7月29日の原子力規制委員会交渉を踏まえ、
「震源を特定せず策定する地震動」として1340ガルの地震動を取り入れさせよう!
地震動評価手法の抜本的再構築を求め川内原発の審査やり直しを求めよう!
呼びかけ: 川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、東電福島原発事故から3年-語る会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)
原子力規制委員会は7月16日、川内1・2号の審査書(案)を決定し、8月15日までの「科学的・技術的意見募集」を行っています。私たちは適合性審査をやり直し、川内原発の基準地震動を2倍以上へ大幅に引き上げるよう求めます。(pdfはこちら)
私たちは全国から賛同を集めて3月18日に原子力規制委員会と交渉しましたが、その後、「あれ以上の回答はできない」「審査中の内容については回答できない」との理由で2度も継続交渉を拒否されました。審査書(案)ができた段階で、ようやく、7月29日に約1時間の限定で交渉が実現したのです。公開質問状には100団体483個人の賛同を得、紹介議員である福島みずほ社民党参議院議員をはじめ、鹿児島、福井、静岡、新潟、関西、関東から40数名が参加し、原子力規制庁3名を追及しました。
原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉記録(pdfはこちら)
7月29日の話し合いを踏まえた川内1・2号審査書案に関する緊急申し入れ(pdfはこちら)
1340ガルの地震動を採用せよ
最大の争点になったのは、原子力安全基盤機構JNESが2001~2009年の報告書で算出していた地震動=「M6.5の横ずれ断層による震源近傍で1340ガルの地震動」(図1参照)を「震源を特定せず策定する地震動」として採用させるという点でした。
この1340ガルの地震動は川内原発の基準地震動620ガルの2倍以上であり、川内1・2号のクリフエッジ(炉心溶融事故へ至るギリギリの地震動:1号は1004ガル、2号は1020ガル(2014.8.6に「1220ガル」から修正))をはるかに超えます。これが「震源を特定せず策定する地震動」として採用されれば、川内原発は再稼働できないどころか、廃炉に追い込まれます。しかも、S波速度Vs=2600m/sという非常に固い地震基盤表面での地震動なので、川内原発の解放基盤表面(Vs=1500m/s)に換算すると更に大きくなるのです。しかも、これが「震源を特定せず策定する地震動」として採用されれば、全国一律に適用されるため、ほとんどの原発が「即アウト」になるでしょう。
注:川内2号のクリフエッジは元の基準地震動540ガルの1.89倍(1020ガル)でした。九州電力の資料からの転記ミスでした。謹んでお詫びし、訂正致します(2014年8月6日 若狭ネット資料室長 長沢啓行)
図1.横ずれ断層モデルM6.5による地震動評価結果(Vs=2600m/sの地震基盤表面上に設定した231評価点における各周期ごとに求めた地震動応答スペクトルの平均値,標準偏差,最大・最小値であり,特定の評価点での応答スペクトルではない.「最大値」は,「実効応力大」,「高周波遮断特性平均+標準偏差」の場合である)
だから、原子力規制庁もこれを採用しないための「理由」を探し出すのに必死でした。
最初に持ち出した理由は「(1)JNESの報告書は年超過確率曲線を求めるためのものであり、仮想の地盤での仮想の地震発生による地震動評価だ」という主張です。私たちは、「地震動評価結果が仮想のもので使い物にならないのであれば、その結果として得られる超過確率も役に立たないではないか」と批判しました。これには面食らったようです。
すると、規制庁は第2の理由を持ち出し、「(2)実効応力が大、高周波遮断特性が平均+標準偏差というかなり起こりにくいものを想定している」と難癖を付けました。そこで、私たちは「北海道留萌支庁南部地震M6.1の地震観測記録(図2参照)は、縦ずれ断層でM6.0の地震動の『最大値』でないと合わないが、留萌の地震はかなり起こりにくい地震動だと言うのか。」と反論しました。すると、見るからに動揺して「JNESの断層モデルが過小評価かも知れない」と言い出し、ついには「低い確率ではこういう地震も考えられる」と認めざるを得ませんでした。
ところが、第3の理由「(3)実際に起こった地震の観測記録についてはそれぞれのサイトの特性を踏まえたうえで、取り込む必要があるものについては取り込む。」とし、「M6.5で1340ガルの地震動は実際にはまだ起きていない」からと、取り込みを拒んだのです。私たちは「地震観測記録が不足しているからそれを補うためにJNESが断層モデルを使って地震動評価を行ったのであり、その結果、M6.5の震源近傍で1340ガルの地震動が発生すると分かったのだから採用すべきだ」と批判しました。結局、規制庁は実際に1340ガルの地震が起きない限り採用しないという態度を改めませんでした。福島第一原発重大事故の教訓を何ら真摯に受け止めようとしていないのです。これでは、「自然の後追い」です。これまで基準地震動が5回も乗り越えられましたが、自然が新たな基準地震動を乗り越えるのは時間の問題でしょう。それでは遅いのです。
図2.北海道留萌支庁南部地震M6.1に基づく川内原発の解放基盤表面はぎとり波および耐専スペクトル(内陸補正後、図中では「スペクトル距離減衰式(2002)」と記載)と縦ずれ断層モデル(地震発生層3~20km)による地震動評価結果の比較(M6.0)
原子力規制委員会・規制庁は「新しい知見をどんどん取り入れていく」とうそぶいていますが、すでにある知見=JNESの報告書(JNESが規制庁に統合された今では規制庁の報告書)を取り入れようとしていません。M6.5の横ずれ断層が川内原発の極近傍で発生すれば1340ガルの地震動が襲う可能性があります。活断層とは違って、地表に姿を現さない、これほど小さな地震については事前に予測するのは不可能です。M6.5の見えない小さな地震による1340ガルもの地震動の発生を警告する評価結果が規制庁の手元にあるのに、それを無視しようとしているのです。こんな理不尽なことは許せません。
1340ガルの地震が原発直下で発生することを想定し、サイトの特性を考慮して解放基盤表面はぎとり波に換算するのは容易です。「震源を特定して策定する地震動」では活断層から震源断層を仮想して断層モデルで地震動評価が行われ、基準地震動が策定されています。これとM6.5の1340ガルの地震動評価との間に、一体どのような差があるというのでしょうか。「震源を特定せず策定する地震動」として1340ガルの地震動を取り入れさせましょう。
アスペリティ応力降下量25.1MPaで審査していた
第2の論点は、断層モデルによる地震動の過小評価でした。実は、1340ガルの地震動を算出したJNESの断層モデルは通常のレシピとは異なり、地震動評価結果を左右するパラメータの値が通常より2~3割大きく設定されていたのです。これは国内の地震データを重視した結果でしたが、規制庁は、基本的なところを理解できないまま、とんちんかんな回答に終始しました。この論点については、時間がなくて追及できませんでしたが、九州電力の断層モデルについて、ひとつ重要なことが判明しました。
私たちは、九州電力が設定した「1997年5月13日鹿児島県北西部地震のアスペリティ平均応力降下量15.9MPa」は小さすぎ、これをそのままM7.2~7.5の活断層による地震動評価に用いるのは過小評価だと批判し、図3のように断層モデルによる地震動評価結果が耐専スペクトルの1/2~1/3に留まっているのはそのためであり、25.1MPaに設定し直すべきだと主張してきました。規制庁は表向き、これを全面拒否してきたのですが、実は、ヒアリングという裏の審査でこっそり、アスペリティ平均応力降下量を25.1MPaにして計算させていたのです。しかも、長周期側だけを重視し、甑断層帯甑区間や市来断層帯甑海峡中央区間などを対象にしており、図3の市来断層帯市来区間は対象外だと思われます。その結果、基準地震動Ss-1やSs-Lより小さいことをヒアリングで確認したと主張しているのですが、とんでもありません。私たちは、アスペリティ応力降下量を25.1MPaとした断層モデルを「基本モデル」として、そこから不確実さを考慮して、応力降下量の1.5倍化も検討すべきだと主張してきたのです。「15.9MPaの基本モデル」のままで、その不確実さの考慮として25.1MPaを検討せよと主張したのではありません。
25.1MPaの地震動評価結果を公表させ、市来断層帯市來区間についても25.1MPaで地震動を計算させ、これを基本モデルとして地震動評価をやり直すように求めましょう。そうすれば、断層モデルによる地震動評価結果も耐専スペクトルに接近し、0.1秒付近など一部では、基準地震動Ss-1を超えることは間違いないでしょう。
図3.市来断層帯市来区間の耐専スペクトルと断層モデルによる地震動評価結果の比較
耐専スペクトルは震源近傍では過小評価
第3の論点は、耐専スペクトルが震源近傍で過小評価になっていることについてです。JNESは2ページ目の図2を示し、縦ずれ断層による地震動評価結果を耐専スペクトルと比較して、等価震源距離で20km程度離れた「平均値」ではほぼ同等だとする一方、震源近傍では耐専スペクトルは断層モデルの1/2~1/5にすぎず、過小評価になっていることを示唆していたのです。規制庁もこれを認め、耐専スペクトルを作った日本電気協会が見直しを進めていることを明らかにしました。また、JNESを統合した規制庁でも、研究部門で地震動の研究を引き続き続けたいとの意向を表明しています。
つまり、耐専スペクトルは震源近傍ないし、等価震源距離10km程度の近距離では地震動を過小評価することを規制庁自身が認めているのです。そうであるなら、最近20年間の地震観測記録を取り込むと同時に、JNES報告書などに基づき、断層モデルによる地震動評価結果で震源近傍の観測記録の不足を補い、耐専スペクトルを再構築すべきです。そうすれば、川内原発の市来断層帯市来区間(M7.2、等価震源距離14.29km)の耐専スペクトルも、より大きくなるのは必至です。また、耐専スペクトルには図4のように「倍半分」の偶然変動によるバラツキがありますので、「余裕」を持たせるため、さらに2倍に引き上げるべきです。そうすれば、川内原発の基準地震動は現在の2倍以上、1000ガル以上へ大幅に引き上げざるを得ないでしょう。
図4.国内外の内陸地殻内地震による震源近傍の観測記録(M6.0~8.1, Xeq=6~33km, 水平51記録, 上下14記録)の耐専スペクトル(内陸補正有)との残差(バラツキ) (細線:各地震観測記録に対する残渣,太い赤実線:残差の平均,やや太い青実線:平均からの「倍半分」の差)
事故が起こる可能性は否定しない
最後の論点は、川内原発の安全は担保されていないという点です。田中委員長は「安全とは申し上げない」と何度も公言し、規制庁も「事故が起こる可能性は否定しない」と回答しています。鹿児島からの参加者は「安全を保証できないのにどうして地元自治体に報告できるのか」と規制庁に迫りました。また、規制庁は「安全目標をクリアできているかどうかは審査しておらず確認していない」としていますが、「鹿児島県知事は住民への避難説明会で、100万炉年に1回の安全目標があるという資料を示しており、おかしい」と指摘しています。原子力規制委員会は「安全」を保証せず、事業者に安全の第一義的責任を転嫁し、政府は「安全のお墨付き」を原子力規制委員会に求め、自らは再稼働の判断をしない。九州電力は国に「再稼働の合意形成」を求める。こんな無責任な原発再稼働は断固として阻止しましょう。
緊急のお願いに応えていただき、ご協力ありがとうございました。
公開質問状への賛同団体・個人は 100団体、483個人
たった 1週間で 運動カンパが約19万円集まりました。
7月29日の交渉に参加された鹿児島、新潟、福井、関西からの参加者の交通費半額程度に約11万円、印刷・郵送代(2回)に約9万円で不足分は若狭ネットで負担しました。「原子力規制庁は地震動を過小評価するな!原発再稼働阻止!」の声を届け、脱原発の運動をさらに力強く盛り上げていきましょう!お互いがんばっていきましょう! (若狭ネット 久保)
反原発学習会「川内原発の再稼働を阻止するために」のご案内(pdfはこちら)
日時:8月23日(土) 午後1時半~4時半
場所:市民交流センターひがしよどがわ(JR新大阪駅下車、北西へ5分)
主催:若狭連帯行動ネットワーク