岸田政権は12月22日、第5回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で「GX実現に向けた基本方針」を決定し、翌23日20時から2023年1月22日深夜までのパブコメを始めました。
原発の「40年で原則廃炉」と「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」が、2023年初めの通常国会で改変(=事実上の撤廃)されようとしています。理不尽な「大転換」を許してはなりません。
大晦日と正月をはさんで1ヶ月間ですので、意見提出がしにくい期間に敢えてぶつけたとしか思えません。この点での怒りも込めて、2023年1月22日深夜締切までに怒りの意見を提出しましょう。
以下は若狭ネット資料室長が本日提出した三つの意見です。参考にしてください。
<政府パブコメへの意見例(その1)>
該当箇所 7ページ18-21行
意見 「40年で原則廃炉」、「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」の改変方針を撤回し、「可能な限り原発依存度を低減する」現行のエネルギー基本計画に沿い、「可能な限り活用」する方針を撤回すべきです。
理由 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、本来、政府や経産省が口出ししたり、行政の都合に合わせて、一方的に、自由に変えられるものではありません。
「GX基本方針」では「既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。」としていますが、これは原子力規制委員会設置法が導入された際の「法の精神」に反します。「運転期間は40年」という条文の趣旨は、40年で原則廃炉という趣旨であり、その延長は例外中の例外であって容認し難いというのが、福島事故を踏まえた国民の意思、それに従い決議した国会の意思であり、条文に込められた法の精神です。それを踏みにじる方針は撤回すべきです。
「GX基本方針」の「既存の原子力発電所を可能な限り活用する」は、その元になった「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針(案)」では「(2)設備利用率の向上 エネルギー供給における『自己決定力』の確保や、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献に資するため、安全性確保を大前提に、運転サイクルの長期化、運転中保全の導入拡大及び定期検査の効率的な実施に取り組む。」(p.8)とされています。これは老朽炉を徹底的に駆使して設備利用率を80~90%へ引き上げ、脱炭素電源の「牽引役」にしようというもので、極めて危険です。現在の13ヶ月運転サイクル(次回定期点検までの連続運転期間)を15~16ヶ月へ伸ばし、18ヶ月さらには24ヶ月へ伸ばし、定期点検期間を2~3ヶ月ないし1年以上の現状から大幅に短縮させようというものです。かつて死傷者11名を出した2004年美浜3号配管破断事故は、このような定検短縮競争の結果であり、その二の舞になりかねません。「可能な限り活用」方針を撤回し「可能な限り低減」方針へ戻るべきです。
<政府パブコメへの意見例(その2)>
該当箇所 7ページ9-14行
意見 原発のリプレースや新・増設は、第六次エネルギー基本計画にも参議院選挙公約にもなく、「想定していない」との閣僚答弁だったにもかかわらず、「まずはリプレース、今後は新増設推進」へ「大転換」しており、撤回すべきです。
理由 2021年10月策定の第六次エネルギー基本計画には、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」とあり、原発のリプレースも新・増設も記載されていません。それから1年も経たないうちに、国民との対話もなく、2022年8月からたった4ヶ月間の、反対・慎重意見の委員が2名程度しかいない「有識者」会議で形式だけの検討をして、一方的に「大転換」しました。これは、エネルギー基本計画にも、参議院選挙公約にも、「想定していない」との一連の閣僚答弁にも違反し、国民の常識にも民主主義にも反します。即刻撤回すべきです。
「GX基本方針」には「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。」とありますが、現在検討中の三菱重工の革新型軽水炉SRZ-1200は「次世代革新炉」とは名ばかりで、既存の第2世代PWRに第3世代APWRの設計を一部取り入れ、第3世代+のコアキャッチャーなどを取って付けただけです。高性能蓄圧タンクはECCSの追加に過ぎず、電源なしの自然循環で動く受動的炉心冷却装置ではありません。にもかかわらず、「次世代革新炉」を標榜するのは国民だましと言えます。しかも、基本設計から詳細設計にほぼ10年、2030年代初めまでかかるというのですから、その性能が実証されたものでないことは明白です。未だ設計すらできていない段階で、「今後10年を見据えた取組みの方針」(p.2)に入れるのは、博打を打つようなものです。
また、「地域の理解確保を大前提に、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」、すなわち、リプレースを先行させ、新・増設についても「その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。」と、忍ばせています。新たに原発が建設されれば、今後40年以上、2060年代以降も危険な原発に依存する状態が続きます。それは、福島事故を顧みず、国民に重大事故のリスクを受忍させ、約2万トンに達する使用済燃料のさらなる積増しに伴うリスクを後世に押しつけ、1基1兆数千億円もの原発建設費の負担を電力消費者に強要することになります。このような原発依存はもうやめるべきです。
<政府パブコメへの意見例(その3)>
該当箇所 5ページ8行目-6ページ11行目
意見 再エネの優先接続・優先給電を実現するため、全国統一の公的送配電機関に電力会社の送配電網管理運営権を移譲させ、電力会社の電力市場支配力を削ぐべきです。長期脱炭素電源オークションのリプレース原発への適用を断念すべきです。
理由 「GX基本方針」にある、再エネを「主力電源として最優先の原則で最大限導入拡大に取り組」むためには、欧米で普遍的に行われている「再エネの優先接続・優先給電」が欠かせません。それを阻害しているのは、電源の8割を独占し、送配電網を独占し、電力市場を支配している電力会社(旧一般電気事業者)です。2020年末からの価格高騰は電力市場支配力行使(自社顧客優先の燃料調達と売り入札量抑制)の結果であり、今日の価格高騰はウクライナ危機以前からの高騰の延長に過ぎません。相対取引をする場合でも、全電源の取引を電力市場で行わせるべきであり、発販分離により、社内取引情報が電力市場で透明化させるべきです。
送配電網は電力会社の市場支配力の源泉となっているばかりか、経常利益の大半はここから出ています。「送配電網を手放せば、原発を建設できない」と、かつての電力会社社長は臆面もなく主張していました。今の電力広域的運営推進機関は電力会社に支配された機関であり、欧州のように、これに代わる全国統一の公的な送配電網管理機関へ管理運営権を移譲させ、基幹送電網の全国規模での整備と投資回収を担わせ、再エネ普及を阻害しかねない2024年度からの発電側課金(発電側基本料金)を断念すべきです。
「GX基本方針」では、その元になった「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針(案)」で示していた「長期脱炭素電源オークション」をリプレース原発へ適用する方針を記載せず、隠していますが、このような姑息なことはやめ、断念すべきです。
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