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若狭ネット第202号を発行:関西電力は「使用済燃料対策ロードマップ見直し」を撤回せよ! これ以上、使用済燃料を生み出すな! 乾式貯蔵反対! 英プルトニウム政策転換を機に、脱再処理・脱プルトニウムへの転換を!

若狭ネット第202号を発行しました。下記からご覧下さい。

第202号(2025/3/17)(一括ダウンロード4.5Mb
巻頭言–関西電力は「使用済燃料対策ロードマップ見直し」を撤回せよ!
これ以上、使用済燃料を生み出すな! 乾式貯蔵反対!
英プルトニウム政策転換を機に、脱再処理・脱プルトニウムへの転換を!
1.関西電力の「使用済燃料対策ロードマップ見直し」に実効性なし福井県を「核の墓場」へ導く 「乾式貯蔵設置」を許すな!
2.英国の「プルサーマル中止・プルトニウム固定化・地中処分」への政策転換を受け、日本も再処理・プルトニウム利用を断念すべき!

福井県議会2月定例会に向けて「陳情書」を提出しました

福井県議会2月定例会(2/17-3/14)に向けて、宮本 俊議長へ「陳情書」を提出しました。(陳情書のpdfはこちら

関西電力の使用済み核燃料の搬出計画についての陳情書 2025年2月10日

福井県議会議長 宮本 俊 様

私たちは、本年1月17日、福井県原子力安全対策課(以下原安課)と5項目について質疑を交わしました(別紙資料1)。プルサーマルの過去の実績や現状を直視すれば、関西電力(以下関電)が再提出予定の新ロードマップも実効性を持ち得ないことは誰の眼にも明らかなことです。なので、私たちの問題提起に対して原安課は、六ヶ所再処理工場が仮に竣工できても、「プルサーマルで消費できるプルトニウム量に応じて操業が許される」ため、せいぜい10%操業に留まらざるをえない現状であることを認めました。さらに、先ごろ(2月2日付け朝日新聞)、英国が民生用プルトニウムを「プルサーマル利用」から「地下埋設廃棄処分」への方針転換(核燃料サイクルの放棄)をおこなった結果、英国でのプルサーマル用MOX燃料加工工場の建設を待ち続けていた日本はハシゴをはずされ、「英保管プルトニウム22㌧をどうするか」が六ケ所再処理工場の稼働、ひいては関電のロードマップに大きな影響を与えることになりました。(別紙資料 2)

私たちは昨年も、関電の使用済み核燃料を六ケ所再処理工場へ移送できる可能性はないこと、それどころか将来、これまでに六ケ所村へ送り出した使用済み核燃料も返還される可能性が高いことを具体的に示し、それらの問題を貴議会で独自に調査研究を進め議論を深めていただきたいと陳情いたしました。残念ながらこの陳情は委員会には付託されませんでした。しかし、他県の自治体議会の現状を見渡すと、陳情も請願と同様に国民の大事な権利であるとの認識で、委員会に付託され審議されるのが主流となっています。新たな資料を加えた私たちの今回の陳情については、多くの先進的自治体がそうしているように、委員会でご審議いただけますようお願い申し上げます。

関電は、使用済み核燃料をサイト内で保管する乾式貯蔵施設について、「今後、原則として貯蔵容量を増加させない」「中間貯蔵施設へのより円滑な搬出、さらに搬出までの間の保管」と県に釈明しますが、再処理工場の操業率が10%では、貯蔵容量が増え、永久保管となることは必至です。2月議会までに再提出される新ロードマップも、「実効性」に乏しく、これらの懸念は消えないでしょう。関電の思惑通り乾式貯蔵を進めれば、最終的な行先もないまま、使用済み核燃料の貯蔵容量をいたずらに増加させてしまうだけです。そのしっぺ返しは、そう遠くない将来の子や孫の世代に跳ね返ってくるでしょう。更田規制委員長(前)は「運び出す先がないまま容器の耐用年数に近づく事態を」恐れていました(2020年9月2日共同)。そもそも輸送を兼ねた保管容器の寿命はたかだか50~60年で、30年を過ぎれば、容器内部の劣化が始まります。若狭の海は嶺北の住民にとっても、末代まで引き継がなければならぬ大切なふるさとの海です。使用済み核燃料(核のゴミ)は10万年先までの人を含む生物に悪影響を及ぼす最悪の物質であることを、私たちは今一度心に刻み付ける必要があります。

私たちの陳情主旨は、①貴議会で独自に調査研究を進めていただくこと、②そのために、事業者や政府の一方だけの話を聞くのではなく、この問題を憂慮する知識人を貴議会に参考人として招聘していただく、あるいは貴議会主催の公聴会で意見聴取の機会を設ける、ことなどを委員会で真摯にご審議いただきたい、の二点です。私たちは政党の後ろだてのない無党派の市民グループですので、紹介議員を立てての請願はできませんが、核のゴミが若狭で永久保管になることを危惧する大多数の県民の声を後ろ盾にしているという自負はあります。

すでに高速増殖炉もんじゆは座礁し沈没。暗礁に乗り上げた再処理事業。破たんが明白な核燃サイクルや中間貯蔵の問題など、私たちのグループにはこの問題に精通する研究者(大学名誉教授など)がおります。貴議会に参考人として招聘していただく、もしくは貴議会主催の公聴会で発言の機会をいただければ、喜んで派遣させていただきます。
2013年より「通年議会」を導入している三重県議会では、利害関係者及び学識経験者などを招致して意見を聞く公聴会の開催も増えているそうです。三重県県議会といえば、1997年に調査・建設の冷却期間を置くよう求めていた南島町の請願を全会一致で採択しています。その三年後に北川正恭知事(当時)は県議会で「芦浜原発計画の推進は現状では困難、白紙に戻すべきだ」と表明されました。

かつて、1985年(チェルノブイリ事故の前年)、山本順一県議(自民党)は、県議会において「知事は嶺南発展のために15基もの原発を受け入れたが、住民の所得増大にはつながらなかった。立地町の財政も膨らみすぎ、この先どうなるかわからない。政策の選択の誤りではなかったか」と追及されました。このとき中川平太夫知事(故人)は「仰せの通り。期待したようにはいかなかった」と原発が地域振興には役に立たなかったことを認めています。自由で闊達な議論を繰り広げられた、このような先達が活躍された往時の県議会をぜひ取り戻していただきたい、と私たちは心より願います。

資料1  原安課と私たちとの質疑のまとめ

六ヶ所再処理工場が仮に動いても10%操業程度で、使用済燃料の再処理工場への搬出はほぼ不可能!

第1に、六ヶ所再処理工場が仮に2年半後に竣工できても、「プルサーマルで消費できるプルトニウム量に応じて操業が許される」ため、せいぜい10%操業に留まらざるをえない現状だということを原安課も認めました。

現在、プルサーマルを実施しているのは高浜3・4号だけで、年平均計0.32トンのプルトニウム消費に留まり、これでは、10%どころか、5%弱の操業度にしかなりません。原安課は、当初、原子力委員会が了承した「電気事業連合会のプルトニウム利用計画(2024年2月16日)」には、「2027年度2.1トン、2028年度1.4トン」と記載されていると主張しました。私たちが「それは不確実な見通しに過ぎない」と批判すると原安課は「原子力委員会も不確定要素が大きくて予測は困難と仰っている」と認めました。実際には、2027年度2.1トンのうち0.7トンは高浜3号の16体で、残りの2027年度1.4トンと2028年度1.4トンが、英仏プルトニウム交換で可能になった伊方3号の24体(約1.0トン)と玄海3号の約40体(約1.6トン)のプルサーマル計画に対応します。しかし、これらは、発注先である仏MOX燃料加工工場の品質欠陥による操業度低下(約1/3に低下)で遅れていて、高浜原発も含めて計画通りに行く保障はないのです。その結果、2035年頃まで、これまでの実績と同様、せいぜい「10%操業程度相当」のプルサーマルが続き、その先は、玄海3号と伊方3号ではプルサーマル計画がゼロになるのです。

最大のプルトニウム所有者である東京電力、日本原電、中部電力には原発再稼働の見通しもプルサーマルの見通しも全く立ちません。この現状を、原安課は認めざるを得ませんでした。これでは、六ヶ所再処理工場への使用済燃料搬出はほとんど不可能です。たとえ搬出できても、ほとんど再処理されず、工場閉鎖後に返送されてくるだけでしょう。

六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強工事ができず、設工認審査不合格になる可能性も!

第2に、六ヶ所再処理工場の設計工事認可審査で耐震補強工事が必要になっても、アクティブ試験に伴う「レッド・セル問題」(主工程が極度に汚染されていてセル内に立入りできない)で補強工事ができず、不合格になる可能性を指摘したところ、「我々は直接審査する立場ではなく、原子力規制委員会で審査中だと理解している」と回答を避けました。しかし、レッド・セル問題で不合格になる可能性については否定しませんでした。

ステップ2高燃焼度燃料は六ヶ所再処理工場では再処理できず、搬出もできない!

第3に、「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難という事実はご指摘の通りで、今は再処理できない」と認めました。この高燃焼度使用済燃料が約2,000体あり、関電の原発で1/4を占めていることも認める一方、「残りの6,000体のうちどれだけを出していけるのかということもあり、喫緊の課題ではない。」「ここをやる中で、六ヶ所再処理工場の事業変更許可が必要になるものだと理解している」と逃げました。しかし、再処理対象でない使用済燃料は六ヶ所再処理工場の受け入れ対象外で、中間貯蔵施設へも搬出できません。今は1/4程度ですが、今後はその割合が増えていき、搬出され得ない使用済燃料が増えていくのです。ましてや、六ヶ所再処理工場が10%程度の操業では、ステップ2高燃焼度燃料でない6,000体のほんの一部しか六ヶ所再処理工場へは搬出されず、その再処理条件が変更される可能性もありえないでしょう。

「乾式貯蔵を設置しても使用済燃料の貯蔵容量は増やさない」という関電の主張は虚言!

第4に、関西電力は、「今後、原則として貯蔵容量を増加させない」、「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない(=管理容量は現状のまま)」と主張していますが、乾式貯蔵の新規制基準適合審査では「使用済燃料乾式貯蔵容器貯蔵分の容量を含めて、全炉心燃料の約130%相当数の燃料集合体数に十分余裕を持たせた貯蔵容量を有する設計とする(=貯蔵容量を増強する)」と説明し、「円滑な搬出」や「将来の搬出に備える」という目的には一切触れていません。また、前回取り上げた関西電力株主総会(2024.6.26)での「具体的に申し上げると、乾式貯蔵と使用済燃料ピットの貯蔵量の合計が使用済燃料ピットの貯蔵容量を超えないようにしてまいります」(第100回定時株主総会議事録)との高畠勇人執行役常務の答弁については、関西電力によって未だに撤回も弁明もなされていません。福井県議会9月定例会全員協議会(2024.9.9)でも県議から、美浜3号に即して「管理容量の652体を超えないように管理するのか、貯蔵容量の809体を超えないように管理するのか、どちらか?」と問われて、水田関電副社長・原子力事業本部長は、どちらとも正確には回答できませんでした。この点について、原安課は「水田事業本部長は、トータルの(管理)容量は変わらない、技術基準に決められた1炉心分を空けての容量だと回答されている」と擁護しましたが、これは管理容量の説明であって、使用済燃料の貯蔵量の上限を管理容量と貯蔵容量のどちらで制限しているのかという県議の質問には回答していないのです。関西電力は最近、「サイトの管理容量に乾式貯蔵容量は加えない」と主張し始めましたが、そこには落とし穴があり、廃炉になった美浜1・2号や大飯1・2号の空きスペースが乾式貯蔵によって「利用可能」にみえるよう運用できるトリックがあり、「乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない」という約束も公然と破られる可能性があるのです。

「円滑な搬出のために乾式貯蔵が必要」 という関電の主張は根拠のない大ウソ!

第5に、「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」という関西電力の主張について、原安課は、これまでの9,000体以上の使用済燃料搬出で、乾式貯蔵のようなものがないと円滑に搬出できないという例はなかったことを認め、「年間搬出量実績の数倍もの乾式貯蔵がなぜいるのか、搬出計画に合わせてキャスクを準備すればすむ」と追及すると、「計画が出て、容器があって、計画があれば、それはもっていくだけなのでその通りです」と認めました。さらに、高浜第1期工事審査で、乾式貯蔵できる使用済燃料はキャスク当り25年以上冷却が12体、32年以上冷却が12体の24体だと判明した一方、高浜原発の使用済燃料3,175体(2024年3月末)の大半の2,280体は24年以下冷却で、25年以上冷却は895体にすぎず、32年以上冷却はさらに少ないという事実を突きつけ、「最初の528体の乾式貯蔵分が搬出されたら、次に乾式貯蔵できるものがなくなり、円滑な搬出のためという論理は成り立たない。」と追及すると、「乾式貯蔵から六ヶ所再処理工場へ行くところは不透明だ」と言い出す始末でした。つまり、「円滑な搬出のために乾式貯蔵が必要」という関西電力の主張は虚言だったのです。

関電の使用済燃料対策ロードマップに「実効性をもたせる」ことは不可能! 乾式貯蔵が最大の焦点!

関西電力は、実効性あるロードマップを2月県議会までに提出すると主張していますが、六ヶ所再処理工場にも中間貯蔵施設にも「実効性」はありません。唯一「実効性」があるのは「乾式貯蔵=核の墓場化」だけです。そのことが今回、一層明らかになりました。乾式貯蔵設置を許すか否か—これがロードマップの最大の焦点であり、現世代の責任が今、問われているのです。原安課は、「福井県は国策に協力してきた立場だ」と繰り返しますが、「国策協力よりも子孫を含めた福井県民の命と健康を守る立場」を最優先すべきではないでしょうか。

資料 2  英国での民生用プルトニウムの固定化・地層処分への方針変更とその日本への影響

英、プルトニウム地中廃棄へ 再処理後の100トン超「資産」から一転 日本委託分の22トンは未定  2025/2/2朝日新聞

英政府は、使用済み核燃料を再処理するなどして保有する100トン超の民生用プルトニウムについて、地中に埋めて廃棄する方針を発表した。日本の電力大手が英国に委託して取り出した約22トンも保管されている。今回の発表の適用範囲は、英国保有分に限ったもので、日本を含む他国保有分については協議を続けるとみられる。
日本は、原発の使用済み核燃料を再処理して、取り出したプルトニウムを再び発電に使う「核燃料サイクル」を進める。プルトニウムは「準国産エネルギー」で「資産」との位置づけだ。一方、プルトニウムは核兵器の原料となる。英国は使い道のないプルトニウムは「資産」ではなく「廃棄物」だと判断した。
英政府が原子力機関(IAEA)に提出した報告によると、中西部セラフィールドの施設などに約140トンのプルトニウムを保管。このうち日本を含む他国保有分が約24トンある。
1月24日、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省は、保有するプルトニウムについて、地層処分を前提に「固定化」を進めると発表。プルトニウムが核兵器に転用lされないよう」セラミックにして閉じ込める方法などが検討されている。10年内に、新たな施設を建設する方針だという。
英政府の担当高官は声明で「期限なく長期保管を続けることは、将来世代に安全保障リスクと核拡散への注意の負担を残すことになる」とした。
英国はもともと日本同様、プルトニウムをウランと混ぜてMOX燃料に加工する予定だった。日本の需要も見越してMOX燃料工場を設けたが、東京電力福島第一原発事故を受け日本の計画が不透明になり、2011年に閉鎖。大量のプルトニウムは使うめどがたたないま保管されている。
日本の大手電力9社と日本原子力発電は1970年代に英仏と契約を結び、使用済み核燃料の再処理を委託してきた。日本は23年末時点で、英国に21.7トン、フランスに14.1トン、国内に8.6トンのプルトニウムを保有する。日本は当初、高速増殖炉や原発の燃料としてプルトニウムを使う予定だったが、高遠増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉に。軽水炉でMOX燃料を燃やすプルサーマルの導入も3原発4基にとどまる。日本の余剰プルトニウムは核拡散の懸念が指摘されている。
英国政府の決定に対し、大手電力10社で作る電気事業連合会は.「今後の対応を検討する」としている。経済産業省の幹部は「日本の核燃料サイクル政策は変わらない。電力会社の方針を待つことになるが、英政府とも調整しなければならない」としている。(小川裕介、多鹿ちなみ、ロンドン=藤原学思)
見通しなき長期保管 是正を
元原子力委員会委員長代理で長崎大の鈴木達治郎教授(原子力政策)の話 英国はプルトニウムについて、①MOX燃料にする、②長期保管する、③ごみとして処分する、の選択肢を検討してきた。今回の決定は、地層処分が最もコストが安く、安全性が高いと判断したためだろう。核燃料サイクルを進めてきた英国が「プルトニウムはごみ」と判断したことは大きい。契約上、英国にある日本のプルトニウムは電力会社が持ち帰ることになっているが、英国は有償で引き取ってもよいと言ってきた。一緒に地層処分してもらった方が核拡散を懸念する米国や周辺国も安心する。政府や電力会社は見通しのないまま長期保管を続けるのではなく、いつどれぐらい減らしていくのか、英国と同様に選択肢を評価すべきだ。(以上、朝日新聞からの引用終わり)

<朝日新聞記事から見える六ヶ所再処理工場への影響>

日本には、①英国から日本へプルトニウムを移送して国内MOX燃料加工工場でMOX加工してプルサーマル利用する、②英国にプルトニウムの固定化・地層処分を依頼する、③その他、の選択肢があると思われます。
③で考えられるのは、「英から仏MOX燃料加工工場へ移送してMOX加工し、日本へ移送してプルサーマル利用する」ことですが、玄海3号と伊方3号では「英→仏移送」ではなく「英仏スワッピング」による仏MOX燃料加工が追求されたことから、「英→仏移送」は不可能とみられ、また、仏MOX燃料加工工場も品質欠陥による1/3操業からの回復はまだのようであり、日本向けのMOX加工サービスには限界があると思われます。英でのプルトニウム保管は、「英国でのプルサーマル用MOX燃料加工工場建設待ち」で正当化されてきましたが、それが今回の英方針転換で「正当化の根拠」が完全に失われてしまい、今後、①か②の選択肢が迫られることになるでしょう。
①の場合には、英保管プルトニウムが日本へ移送されて消費し尽くされるまで六ヶ所再処理工場は操業できなくなる恐れがでてきますし、②の場合には、「使用済燃料は全量再処理し、回収プルトニウムは当面プルサーマルで消費する」との政府の核燃料サイクル政策を自ら反故にし、核燃料サイクル政策の破綻を認めることになります。いずれにせよ、六ヶ所再処理工場の存在意義が根本から問われることになり、六ヶ所再処理工場への使用済燃料搬出計画の実効性は、関西電力がロードマップを改訂する前に、その「破綻」が運命付けられてしまったと言えます。
電気事業連合会は.「今後の対応を検討する」とし、経済産業省幹部は「日本の核燃料サイクル政策は変わらない。電力会社の方針を待つことになるが、英政府とも調整しなければならない」としていますが、電力会社が国策に反する②を選択することはあり得ず、①を選択する以外にないのが実状でしょう。そうなれば、余剰プルトニウムをもたない政府方針から、六ヶ所再処理工場は、「英保管プルトニウムを日本へ移送し、国内でMOX燃料加工し、プルサーマルで消費し尽くすまで操業できない」事態に陥ります。これでは、六ヶ所再処理工場への搬出も、六ヶ所再処理工場での再処理を前提とした中間貯蔵施設への搬出も不可能になるでしょう。関西電力のロードマップの実効性はこれで完全に失われてしまうのではないでしょうか。

陳情者 サヨナラ原発福井ネットワーク・若狭連帯行動ネットワーク
(代表住所:越前市不老町2-24  山崎隆敏)

2025年1月17日「関電ロードマップ」に関する福井県原子力安全対策課との交渉報告

2025年1月17日「関電ロードマップ」に関する福井県原子力安全対策課との交渉報告(pdfはこちら)議事録(pdfはこちら)および交渉に向けた申し入れ(pdfはこちら)資料(pdfはこちら)を掲載します。動画はこちらからご覧下さい。

六ヶ所再処理工場と中間貯蔵施設に「実効性」はない!乾式貯蔵による「核の墓場化」を許すな! 現世代の責任で「使用済燃料をこれ以上生み出すな」の声を!

私たち、サヨナラ原発福井ネットと若狭ネットは、昨年8月20日に続き、2025年1月17日、杉本達治福井県知事に「使用済燃料対策ロードマップ」の虚言に騙されないで!!」と申し入れ、「過去の実績や現状を直視すれば、ロードマップが実効性を持ち得ないことは明らかだ」と具体的に示し、福井県原子力安全対策課(原安課)と次の5項目について質疑を交わしました。原安課からは前回同様、吉田参事と山本参事が主に回答し、私たちは9名で臨みました。マスコミは日刊県民福井、福井新聞、共同通信、時事通信、朝日新聞、毎日新聞などが取材し、原安課との質疑の後、数十分間、内容について、資料を使って、より詳しく説明しました。

「使用済燃料対策ロードマップ」の虚言に騙されないで!!

福井県知事 杉本達治 殿             2024年11月5日

1.「六ヶ所再処理工場は、プルサーマル実績等から高々10%操業に留まらざるを得ない」という現状を認識できていますか ?

2. 「六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強できず、新規制基準不適合で不合格になる可能性もある」という事実を認識できていますか ?

3.「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難」という事実を認識できていますか ?

4.関電の説明「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない=管理容量は現状のまま」は、乾式貯蔵への事前了解を得たいがための虚言ではありませんか ?

5.「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」というのも、根拠のない虚言ではありませんか ?

前回の交渉を踏まえ、プルサーマルの新たな動き、六ヶ所再処理工場の審査状況、使用済燃料搬出実績、乾式貯蔵審査で明らかになった事実など最新情報を加えて、より深く追及した結果、次の成果を得ました。

六ヶ所再処理工場が仮に動いても10%操業程度で、使用済燃料の再処理工場への搬出はほぼ不可能!

第1に、六ヶ所再処理工場が仮に2年半後に竣工できても、「プルサーマルで消費できるプルトニウム量に応じて操業が許される」ため、せいぜい10%操業に留まらざるをえない現状だということを原安課も認めました。現在、プルサーマルを実施しているのは高浜3・4号だけで、年平均計0.32トンのプルトニウム消費に留まり、これでは、10%どころか、5%弱の操業度にしかなりません。原安課は、当初、原子力委員会が了承した「電気事業連合会のプルトニウム利用計画(2024年2月16日)」には、「2027年度2.1トン、2028年度1.4トン」と記載されていると主張しましたが、「それは不確実な見通しに過ぎない」と批判すると、「原子力委員会も不確定要素が大きくて予測は困難と仰っている」と認めました。実際には、2027年度2.1トンのうち0.7トンは高浜3号の16体で、残りの2027年度1.4トンと2028年度1.4トンが、英仏プルトニウム交換で可能になった伊方3号の24体(約1.0トン)と玄海3号の約40体(約1.6トン)のプルサーマル計画に対応します。しかし、これらは、発注先である仏MOX燃料加工工場の品質欠陥による操業度低下(約1/3に低下)で遅れていて、高浜原発も含めて計画通りに行く保障はないのです。その結果、2035年頃まで、これまでの実績と同様、せいぜい「10%操業程度相当」のプルサーマルが続き、その先は、玄海3号と伊方3号ではプルサーマル計画がゼロになるのです。最大のプルトニウム所有者である東京電力、日本原電、中部電力には原発再稼働の見通しもプルサーマルの見通しも全く立ちません。この現状を、原安課は認めざるを得ませんでした。これでは、六ヶ所再処理工場への使用済燃料搬出はほとんど不可能です。たとえ搬出できても、ほとんど再処理されず、工場閉鎖後に返送されてくるだけでしょう。

六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強工事ができず、設工認審査不合格になる可能性も!

第2に、六ヶ所再処理工場の設計工事認可審査で耐震補強工事が必要になっても、アクティブ試験に伴う「レッド・セル問題」(主工程が極度に汚染されていてセル内に立入りできない)で補強工事ができず、不合格になる可能性を指摘したところ、「我々は直接審査する立場ではなく、原子力規制委員会で審査中だと理解している」と回答を避けました。しかし、レッド・セル問題で不合格になる可能性については否定しませんでした。

ステップ2高燃焼度燃料は六ヶ所再処理工場では再処理できず、搬出もできない!

第3に、「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難という事実はご指摘の通りで、今は再処理できない」と認めました。この高燃焼度使用済燃料が約2,000体あり、関電の原発で1/4を占めていることも認める一方、「残りの6,000体のうちどれだけを出していけるのかということもあり、喫緊の課題ではない。」「ここをやる中で、六ヶ所再処理工場の事業変更許可が必要になるものだと理解している」と逃げました。しかし、再処理対象でない使用済燃料は六ヶ所再処理工場の受け入れ対象外で、中間貯蔵施設へも搬出できません。今は1/4程度ですが、今後はその割合が増えていき、搬出され得ない使用済燃料が増えていくのです。ましてや、六ヶ所再処理工場が10%程度の操業では、ステップ2高燃焼度燃料でない6,000体のほんの一部しか六ヶ所再処理工場へは搬出されず、その再処理条件が変更される可能性もありえないでしょう。

「乾式貯蔵を設置しても使用済燃料の貯蔵容量は増やさない」という関電の主張は虚言!

第4に、関西電力は、「今後、原則として貯蔵容量を増加させない」、「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない(=管理容量は現状のまま)」と主張していますが、乾式貯蔵の新規制基準適合審査では「使用済燃料乾式貯蔵容器貯蔵分の容量を含めて、全炉心燃料の約130%相当数の燃料集合体数に十分余裕を持たせた貯蔵容量を有する設計とする(=貯蔵容量を増強する)」と説明し、「円滑な搬出」や「将来の搬出に備える」という目的には一切触れていません。また、前回取り上げた関西電力株主総会(2024.6.26)での「具体的に申し上げると、乾式貯蔵と使用済燃料ピットの貯蔵量の合計が使用済燃料ピットの貯蔵容量を超えないようにしてまいります」(第100回定時株主総会議事録)との高畠勇人執行役常務の答弁については、関西電力によって未だに撤回も弁明もなされていません。福井県議会9月定例会全員協議会(2024.9.9)でも県議から、美浜3号に即して「管理容量の652体を超えないように管理するのか、貯蔵容量の809体を超えないように管理するのか、どちらか?」と問われて、水田関電副社長・原子力事業本部長は、どちらとも正確には回答できませんでした。この点について、原安課は「水田事業本部長は、トータルの(管理)容量は変わらない、技術基準に決められた1炉心分を空けての容量だと回答されている」と擁護しましたが、これは管理容量の説明であって、使用済燃料の貯蔵量の上限を管理容量と貯蔵容量のどちらで制限しているのかという県議の質問には回答していないのです。関西電力は最近、「サイトの管理容量に乾式貯蔵容量は加えない」と主張し始めましたが、そこには落とし穴があり、廃炉になった美浜1・2号や大飯1・2号の空きスペースが乾式貯蔵によって「利用可能」にみえるよう運用できるトリックがあり、「乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない」という約束も公然と破られる可能性があるのです。

「円滑な搬出のために乾式貯蔵が必要」という関電の主張は根拠のない大ウソ!

第5に、「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」という関西電力の主張について、原安課は、これまでの9,000体以上の使用済燃料搬出で、乾式貯蔵のようなものがないと円滑に搬出できないという例はなかったことを認め、「年間搬出量実績の数倍もの乾式貯蔵がなぜいるのか、搬出計画に合わせてキャスクを準備すればすむ」と追及すると、「計画が出て、容器があって、計画があれば、それはもっていくだけなのでその通りです」と認めました。さらに、高浜第1期工事審査で、乾式貯蔵できる使用済燃料はキャスク当り25年以上冷却が12体、32年以上冷却が12体の24体だと判明した一方、高浜原発の使用済燃料3,175体(2024年3月末)の大半の2,280体は24年以下冷却で、25年以上冷却は895体にすぎず、32年以上冷却はさらに少ないという事実を突きつけ、「最初の528体の乾式貯蔵分が搬出されたら、次に乾式貯蔵できるものがなくなり、円滑な搬出のためという論理は成り立たない。」と追及すると、「乾式貯蔵から六ヶ所再処理工場へ行くところは不透明だ」と言い出す始末でした。つまり、「円滑な搬出のために乾式貯蔵が必要」という関西電力の主張は虚言だったのです。

関電の使用済燃料対策ロードマップに「実効性をもたせる」ことは不可能! 乾式貯蔵が最大の焦点!

関西電力は、実効性あるロードマップを2月県議会までに提出すると主張していますが、六ヶ所再処理工場にも中間貯蔵施設にも「実効性」はありません。唯一「実効性」があるのは「乾式貯蔵=核の墓場化」だけです。そのことが今回、一層明らかになりました。乾式貯蔵設置を許すか否か—これがロードマップの最大の焦点であり、現世代の責任が今、問われているのです。原安課は、「福井県は国策に協力してきた立場だ」と繰り返しますが、「国策協力よりも子孫を含めた福井県民の命と健康を守る立場」を最優先すべきではないでしょうか。

サヨナラ原発福井ネットワーク・若狭連帯行動ネットワーク
(連絡先:越前市不老町2-24 山崎隆敏)

若狭ネット第201号を発行:原発最大限活用の第七次エネルギー基本計画は、日本を破滅へ導く! 再エネ優先給電と送配電部門所有権分離で、再エネの抜本的拡大を! 関西電力は、乾式貯蔵計画を、虚言とともに、撤回せよ!

若狭ネット第201号を発行しました。下記からご覧ください。

第201号(2025/1/8)一括ダウンロード3.6Mb
巻頭言–原発最大限活用の第七次エネルギー基本計画は、日本を破滅へ導く!
再エネ優先給電と送配電部門所有権分離で、再エネの抜本的拡大を!
関西電力は、乾式貯蔵計画を、虚言とともに、撤回せよ!
1.「原子力優先・石炭火力延命」から「再エネ優先給電」へエネルギー基本計画を転換し、9電力の送電部門を所有権分離せよ!
2.「乾式貯蔵」Q&A・・・関西電力の虚言に騙されるな!踊らされるな!

2025年1月17日(金) 午後2時~
関西電力「使用済燃料対策ロードマップ」に関する対福井県(原子力安全対策課)交渉

<陳情書> 福井県議会 議員各位 2024年11月19日(pdfはこちら)

<添付資料> 福井県知事 杉本達治 殿 2024年11月5日(pdfはこちら)

「使用済燃料対策ロードマップ」の虚言に騙されないで!!

1. 「六ヶ所再処理工場は、プルサーマル実績等から高々10%操業に留まらざるを得ない」という現状を認識できていますか ?

2. 「六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強できず、新規制基準不適合で不合格になる可能性もある」という事実を認識できていますか ?

3. 「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難」という事実を認識できていますか ?

4. 関電の説明「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない=管理容量は現状のまま」は、乾式貯蔵への事前了解を得たいがための虚言ではありませんか ?

5. 「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」というのも、根拠のない虚言ではありませんか ?

場所:福井県庁1階101会議室
(参加希望者は、1月17日午後1時半に県庁1階ロビーへ集合してください)

主催:サヨナラ原発福井ネットワーク/若狭連帯行動ネットワーク
(連絡先:山崎 090-6271-8771)

福井県議会12月定例会に向けて議会事務局へ「陳情書」を送付しました

福井県議会12月定例会(12/2-24)に向けて、福井県議会事務局へ「陳情書」を送付しました。

陳情書のpdfはこちら:知事宛申し入れ書のpdfはこちら

<福井県議会議員宛の陳情書>
2024年11月19日
陳情書
福井県議会 議員各位
私たちは、90年代中頃より「行先のない使用済み燃料」問題を憂慮し、県民への啓発活動を進めてきた関西と県内の市民・研究者のボランティアネットワークです。
これまで私たちは、この問題に関して、福井県(原子力安全対策課)への申し入れ活動をたびたび行ってきました。たとえば私たちは2003年に「2010年までに中間貯蔵施設を県外で操業開始するとの関電の約策」の実現性に疑義をもち、県を問い質しています。その際、県は「長期保管につながるものとは考えていない」「中間貯蔵施設は2010年までに操業を開始するものと考えている」などと甘い見通しを述べていました。その結果、2003年当時に若狭(関電)に貯蔵されていた使用済核燃料は約2,600トンでしたが、現在3,830トン(2024年6月末現在、電事連資料;敦賀630トンを含めると4,460トン)もの量に膨れ上がってしまいました。
さて私たちは、六ヶ所再処理工場竣工時期の2年半延期で関西電力の「使用済燃料対策ロードマップ」が破綻したことを受け、8月20日に知事宛申し入れ書を提出し、原安課と質疑を行いました。その後の原子力規制委員会での乾式貯蔵に関する審査状況等を受け、知事あて質問書(別紙)を11月初めに改めて提出し、これへの回答と質疑を原安課に求めています。この質問書で私たちは、「たとえ再処理工場が稼働を開始できても、いくつかの事情が足かせとなっており、再処理工場のフル操業は事実上困難な状況であり、福井県が核の墓場になる恐れがある」という現実を具体的に示し、そのことを知事は認識できているのか否か、と問いかけております。
本日私たちは、福井県議会の皆様へも同じ問いを投げかけさせて頂くことにいたしました。
県議会には国政に関する調査権はないとはいえ、県民の生命・健康と生活に関わる県政の重大問題の一つですので、何とぞ、皆さまの英知を駆使され独自に調査研究を進めていただき、議論をより深めていただきたいと私たちは心から願う次第です。

サヨナラ原発福井ネットワーク / 若狭連帯行動ネットワーク
連絡先:越前市入谷町13-20 山崎隆敏 090-6271-8771

<添付資料>
2024年11月5日
「使用済燃料対策ロードマップ」の虚言に騙されないで!!
福井県知事 杉本達治 殿
関西電力と国は9月10日、昨年10月に策定した使用済燃料対策ロードマップ(工程表)を、本年度末までに見直すと表明しました。これを受けて貴職は、関電が約束していた原発3基の即時停止には言及されないまま、あくまで責任は関西電力や国にあると発言されました。しかし、マスコミも、「杉本知事が口にする使用済燃料の必要な搬出容量が確保できる姿とは何なのか」「新たな工程表の実効性の有無をどのような基準で判断するのかは不透明なまま」と疑問を呈しています(9月8日中日新聞)。
また、福井県議会は9月7日、国への意見書—①工程表を早期に見直して実効性のある計画にするよう関電を厳しく指導していくだけでなく、全面に立って主体的に取り組む。②青森県六ケ所村の再処理工場が2026年度中に完成するよう責任をもって進捗管理し、確実に実現する—を全員一致で可決しています。おそらく貴職も同様の見解をお持ちなのでしょう。しかしながら、現実を顧みれば、これまで私たちも再三再四にわたり指摘してきたように、①の「主体的に取り組む」や②の「責任をもって」のような精神論のレベルではとうてい克服しええぬ難問が目前に厳然と横たわっています。「プルトニウム・リサイクル政策の破綻」の現実をしっかりと見据えれば、そもそも「ロードマップの実効性」など望むべくもないことは誰にでも理解できることなのです。貴職には、電力事業者の口車に乗せられることなく、理非曲直を正し、「行先のない使用済燃料をこれ以上生み出すことを止めさせていただきたい」と私たち県民は心から願う次第です。以下の私たちの質問に誠実にお答えください。
1.「六ヶ所再処理工場は、プルサーマル実績等から高々10%操業に留まらざるを得ない」という現状を認識できていますか ?
2. 「六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強できず、新規制基準不適合で不合格になる可能性もある」という事実を認識できていますか ?
3.「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難」という事実を認識できていますか ?
4.関電の説明「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない=管理容量は現状のまま」は、乾式貯蔵への事前了解を得たいがための虚言ではありませんか ?
5.「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」というのも、根拠のない虚言ではありませんか ?

質問概要
1.「六ヶ所再処理工場は、プルサーマル実績等から高々10%操業に留まらざるを得ない」という現状を認識できていますか ?
六ヶ所再処理工場は、竣工時期が2026年度末へ約2年半延期されましたが、仮に、2027年度以降操業できたとしても、プルサーマル実績等から高々10%程度の操業に留まらざるを得ないと言えます。というのは、「余剰プルトニウムを持たない」という国際公約を実現するため、原子力委員会は「六ヶ所再処理工場、 MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」(我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方, 2018. 7.31)という方針をとっているからです。
国内のプルサーマル実績は、2009~2024年の15年間に高浜3・4号、伊方3号、玄海3号の4基で5.725tPu、平均0.382tPu/年にすぎず、六ヶ所再処理工場フル操業(800tU/年)時のプルトニウム回収量約6.6tPu/年(電気事業連合会「プルトニウム利用計画」)の6%弱にしかなりません。福島事故後の長期停止に加え、運転差止め仮処分決定や特定重大事故等対処施設設置期限切れ等による長期停止の影響を受けたのは事実ですが、仮に、①プルサーマルが途切れず実施され、②定検期間が3ヶ月程度から延びず、③事故、仮処分、規制要求等による停止がない、と仮定しても、これまでの上記実績は0.692tPut/年に留まり、フル操業時の10%程度に留まります。
しかも、現時点では、伊方3号と玄海3号はプルサーマル中断中で、高浜3・4号が細々と継続しているだけであり、「10%程度」の半分以下です。伊方3号と玄海3号では、英仏プルトニウム所有権交換で新MOX燃料を強引に調達し、2027年度以降から再開する計画ですが、この場合でも、4基によるプルトニウム消費量は0.698tPu/年に留まり、これまでの実績0.692tPu/年とほぼ同じです。
沸騰水型原発ではメドが立ちません。最大のプルトニウム所有者=東京電力は再稼働自体が困難で、プルサーマル原発も未定です。中部電力(浜岡4号)、日本原電(東海第二、敦賀2号)、東北電力(女川3号)は再稼働の見通しがありません。中国電力(島根2号)のプルサーマルは、地元同意や仏へのMOX燃料加工発注・輸送に5~10年かかり、仮に実施できたとしても、四国電力と同程度で、「10%程度」を引上げるほどの効果はありません。
つまり、六ヶ所再処理工場は竣工しても高々10%程度の操業しかできず、40年間に3,200tUの使用済燃料しか再処理できないと言えます。これは、六ヶ所再処理工場内のプールに貯蔵されている量2,968tU(2023.3末)を250tU上回る程度に相当し、2024年3月末現在の原発サイト内使用済燃料16,720tUの大半は再処理できないまま「核のゴミ」になる運命なのです。
この「再処理できない」という状況が明確になればなるほど、上関町の「中間貯蔵施設計画」も「永久貯蔵」の未来が見えてきますので、立地拒否、受入れ拒否に傾くのは当然です。貴職はこの現実を認識されていますか?
仮に、中間貯蔵施設や六ヶ所再処理工場へ搬出できたとしても、40年後には再処理できないまま、 搬出元のサイトへ戻されます。それに気付くのが、今か、40年先かの違いだけで、再処理工場が10% 程度しか操業できず、原発サイトに今ある使用済燃料をほとんど再処理できないことは、すでに、プルサーマルの実績で示されているのです。貴職はこの現実を認識されていますか?
さらに、高浜3・4号にはすでに使用済MOX燃料がプールに44体あり、36体が1~3サイクル目の装荷中です。使用済燃料PWR1,780体(800tU)を再処理すると、MOX燃料PWR168体が生み出され、これをプルサーマルすれば、使用済MOX燃料PWR168体が生み出され、プールに貯まり続けます。「これが乾式貯蔵できるように冷えるまで90年以上プールで貯蔵する以外になく、再処理もできない」こと、「核燃料サイクルを回すというのは現実にはこういうことだ」ということを、貴職は認識されていますか?

2.「六ヶ所再処理工場は、レッド・セル問題で耐震補強できず、新規制基準不適合で不合格になる可能性もある」という事実を認識できていますか ?
六ヶ所再処理工場は、2006~2013年に使用済燃料425tU(PWR206tU、BWR219tU)を剪断、溶解、分離、精製する総合試験=「アクティブ試験」を強行したため、主要工程は、福島事故で溶融した燃料(BWR257tU)の2倍程度の放射能で極度に汚染されてしまいました。厚さ1mの放射線遮蔽コンクリートで細かく区切られた「レッド・セル」内は使用前検査の立ち入りは元より、耐震補強工事も困難なため、設工認審査で耐震補強が必要になっても工事ができず、不合格になる可能性が高いと言えます。
現に、耐震バックチェック時の基準地震動(450ガル)でも応力比が1近くで耐震余裕のない機器が数多く存在していましたので、新規制基準で認可された基準地震動(700ガル)に対し、応力比が1を超える機器が続出するのは避けられないでしょう。応力比が1を超えた場合には、直ちに不合格とはされず、その機器について弾性設計用地震動Sdで「概ね弾性範囲内か」を確認することになっていますが、Sdに対しても応力比が1を超えれば不合格になります。ちなみに、2009年4月に日本原燃は耐震バックチェック時の基準地震動Ss(450ガル)に対応するSd=(2/3)Ss=300ガル(当時は1/2ではなく2/3だった)を使って「高レベル廃液濃縮缶」の応力比を0.89(詳細評価)と導き、1未満であることを確認しています。基準地震動Ss(700ガル)では、Sd=Ss/2=350ガルですので、応力比は1.17(=350/300)倍の1.04となり、1を超える可能性があります。これでは設工認審査は通らず、補強工事もできず、不合格になる可能性があります。他にも応力比が1近くの機器がたくさんありますので、設工認の壁は決して低くありません。日本原燃は従来からの3つの地盤モデルを10の地盤モデルへ変更しましたので、多少の影響はあるかもしれませんが、基本的な傾向は変わらないと思われます。
つまり、関西電力が、いくら審査のエキスパートを日本原燃へ送り込んで審査資料の整備や説明の仕方に工夫を凝らしても、レッド・セル内の主要機器で耐震補強工事が必要になれば、不合格にならざるをえません。知事はこの事実を認識されていますか?

3.「PWRのステップ2高燃焼度燃料は再処理困難」という事実を認識できていますか ?
六ヶ所再処理工場の再処理対象には、使用済MOX燃料が含まれていないだけでなく、加圧水型原発のほとんどで現在使われている「ステップ2高燃焼度燃料」の使用済燃料も、より低燃焼度の使用済燃料と混ぜなければ再処理できません。なぜなら、再処理条件が「使用済燃料集合体最高燃焼度は5.5万MWd/tUPr(照射前金属ウラン重量換算)、なお、1日当たり再処理する使用済燃料の平均燃焼度は4.5万MWd/tUPr以下」と制限される一方、PWRのステップ2高燃焼度燃料は「集合体最高燃焼度5.5万 MWd/tUPrかつ集合体平均燃焼度4.8~5.0万MWd /tUPr」で、この条件を超えているからです。結果として、この高燃焼度燃料が中間貯蔵施設や六ヶ所再処理工場へ搬出されることはないでしょう。 このPWRステップ2高燃焼度燃料の装荷実績は、関西電力の原発で2,040体、約920tUに上り、美浜・大飯・高浜で2024年3月現在プール貯蔵中の使用済燃料8,480体(約3,820tU)のほぼ1/4を占めます。しかも、美浜3号、高浜1・2号、大飯3・4号の運転で、1サイクル毎に268体も増え続け、10年で倍増します。他のPWR原発でも同様に、六ヶ所再処理工場へ搬出されることのないステップ2高燃焼度燃料が増え続けているのです。乾式貯蔵は、「燃焼度が低く、10年以上冷却されて崩壊熱が十分下がり自然空冷可能になった」使用済燃料をプールから取出しますが、高燃焼度のため中間貯蔵施設や六ヶ所再処理工場へ搬出されることがなく、かつ、プール事故(冷却失敗による燃料溶融事故)の原因となる熱い使用済燃料を次から次へとプールへ供給し続けることを可能にするのです。貴職はこの現実を認識されていますか?

4.関電の説明「燃料プール内の乾式貯蔵による空きスペースは原則使用しない=管理容量は現状のまま」は、乾式貯蔵への事前了解を得たいがための虚言ではありませんか ?
関西電力は「使用済燃料対策ロードマップ」(2023.10.10)における「大飯、高浜、美浜原発構内の乾式貯蔵施設設置」の説明の最初に「着実に発電所が継続して運転できるよう、環境を整備する」と明記して運転継続がロードマップの最優先事項だと明言しています。その下で、「今後、原則として貯蔵容量を増加させない」とし、乾式貯蔵の目的は「使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」および「将来の搬出に備える」ことだとしています。
しかし、乾式貯蔵設置認可の審査会合では、関電自ら「使用済燃料乾式貯蔵容器貯蔵分(貯蔵容量最大528体)の容量を含めて、全炉心燃料(157体)の約130%相当数の燃料集合体数に十分余裕を持たせた貯蔵容量を有する設計とする。」と説明し、「乾式貯蔵施設設置の目的は貯蔵容量の増強」だと主張する一方、「円滑な搬出」や「将来の搬出に備える」という目的には一切触れていません。
他方、「関西電力からのお知らせ:原子力発電所構内における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置計画について」(2024年5月)の中で、関西電力は「使用済燃料を乾式貯蔵施設に移し替えることで発生する燃料プールの空きスペースは原則使用しません。これにより、発電所敷地内で貯蔵することができる量はこれまでと変わりません」と説明しています。また、電気事業連合会が第41回原子力小委員会(2024.10.16)で示した資料によれば、関西電力は、他の電力会社とは全く異なり、美浜・大飯・高浜の乾式貯蔵容量1,530体(700tU)(美浜210体(100tU)、大飯552体(250tU)、高浜768体(350tU))を「合計管理容量」に加算せず、使用済燃料貯蔵量の上限値を現行の管理容量(=ピット貯蔵容量-1炉心)のままとする姿勢を明示しています。
審査会合では「貯蔵増強策だ」と主張し、他では「貯蔵増強策ではない」と主張する。この矛盾した対応は、関西電力社内でも上層部を含めて混乱を招いていて、一貫性のない、その場しのぎの弁明が繰り返されているのです。実際には、乾式貯蔵は「貯蔵増強策」そのものであり、プールの空きスペースが使われ、使用済燃料を敷地内に貯蔵できる量は増えるのです。
例えば、美浜3号機のプール貯蔵容量は809体ですが、運転時には炉心燃料157体をいつでもプールへ戻せるよう空けておくことが法令で義務付けられています。そのため、「プール貯蔵容量」から「1炉心(157体)」を差し引いた652体が「使用済燃料の貯蔵上限値」になります。今年の関西電力の株主総会(2024.6.26)で、株主からの質問に答弁した高畠勇人執行役常務は、「具体的に申し上げると、乾式貯蔵と使用済燃料ピットの貯蔵量の合計が使用済燃料ピットの貯蔵容量を超えないようにしてまいります」(第100回定時株主総会議事録)と答えています。つまり乾式貯蔵施設設置後の「使用済燃料の貯蔵容量」は652体から「使用済燃料ピットの貯蔵容量」の809体へ増やすと明言したものであり、これは、「使用済燃料の貯蔵容量は増やさない」というこれまでの説明とは明らかに異なります。この問題については、福井県議会9月定例会全員協議会(2024.9.9)でも県議から「管理容量の652体を超えないように管理するのか、貯蔵容量の809体を超えないように管理するのか、どちらか?」と問われて、水田関電副社長・原子力事業本部長は、どちらとも正確には回答できませんでした。貴職は関電のこの巧妙な詐術を承知しておられるのでしょうか。
また、美浜3号の乾式貯蔵容量は210体であり、1炉心分(157体)より53体多いので、実際に確保される「使用済燃料の貯蔵容量」は、809体より53体多い862体になります。この53体の空きスペースが使われないという保証はどこにあるのでしょうか。
さらに、計画中の乾式貯蔵施設はキャスクごとの格納設備方式ですので必要に応じて増設できます。水田関電副社長・原子力事業本部長は、県議会で「国内外の情勢の変化や災害など、自社の事由によらない事情によって搬出が滞り、日本全国のエネルギー安定供給に貢献できなくなる可能性がある場合は、例外になると考えております。」(朝日2023.10.11)と発言していますが、貴職は、「例外的に増設される」こともやむなしと黙認される腹積もりなのでしようか。
「燃料プールの空きスペースを使わない」と関電が主張しても、それをチェックするのは、関電ホームページで公開されている情報だけでは困難でしょう。過去には、関西電力が「廃止措置中の美浜1・2号の燃料プールの空きスペースを美浜3号の使用済燃料貯蔵用に使える」との想定で燃料交換可能回数を増やしていましたが、そのトリックを暴くためには、その他の様々な入手しにくい情報を駆使する必要がありましたから。しかも、関電は仏での使用済MOX燃料再処理実証研究発表時(2023.6.12)にそれを事実上撤回した後も、そのトリックが誤りだったとは認めていないのですから。
最後に、2024年3月末現在の使用済燃料貯蔵量8,480体(廃止措置中の4基を含む)に基づけば、高浜1~4号はあと2回、大飯3・4号は3回、美浜3号は4回で燃料交換できずに運転停止となります。そうなっても、「乾式貯蔵で空いたスペースは使われない」と、貴職は保証できますか。

5.「円滑な搬出等のために乾式貯蔵が必要」というのも、根拠のない虚言ではありませんか ?
関西電力は、「使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」および「将来の搬出に備える」ために乾式貯蔵が必要だと言いますが、その必要性を示す客観的根拠がありません。
第1に、関西電力以外では、むつ市中間貯蔵施設を計画している東京電力と日本原電を含めて、「円滑な搬出」を目的としたサイト内乾式貯蔵施設の設置計画は存在しません。関西電力以外の電力会社等の乾式貯蔵はすべて「使用済燃料の貯蔵容量の増強」が目的です。
第2に、「発電所の運転・建設年報令和4年度(2022年度)」に記載された福井県内の原発から国内外再処理工場等への9,303体の使用済燃料搬出記録によれば、「乾式貯蔵がないために円滑な搬出ができなかった」というトラブルの例は何も記載されていません。輸送先と輸送計画が明確であれば、「円滑な搬出」のための乾式貯蔵など不要なのです。
第3に、輸送先も輸送計画もない中で、「円滑な搬出」のための乾式貯蔵施設の設置を計画すること自体に無理があります。関西電力は乾式貯蔵容量700tU(1,530体)の算出根拠を、中間貯蔵施設へ輸送する輸送船の積載可能量と年間輸送可能回数から算出した年間輸送可能量だと説明しているようですが、搬出先の中間貯蔵施設や再処理工場が存在せず、搬出計画も存在しない現状で、年間搬出量を示せるはずがありません。
第4に、9,303体の使用済燃料搬出記録によれば、六ヶ所再処理工場等への年間搬出量の最大値は、美浜98体、大飯140体、高浜168体にすぎず、それをはるかに超える乾式貯蔵容量(美浜210体、大飯552体、高浜768体)は、その必要性を正当化できません。ましてや、乾式貯蔵容量計1,530体(700tU)は美浜・大飯・高浜の各原発における全炉心の約1.3倍、関電の計画する中間貯蔵施設(2,000tU)の1/3に相当する大規模なものであり、審査会合で関電が主張した通り、「貯蔵容量増強策」そのものです。
第5に、高浜原発第1期工事の乾式貯蔵計画によれば、乾式キャスク収納条件は「32年以上冷却12体と25年以上冷却12体の計24体」ですが、高浜1~4号使用済燃料貯蔵量3,175体(2024.3末現在)のうち、冷却期間25年以上の使用済燃料は895体にすぎず、最初の528体を乾式貯蔵し「円滑に搬出」したとしても、収納条件に合う使用済燃料はほとんど残っていません。つまり、「円滑な搬出」ではなく、「25年ないし32年以上冷却された使用済燃料の長期貯蔵」が目的である可能性が極めて高いと言えるのです。

貴職は以上の現実をみてもなお、行先のない使用済み核燃料をこれ以上生み出すことを止めさせようと決意なされないのはなぜでしょうか? 乾式貯蔵は「中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」だとか、「将来の搬出に備えて」とかを未だに「信じて」 乾式貯蔵の設置を了承されるおつもりなのでしょうか。

サヨナラ原発福井ネットワーク/若狭ネット福井連絡先
越前市入谷町13-20 山崎隆敏方 電話090-6271-8771

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