原子力規制委員会による「敦賀2号原子炉建屋直下の活断層」に関する判断を受け、若狭ネットは6月19日、日本原電に公開質問状を提出しました。2週間以内の文書回答と、それに関する口頭説明を求めています。
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2013年6月19日
日本原子力発電株式会社 社長 濱田康男 様
浦底断層と敦賀2号原子炉直下の破砕帯に関する公開質問状
若狭連帯行動ネットワーク
原子力規制委員会は5月22日、「敦賀2号炉原子炉建屋直下を通るD-1破砕帯は、後期更新世以降の活動が否定できないものであり、耐震指針における『耐震設計上考慮する活断層』であると考える。」との有識者会合報告書を了承しました。その根拠は、D-1トレンチ内で新たに発見された「K断層は後期更新世以降の活動が否定できず、耐震指針における『耐震設計上考慮する活断層』であり、D-1破砕帯と一連の構造である可能性が高い」というものです。この判断は、日本原子力発電からのデータを含め、これまでに得られた客観的なデータに基づくものであり、多くの学会から推薦された有識者による判断を了承したものであり、妥当だと私たちは考えます。原子力規制委員会は、この判断を覆すような客観的なデータを日本原子力発電が提示してきたときには再検討する余地を残しており、この点でも議論の進め方は妥当だと考えます。
ところが、貴職は、この判断に異を唱え、5月15日には有識者会合の委員個人宛に「厳重抗議」なる文書を提出し、恫喝まがいの政治的圧力をかけています。また、5月17日には原子力規制委員会の各委員に対して結論の先送りを要請しています。しかし、それが受け入れられず、5月22日の原子力規制委員会で有識者会合報告書が了承されるや、直ちに「規制権限を行使する規制当局として、誠に不適切であり、当社として断じて受け入れることはできない。」とのコメントを一方的に出し、同日付けで公開質問状を原子力委員会へ提出しています。かつての原子力ムラによる原子力規制への介入を想起させる対応です。
原子力規制委員会の判断は上記のように明確であり、それを覆すには、日本原子力発電自らが「追加調査等によって“後期更新世以降の活動を否定する”客観的なデータを揃えること等が必要である。」ということに尽きます。この点では、日本原子力発電が原子力規制委員会に提示したこれまでのデータでは“後期更新世以降の活動を否定する”根拠となり得ないということであり、今後、そのようなデータを提出すれば「見直すこともあり得る」とされているのです。かつて原子力ムラが行った原子力規制に介入するかのような「政治的圧力がけ」を行うのではなく、6月末までに粛々と新たな知見となる客観的なデータを収集し、原子力規制委員会に提出すればすむのではないでしょうか。原子力規制委員会は、これまでの反省から、原子力を推進する政府や電力会社等による圧力を排除するために三条委員会(上級機関からの指揮監督を受けず、独立して権限を行使することが保障されている合議制の機関)として成立した経緯があります。くれぐれもその経緯を忘れることのないように期待します。
また、6月末までの調査で新たな知見が得られず、または、原子力規制委員会が“後期更新世以降の活動を否定する”客観的なデータだと認めるようなものでなければ、潔く、結論を受け入れるべきだと私たちは考えます。万が一、これ以上の「追加調査」で廃炉の結論を先送りするようなことがあれば、関西・北陸・中部の電力消費者が黙ってはいないでしょう。私たち電力消費者が「(敦賀原発からの)受電なき電力購入費(関西・中部・北陸電力管内で約900億円)」を支払い続けさせられることになるのですから。そのような無駄な電気料金をこれ以上私たちに支払わせることのないよう、一日も早く廃炉にすることを強く求めます。
その上で、浦底断層と敷地内破砕帯の調査について公開質問状を提出しますので、2週間以内に文書にて回答の上、納得できる説明をして頂きたく、強く要請したします。
1.日本原子力発電は、2004年3月に敦賀3・4号増設を申請した際、浦底断層を活断層とは見なしていませんでした。耐震設計審査指針が2006年9月に改定され、耐震バックチェックを指示されたため、2008年3月の報告書でやっと浦底断層が「最新の活動時期が4000年前以降の活断層」だと認めたのです。
愛媛新聞(2013年5月26日)によれば、学術界では1980年頃には浦底断層は活断層として認識されるようになり、1991年には「浦底断層」という名称もついて存在が確実視されるようになったとのことです。ところが、日本原子力発電は活断層であることを認めず、審査段階でボーリング調査の結果が「意図的な解釈」だと問題にされ、2005年に原子力安全・保安院から試掘溝調査を指示され、「活発に動いている第1級の活断層」だと判明したとのことです。この審査段階で問題にされたボーリング調査の解釈は「専門家がやったとすれば犯罪に当たる」と言われるほどの判断だったようですが、それに間違いはありませんか。
日本原子力発電が浦底断層を活断層だと認めるに至った経緯を具体的に説明してください。また、なぜ活断層だと自主的に判断できなかったのか、その理由について自社内で当然分析していると思いますが、その理由を説明してください。また、二度と同じ過ちを繰り返さないためにどのような措置をとったのか、説明してください。
2.浦底断層を活断層だと認めた2008年3月の報告書で、日本原子力発電は、敷地内破砕帯について「後期更新世以降の活動がない」と主張していました。これについても、2010年9月の原子力安全・保安院審議会で「浦底断層が至近距離にあるため、変位等についてさらに検討が必要」と指摘され、東日本大震災発生後の2011年11月には原子力安全・保安院から破砕帯の活動性評価を指示されていました。2012年4月の審議会でも「現時点では敷地内破砕帯が活断層である可能性を否定できない」と指摘されていたにもかかわらず、それを否定するデータを1年以上も提示できないできたのです。ボーリング調査結果の意図的な解釈によって浦底断層を活断層ではないと見誤っていたことの反省が、敷地内破砕帯調査において、どのように生かされたのか、生かす努力をどのように行ったのか、具体的に説明してください。
3.今年5月の時点で、有識者会合がまとめに入るとみるや、日本原子力発電は急に「敷地内破砕帯に関する今後の追加調査計画」を打ち出し、6月末に報告書を出すので、待ってほしいと引き延ばしにかかりました。それまでにたっぷりと時間があったにもかかわらず、また、敦賀原発はほとんど稼働しておらず余裕があったにもかかわらず、なぜ、5月までにデータを揃えることができなかったのか、その理由を説明してください。
4.原子力規制委員会有識者会合の個人宛に送った「厳重抗議」なる5月15日付文書は不穏当であり、不適切です。公に謝罪し、撤回すべきだと私たちは考えますが、いかがですか。
5.現時点で敦賀原発が廃炉になるとした場合、原子力施設解体引当金総見積額不足分(2012年度末)は敦賀2号で237億円、敦賀1号で38億円、東海第二で137億円、合計414億円になり、原発・核燃料資産簿価を特別損失計上した場合には、982億円の債務超過になり、日本原子力発電は破産することになります。その際には、浦底断層が活断層であることを意図的に隠してきた経営責任が問われることになりますが、一体どのように対処するつもりですか。また、敦賀原発の使用済核燃料について、その貯蔵・処理処分問題についてどのように対処するつもりですか。
以上
添付:愛媛新聞(2013年5月26日) http://www.47news.jp/47topics/e/242117.php