブドレン他水処理施設の本格運転)の認可)された実施計画には、「Ⅱ-2.35.1.5.4 地下水ドレン集水設備」の項で「地下水ドレン集水設備は,地下水ドレンポンド揚水ポンプ,地下水ドレン中継タンク,地下水ドレン中継タンク移送ポンプ,及び移送配管で構成する。地下水ドレン集水設備により汲み上げた地下水は集水タンクへ移送する。」とされ、そのフローチャート「サブドレン他水処理施設の排水管理に関する運用について」(Ⅲ-3-2-1-2-添1-1)には、「H-3が1,500Bq/Lを下回らない」場合は「タンク等へ移送及び原因調査」となっています。ところが、この実施計画の「確実な実施」は確保されていません。
第1に、汲上げ水のうち約6.5万トンは、地下水ドレン中継タンクから集水タンクへは移送されず、ウェルタンクを介して2号機タービン建屋へ移送されています。
第2に、「H-3が1,500Bq/Lを下回らない」場合の移送先となる「タンク等」や移送配管等の仕様および移送ラインは実施計画のどこにも記載されておらず、そもそも存在せず、「確実な実施」は不可能です。
第3に、汲上げ水を中継タンクから集水タンクまたは2号機タービン建屋のどちらへ移送するかは、「それを集水タンクへ移送した場合にH-3が1,500Bq/Lを超える可能性がない」場合には集水タンクへ、「可能性がある」場合には2号機タービン建屋へと仕分けて移送していましたが、このような管理は実施計画には一切記載されていません。
その結果、第4に、集水タンクで、H-3が1,500Bq/L以上になって「タンク等へ移送及び原因調査」となった汲上げ水は発生しませんでしたが、「仮に集水タンクへ移送していたらH-3が1,500Bq/Lを超えていたであろう汲上げ水6.5万トン」が2号機タービン建屋へ移送され、大量の建屋滞留水と混在してALPS処理され、少なくとも65万トンの処理水となってタンクに貯留されています。つまり、現時点で132万トンのALPS処理水の大半に「H-3が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレン」の汲上げ水が混在しています。
脱原発福島県民会議等10団体との2月9日の意見交換の場で、原子力規制庁担当者は、次のように回答しています。
(1)トリチウム濃度が1500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水は、実施計画のフローチャートでは「タンク等に移送して原因精査」となっていて、そこで作業の手続きは止まらねばならない。
(2)仮に(1)のサブドレン及び地下水ドレンの水が、建屋滞留水等と混在してALPS で処理され、ALPS処理水として混在したままタンクに貯蔵されているとすれば、サブドレン及び地下水ドレンの水が混在しているALPS処理水は海洋放出できない。原子力規制庁としては「混在」していないと考えている。
(3)(1)に該当するサブドレン及び地下水ドレンの水は6.5 万トン程度になると指摘されているが、それが「タンク等に移送して原因精査」された後、実際に、どこにどのような状態で存在しているか、ちゃんと調べて福島みずほ事務所に回答する。
2月17日付けで原子力規制庁原子力規制部東京電力福島第一原子力発電所事故対策室から福島みずほ参議院議員事務所へ届いた文書回答は「原子力規制庁としては、御指摘の『トリチウム濃度が1500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』はこれまで発生していないことを東京電力ホールディングス株式会社に確認しています。また、『トリチウム濃度が1500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』が発生した際には、実施計画のとおり、タンク等へ移送し敷地内で貯留されるものと認識しています。」というものでした。
これは、上記の第1から第4に記載した通りの経緯を経た結果、集水タンクでは「H-3が1500Bq/Lを超えなかった」ものの、それを回避するためにトリチウム濃度の高い約6.5万トンの汲上げ水が2号機タービン建屋へ移送され、ALPS処理水と混在するに至ったものであり、海洋放出することはできないはずです。ましてや、このような事態は、実施計画そのものが「確実な実施を確保」できない欠陥を含んだものであり、実際にも「確実な実施」がなされなかったことによる直接的な結果です。
これは原子力規制委員会・原子力規制庁による実施計画認可・検査における重大な瑕疵の可能性を示唆するものであり、審査書そのものを撤回し、根本的に審査をやり直すべきです。
ちなみに、2016年12月8日に認可(2016年11月2日変更申請(地下水ドレン前処理設備の設置及びサブドレン集水設備移送配管の仕様変更)の認可)された実施計画の「Ⅱ-2.35.1.5.4 地下水ドレン集水設備」の項には、「地下水ドレン集水設備」に「地下水ドレン前処理装置」が追加され、「地下水ドレン集水設備により汲み上げた地下水は集水タンクまたはタービン建屋へ移送する。」とされていますが、ここでタービン建屋へ移送されるのは前処理装置出口濃縮水(塩水)であり、移送先も2号機タービン建屋ではなく3号機タービン建屋であり、今までの移送量も約0.2万トンにすぎません。

「実施計画変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出時の運用等)に係る審査書案」への意見募集に対する意見(その2)

該当箇所:1ページ12~22行目(2.変更認可申請の内容)および7ページ3~5行目

意見法令では「敷地境界での実効線量が、放出放射能の濃度限度比総和を含めて、1mSv/年であること」が求められていますが、敷地境界線量は今も3~9mSv/年と高く、違法状態が続いています。現状では、ALPS処理水の「故意の海洋処分」による新たな放射能放出は法令違反であり、できないはずです。にもかかわらず、敷地境界の実効線量から「事故由来の放射性物質からの寄与」を除外することで、それを認可しようとしていますが、それを正当化できる法的根拠はありません。「そうしなければ、放射能災害のリスクが高まるため、やむを得ない」という緊急避難的理由もありません。また、ALPS処理水放出に伴う被爆線量「評価の目安」として用いられている「50μSv/年」は線量拘束値ですが、これは計画被ばく状況で用いられる概念であり、現存被ばく状況において適用するのは場違いであり、これをトリチウムの年放出管理値22兆Bqを緩和する根拠とすることもできません。審査書は撤回し、審査をやり直すべきです。

理由:「東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示」(以下「告示」)の「(周辺監視区域外等の濃度限度)第八条」第六項には、次のように記されています。
「外部放射線に被ばくするおそれがあり、かつ、空気中又は水中の放射性物質を吸入摂取又は経口摂取するおそれがある場合にあっては、外部被ばくによる一年間の実効線量の一ミリシーベルトに対する割合と空気中又は水中の放射性物質の濃度のその放射性物質についての空気中又は水中の放射性物質の前各号の濃度に対する割合との和が一となるようなそれらの放射性物質の濃度」。
これは、核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示(以下「線量告示」)の「(周辺監視区域外の濃度限度等)第八条」第六項の条文と一言一句同じです。つまり、いずれの告示においても、「外部被ばくによる一年間の実効線量」は「周辺監視区域」との境界における外部被爆線量で線量限度「一ミリシーベルト」を超えないことが求められています。
この外部被爆線量から「事故由来の放射性物質からの寄与」、いわゆる「現存被ばく状況に伴う線量」を除外できるという規定は、炉規法および関連する政令、規則、告示のどこにもありません。にもかかわらず、措置を講ずべき事項では、「II.設計、設備について措置を講ずべき事項」の「11. 放射性物質の放出抑制等による敷地周辺の放射線防護等」において、放出放射能抑制と敷地周辺線量低減を求め、「特に施設内に保管されている事故後に発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量(発電所全体からの放射性物質の追加的放出を含む実効線量の評価値)を、平成25年3月までに1mSv/年未満とすること。」と指示しています。これを原子力規制委員会は「追加1mSv/年」と称していますが、これは「告示」や「線量告示」の「1mSv/年」に置き換えられるものではありません。
また、この「追加1mSv/年」の措置要求は、達成期限が変更されたり、「追加2mSv/年」へ変更されたり、追加線量からタンク貯留水寄与分が除外されるなど、場当たり的に変更されていて、とても法令と言えるような代物ではありません。具体的には以下に示す通りです。
当初の措置要求は、汚染水の地下貯水槽への移送で実現されたものの、1週間も経たないうちに、地下貯水槽から汚染水の漏洩が発覚し、汚染水をタンクへ移送したところ、2013年4月には追加線量でも7.8mSv/年へ急騰しています。これを受けて、当初の「2013年3月までに追加1mSv/年」が「2015年3月末までに追加2mSv/年、2016年3月末までに追加1mSv/年」へ変更されています。同時に、「2015年3月末までに、タンクに貯蔵された汚染水以外に起因する敷地境界における実効線量(評価値)を1mSv/年未満にすること」が加えられ、「事故後に発生した瓦礫や汚染水等」から最大寄与分の「タンク貯留水」が除外されるなど、「追加線量」の定義さえも変更されています。このように状況次第でコロコロ変わる「追加1mSv/年」が、「告示」や「線量告示」等の法令における「1mSv/年」に置き換わるものだとは到底言えません。
さらに、この「告示」や「線量告示」等の法令において「実効線量の算定から除外できるものは診療及び自然放射線による被ばくのみとなっている」ことは、第37回原子力規制委員会(2020.11.11)での原子力規制庁報告「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(数量告示)第24条の改正方針についての検討結果」で具体的に記されています。すなわち、福島第一原発は線量告示等の「1mSv/年」を満たせない違法状態にあるため、線量低減のために「追加1mSv/年」が措置要求されたのです。これは、あくまで「線量低減のために導入された、暫定的で、期限のある」措置要求にすぎず、「追加1mSv/年」さえ満たしていれば、法令違反にはならず、故意に放射能を放出しても良いというものではありません。ALPS処理水のように、海洋放出しなければならない緊急避難的な理由がなく、海洋放出以外にも代替手段がある場合に、また、関係者等がその放出に「絶対反対」している中で、それを無視して、故意に海洋放出を強行することは、違法行為を積み重ねるものと言えます。
海洋放出に係る放射線影響評価では、「代表的個人に対する被ばく線量は・・・となり、評価の目安である50μSv/年と比較すると極めて小さい」としていますが、この「50μSv/年」は「線量拘束値」であり、第65回原子力規制委員会(2022.2.16)で了承された「放射線影響評価の確認における考え方および評価の目安」に基づいています。実施計画変更申請の審査では、これが、年間トリチウム放出量を年放出管理値22兆Bqから緩和する際の目安として使われていますが、線量拘束値は、計画被ばくにおける事業所毎に割り振る最適化の目標となる制限値であって、現存被ばく状況にある福島第一原発には適用できないはずです。また、国内法令に導入されてもいません。国内法令に導入されていないICRP勧告やIAEAの基準を都合良くつまみ食いして、あたかも国内法令に則ったかのような審査や認可は行うべきではありません。
以上より、審査書の撤回と審査のやり直しを強く求めます。

若狭ネット第192号を発行:ALPS処理水の「春から夏の海洋放出」絶対反対! 文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反を許すな! 「40年ルール」撤廃のGX脱炭素電源法案を廃案に!

第192号(2023/3/11)(一括ダウンロード5.0Mb
巻頭言–ALPS処理水の「春から夏の海洋放出」絶対反対!
文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反を許すな!
「40年ルール」撤廃のGX脱炭素電源法案を廃案に!
1. 「あらゆる選択肢」を軽く求めるGX基本方針は、国民を奈落の底へ突き落とす
2. 原子力規制委員会は三条委員会の責務を放棄し、「規制の虜」へ戻るのか
3. トリチウム汚染水(ALPS処理水)は海洋放出できない!— 「サブドレン及び地下水ドレン」にまつわる3つの理由

政府がALPS処理水と称しているトリチウム汚染水は海洋放出できません。それには、「サブドレン及び地下水ドレン」にまつわる次の3つの理由があります。

第1に、原発事故後、大量に発生する汚染水を抑制するための「サブドレン及び地下水ドレン」の運用開始に向けて、政府は福島県漁連に対し、ALPS処理水は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と文書で確約し、東京電力も「多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。」と文書で確約しています。その最大の関係者である福島県漁連は「絶対反対」を堅持し続けていて、「理解」などしていません。海洋放出を強行すれば、政府と東京電力の文書確約は白紙と化し、今後、彼らが廃炉・汚染水対策で行おうとするいかなる「確約」も全く信用されず、協力は一切得られなくなるでしょう。

第2に、政府と東京電力の文書確約があったからこそ、福島県漁連は、苦渋の判断で、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」に同意したのですが、そこには、「トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える場合には、排出しない、希釈しない、タンクへ移送する」と明記されています。排水されなかった「サブドレン及び地下水ドレン」の汲上げ水は、実は、地下水ドレン中継タンクからウェルタンクを介して2号機タービン建屋へ移送されていて、計約6.5万トンになります。これは、1~4号機建屋滞留水と混ざりあって、多核種除去設備ALPSで処理され、タンクに貯留されています。132万トン(2021/4/1時点では125万トン)のうちの約6.5万トンが「サブドレン及び地下水ドレン」汲上げ水なのです。そのようなALPS処理水を海洋放出すれば、「希釈しない、排水しない」と定めた運用方針に反するのです。サブドレンおよび地下水ドレンによる地下水くみ上げ・浄化処理後の排水は、建屋周辺地下水の水位制御の生命線として今も続けられていますが、トリチウム汚染水(ALPS処理水)海洋放出を強行すれば、運用方針そのものを破棄するに等しく、「サブドレン及び地下水ドレン」への福島県漁連の同意が根本から揺らぐことになります。

第3に、原子力規制委員会・規制庁は、脱原発福島県民会議など10団体との2月9日の交渉で、「『サブドレン及び地下水ドレン』の水が、建屋滞留水等と混在してALPSで処理され、ALPS処理水として混在したままタンクに貯留されているとすれば、『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在しているALPS処理水は海洋放出できない。」と断言しました。ところが、その後、「原子力規制庁としては、御指摘の『トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』はこれまで発生していないことを東京電力ホールディングス株式会社に確認しています。」との文書回答が届きました。実は、原子力規制委員会が認可し、東電が遵守すべき「実施計画」では、地下水ドレン汲上げ水は中継タンクから「集水タンクへ移送する」ことになっているのですが、東京電力は中継タンクでトリチウム濃度を測り、1,500Bq/Lをはるかに超える場合は「集水タンクへ移送せず、2号機タービン建屋へ直接移送」していたのです。原子力規制庁は、このタービン建屋へ移送された約6.5万トンを無視しようとしていますが、これは「実施計画」違反です。仮に、実施計画通り、汲上げ水を集水タンクへ移送していたら、6.5万トンをはるかに超える水が集水タンクやサンプルタンクから「タンク等へ移送」されていたことでしょう。しかし、実施計画のどこにも、移送先の「タンク等」や移送配管の仕様および移送ラインは全く記載されていないのです。他方、中継タンクからウェルタンクを介した2号機タービン建屋への移送ラインは実在し、実際に約6.5万トンが移送されたのです。ALPS処理水を海洋放出すれば、実施計画に違反してタービン建屋へ移送された約6.5万トンの「サブドレン及び地下水ドレン」汲上げ水の混在したALPS処理水を海洋放出することになり、実施計画違反を重ねることになるのです。

このような文書確約違反、運用方針違反、実施計画違反をさらに重ねるALPS処理水の海洋放出は断じて許せません。何としても阻止しましょう。

2023年2月9日ALPS処理水海洋放出方針決定に関する10団体主催・対政府交渉報告
交渉報告のpdfはこちら交渉議事録はこちら

2023年2月9日ALPS処理水海洋放出方針決定に関する10団体主催・対政府交渉報告・・・原子力規制庁は、「ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、ALPS処理水は海洋放出できない」と認め、6.5万トンの所在調査・回答を確約! 経産省は文書回答のみで、意見交換を拒否! 外務省は、ALPS処理水放出用海底トンネルが「人工海洋構築物」ではないとする根拠を明示できず!

2023年2月9日ALPS処理水海洋放出方針決定に関する10団体主催・対政府交渉報告

交渉報告のpdfはこちら交渉議事録はこちら

原子力規制庁は、「ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、ALPS処理水は海洋放出できない」と認め、6.5万トンの所在調査・回答を確約! 経産省は文書回答のみで、意見交換を拒否! 外務省は、ALPS処理水放出用海底トンネルが「人工海洋構築物」ではないとする根拠を明示できず!

私たち、脱原発福島県民会議をはじめ10団体は2月9日午前と午後に分けて、「医療・介護保険等の保険料・窓口負担の減免措置見直し」の撤回および「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出方針」の撤回を求め、対政府交渉をもちました。ここでは、午後に行われた二つ目の交渉の結果を報告します。
年初の1月13日に開かれた「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」(議長は松野官房長官)が、「ALPS処理水の放出開始は今年春から夏ごろを見込む」と打ち出したことから、交渉は緊迫したものとなりました。2021年4月の海洋放出方針決定から2年経っても「関係者の理解」が得られるどころか、福島県漁連・全漁連など福島県内外で「断固反対」の声は揺るがず、太平洋諸国フォーラム等が放出中止を求める中、私たちは昨年4月19日の対政府交渉で暴き出した成果の上に、新たな主張と根拠を積み上げて追い詰め、放出撤回を求めました。恐れをなした経産省は出席を拒否し、ありきたりの文書回答のみに留まりましたが、原子力規制庁からはALPS処理水の放出を阻止できる重大な言質を引き出しました。今回の成果をさらに踏み固め、ALPS処理水の海洋放出を断固阻止しましょう。

1.ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、海洋放出できない

ALPS処理水は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」との経産大臣の文書確約と「多核種除去設備ALPSで処理した水は発電所敷地内タンクに貯蔵いたします」との東京電力社長の文書確約を受けて、福島県漁連は2015年8月末に苦渋の判断で、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」に同意したわけですが、この運用方針の内容は、原子力規制委員会の認可を受けた東京電力の実施計画にも記載されています。私たちは、ALPS処理水の海洋放出は、文書確約に反し、運用方針にも反すると主張したところ、原子力規制庁は初めて、「ALPS処理水にサブドレン及び地下水ドレンの水が混在していたら、ALPS処理水は放出できない」と、次のように認めました。
(1) トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える「サブドレン及び地下水ドレン」の水は、実施計画のフローチャートでは「タンク等に移送して原因精査」となっていて、そこで作業の手続きは止まらねばならない。
(2) 仮に、(1)の「サブドレン及び地下水ドレン」の水が、建屋滞留水等と混在してALPSで処理され、ALPS処理水として混在したままタンクに貯留されているとすれば、「サブドレン及び地下水ドレン」の水が混在しているALPS処理水は海洋放出できない。原子力規制庁としては、このような「混在」はないと考えている。
(3) (1)に該当する「サブドレン及び地下水ドレン」の水は6.5万トン程度になると指摘されているが、それが「タンク等に移送して原因精査」された後、実際に、どこに、どのような状態で存在しているのか、ちゃんと調べて、福島みずほ議員事務所を経由して文書で回答する。
原子力規制庁からの文書回答は2月17日付けで届きましたが(文書回答はこちら)、「原子力規制庁としては、御指摘の『トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンの水』はこれまで発生していないことを東京電力ホールディングス株式会社に確認しています。」というものでした。実は、「サブドレン及び地下水ドレン」の水には、(a)「集水タンク」へ移送され1,500Ba/L未満で浄化処理・排水されるものと、(b)それ以外の1,500Bq/L以上で「希釈しない、排水しない」の運用方針に従って「タービン建屋」へ移送されるものの2種類があります。原子力規制庁は、(a)の「集水タンクへ移送された水で1500Bq/Lを超えたものはなかった」と当然のことを述べただけで、(b)の水を無視したのです。東京電力が実施計画に記載されたとおり、(b)も含めて汲上げ水をすべて集水タンクへ移送していたら、「タンク等に移送」された水は(b)と同等以上の量になっていたことでしょう。その意味でも、(a)と(b)は一体のものであり、切り離せないのです。したがって、タービン建屋へ移送された(b)の水は、集水タンクへ移送された場合に「1,500Bq/Lを超えてタンク等に移送」される水に相当するものであり、ALPS処理水と混合・希釈・排水することは認められません。
東京電力の公表データによれば、2015年9月3日の「サブドレン及び地下水ドレン」汲上げ開始以降、「地下水ドレン中継タンクA~C」から「タービン建屋への移送量」は2020年10月までの累計で約6.5万トンになり、これらはタービン建屋滞留水と混じり合って一緒にALPS処理され、ALPS処理水タンクに混在して貯留されています。というのも、東京電力は、実施計画では「集水タンクへ移送する」となっているのに、中継タンクでのトリチウム濃度等を事前に分析し、集水タンクとタービン建屋のどちらへ移送するかを振り分け、中継タンクからウェルタンクを介して2号機タービン建屋へ移送していたのです(東京電力「サブドレン他水処理施設の状況について」,第24~57回 廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議)。タービン建屋の床面が露出する2020年10月までは建屋滞留水と「混在」した汚染水がALPS処理され続けたのは確実です。ALPS処理水は2015年9月10日の52.8万トンから2020年10月8日には117.5万トンへ増えていますので、少なくとも増分の64.7万トンが「混在」したALPS処理水だと言えます。ALPS処理までのタイムラグを考慮すれば、もう少し多いかも知れませんが、2021年4月時点で125万トンのALPS処理水の大半に「サブドレン及び地下水ドレン」の水約6.5万トンが混在していることになります。実際には、ALSP処理水を混在水と非混在水に分けるのは困難でしょう。サブドレン汲上げ水については、一部で1,500Bq/Lを超えていましたが、これらの井戸からの汲み上げは中止されたため、地下水ドレンと一緒にタービン建屋へ移送されたサブドレン水はありません。いずれにせよ、「サブドレン及び地下水ドレンの水が混在したALPS処理水は海洋放出できない」との原子力規制庁担当者の断言は極めて重大であり、その確実な履行を原子力規制委員会に強く求め、ALPS処理水の海洋放出を中止に追い込みましょう。

2.規制庁はALPS処理水の年間放出量は、政府方針の22兆ベクレルを超える見直しが必要と主張

廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議(議長は菅義偉首相:当時)の「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(2021年4月13日)では、「放出するトリチウムの年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆ベクレル)を下回る水準になるよう放出を実施し、定期的に見直すこととする。」と明記していますが、原子力規制庁は、実施計画の審査で、線量拘束値(50μSv/年)までなら引上げられると主張し、放出管理値22兆ベクレルを上回る年間総放出量の見直しを東京電力に強要していたことが改めて明確になりました。線量拘束値上限まで引上げるとすれば3.7京ベクレル、22兆ベクレルの1,700倍にもなる、とんでもない量です。福島第一原発1~3号炉のタンク貯留量と建屋内汚染水やデブリの中に存在するトリチウム総量は、2,069兆ベクレル(2020年1月1日時点)と評価されていますので、その全量を1年間で放出してもよいことになります。実際には、海水で希釈しなければならないため、ポンプの能力を100倍に増やさねばならず、非現実的ではありますが、これでは「規制」委員会ではなく「放出」委員会です。しかも、線量拘束値は計画被ばく時に各事業所へ割り当てられる制限値であり、原発事故で放射能汚染された事業所に適用すること自体が間違っています。原子力規制委員会が行政から独立した三条委員会であることの意義は、政府や電力会社の原発施策による放射能災害や放射線被ばくから国民を守ることにあります。政府方針や電力会社の意図すら超えて、国民により多くの放射線被ばくを強要する方向へ「規制」を大幅に緩和することではありません。原子力規制委員会の根本姿勢に異議を唱え、その責任を徹底的に追及していかねばなりません。

3.規制庁は「追加1mSv/年」を満たしていれば、線量告示違反ではないと強弁

福島第一原発は、事故直後、公衆の被爆線量限度1mSv/年を担保するための「線量告示」を満たせない違法状態でした。そのため、原子力規制委員会は、線量引き下げのため、「措置を講ずべき事項」で「発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量を2013年3月末までに1mSv/年未満とすること」を東京電力に求めたのです。福島第一原発は今でも敷地境界の空間線量が2.8~9.2mSv/年と高線量で、線量告示を満たせない違法状態にあります。しかし、原子力規制庁は、前回認めたこの明確な事実認定を否定し、「原子炉等規制法関係の法令では事故由来の放射性物質を含んだ基準にはなっていない」と開き直りました。しかし、法令の線量限度から除外できるのは「自然由来と医療被ばくの線量」だけであり、事故由来の放射性物質や放射線量は除外できません。これは法曹界の常識です。そのため、原子力規制委員会は、2年前の放射能分析施設設置審査に際し、特例で事故由来の線量を除外する法令改定(科技庁時代の「数量告示」の改定)を行おうとしましたが、放射線審議会に拒否された経緯があります。原子力規制庁担当者はその経緯も法令の常識も全く知らず、「法令では事故由来の線量は除外できる」と主張したのです。その認識は誤っていると、時間をかけて詳しく説明しても、本人は全く理解できなかったため、「そんな状態でここへ来られては困ります。勉強してきて下さい。」と訓示して議論を打ち切らざるを得ませんでした。事故由来の線量は、事故2年目以降は「元々あったもの」で「自然放射線と同じ」と理解していた東京電力(今は批判されて「理解」を変更している)と同様の認識が、原子力規制委員会・原子力規制庁の中に蔓延しているという、恐るべき実態が暴かれたとも言えます。ALPS処理水海洋放出の審査でも、「措置を講ずべき事項」への適合性しか審査されておらず、線量告示を遵守できていない状態は完全に棚上げ状態です。これは、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の法令の遵守」が大前提であると明記された政府基本方針にも反しています。こんな原子力規制委員会・原子力規制庁には、ALPS処理水の海洋放出の安全性を審査し、認可する資格などありません。

4.ALPS処理水を海洋放出しなければならない「3つの理由」は依然として根拠なしの大ウソである

ALPS処理水を海洋放出しなければならない「3つの理由」、すなわち、①タンクは満水になる、②廃炉作業のために敷地を空ける必要がある、③汚染水は今後も発生し続ける、のいずれも大ウソだったことは、2021年4月19日の対政府交渉で明らかになっています。①は、満水になるタンク以外に、フランジタンク解体によるタンク増設可能エリアや空き状態の予備タンク等で計12万トンの余裕があり、これらを転用すれば数年は大丈夫。②は、2030年度頃までの敷地利用計画は5・6号機の使用済燃料を共用プールへ搬入するための乾式キャスク仮保管施設だけで、将来的に燃料デブリ一時保管施設等という、緊急性のないもの。③は、現在進めている水位低下作業を続ければ、1~3号原子炉建屋の床面露出は2年以内に可能、というものでした。ただし、経産省は、③については、建屋内滞留水の流出防止のためサブドレン水位と建屋内水位との水位差を80cm空けなければならないという制約がある、また、1号機の屋根からの降水流入(2~4号機には屋根あり)や1~4号機の地中浸透雨水の建屋流入などがあると主張していました。
そこで、今回は、③に関する私たちの主張を補強し、経産省の反論を完全に論破するつもりでしたが、経産省は文書回答のみで出席を拒んだため、かないませんでした。公開質問状に示したその内容は、極めて明快であり、「サブドレン水位は今、年平均T.P. 0.6mだが(T.P.は東京湾平均海面を基準とする標高)、1号機の建屋貫通部はT.P. 2.0m以上と高く、少雨期の地下水の建屋流入量はすでにゼロ、屋根の設置も2023年度完成が目標となっている。4号機でも、T.P. 0.6m以下の貫通部は2箇所程度で、少雨期の地下水の建屋流入量はほぼゼロ、フェーシングで雨水の地中浸透を防げば、1・4号機では2023年度末頃、かなりゼロに近づく。2・3号機でも、T.P.-2.0m以下に貫通部はなく、サブドレン水位をそこまで下げれば少雨期の地下水の建屋流入量をゼロにできる。現に、2022年度末には、原子炉建屋内滞留水の水位は、1号機でT.P.-2.2m程度、2・3号機でT.P.-2.8m程度へ下がるので、サブドレン水位をT.P.-2.0mまで下げれば、貫通部からの地下水流入量はゼロにできる。1号機の建屋内水位との水位差が20cmしかなくなるが、1号機ではすでにサブドレンの水位以下に貫通部はなく、基盤からの地下水流入も見られないことから、仮に水位が逆転しても、流出口がないため、建屋内汚染水が流出する恐れはない。フェーシングを優先的に行えば、汚染水発生量はゼロにできる。」――経産省がこの私たちの主張に反論するのは難しく、今回の文書回答でも、「廃炉作業を安全に進めるための必要な施設を建設できるよう、貯蔵タンクを減らしていく必要があります。建屋内滞留水を建屋の外に流出させないために地下水位を建屋内水位よりも高く維持し続ける必要があります。建屋内滞留水位及びサブドレン水位については、計画的に低下させていくこととしています。1-4号機建屋周辺のフェーシングについては、2028年度に8割程度まで完了できるよう、廃炉作業等と調整を図ることとしています。引き続き、汚染水発生量を減少させる取組を継続し、2028年度に汚染水の発生量を1日当たり約50-70立方メートルまで低減することを目指します。」というもので、具体的ではありませんでした。経産省にとっては、汚染水が発生し続けないとALPS処理水を海洋放出する理由の一つがなくなるため、汚染水対策をサボタージュしようとしているのかもしれません。そんなことは断じて許せません。ALPS処理水の海洋放出を中止し、汚染水発生ゼロを目指すべきです。

5.海底トンネルを人工海洋構築物と見なしロンドン条約に基づきALPS処理水の海洋放出を禁止すべき

ALPS処理水の海洋放出については、福島県内外から反対の声が強く出ているだけでなく、国際的にも、19の太平洋島嶼国・地域からなる太平洋諸島フォーラムPIFが、事務局長声明をホームページで公開し、「日本政府が行ったことは、ごくわずかな限られたデータと情報の提供のみでした。」と経緯を説明し、「すべての関係者が科学的手法を通して汚染水の海洋放出の安全性を立証するまで、それは実施されるべきではない――我々の地域のこの断固たる立場は変わることはありません。」と、海洋放出の中止を求めています。ところが、外務省は、2月2日のミクロネシア大統領と岸田首相の会談や2月7日のPIF代表団と岸田首相の会談での外交辞令的発言で理解が得られたかのような説明を繰り返し、PIFが「緊密なコミュニケーション」を希望したのは、ALPS処理水の海洋放出に納得しておらず、中止を求めているからであることを無視し、「引き続き対話を行っていくことで一致した」と、うそぶき続けました。太平洋島嶼国の主張を踏みにじる、このような対応は、断じて許されません。福島からの参加者は、原発事故被害者として、マーシャル諸島等の核実験被害者と連帯する立場から、外務省の姿勢を厳しく批判しましたが、外務省は全く意に介しませんでした。
ALPS処理水は、放出立坑と海底トンネルを介して海洋放出されようとしています。これは、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当するとの観点から、私たちは、ロンドン条約締約国である日本の国民として、自国の裁量として禁止するよう求めてきました。しかし、外務省は、「何が人工海洋構築物に該当するのか、ロンドン条約締約国の間で共通認識がない。締約国の裁量で決めることはできるが、義務ではない」と屁理屈をこね、「海底トンネルは人工海洋構築物ではない」と主張しましたが、その根拠については全く説明できませんでした。国民への説明も全くできていないのです。こんな状況で、この春から夏にかけてALPS処理水の海洋放出を開始することなど断じて許されません。
対政府交渉の成果を広く伝え、福島との連帯、太平洋島嶼国・地域との連帯を強め、すべての反対勢力の総力を結集して、福島県漁連との文書確約違反、線量告示等法令違反、ロンドン条約違反で、関係者の理解も得られていない、ALPS処理水の海洋放出をなんとしても止めましょう!

(前半の「医療・介護保険等の保険料・窓口負担の減免措置見直し」の撤回の交渉内容は別紙)

呼びかけ10団体:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、フクシマ原発労働者相談センター、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

› more