若狭ネットニュース第160号を発行しました。
第160号(2016/4/26)(一括ダウンロード3.3Mb)
巻頭言-2016年熊本地震の警告を受け止め、川内原発の運転中止を!
M6.5の地震による地震動が基準地震動を越えた!
震源近傍では1,000ガルを超え、クリフエッジを超えた可能性も!
(1)大津地裁と福岡高裁宮崎支部の真逆の仮処分決定が意味するもの~2016 年熊本地震の地震観測記録を教訓に加えて~ 大阪府立大学名誉教授 長沢啓行(2016年4月22日)
<巻頭言>
2016年熊本地震の警告を受け止め、川内原発の運転中止を!
M6.5の地震による地震動が基準地震動を越えた!
震源近傍では1,000ガルを超え、クリフエッジを超えた可能性も!
私たちは、4月14日に発生した2016年熊本地震を踏まえ、4月22日、福島みずほ社民党参議院議員を通して、原子力規制委員会に「川内原発の運転停止と基準地震動見直しを求める緊急申し入れ」を行いました。
続いて、鹿児島の市民団体や原子力資料情報室とともに、原子力規制委員会へ公開質問状を提出し交渉する予定です。これまでの交渉の成果を引き継ぎ、原子力規制委員会をさらに追い込み、川内原発の運転停止、再稼働認可の取り消し、基準地震動の根本的見直しを求め、徹底して追及してきたいと考えています。その際には、公開質問状へのご賛同、交渉へのご参加、交通費カンパへのご協力をお願いします。
熊本地震は、原発再稼働に警鐘
九州の熊本、大分を襲った2016年熊本地震は、「人間が造った原発をもう動かしてはならない」と、警告しています。原発の基準地震動(=運転中に見舞われると予想される最大規模の地震動)が過小にすぎると警鐘を鳴らしているのです。
私たちは、21年前の阪神・淡路大震災を契機に、地震と原発の問題に取り組み、「原発は短周期地震動に弱い」こと、「原発直下でM6.5の地震が起これば強い短周期地震動で炉心溶融事故が避けられない」こと、「原発の基準地震動があまりにも過小評価されている」ことを一貫して暴き続けてきました。
この20年間に起きた地震観測記録はそれを裏付けており、今回の熊本地震でも、私たちの指摘の正しさがますます明らかになっていると言えます。活断層や見えない伏在断層に切り刻まれた日本列島に原発を建てて動かすなど、とんでもないことなのです。
原子力規制委員会に川内原発の運転中止と再稼働認可取り消しを求めよう!
2016年熊本地震は4月14日のM6.5の地震に始まりました。これは、いつ、どこで起きても不思議でない小さな地震でしたが、震度7の激震をもたらしたのです。震央距離11kmの益城(ましき)観測点では地上の地震計で1,580ガルの強震動が記録されましたが、これは地表近くの地層で地震動が増幅されているため、原発の基準地震動と直接比較することはできません。しかし、益城観測点には地下252mの地震基盤上に地震計が設置されていて、南北方向237ガル、東西方向178ガル、鉛直方向127ガル、3成分合成で260ガル程度の地震動が観測されています。これを原発の基準地震動と同じ「解放基盤表面はぎとり波」に換算すると、ほぼ2倍になり、それぞれ470ガル、350ガル、250ガル、3成分合成で520ガル相当になります。この地震波は川内原発の基準地震動と直接比較することができます。それが、図1です。この地震波と図1から、次のことが言えます。
(1)原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁へ統合)による地震動解析結果との比較から、4月14日のM6.5の震源近傍では1,000ガルを超え、川内1・2号のクリフエッジ(1号1,004ガル、2号1,020ガル)を超える地震動が襲った可能性が高い。
(2)同地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波は図1のように川内原発の基準地震動を応答スペクトルの一部で超えています。
(3)同はぎとり波の応答スペクトルは図1のようにM7.3の市来断層帯市来区間(等価震源距離はほぼ同じ約14km)の耐専スペクトルを超えており、耐専スペクトルでは過小にすぎます。また、断層モデルによる地震動解析結果は耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎず、大幅な過小評価になっています。
熊本地震の余震の震源は北東へ南西へと広がり続けており、九州地方では伏在断層を含めて震源断層に蓄積された歪みエネルギーが次々と断層運動で解放され続けているのです。M6.5の地震は、いつ、どこで、起きても不思議ではない小さな地震であり、川内原発周辺でいつ起きても不思議ではないのです。このような小さな地震で基準地震動を超える地震動が観測され、1,000ガルを超える可能性が明らかになったのですから、川内1・2号の運転を直ちに中止させ、再稼働認可(原子炉設置変更許可)を取り消すべきです。
図1.4月14日のM6.5の地震動はぎとり波と基準地震動Ss-1および市来断層帯市来区間の耐専スペクトル
関西電力は3月9日大津地裁決定を受け高浜原発を全基廃炉にせよ!
大津地方裁判所は3月9日、高浜原発3・4号の運転差し止めを決定しました。フクシマ事故発生から5年目に当り、フクシマをくり返さないことが改めて問われています。関西電力は、この際、高浜3・4号を廃炉にし、高浜1・2号の40年超運転申請を撤回し、高浜発電所を閉鎖すべきです。何となれば、高浜3・4号のクリフエッジはたった973ガル、M6.5の直下地震で1,000ガル超の地震動に襲われれば炉心溶融事故が避けられないからです。
大津地裁決定とは対照的に、福岡高裁宮崎支部は4月6日に川内原発1·2号の即時抗告を棄却しましたが、その8日後に起きた2016年熊本地震は、まさにこの決定への自然界からの厳しい批判ではないでしょうか。関西電力も熊本地震による警鐘に真摯に耳を傾けるべきです。
伊方3号の再稼働を中止し、基準地震動を見直せ
伊方3号では、4月19日の保安規定変更認可で再稼働審査手続きがすべて終了し、四国電力は7月下旬の再稼働を目指し、4月5日から使用前検査を受けていると伝えられています。しかし、熊本地震は伊方3号の危険性も改めて浮上させています。M6.5の直下地震が伊方を襲えば、伊方3号の855ガルのクリフエッジを軽く超えてしまいます。熊本地震を契機に再稼働を中止し、基準地震動を根本から見直すべきです。
廃炉問題から再稼働を見つめ直そう
原発再稼働を巡る動きが慌ただしくなっていますが、同時に、原発廃炉問題が急浮上しています。
すでに廃炉措置が実施された動力試験炉JPDR、廃炉段階に入っている東海原発(ガス炉)、ふげん(新型転換炉)、浜岡1・2号、40年運転の新規制で新たに廃炉段階に入った美浜1・2号、敦賀1号、島根1号、玄海1号、伊方1号(中国電力が3/25に発表)では、使用済核燃料をどうするのか、解体放射性廃棄物をどうするのか、労働者被曝を強いるのか、という深刻な問題が浮上しているのです。
すでに解体されたJPDRでさえ、放射能レベルの低いL3の一部が「試験埋設」されただけで、放射能レベルの高いL1、L2廃棄物2,100tは「保管廃棄」施設で保管中で、最終処分できない状態が長く続いています。
東海、ふげん、浜岡でも放射性廃棄物の行き場がないため「解体作業」が進まない状態です。ましてや、サイト内に溜まっている使用済核燃料は、行き場がありません。政府は高レベル放射性廃棄物の最終処分場を離島の地下や沿岸部の海底地下に埋設処分使用と目論んでいますが、火山・地震列島の日本に「科学的有望地」などあるはずがありません。
だとすれば、これ以上、負の遺産を生み出さないことが最善であり、これ以上、放射性廃棄物を生み出してはならないのです。原発を再稼働して動かせば動かすほど、使用済核燃料が生み出され、原子炉施設は汚染され、より多くの放射性廃棄物が生み出されます。このようなことは止めるべきです。この観点から、5月21日に大阪で、5月27日に福井で討論集会を開きます。
また、電源三法による地域買収構造が原発立地点を潤わせてきたと一般に信じ込まれていますが、事実は逆で、原発に頼らない周辺市町村の方が元気なのです。その実態を山崎隆敏さんが暴いてくれます。ぜひ、ご参加下さい。
原子力規制委員会への公開質問状に賛同して下さい!交渉に参加して下さい!交通費カンパを!
原子力規制委員会に対し、「2016年熊本地震を踏まえた川内原発の基準地震動に関する公開質問状」を5月10日に提出し5月下旬に交渉することを計画しています。別紙の公開質問状(案)への賛同団体・個人を募集しています。第1次締め切りは5月10日です。ぜひ、賛同団体・個人になってください。また、遠方からの参加者に交通費の半額を負担したく、一口500円で何口でもカンパをお願いします。力を合わせて川内原発の運転中止を勝ち取りましょう。