若狭ネットニュース第159号を発行しました。
第159号(2016/2/24)(一括ダウンロード1.7Mb)
巻頭言-フクシマ事故から5年— 事故は収束せず、責任とらせず
東京電力を破産処理し、国の責任で事故処理・賠償を!
フクシマを繰り返すな!
高浜3・4号の再稼働を中止せよ!川内1・2号を止めよ!
「原則40年」を遵守し、高浜1・2号、美浜3号を廃炉に!
負の遺産=使用済核燃料をこれ以上生み出すな!
使用済核燃料中間貯蔵施設反対!計画を撤回せよ!
(1)2016年2月18日 美浜1・2号と敦賀1号の廃止措置計画提出に際しての声明
解体・撤去・放射性廃棄物埋設処分ではなく、長期密閉管理による廃止措置へ転換せよ!
使用済核燃料は再処理せず、超長期に隔離管理し、原発再稼働を中止して、これ以上生み出すな!
若狭連帯行動ネットワーク
(2)今こそ原発依存財政からの脱却を
山崎たかとし
<巻頭言>
フクシマ事故から5年— 事故は収束せず、責任とらせず
東京電力を破産処理し、国の責任で事故処理・賠償を!
フクシマを繰り返すな!
高浜3・4号の再稼働を中止せよ!川内1・2号を止めよ!
「原則40年」を遵守し、高浜1・2号、美浜3号を廃炉に!
負の遺産=使用済核燃料をこれ以上生み出すな!
使用済核燃料中間貯蔵施設反対!計画を撤回せよ!
2011年3月11日のフクシマ事故から5年になります。
炉心溶融事故を起こした福島第一原発1~3号の溶融燃料は依然として行方知れずのまま、崩壊熱を出し、放射能汚染水を生み出し続けています。1号の格納容器下部滞留水中にロボットを投入する予定でしたが、水中の堆積物が多すぎて視界不良になるため断念。2号では格納容器配管入口付近を除染しても100mSv/h以下へ下がらずロボット投入を断念しています(河北新報2016.1.29)。今年度中の格納容器内調査実施が危うい状態です。
放射能汚染水は依然として溜まり続け、増え続けています。2月下旬現在、建屋内に汚染水約8.3万トン、タンク内に約79万トンの処理水が溜まっています。ここには、セシウムとストロンチウム以外の放射能が大量に含まれる中間処理水=「Sr処理水」など約18万トンが含まれます。約61万トンの多核種除去設備ALPSでもトリチウムは除去できず、その処理水約61万トンにも約1千兆ベクレルものトリチウムが高濃度に含まれています。
放射能汚染水は減るどころか増えている
東京電力は、昨年9月にサブドレンの汲上げ開始、昨年10月に海側遮水壁の閉合、昨年11月に陸側凍土遮水壁の全凍結管建込完了と順調にいっているかのように主張しています。しかし、事態は逆に悪化しています。サブドレン開始で建屋侵入水は400トン/日レベルから半減しましたが、海側遮水壁を閉じた途端に、地下水位が海側で上がり、地下水の放射能汚染度が高まったため(原因不明)、汲上げた地下水を建屋へ移送せざるをえなくなり、建屋汚染水が400~800トン/日へ急増しています。溶融燃料冷却用の注入水約300トン/日を入れると、汚染水は700~1100トン/日に増えています。ところが、ALPS処理水を溜める溶接タンクの増設が間に合わないため、ALPS処理量を増やせず、増え続ける「Sr処理水」をフランジ型タンクに貯蔵しようとしています。フランジ型タンクは汚染水漏洩事故を起こしたため解体・撤去中でしたが、それをやめて再利用しようというのです。本来なら、「Sr処理水」のALPS処理を増やしてその処理水をフランジ型タンクへ貯蔵すべきところ、より危険な「Sr処理水」のフランジ型タンク貯蔵量を増やすというのです。東電には安全優先の発想が欠けているのです。
東電は陸側凍土遮水壁による凍結を始めようとしていますが、問題だらけです。第1に、建屋海側の凍結管は6ヵ所あるトレンチ上部で止まっており、トレンチの下は凍結できません。そのため、地下水が急流となってここから流れ出し、流速が増えて砂岩が押し流される恐れが出ています。第2に、地下水上流に当たる建屋山側の試験凍結では、地下水位が急激に低下するため建屋から滞留水が流出する恐れが明らかになっています。そのため、建屋海側から先行凍結して建屋山側を段階的に凍結する案が検討されています。建屋海側を先行凍結させたときに地下水の放射能汚染度が高まれば、サブドレン水を建屋へ移送しなけらばならず、建屋汚染水を減らすどころか、逆に増やすことになりかねません。
事故避難者約9.9万人、関連死2020人
フクシマ事故による避難者は2月23日現在約9.9万人(福島県内5.55万人、県外4.33万人)、その大半は仮設住宅や借上住宅で不安な毎日を送っています。帰還困難区域の2.4万人、居住制限区域の2.3万人はより長期の避難が避けられないでしょう。震災関連死は2020人に達し、直接死1604人をはるかに超え、悲しいことに今なお増え続けています。被災者の基本的人権が様々な形で侵害されています。
自主避難者への損害賠償を命じる判決が2月18日に全国初めて京都地裁で出されました。避難者を勇気づけるものです。国と東電の事故責任を厳しく問い、原子力被災者を救済し、健康手帳を交付させ将来の健康保障を勝ち取らねばなりません。
事故処理労働者が白血病で労災認定
事故収束作業で被曝した労働者は昨年末で4.62万人、集団被曝線量は585人Svです。事故発生から12月末の収束宣言までの1.96万人、240人Svと比べて、人数・被曝量共に約2.4倍に増えています。この中から、遂に、白血病にかかった労働者が現れ、昨年10月に労災認定を受けています。彼の累積被曝線量は19.8mSv(うち福島第一原発で15.7mSv)でした。政府は20mSv未満なら安全として避難者を汚染地に帰還させようとしていますが、とんでもないことです。公衆の被曝線量限度1mSv/年を下回るまで、帰還を強要すべきではありません。また、政府はこの4月から緊急時被曝限度を250mSvへ引上げ、再稼働した原発の重大事故に備えようとしています。フクシマを繰り返すことを前提としたこのような緊急時被曝限度引き上げと原発再稼働を許してはなりません。
東電を破産処理し、国の責任で事故処理と賠償を
東京電力は原油価格下落によって大もうけをする一方、賠償費をけちり、除染費支払いを滞納し、除染廃棄物処理を自治体と国に任せて知らんぷりを決め込み、まるで他人事のように事故処理作業を行い、労働者に被曝を強要し、危険手当等のピンハネを黙認しています。事故が収束していないのに、東電は柏崎刈羽原発の再稼働を狙い、福島第二原発の廃炉をしぶっています。国も、東電を事実上救済しながら、「うまく行くかどうかわからない工事だから国費を出せる」という理由で、通常の土木工事=東電救済策ではなく、陸側凍土遮水壁という危険な難工事を東電にやらせています。こんな東電と国の無責任体制では、もはや、事故を収束させることも、被災者への賠償を公平に行い、住民を被曝から守り、必要な除染を実施させることもできません。今からでも遅くありません。東京電力を破産処理し、金融機関を含めて事故の責任を取らせるべきです。原発を推進してきた国の責任を明らかにし、しがらみのない抜本的な事故処理と被災者救済を行うべきです。
原発を再稼働させながらフクシマ対策を行うことなどできません。欺瞞です。東電を破産処理しても賠償には全く影響しません。今でも、賠償・除染費はその全額が9兆円の交付国債から出されており、電力消費者が電気料金で返済し続けているのですから。
高浜3・4号の再稼働を中止し、1・2号を廃炉に
関西電力は、今年に入り、高浜3・4号の再稼働を進めてきました。その矢先の2月20日、高浜4号で汚染水が漏れ、作業が中断しました。関電は、弁のボルト締め付けが一様でなく一部で弱かったのが原因だとしていますが、これに限らず、長期停止後の原発には思わぬ事故がつきものです。ましてや、M6.5の伏在断層が高浜原発直下で動けば、1,340ガルの地震動が襲うことになり、炉心溶融事故が避けられません。関電は、この問題をはじめ私たちの公開質問状に全く回答せず、逃げ回っています。
関西電力は「40年廃炉」の原則に反して、高浜1・2号と美浜3号の再稼働を目指しています。原子力規制委員会は当初、難燃ケーブルへの全量取替を求めていましたが、1・2号全長約1300kmの6割を取替えるだけで、「施工が困難な4割はケーブルと収納トレーをまとめて防火シートで覆う」ことを容認したのです。電力は余っており、高浜1・2号の40年廃炉原則を曲げる必要性は何もなく、肝心の「特例措置が必要な理由」は不明なままです。これまでに関電が注ぎ込んだ対策費は5,279億円(高浜1~4号3,881億円、大飯3・4号108億円、美浜3号1,290億円)、当初の11基2,850億円の2倍近くに膨れ上がっています。万が一廃炉になっても、廃炉後に電気料金から10年間で回収できる会計制度ができたからです。この制度は廃炉を促すために作られたはずですが、実際には電力の無責任な原発延命投資を助長しているのです。このような無責任な延命策を許さず、高浜1・2号と美浜3号を廃炉に追い込みましょう。
美浜1・2号敦賀1号の廃炉計画に際しての声明
関電と日本原電は2月12日、美浜1・2号と敦賀1号の廃炉計画を原子力規制委員会に申請し、地元へ説明しました。解体・撤去による廃止措置は深刻な労働者被爆と行く先のない膨大な量の放射性廃棄物を生み出します。私たちは解体・撤去ではなく、長期密閉管理を軸とした廃止措置に転換するよう求めます。詳しくは、2月18日付けで声明をまとめましたので、そちら(4~19頁)をご覧下さい。
原発廃炉で、行き先のない使用済核燃料の問題が再浮上します。原発を再稼働させる限り、使用済核燃料はさらに生み出されます。次世代に負の遺産を増やし続けることはもはや許されません。現世代にできるのは直ちにこれを止めることです。
関電は11月20日、「2020年ごろまでに使用済核燃料中間貯蔵施設の立地点を決め、2030年ごろの操業を目指す」と発表しましたが、これは廃炉とは無関係で、使用済核燃料をピットから移動させなければ、新燃料との交換ができず、再稼働させた原発の運転を続けられないからです。断じて許してはなりません。
フクシマを繰り返さないため、3月~4月の連続行動で、原発再稼働阻止の闘いを強めよう
私たちはフクシマ事故5年の3月11日、「福島を忘れない関電本店前抗議スタンデイング」の呼びかけに応え、参加します。3月13日「さよなら原発関西アクション」(大阪市中央公会堂)・「御堂筋パレード」に参加し、全国の仲間と連帯して闘います。
4月3日には、チュルノブイリ・ヒバクシャ救援関西などと一緒に「チェルノブイリ30年・フクシマ5年国際シンポジウム」を大阪で開きます。チェルノブイリやフクシマを繰り返さないため、現地の声を聞くことが重要です。私たちは、「フクシマ事故を二度と招いてはならない!豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪うな!子どもたちの未来を守ろう!再稼働阻止まで最後まで闘う!」を合い言葉に闘います。憲法違反の「戦争法」と「原発再稼働」に反対する運動を結びつけ、安倍政権をさらに追い込んでいきましょう。