「直下に活断層があっても即廃炉ではなく工学的判断を!」??
日本原子力発電の敦賀2号直下の破砕帯を活断層だと原子力規制委員会が判断したのを受け、原子力発電に反対する福井県民会議、若狭連帯行動ネットワーク、サヨナラ原発福井ネットワークの3者で7月25日、福井県知事に申し入れを行いました。
この問題を巡っては、福井県や敦賀市の首長や議会関係者らが一斉に原子力規制委員会の「活断層判断」に異論を唱え、エネルギー政策など総合的観点からの「判断」を求め、政府に原子力規制委員会への介入さえ求める始末でした。フクシマ事故を顧みない余りにも露骨な原子力ムラの巻き返しに反撃するため、3者で福井県知事に申し入れたのです。
私たちは代表8名で臨み、福井県側は安全環境部の岩永幹夫企画幹と野路参事が出席し、主に岩永企画幹が回答しました。
岩永企画幹は当初、「我々は委員会の判断に異論があるということではなく、事業者と規制委員会が十分な時間をかけて徹底的に議論していないのではないかということを申し上げている。」「結論をこっち側に、あっち側にというわけではない。」とごまかしていました。そこで、私たちは、「敦賀2号炉の直下に活断層があれば認められないということですよね」と念を押すと、「新しく建てる場合には露頭を避けてつくればいいが、今あるものについては直下に露頭があるからダメというのは極端で、もっと工学的議論があってしかるべきだ。」と適用除外を求める始末でした。私たちは「露頭の上に原発があると地震動だけでなく地盤のずれや変形が問題になるから工学的に安全性を評価できるような対象ではない。そういう工学的判断から露頭の上に原発があってはならないという基準になっている。」「県の姿勢は県民の安全を守る立場ではないのか。」と追及しましたが、見解を変えませんでした。
使用済核燃料については、「発電所があるということで原子力発電は引き受けているが、使用済核燃料を県内に長く留めておくことを認めているわけではない。使用済核燃料が県内にあるということは将来にわたってもいろいろな問題がある。」とうっかり認めました。そこで、「どういう問題か」と問いただしたところ、「県外に搬出して再処理するというのが基本であり、問題があるわけではない。原発では使用済核燃料を一時的に貯蔵しておく設備なので、中間貯蔵するのなら別のところでやるべきだ。」とごまかしました。私たちは「使用済核燃料をどうするか、その行き先がはっきりしない限り、原発の運転を認めないと言うのが筋だ。」と追及すると、「立地県としては原発があるのでその安全を考えている。使用済核燃料を再処理するかどうかは国策として議論すべき」と逃げました。無責任な再稼働を認めることはできません。
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2013年7月25日
福井県知事 西川一誠 様
敦賀2号原子炉直下の破砕帯評価等に関する申入れ
原子力発電に反対する福井県民会議
若狭連帯行動ネットワーク
サヨナラ原発福井ネットワーク
原子力規制委員会は5月22日、「敦賀2号炉原子炉建屋直下を通るD-1破砕帯は、後期更新世以降の活動が否定できないものであり、耐震指針における『耐震設計上考慮する活断層』であると考える。」との有識者会合報告書を了承しました。その根拠は、D-1トレンチ内で新たに発見された「K断層は後期更新世以降の活動が否定できず、耐震指針における『耐震設計上考慮する活断層』であり、D-1破砕帯と一連の構造である可能性が高い」というものです。この判断は、日本原子力発電からのデータを含め、これまでに得られた客観的なデータに基づくものであり、多くの学会から推薦された有識者による判断を了承したものであり、妥当だと私たちは考えます。原子力規制委員会は、この判断を覆すような客観的なデータを日本原子力発電が提示してきたときには再検討する余地を残しており、この点でも議論の進め方は妥当だと考えます。
ところが、貴職は、この判断に異を唱え、6月10日には菅官房長官と面会し、「事業者が6月末まで調査を継続するとしている中、なぜ結論を急ぐのか理由が不明」と前置きした上で日本政府への要請書を提出し、「原発の活断層調査・評価は政府自らが前面に立ち、広く国民の理解と納得が得られる公平公正な結論を導き出すこと」、「規制委の活動が独善、孤立に陥らないよう、委員会の組織の健全性や信頼性を評価し改善を勧告できる『評価機関』を新設すること」、「敦賀2号機の使用済み燃料を県外に撤去すること」を求め、「国民の理解が得られる結論を導き出すためには、過去に安全審査にかかわった専門家や、内閣府の南海トラフ地震研究の専門家などの幅広い知見を結集することが必要だ」と話したと報じられています(6月11日付福井新聞)。
しかし、私たちは知っています。
日本原子力発電は、2004年3月に敦賀3・4号増設を申請した際、浦底断層を活断層とは見なしていませんでした。耐震設計審査指針が2006年9月に改定され、耐震バックチェックを指示されたため、2008年3月の報告書でやっと浦底断層が「最新の活動時期が4000年前以降の活断層」だと認めたのです。このときなお敷地内破砕帯は「後期更新世以降の活動がない」と主張していました。これについても、2010年9月の原子力安全・保安院審議会で「浦底断層が至近距離にあるため、変位等についてさらに検討が必要」と指摘され、東日本大震災発生後の2011年11月には原子力安全・保安院から破砕帯の活動性評価を指示されていたのです。2012年4月の審議会でも「現時点では敷地内破砕帯が活断層である可能性を否定できない」と指摘されていたにもかかわらず、それを否定するデータを1年以上も提示できないできたのです。ところが、有識者会合がまとめに入るとみるや、日本原子力発電は5月になって急に「敷地内破砕帯に関する今後の追加調査計画」を打ち出し、6月末に報告書を出すので、それを待って判断してほしいと引き延ばしにかかったのです。
私たちは、今日に至る経過をすべて知っています。貴職はどのような事実をもって、日本原子力発電には非がなく、原子力規制委員会や有識者会合に非があると仰るのでしょうか。また、貴職もご存じのように、原子力規制委員会は、これまでの反省から、原子力を推進する政府の圧力を排除するために三条委員会(上級機関からの指揮監督を受けず、独立して権限を行使することが保障されている合議制の機関)として成立した経緯があります。にもかかわらず、政府に原子力規制委員会への介入を要請するというのはいかがなものでしょうか。
私たちは、東日本大震災で福島第一原発重大事故が起きたことを真摯に受け止めています。
福井県で原発重大事故が起これば、嶺南地域が居住不能になるばかりか、近隣府県・市町村も放射能災害に見舞われます。琵琶湖が汚染されれば、関西一円が飲料水を失い、数百万人以上が生活の場を失います。原発の再稼働に際しては、これまでとは異なる判断基準が不可欠です。立地市町村や福井県の経済的利害を優先させるようなことがあってはならないと、私たちは考えます。福島県は福島第一原発重大事故を真摯に受け止め、「県内全原発の廃炉」を求め、新生プランを実行しつつあります。私たちは、原発立地県として、福島県の経験に学び、それに寄り添いながら、共に手を携えて、これからの「原子力政策のあり方」について考えるべきだと考えます。
敦賀2号にとどまらず、県内には運転開始から40年を超える原発がすでに2基、5年以内に5基へ増えます。原発をこれ以上増やすことはもはや許されませんし、県内のすべての原発が廃炉になる日もそう遠くないことでしょう。であればこそ、それを見越して、「原発なき福井県のあり方」を県民を挙げて検討し、近隣府県・市町村・市民とも協力しあっていくことが求められているのではないでしょうか。それには、関西都市部と福井県の間でいたずらに対立関係をあおるような主張は控えるべきだと私たちは考えます。
使用済核燃料や再処理工場から出る高レベルガラス固化体だけでなく、運転時は元より廃炉に伴って発生する膨大な量の放射性廃棄物の貯蔵保管問題は、福井県だけでは解決できませんし、互いに押しつけあうことでは解決できません。日本学術会議が2012年9月の提言で述べているように、日本国内には高レベル放射性廃棄物を万年単位で安定して処分できる地層など存在しない可能性が高いのです。「原発の運転は容認しても、使用済核燃料の貯蔵まで認めたわけではない」とか、「運転しないのなら使用済核燃料を県外へ持ち出せ」とかの暴論は、「運転を容認しなければ使用済核燃料は生じなかったはずだ」と反論されれば、返す言葉もないでしょう。使用済核燃料の問題を本当に真剣に考えているのであれば、それを解決しないまま原発の運転再開を認めることなど論外だからです。貴職は自縄自縛に陥っているのではないでしょうか。
敦賀2号直下の活断層問題を契機として、東日本大震災を踏まえ、原発廃炉時代の福井県を目前にして、以下のことを申し入れます。
一.敦賀2号原子炉建屋直下の破砕帯に関する原子力規制委員会の判断に異論があると仰るのであれば、その内容について科学的根拠とともに具体的に提示してください。原子力ムラがかつて行ってきた「安全規制への介入」、すなわち、敦賀2号を運転再開させるため原子力規制委員会に政治的圧力をかけるような行為は今後慎んで下さい。また、日本原子力発電が長期にわたって浦底断層を活断層ではないと主張し続けてきたこと、敷地内破砕帯に活断層の疑いがあると早くから指摘されながら調査をサボタージュしてきたことについて、貴職は問題なしと考えているのでしょうか。貴職の見解を示して下さい。
一.県内原発の廃炉を目前に控え、東日本大震災を教訓として、福島県に学び、その新生努力に寄り添い、廃炉後の福井県の再生プランを作成するための県民プロジェクトを立ち上げてください。福島第一原発重大事故のような炉心溶融事故が福井県で絶対に起こらないという保証がない限り、県内原発の運転再開を認めないで下さい。周辺自治体の声も聴き、尊重してください。事故が起これば、放射能災害は県内にとどまらず、県民プロジェクトも無に帰してしまうのですから。また、現状では行き場のない使用済核燃料の問題を国民的議論を通じて解決できない限り、運転再開を認めないで下さい。そうでなければ、使用済核燃料が福井県内に溢れることになりかねないのですから。
以上