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若狭ネット第166号を発行:原発コストの「託送料金」への転嫁反対運動はこれからが正念場

若狭ネット第166号を発行:原発コストの「託送料金」への転嫁反対運動はこれからが正念場

福島事故関連コストの「託送料金」への転嫁反対運動はこれからが正念場です!
関連の法律=「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」改正案は、5月10日に国会を通過しましたが、これは東京電力に「廃炉等積立金」を積立てることを義務づけるだけの法律であり、その原資を「託送料金」へ転嫁する仕組み=経産省令改定はこれからです!
5月末現在、署名は2万8,619筆(累計)に上ります。
6月末に経産省へ提出し、公開質問状で追及したいと思います。
お手元の署名を至急、送って下さい。

経産省は、ここに来て、なぜか、「2020年の実施まで余裕がある」「先が見通せない」と、省令改定案作成に躊躇しています。
今が攻めどきです!
経産省令の改定阻止に向け署名は続けます!
署名拡大にご協力下さい。

第166号(2017/6/2)(一括ダウンロード3.8Mb

巻頭言-福島事故関連費と原発コストを「電気の託送料金」に転嫁しないでください!
署名は5月末現在2万8,619筆に!6月末提出に向け署名を至急送って下さい
参議院は日印原子力協力協定を批准せず、廃案にせよ!
安倍政権は、東芝危機を教訓に「原発輸出」戦略を撤回し、脱原発・再生可能エネルギー推進へ転換せよ!
(1)第三次特別事業計画は、原子力被災者切り捨てと国民負担による東電救済策
経産省は、「廃炉費6兆円の託送料金への転嫁」をやめ、東電を破産処理し、原発推進策から撤退せよ!
(2)参議院は日印原子力協力協定を批准せず、廃案にせよ!
(3)安倍政権は、東芝の経営危機へのテコ入れをやめ、「原発輸出」を断念し、脱原発・再生エネ推進へ転換せよ!
(4)長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書-我が国の地球温暖化対策の進むべき方向-(2017.4.7)
経産省はパリ協定を遵守し、国内のCO2大幅削減を妨害するな!
(5)伊方3号の運転差止仮処分申立を却下した広島地裁決定は司法の責任を回避し、「不作為の瑕疵」を容認するもの
2017年4月28日 大阪府立大学名誉教授 長沢啓行
<巻頭言>福島事故関連費と原発コストを「電気の託送料金」に転嫁しないでください!
署名は5月末現在2万8,619筆に!6月末提出に向け署名を至急送って下さい
参議院は日印原子力協力協定を批准せず、廃案にせよ!
安倍政権は、東芝危機を教訓に「原発輸出」戦略を撤回し、脱原発・再生可能エネルギー推進へ転換せよ!

経産省は「国民負担による東電救済」を進めようとしています。
①商法違反の経産省令改定を行って「過去の電気料金」に算入し損なったコスト(損害賠償費一般負担金「過去分」)2.4兆円を、40年間にわたり、電力消費者に転嫁しようとしています。
②東京電力管内の「託送料金」を高止まりにして電力消費者から福島原発廃炉費不足分6兆円を回収しようとしています。
③原発廃炉時に電力会社が損失として計上すべき「廃炉費積立不足分や減価償却できなかった残存資産」を「託送料金」へ転嫁しようとしています。
これらはすべて、「原発を持たない新電力」とは無縁のもの!にもかかわらず、新電力との契約者も負担させられるのです。
「原発の電気はいらない!」と言って新電力へ契約変更しても、原発コストを「託送料金」で払わされるのです。こんな理不尽なことがまかり通っていいのでしょうか。
まずは東電を破綻処理し、株主・金融機関に債権放棄させて約10兆円を捻出し、事故の責任をとらせるべきです。それでも足りない分は、累進課税等で富裕層や大手企業を中心に徴収すべきであり、低所得層からも広く徴収するのは間違いです。
そもそも「託送料金」というのは、「送配電網を利用するための料金」なのであり、送電コストとは無関係の「福島事故関連費や原発コスト」を「託送料金」に組み込むのは論外です。
しかし、経産省令を改定して、発送電が分離される2020年、ちょうど東京オリンピックが開催される年から、脱原発を願う電気消費者からも問答無用で、これらのコストを徴収し、子や孫、さらに玄孫(やしゃご)の世代まで負担させようというのです。
私たちは昨年11月から反対署名に取り組み、経産省と交渉してきました。
5月末現在、2万8,619筆に上ります(累計)。
5月末で第三次集約し、6月末に経産省へ提出し、公開質問状で追及したいと思います。お手元の署名を送って下さい。経産省令が改定されるまで署名は続けます。署名を拡大して下さい。

「機構法改定案」は国会で可決されたが・・・

東電救済のための法律(「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」改正案)は、5月10日に国会を通過しましたが、まだ、「廃炉費6兆円の託送料金への転嫁」の仕組みができたわけではありません。
転嫁を行うには、(1)原子力損害賠償・廃炉等支援機構が管理する「廃炉等積立金」に東電が資金を積立てる制度を法律で定めること、(2)30年間に6兆円の資金を東電が託送料金から捻出できるように経産省令を改定すること、の2段階が必要です。
(1)の法律は、社民・共産・自由党などが反対しましたが、5月10日の参議院で可決成立しました。
しかし、この法律は、東京電力が毎年決められた金額を原子力損害賠償・廃炉等支援機構の管理する「廃炉等積立金」に納付するように定めたものであり、その原資には何も触れられていません。この原資を「託送料金」高止まりで捻出するための(2)の仕組みが必要不可欠なのです。
(2)の経産省令改定案はパブリックコメントにかけられる予定ですが、5月末現在、改定案は示されていません。
2020年4月の発送電分離に合わせて実施する計画なので、まだ先のことですが、(2)を実現できなければ、託送料金から廃炉費を確実に捻出することができず、東電が経営努力で積立金を捻出しなければなりません。それは東電破産を意味します。まだ、間に合います。今進めている反対署名をさらに広げて、(2)の実現を阻止しましょう。

福島第一原発の廃炉費は、8兆円では収まらない

廃炉費6兆円というのは1979年3月、アメリカのスリーマイル島原発事故で「燃料デブリを除去して搬出する」までの約10億ドルに基づいて試算されたものです。
デブリの量から6倍、放射線量が極めて高くロボットなどの遠隔操作が必要だとしてさらに5倍、物価上昇率で2倍とみなし、計60倍したものです。
ところが、日本経済研究センターの試算では、福島第一原発1~3号から出る廃棄物はすべて放射性だとしてその処理処分費に約11兆円、トリチウム汚染水処分に約20兆円、汚染土の最終処分に約30兆円、計約61兆円としています。
汚染水については、国も東電もトリチウムを薄めて海洋放出し約20兆円を浮かそうとしていますが、許せません。論外です。汚染土の最終処分の計画は何もありません。このように、福島原発の廃炉・汚染水対策費は、6兆円に収まるどころか、さらに膨れあがるのは必至です。

国民負担で東電救済の「第三次特別事業計画」

この機構法改定案が5月10日に国会を通過したのを確認して、東京電力の再建計画を示す「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」が5月11日、主務大臣(内閣府と経産省)に申請され、5月18日に認定されました。そこでは、送配電事業で廃炉費6兆円を捻出することが前提とされ、東電の企業価値を高めるために、早ければ2019年度から柏崎刈羽原発を7基とも順次再稼働させる計画も盛り込まれています。この再稼働を東電だけが担うと、新潟県知事をはじめ反対が強いため、東電が東北電力との共同事業体を作って、それを再稼働の先兵に仕立て上げようとしていています。東北電力は「拒否」する構えですが、中断している東電の東通原発建設工事再開を含めて、東電も経産省もやる気十分です。
経産省は東電を逆用して、「東電と電力会社の共同事業体」を作り、電力・原子力産業を再編し、懲りずに原子力推進体制を立て直そうと目論んでいます。
福島県の自治体・県民が総意で求め続けている「福島第二原発の廃炉」要求には全く応えようとしていません。とんでもない東電再建計画なのです。東電を破産処理し、東電と国のフクシマ事故の責任を明らかにすることこそが、国民負担の最も少ない、最も公正な対処法ではないでしょうか。

経産省交渉で暴かれた「あくどい手口」

私たちは3月15日に経産省交渉をもち、2万2,906筆(累計)の署名を第二次提出し、公開質問状で追及しました。時間切れのため3月24日付けで資料請求していたところ、4月6日に経産省から回答がきました。その結果、新たに次のことが判明したのです。
損害賠償費一般負担金「過去分」2.4兆円の内訳は、新電力0.24兆円、東京電力0.8兆円、大手電力1.4兆円になる。ただし、東京電力と大手電力の間の案分は1966~2010年度の累積設備容量に基づく。
この回答によると、後述の通り、東京電力の実負担額は3.9兆円から3.1兆円に減額され、大手電力の実負担額も3.7兆円から2.3兆円へ大幅減額されることになります。こんな国民だましは許せません!
損害賠償費一般負担金は原子力事業者に負担義務があり、電力消費者に負担義務はありません。
これは経産省も認めたところです。ましてや、その不足分を「過去分」として、商法に違反してまで、託送料金で回収するなどもってのほかです。
電力自由化の下では、一般負担金は過去分を含めて、原子力事業者(電力会社)が経営努力で捻出すべきです。

東芝の経営危機を教訓とし、原発輸出を断念すべき

ウェスチングハウスWH社の経営破綻により、東芝は2016年度決算(2017年3月期)で5,400億円の債務超過に陥りました。
東芝はWH社を切り離して海外原発事業から撤退する一方、優良半導体事業を2兆円超で売却することで「東証上場廃止」を回避し、国内の原子力事業を存続させようとしています。
東芝の経営危機は、安倍政権の進めてきた原発輸出戦略が破綻したことを物語っています。その失策を覆い隠すため、経産省は、産業革新機構と日本政策投資銀行を使って、東芝の原子力事業救済に奔走しています。
しかし、経産省も安倍政権も、東芝の経営危機を招いた、全世界的な原子力事業の深刻で全面的な危機を直視すべきです。
東芝の危機は、2011年フクシマ事故で世界的に波及した原子力先進諸国での原子力産業の危機を反映したものであり、仏アレバの経営危機、仏大手電力エンジーの原子力からの撤退、仏電力公社EDFの英ヒンクリーポイントC計画を巡る動揺となって顕在化し、三菱重工業や日立製作所の原発輸出計画にも深刻な影響を与えています。
東芝WH社の原発(AP1000)建設計画は、建設中の4基(ボーグル3・4号、V.C.サマー2・3号)だけでなく、計画段階の11基も、シェールガス火力への転換(2基)、計画中止(2基+2基?)、延期(2基)、運転開始時期を2030年以降にして様子見(3基)が相次いでいます。
東芝が米国で進めてきたサウステキサス・プロジェクトは炉型がABWRと異なるものの、共同企業が撤退したため、すでに得ていた設計認証更新を2016年に取り下げ、凍結(事実上撤退)しています。
東芝がイギリスで進めていたムーアサイド原発計画(AP1000が3基)も共同出資者(仏エンジー)の撤退と原発と消費地をつなぐ100マイル送電線工事の中止で事実上の撤退を余儀なくされています。
仏エンジーはムーアサイド原発計画から撤退するだけでなく、トルコのシノップ原発計画からも撤退するようです。
というのも、エンジー自身が2015年12月期に巨額赤字を出し、2008年以来の会長兼CEOが辞任、2016年5月に就任した新CEOが2018年までに150億ユーロ(1.85兆円)の資産売却と事業の軸足を再生可能エネに移すと表明しているからです。
欧州加圧水型炉EPRの2基建設工事で巨額の損失を出して経営危機に陥った仏アレバの再建計画も難航し、仏電力EDFによるアレバへの51%出資は国によるEDFへの30億ユーロ増資で何とかこぎ着けた状態で、これを契機に三菱重工業が約700億円の出資に踏み切ったのですが泥沼へ踏み込んだ感は免れません。
というのも、アレバ再建の一つの柱とされる英ヒンクリーポイントC計画(EPR2基)には、EDF取締役会でCFO等幹部が2016年に反対して辞任、10対7の僅差で決まったにすぎません。英政府が35年間、現行電気料金の2倍の約13円/kWhで購入するという契約も英国民がいつまで我慢できるか分かりません。
日立の英ウィルファ・ニューウィッド計画(ABWR、4~6基)では、英政府による電力買取価格が大幅に引き下げられる方針で、原発計画の申請や企業間協力体制は進んでいますが、肝心の共同出資者が全く現われず、「着工に向けた一歩」を進めない状態です。
これには、太陽光発電、風力、バイオマス等の再生可能エネルギ-の急速な普及が関係しています。
それは欧州で電力価格を劇的に引き下げ、米国では安価なシェールガス発電も競争に加わって、新規原発の価格競争力を奪い、ベトナム、トルコ、インドなどでも原発輸入計画が撤回、頓挫、棚上げに追い込んでいるのです。
ベトナムでは、4基の建設費が当初の約100億ドル(約1.15兆円)から約270億ドル(約3.1兆円)へ3倍近くに急騰、白紙撤回されました。
トルコでも、シノップ原発計画総事業費が三菱重工業とアレバ共同開発の「アトメア1」4基で約220億ドル(約2兆1700億円)と見込まれる一方、現在進行中の事業化可能性調査で国内の安い電気料金では原発建設は、採算ベースに乗らないとして撤退機運が広がっています。共同出資者の伊藤忠商事や仏エンジーが撤退を検討しており、計画が漂流し始めています。
インドでは、WH社が印原発公社とAP1000の6基新設計画を交渉中ですが、WHの破産申請と東芝の海外事業撤退方針で頓挫しています。
そのような中、インド政府は2017年5月17日の閣議で70万kW国産PHWRの10基建設計画(7,000億ルピー(約110億ドル))を承認し、インド国内原子力産業の再編を促す方針を明らかにしました。
これは2012~17年の第12次5カ年計画に含まれていたものですが、同計画にあるロシアAES-92や仏EPR等の原発輸入計画には一切触れず、今後のAP1000やEPR等の原発輸入についても期待しない方針へ転換したと思われます。
今国会では日印原子力協力協定が参議院で審議中ですが、核拡散を助長するものであり、「核実験即破棄」にならない協定は批准せず、破棄すべきです。
「協定批准でインドに原発輸出を!」という戦略も破綻しており、批准する意味もありません。
安倍政権は、原発輸出をアベノミクスの一つの柱にし、首相自ら原発受注に奔走してきましたが、東芝の経営破綻で原発輸出戦略が幻想にすぎなかったことが一挙に明らかにされたのです。
これ以上、原発重大事故の危険に加えて、経済的破綻というリスクも高い原発輸出からは即刻撤回すべきです。
今年は「エネルギー基本計画」を改定する年に当たります。
2030年に「原子力22~20%」という目標を破棄し、脱原発目標を掲げるべきです。
再生可能エネルギーも「22~24%」の目標に留めるのではなく、少なくとも40%程度、将来的には100%を目指すべきです。
そのため、欧米を見習って、原発全基再稼働を前提とした「接続可能量」を撤廃し、再生可能エネルギーの優先接続、優先給電を実現すべきです。

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