経産省から資料請求への回答がきました。
以下にその内容とコメントを掲載します。(pdf版はこちら)
若狭ネットで事前に評価していた内容と基本的に同じですが、今回の損害賠償費一般負担金「過去分」が新電力への新たな負担を課し、大手電力と東京電力を優遇するものであること、商法違反の後出し請求による料金徴収であることが、改めて明らかになりました。
こんな理不尽な施策は断じて許せません。
反対署名を一層拡大していきたいと思います。リーフレットを活用して署名拡大にご協力下さい。
2017年4月6日
御指摘事項について
資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力市場整備室
1.一般負担金「過去分」2.4兆円から0.24兆円を除いた部分が東電と大手電力にそれぞれいくら割り振られているのかを示す資料
○御指摘の過去分については、電カシステム改革貫徹のための政策小委員会中聞とりまとめに示されているとおり、1966年度~2010年度までの累積設備容量を基に算出しております。
○その結果、2. 4兆円から0.24兆円を除いた部分について、東京電力分は約0.8兆円、その他大手電力分は約1.4兆円となります。
2.一般負担金「過去分」2.4兆円を託送料金で強制的に全消費者から回収するのは商法違反だと考えられ、電力システム改革貫徹のための政策小委員会財務会計ワーキンググループなど関連審議会でもその指摘がなされているところでるが、上位の法律に違反する上記料金徴収を下位の省令で義務付けることができるという法律ないし法的根拠となる資料。
○託送料金については、電気事業法上、送配電網の維持・管理にかかる費用などに加え、離島の発電費用を含むユニバーサルサービス料金など、「全ての消費者が広く公平に負担すべき費用」を含めることができる制度となっております。
○また、今回の議論は、あくまで今後の託送料金の原価にどのような費用の算入を認めるかというものであり、何らか商法上の問題が生じるとは考えておりません。
(この回答は、福島みずほ社民党参議院議員事務所を通して3月24日に提出した資料請求に対し、再三の督促の結果、ようやく4月6日深夜にFAXで回答されたものです。)
<1への回答に関するコメント>
一般負担金「過去分」2.4兆円は、新電力を10%の0.24兆円とし、残り約2.2兆円を大手電力と東電の販売電力量で割り振るという計算法に間違いはありませんでした。経産省が用いた販売電力量は1966~2010年度の累計ですが、私たちは2015年度の販売電力量を用いています。それは、2020年度から託送料金に一般負担金「過去分」が上乗せされるとすれば、直近の販売電力量を用いるのが適切だと判断したからです。結果的には約0.1兆円の差にすぎませんので、取り立てて問題にするほどではありませんが、下記の通りです。
表1.一般負担金「過去分」の割り振りと損害賠償費不足分の配分額との関係
┌────┬──────┬─────┬───────────────────┐
│ │若狭ネット │ 経産省 │損害賠償費不足分(5.4兆円→7.9兆円) │
│ │による試算 │による試算│に関する経産省資料による配分額 * │
├────┼──────┼─────┼───────────────────┤
│東京電力│ 0.68兆円 │ 0.8兆円 │特別負担金0.67兆円、一般負担金0.53兆円│
├────┼──────┼─────┼───────────────────┤
│大手電力│ 1.5兆円 │ 1.4兆円 │ 一般負担金1.0兆円 │
├────┼──────┼─────┼───────────────────┤
│ 新電力 │ 0.24兆円 │ 0.24兆円 │ 一般負担金「過去分」0.24兆円 │
└────┴──────┴─────┴───────────────────┘
*第6回東京電力改革・1F問題委員会参考資料
損害賠償費が5.4兆円から7.9兆円へ増えたために生じた不足分のうち、大手電力では、負担額1.0兆円に対し一般負担金「過去分」で1.4兆円を回収できるため、0.4兆円(若狭ネット試算では0.5兆円)が減額されることになります。東京電力では、負担額1.2兆円に対し一般負担金「過去分」で0.8兆円を回収できることになり、これは一般負担金配分額0.53兆円を超え、0.3兆円(若狭ネット試算では0.2兆円)が特別負担金の減額に使われることになります。しかし、これは2020年から40年後の2060年になって結果が分かることであり、それまでは実際の販売電力量に対して一律に託送料金で回収されるため、新電力のシェアが10%に満たない当面は、大手電力と東京電力による一般負担金「過去分」の回収率が高くなります。
損害賠償費の一般負担金と特別負担金の実際の金額は、原子力損害賠償・廃炉費等支援機構が毎年末に決定することから、現時点で確実なことは言えませんが、大手電力と東京電力の一般負担金「過去分」の回収額が表1の試算値の割合より多ければ、当面は大手電力と東京電力の負担額をより多く軽減する方向に作用する可能性があります。
今回の資料請求への経産省の回答はそれを裏付けたものと言えます。
<2への回答に関するコメント>
私たちは、一般負担金「過去分」という後出し請求書が商法違反にならないという法的根拠を求めているのですが、それを示せないため、「全ての消費者が広く公平に負担すべき費用」なら商法違反でも許されるという暴論を展開しています。
一般負担金は原子力事業者に負担義務があり、電力消費者にはありませんので、一般負担金「過去分」は原子力事業者と過去に契約していた電力消費者との商取引関係であり、「全ての消費者が広く公平に負担すべき費用」とは言えません。また、過去に完了した商取引のコストを数十年後に請求できるという法的根拠もないということを認めたことになります。
(文責:若狭ネット資料室)
コメントを残す