2021年10月27日14:00~15:15、福井県庁会議室にて、サヨナラ原発福井ネットワークと若狭連帯行動ネットワークによる福井県原子力安全対策課への申し入れ(下記参照:pdfはこちら、交渉資料はこちら)・交渉を行いました。
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県民・住民の原発に対する疑問に答えてください(2021.10.27 福井県庁101会議室)
以下では、その概要と経緯を記します。
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2021年10月27日
福井県知事 杉本達治様
県民・住民の原発に対する疑問に答えてください
サヨナラ原発福井ネットワーク/若狭連帯行動ネットワーク
国のエネルギー基本計画案が示され、現在、パブリックコメントを踏まえた見直しが行われています。この計画案は、菅前首相が打ち出した2050年にCO2排出をゼロにするという方針のもと、今後の再生可能エネルギーと原発のあり方を示すものとして注目されています。しかし、原発に関しては、誰もが実現不可能だと認める目標値=2030年電源構成の「20~22%程度」を掲げる一方で原発の依存を低減させるとしているという矛盾したものです。その矛盾を指摘されていながらも、今回も同じ目標値を掲げているのは、日本政府が原発に関わる問題を解決するつもりがないという表明だと受け止めざるを得ません。したがって、福井県をはじめとする原発立地自治体は、こうした政府方針の矛盾と無責任な姿勢を認識した上で、今後の対応を考えなければなりません。
核燃料サイクル政策の破綻と矛盾が行き場のない使用済み燃料問題を派生させていることは誰の目にも明らかです。私たちは、したがって原発を動かすべきではないと知事に対し繰り返し訴えてきました。今年7月2日に行った公開質問状に対する県の回答は以下の通りでした。
1 質問:関電・美浜3号機の燃料の交換可能年数の計算は関電が主張する9年ではなく、4回(4回×16ヶ月/12ヶ月=5.3年)ではないか。具体的な算定根拠を出させるべきではないか。県民の 安全を守る県の立場上、しっかりと確認する必要があるのではないか
県・原安課回答:関電がそう言っている。関電に説明責任がある。容量は、規制委員会の方で 確認していると考える
2 要請:関電に説明責任があるという県の考えを実行すること。燃料交換の算定根拠など、関電が私たち県民や住民、有識者と対面する「説明の場」を設けることを県が関電に要請すること
以上に集約されます。特に2については、私たちに対する県の回答に沿ったものです。
つきましては、7月の交渉をふまえ、知事の考えをお尋ねします。
質問1 7月の交渉から3か月経ちましたが県から回答がありません。早急にご回答ください。
質問2 杉本知事になって以来、県との交渉で「関電にきいてください」という返答が目立ちます。関電は私たち市民との対面での交渉を拒否しています。私たちの質問の内容は、県民や住民の安全を守らなければならない立場の県も把握しておくべき内容です。能天気に「関電にきいてください」と私たちに返答している場合ではありません。この点をどのようにお考えですか。
質問3 基準地震動変更に伴う新規制基準への適合性審査も補強工事もなされていない美浜1・2号機プールでの、使用済み燃料の長期間保管を県は認めているのですか。
質問4 使用済みMOX燃料はプールで90年以上冷却しなければ乾式キャスクに入れられません。県は、高浜が最終処分地になることを承知で高浜3・4号機の稼働を認めておられるのですか。
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<質問1と2に関する質疑概要>
市民側:美浜町の関西電力原子力事業本部広報グループに、最近、電話で「対面での話し合いの場を開く」よう求めたところ、「できません」と拒否され、「なぜできないのか」と聞いたところ、「それはお答えできません」との対応だった。また、前日の10月26日反原子力デーに関西電力本社へ文書による共同申し入れ(pdfはこちら)を行ったところ、関西電力本社広報部は対応せず、総務部が代わりに受け取った。関西電力本社では、2015年2月の公開質問状への回答拒否・面談拒否以降、6年以上にわたり、この状態が続いている。福井県原安課としても関西電力に市民との対話に応じるよう厳しく求めるべきだ。今日のような話し合いの場に関西電力広報部等の社員を同席させて回答させるのもミニマムとしてあってよいが、どうか。
原安課:関電に市民側との話し合いの場をもつよう再度求めます。
市民側:原安課は美浜3号の燃料交換可能回数について関電の主張を認めているのか?
原安課:計算の前提条件が違うと思われるが、関西電力から我々が聞いた限りでは不審な点はない。関西電力の前提条件は、(1)原発7基がすべて普通に稼働して、六ヶ所再処理工場への搬出がない、(2)プールの空き容量を年平均取替え回数で算出している、の二つだが、これに基づく燃料交換は9年可能という数値については確認していない。数値は関西電力に確認してください。
市民側:以前に、原安課から、美浜3号の燃料は5.5万MWD/tの高燃焼度燃料に代わっているから、取替燃料は52体より少ないとの指摘があったので、調べたところ、2008年から136体装荷されていて、2022年10月には48体装荷する予定だとされていて、計184体になる。1炉心分157体を超えており、関電の説明でも高燃焼度燃料で「使用済燃料発生量を約10%低減することができる」(2002年6月21日)とされている。つまり、燃料交換回数が約10%増える程度に過ぎず、4回の燃料交換可能回数が7~8回に増えるわけではない。9年になるはずがない。
原安課:燃料交換可能回数は前提条件によって変わるので、福井県は関西電力に「県外へ搬出してください」ということを求めています。「②美浜1・2号ピットは3号と共用ではないのに、1・2号ピット余裕102体分を美浜3号用と想定している。」および「③『管理容量』の定義を『貯蔵容量-炉心燃料-1取替分』から『貯蔵容量-炉心燃料』へ変更している。」については、関電に確認してみます。
<質問3に関する質疑概要>
原安課:原子力規制委員会が廃止措置計画の認可時に「美浜1・2号機のプールで使用済燃料を保管する」としたことを確認しています。長期保管を認めているわけではありません。
市民側:廃止措置計画では2035年度末までに使用済燃料を搬出するとなっているが、それまでの長期間保管を認めているということですね?
原安課:そうです。長期保管を認めるということではなく、原子力規制委員会が認めた範囲内で保管されることを認めています。
<質問4に関する質疑概要>
市民側:使用済MOX燃料はすでに高浜3・4号で計12体発生しており、永久貯蔵になる恐れがある。この使用済MOX燃料の搬出先はどこか示されていますか?
原安課:それはありません。だから、経産省に早く示せと言っています。関電には特には言っていないが、「県外搬出」の中に含まれている。使用済MOX燃料の再処理の実績は「ふげん」(新型転換炉)でもあります。
市民側:ふげんのは燃焼度が低く、軽水炉の使用済MOX燃料とは比較にならない。全然違うものだ、話にならない。
<簡単な経緯の説明>
美浜3号の使用済燃料に関しては、美浜1・2号の廃止措置計画認可申請書の第8-1表に「美浜3号ピットには、2015年9月現在、美浜1・2号の使用済み燃料150体が保管されている」との記載があったこと、美浜3号機の適合性審査で新基準地震動の見直し(750ガルから993ガルへ引上げ)で美浜3号のピット貯蔵容量が1,118体から809体へ減ったこと、そのため、美浜3号ピットの空き容量が38体しかなくなり、燃料交換可能回数は0.7回(1取替分52体の0.7)しかなくなったことが契機となりました。
関西電力が公開質問状への回答も面談も拒否していることから、福井県や原子力規制委員会に公開質問状を提出して交渉した結果、次のことが明らかになりました。
①新基準地震動(750ガル→993ガル)対応工事で、美浜3号ピット貯蔵容量が1,118→809体へ減ったため、3号貯蔵中の1・2号使用済燃料150体を2016年度に1・2号へ移し、余裕を38体から188体へ増やしたのです。これで、燃料交換可能回数は3.6回に増えたのですが、関西電力は9年間は燃料交換が可能だと主張しています。
「なぜ、そうなるのか」を調べたところ、電気事業連合会の資料等から次の疑いが明らかになったのです。
②美浜1・2号ピットは3号と共用ではないのに、1・2号ピット余裕102体分を美浜3号用と想定している。これで、燃料交換可能回数が3.6回から5.6回へ増えます。ところが、2021年7月2日の交渉で、福井県原安課は「これは認められていない」と認めたのです。
また、マスコミへの関西電力広報部の話によれば、次のような事実も出てきました。
③「管理容量」の定義を「貯蔵容量-炉心燃料-1取替分」から「貯蔵容量-炉心燃料」へ変更している。これで燃料交換可能回数は1回程度増えますので、②と合わせると燃料交換可能回数は6.6回になり、13ヶ月運転+3ヶ月定検のサイクルを想定すると、8,8年に相当します。関西電力の9年の根拠は②と③を想定しているからではないかという強い疑惑が明らかになったのです。
しかし、この③も、福井県原安課との交渉で、技術基準違反となることが判明しました。
平成二十五年原子力規制委員会規則第六号「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」には次の記載があります。
(燃料取扱設備及び燃料貯蔵設備)
第二十六条 通常運転時に使用する燃料体又は使用済燃料(以下この条において「燃料体等」という。)を取り扱う設備は、次に定めるところにより施設しなければならない。
2 燃料体等を貯蔵する設備は、次に定めるところにより施設しなければならない。
三 燃料体等を必要に応じて貯蔵することができる容量を有するものであること。
この第三号から運転停止時に炉心燃料をすべて貯蔵できるようにプール(又はピット)を運用することが義務付けられています。仮に、
管理容量=貯蔵容量-炉心燃料-1取替分
を超えて燃料交換をして再稼働した場合には「1取替分」の一部が使用済燃料で
占められますが、炉心燃料分は空いています。
しかし、管理容量の定義を変更して
管理容量=貯蔵容量-炉心燃料
とした場合に、この「管理容量」を超えて燃料交換するためには、炉心燃料の1・2サイクル後の使用済燃料(炉心燃料の2/3程度を占めます)を装荷した後に新燃料(残り1/3程度を占めます)を装荷すれば再稼働できますが、炉心燃料分の空きは存在しないことになります。つまり、技術基準違反になるのです。
④電気事業連合会資料の記載値では、数値を丸めているため、丸め誤差を利用して、燃料交換可能回数を6.6回から7.5回(10年)へ延ばしています。
第6回使用済燃料対策推進協議会(2021年5月25日)
資料2 使用済燃料貯蔵対策の取組強化について(「使用済燃料対策推進計画」)
この資料2の中の「添付資料2」の表から下記が読み取れます。
関西電力 美浜 2021年3月末時点(tU)
1炉心 1取替分 管理容量※2 使用済燃料貯蔵量
70 20 620 470
※2:管理容量は、原則として「貯蔵容量から1炉心+1取替分を差し引いた容量」。なお、運転を終了したプラントについては、貯蔵容量と同じとしている。
管理容量の620tUは「※2」のように、美浜1・2号の管理容量を貯蔵容量に等しいと見なして、つまり、美浜3号用にも使える管理容量として、算出されています。
この管理容量から使用済燃料貯蔵量(美浜1・2号も含む)を差し引くと、余裕150tU(=620-470)が出てきます。1取替分は20tUですので、燃料交換可能回数は150÷20=7.5回となり、これが関電のいう9年分の主張を裏付けるものだと言えますが、ここには、②の美浜1・2号の空き容量を美浜3号用に使うという前提があります。
美浜3号では2008年から高燃焼度燃料を使用していますが、これによる使用済燃料発生量の低減は約10%程度に過ぎず、燃料交換可能回数を約10%増やすにすぎません。3.6回が約4,0回へ増える程度で、大差はありません。
以上より、関西電力は「美浜3号は9年間、燃料交換可能だ」と主張していますが、その根拠を示しておらず、福井県も具体的に確認しようとしていません。私たちの評価では、②と③を想定しない限り、実現不可能です。仮に、これらを想定しているとすれば、法令違反を平気でやる電力会社だということが明確になり、美浜3号を含め全原発の即時停止を求める大きな根拠になると思います。
これに加えて、1・2号ピットでの使用済燃料貯蔵期限は2035年度末であるのに対し、3号の60年運転期限が2036年12月であり、8ヶ月しか差がありません。にもかかわらず、3号は基準地震動引上げに伴う建屋基礎補強工事とラック取替工事が行われているのに、1・2号では新規制基準適合審査は一切受けておらず、補強工事もなされていません。
伊方では廃炉になった1・2号から3号へ使用済燃料が速やかに搬出される計画ですが、そうすると3号ピットが満杯になるため乾式貯蔵施設がサイト内に設置されつつあります。(本来は、3号も満杯になれば運転を断念すべきであり、乾式貯蔵は設置すべきではありません。)
廃炉になった美浜1・2号ピットが補強もされないまま美浜3号の60年運転期限相当まで長期間使用され続けるのは極めて異常です。これも今回の交渉で追及しましたが、引き続き大きな課題だと言えます。
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