福島事故関連費など8.6兆円の託送料金への転嫁反対署名にかかる6.28第2回経産省交渉の報告
機構法改定は「切迫する破産」からの東電救済策だった!
8.6兆円を託送料金で回収する仕組みの作成が難航!
3.3万の反対署名を拡大し、経産省令案を葬り去ろう!
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(「経産省交渉報告のまとめと交渉記録」のpdfはこちら)
( 「経産省への緊急申し入れ」のpdfはこちら)
(2017年10月末締切の新しい署名用紙はこちら,Word版はこちら)
呼びかけ:若狭連帯行動ネットワーク(事務局)、双葉地方原発反対同盟、原発の危険性を考える宝塚の会、日本消費 者連盟関西グループ、関西よつ葉連絡会、安全な食べものネットワーク オルター、サヨナラ原発福井ネットワーク、福井 から原発を止める裁判の会、吹夢キャンプ実行委員会、福島の子供たちを守ろう関西、さよなら原発神戸アクション、 さよならウラン連絡会、おかとん原発いらん宣言2011、原発ゼロ上牧行動、STOP原子力★関電包囲行動、とめよう原発!!関西ネットワーク、さよなら原発なら県ネット、地球救出アクション97、ヒバク反対キャンペーン、さよなら原発箕面市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、環境フォーラム市民の会(豊中)、科学技術問題研究会、さかいユニオン、大阪自主労働組合、社民党福島県連合、フクシマ原発労働者相談センター、日本消費者連盟、原子力資料情報室
今なら、経産省令改定を阻止できる!
フクシマ事故損害賠償費の一般負担金「過去分」2.4兆円、福島原発廃炉費追加分6兆円、廃炉会計に関するコスト0.2兆円、合計8.6兆円を電気の「託送料金」に転嫁しようとする経産省に対し、私たちは6月28日、反対署名1万426筆を第三次提出しました。累計3万3,328筆に達した反対署名を背に経産省を徹底追及しました。今回は、3月の第1回交渉と資料請求の結果を踏まえ、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下「機構法」)改定案の5月10日国会可決を受け、焦点を絞って追及しました。(映像はこちら https://www.youtube.com/watch?v=8yw_chGH5wA)
経産省資源エネルギー庁電力・ガス事業部からは、政策課電力産業・市場室の室長補佐、電力市場整備室の室長補佐と原子力政策課の法令制度一係長の3名が出席し、市民側は19名で臨みました。
託送料金で回収する仕組みを検討中・・・?
今回の交渉では驚くべき事実が判明しました。
8.6兆円を託送料金で回収することは決めたものの、それをどのように託送料金にのせて回収するのか、その仕組みがまだ決まっておらず、現在、経産省内で検討中であり、今後、具体的な制度について電力・ガス取引監視等委員会などの委員会で検討するかも知れず、検討結果をいつ出せるのか、そのメドも立たず、経産省令(案)をパブコメにかける時期も未定だというのです。つまり、経産省は、簡単に結論を出せない、何らかの矛盾に満ちた重大な課題を抱え込んでいて、廃炉会計制度を導入したときのように「スイスイと経産省令改定案を作ってパブコメにかけて終わり」というわけには行かない、極めて困難な事態に直面しているのです。
今、徹底して闘えば、8.6兆円の託送料金への転嫁を阻止できる!その兆しが、今回の経産省回答のほころびから、垣間見えてきたと言えます。3.3万筆に達した反対署名をさらに広げ、託送料金による8.6兆円の回収の仕組みの矛盾を徹底的に追及し、経産省をさらに追い込めば、阻止できる展望が開けてきたと言えるのです。
では、経産省はどのような矛盾を抱えているのでしょうか。交渉を通して垣間見えたのは次の点です。
一般負担金「過去分」の「回収」と「納付」の矛盾
第1に、損害賠償費一般負担金「過去分」2.4兆円は、電力会社の送配電事業者が各電力管内の販売電力量に比例して託送料金で回収するのですが、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が各原子力事業者(電力会社等)へ割り当てる一般負担金「過去分」の納付金額は電力会社の原発容量などに基づいて決められます。託送料金単価を一律に設定すると、両者に食い違いが生じます。そのため、エリア毎に「過去分」相当の託送料金単価を変える必要が出てきます。また、「電気の託送」が複数のエリアをまたぐ場合には、食い違う「過去分」相当の託送料金単価を調整しなければなりません。通常の託送料金コス
トでは生じない問題点です。
廃炉費6兆円を回収する託送料金ルールの矛盾
第2に、福島廃炉費6兆円を東電管内の託送料金を高止まりにして回収するとして、どのレベルに高止まりにするのかが難しく、そのルール作りを間違うと、6兆円を回収できなくなります。今は超過利潤が一定の金額に達した場合や託送料金コストが5%以上削減できた場合には託送料金を下げるというルールになっていますが、単に金額や%の値を変えるだけでは対応できず、託送料金が高くなりすぎると、電力消費者へコスト削減分を還元する方針にも反することになります。おまけに、私たちが今回強調した2020年以降の送配電網更新問題(更新投資を今の5倍以上に増やさねばならない)を考慮すると、託送料金の上昇が避けられず、託送料金を低く抑えたままで廃炉費6兆円を回収するのは極めて困難だと言えます。この6兆円という金額も今夏のデブリ取り出し方針によって変わる可能性もあり、放射性廃棄物処分費を入れると何倍にも膨れあがるのは目に見えており、託送料金で回収する仕組みだけでは、早晩破綻するのは明らかです。
電力・ガス取引監視等委員会で要検討?
経産省は、省内だけの議論では済まず、今回の交渉では、「電力・ガス取引監視等委員会」が「8.6兆円の託送料金による回収状況の妥当性」をチェックする方針であることを認め、この電力・ガス取引監視等委員会で今後「適切な託送料金設定」の仕組みについて議論する必要性があることにも言及しました。実は、この電力・ガス取引監視等委員会ではこれまで、送配電網の新設・拡充・更新等に関するコストについては検討してきたものの、原発関連コスト8.6兆円が託送料金で回収されることについては一切検討できませんでした。原発関連コストの託送料金による回収はもっぱら、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」や「東京電力改革・1F問題委員会」で議論され、「電力・ガス取引監視等委員会」はこの問題の検討から外されていたのです。にもかかわらず、ここに来ていきなり、「8.6兆円の託送料金による回収」を前提にして、その「仕組み」だけを議論しろというのです。普通なら、「バカにするな!自分たちで最後まで責任を持て!」と言いたいところです。経産省お抱えの委員たちはすんなり応じるのでしょうか。だとしても、今の5倍以上の増額を余儀なくされる送配電網更新費を賄いながら、6兆円からさらに膨れあがろうとする福島原発廃炉費を捻出できる「適切な託送料金設定」法などあり得ず、議論が紛糾するのは必至です。形だけの料金設定では早晩、矛盾が顕在化せざるを得ないでしょう。
こんな姑息なやり方をやめ、「東電を破産処理せず、国民負担で東電を救済するために、託送料金で福島原発廃炉費等8.6兆円を回収する」という基本方針の妥当性をこそ議論すべきです。
機構法改定は東電救済のためだった!
ここまで来ると、あんなに急いだ「機構法」改定は一体何だったんだということになります。
「8.6兆円の託送料金への転嫁」を検討していた「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」が昨年12月16日に「中間とりまとめ」の案を出し、12月19日から1か月間のパブリックコメントを開始しましたが、その結果を待つことなく、「東電救済策」を検討していた「東京電力改革・1F問題委員会」が12月20日に「東電改革提言」を出し、安倍政権が同日、それを踏まえた「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」を閣議決定し、2日後の12月22日には、これを踏まえた「2017年度予算案」を閣議決定して国会へ提出、今年(2017年)2月7日には機構法(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)の一部改定案を衆議院へ提出したのです。これらがすべて済んだ後で、今年(2017年)2月9日に「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」がパブコメ結果を踏まえて「中間とりまとめ」を確定させたのです。「国民負担を強いる東電救済策」の案に対するパブコメを行いながら、それが全く形だけだったことはこれらの経緯が如実に示しています。
機構法改定案は与党・民進党・日本維新の会の賛成で参議院でも5月10日に可決・成立しましたが、その翌日に東京電力の「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」が政府へ申請され、1週間後の5月18日に認可されています。フタを開けてみれば、すべてが出来レースだったのです。機構法は、東京電力が機構(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)の中に福島原発の「廃炉等積立金」を積立てることを義務づけたものですが、その原資は「託送料金による回収の仕組み」によって担保されることになっています。この仕組みを前提にして東電救済策=第三次総合特別事業計画が成り立つのであり、機構法が国会で可決されない限り、東電はそれを申請できず、政府もこれを受理し認可することもできなかったのです。つまり、東電は「巨額の損害・賠償費を認識した途端に債務超過に陥って破産する」危機にあったのです。東電を破産させず、国民に新たな負担を強いて東電を救済するため、昨年12月から極めて強引に「8.6兆円の託送料金への転嫁」政策が推し進められてきたのです。
それが、ここに来て、その具体化の段階で本質的な矛盾を抱え、止まっています。今なら、阻止できます。機構法は「東電に廃炉費6兆円の積立を義務づけた」だけであり、「8.6兆円を託送料金で回収する仕組み」が具体化されなければ、東電は破産を余儀なくされます。しかも、この「仕組み」には重大な矛盾があり、それを突いていけば、この東電救済策を破綻に追い込むことができます。3.3万筆に達した反対署名をさらに拡大し、経産省を追い詰め、「託送料金による東電救済策」を撤回させましょう。
今回の交渉では、8.6兆円を託送料金で回収する仕組みによって、東京電力と大手電力(東電以外の電力会社)の損害賠償費の負担が大きく減少し、電力消費者の負担が大きく増えることが判明しました。左図のように、東京電力は損害賠償費の負担金が2.7兆円から3.9兆円へ1.4倍強になるべきところ、1.1倍強の3.1兆円に留まったのです。大手電力では、2.7兆円から3.7兆円へ37%増のところ、15%減の2.3兆円に減額されたのです。増額すると見せかけて、実は微増ないし減額にする — こんな理不尽なことは許せません。
福島原発廃炉費6兆円も左下図のように東電が全額負担すると見せかけて、実は、託送料金高止まりで全額を東電管内の電力消費者へ転嫁しようというのです。廃炉費が6兆円からさらに増えれば、東電管内から他電力管内へも広げられるのは必至です。何しろ、東電と他電力との送配電網の共同事業体の結成が目論まれているのですから — こんな理不尽なことは許せません。
8.6兆円を託送料金で回収する仕組みの中には廃炉原発6基分の廃炉費積立不足金等0.2兆円を新電力からも回収する仕組みが組み込まれています。金額は小さく目立ちませんが、それは廃炉になった原発が6基に限られているからです。後ろには建設中の3基を除く42基が控えています。もし、この42基が今廃炉になると、廃炉費積立不足金1.2兆円と未償却資産2.5兆円の計3.7兆円(2015年度末)が追加されます。昨年6月に見積もられた再稼働のための対策工事費3.3兆円がこれに加わり、総計7兆円が新電力を含めて託送料金から回収されることになります。もちろん、この金額は42基がいつ廃炉になるのかによりますが、いつ廃炉になっても、電力会社は電力自由化の下で競争上不利にならず、託送料金で確実に回収できるため、電力会社は原発再稼働を目指し、「安心」して1基約1,000億円もの巨額の工事費を投じられるのです — こんな理不尽なことは許せません。
原発廃炉に伴うコスト減少分を還元しない電力
今回の経産省交渉では、署名提出時に「関西電力による電気料金値下げ申請(7月見込)に係る緊急申し入れ」を若狭ネットで行いました。というのも、美浜1・2号の廃炉会計に関するコスト603億円を新電力を含めた電力消費者から託送料金で回収する一方、美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分約500億円/年を精査して電力消費者に還元すべきところ、未だに実施せず、2015年度から2年分で1,000億円を猫ばばしたまま、新電力と対抗するため、7月にも関西電力の規制料金契約者の電気料金を値下げしようとしているからです。その原資には美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分も含まれているはずです。 — こんな理不尽なことは許せません。
敦賀1号の廃炉に伴うコスト減少分は購入電力料の減少分から少なくとも約200億円と公表されていますが、美浜1・2号の精査結果は公表されていません。同様のことは、廃炉になった島根1号、伊方1号、玄海1号でも起きているはずです。廃炉に伴うコスト減少分を電力消費者に還元せず、廃炉会計に係るコストについては新電力からも託送料金で回収する — こんな理不尽なことは許せません。
原点に立ち返って、フクシマ事故対策を見直せ
福島事故関連費等8.6兆円を託送料金で回収する政策は、具体化の段階でさまざまな矛盾に直面し、理不尽極まりない姿が露わになっています。これは見過ごせません。7月2日の東京都議選でも、安倍政権の開き直った横暴に国民の批判が噴出しました。これ以上の理不尽を許してはなりません。
原点に立ち返って、東京電力と国にフクシマ事故の責任をとらせ、東電を破産処理し、株主や金融機関に債権放棄させて9兆円程度を捻出し、不足分は累進課税で対応すべきです。原発推進策を抜本的に転換し、エネルギー基本計画を根本から見直し、再生可能エネルギーの全面推進へ舵を切り替えるべきです。原発再稼働阻止、再生可能エネルギー推進の運動と連携し、8.6兆円の託送料金への転嫁反対運動を拡大しましょう。3.3万筆に達した反対署名の一層の拡大にご協力下さい。今なら経産省令改定を阻止できます。矛盾が顕在化した今だからこそ、反対署名を拡大しましょう!何としても、理不尽極まりない、この政策を皆の力で阻止しましょう!
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2017年6月28日
経済産業大臣世耕弘成様
関西電力による電気料金値下げ申請(7月見込)に係る緊急申し入れ
若狭連帯行動ネットワーク
6月20日の報道によれば、関西電力は、高浜3号が7月4日に営業運転入りした後、規制料金契約者の電気料金値下げを届け出て、8月1日から値下げしようとしています。ところが、関西電力は、2015年6月1日の電気料金値上げ実施条件の一つであった「敦賀1号、美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分の精査と消費者への還元」を未だに行っていません。
貴省は2015年5月15日付査定方針の中で、「廃炉に伴う費用の減少額(96億円程度)について、新たな料金に反映する。」と指示していますが、「96億円」は2015年4月21日段階の試算値にすぎません。そこでは、「敦賀1号の廃炉に伴うコスト減少分」が84億円と試算されているのに対し、「美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分」についてはわずか34億円としか試算されておらず、「※金額については、現在精査中」とされていました。関西電力は、今後「精査」の上、「お客さまの電気料金のご負担の軽減を図るべく、活用してまいりたい」と約束しましたが、未だに精査結果が公表されず、消費者への還元も行われていません。
また、貴省は、同査定方針の中で、「認可が行われた場合には、消費者をはじめとする関係する方々全てに対し、丁寧な周知・説明を求める。」と指示していますが、私たちの提出した公開質問状(別紙参照)には全く回答しようとしていません。
美浜1・2号の合計出力が敦賀1号の約2.6倍であることや美浜1・2号の年間維持管理費から見積もっても、「美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分」は約500億円程度にはなると推測されます。敦賀1号分と合わせて600億円弱が毎年浮いてくるはずですが、2015年6月1日の値上げ以降、「廃炉に伴うコスト減少分」の精査結果は未だに公表されず、精査結果の電力消費者への還元も一切なされていません。
電気料金審査専門小委員会による「関西電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針案の概要」(2015.4.21)には「関西電力からはこれらの費用の減少分を電気料金負担の軽減に活用するとの説明がなされましたが、関西電力においてはその額及び算定の根拠を明らかにした上で、費用の減少分については、その全額を電気料金の負担の軽減に活用することを求める。また、次回の料金改定に際しては、廃炉に伴う費用の減少分が原価に織り込まれていないことを厳格に確認するべきである。」と明記されています。
関西電力は、「美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分」の精査・還元を行わず、規制料金契約者の電気料金を値下げして新電力に対抗する一方で、「美浜1・2号の廃炉時に損失計上すべきコスト603億円(廃炉費積立不足金112億円と未償却資産491億円)」を託送料金へ転嫁し、新電力へ契約変更した電力消費者からも回収しようとしています。これは理不尽極まりない行為です。
そこで、貴職に以下のことを申し入れます。真摯にご対応下さるよう、お願い申し上げます。
1.関西電力による7月電気料金値下げ申請に際しては、2015年6月1日値上げ条件の一つであった「敦賀1号および美浜1・2号の廃炉に伴うコスト減少分の精査と消費者への還元」の実施状況について、また、これに関連して「消費者をはじめとする関係する方々全てに対し、丁寧な周知・説明」をどのように行ったのかについて、関西電力から詳細に聴取し、すべてを公開して下さい。
2.関西電力による7月電気料金値下げ申請のコストには「廃炉に伴う費用の減少分が原価に織り込まれていないことを厳格に確認」して下さい。
以上