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川内原発審査書案に関する資料請求へ審査書決定直前に回答

川内原発審査書案に関する資料請求へ審査書決定直前に回答

7月29日に行われた川内原発に関する原子力規制委員会との交渉で、「事業者ヒアリングにおいて応力降下量を25.1MPaに引き上げた地震動評価を短周期側でもやっている」との発言を受けて資料請求したところ、下記の資料が提出されました

九州電力株式会社「川内原子力発電所 基準地震動の策定について(補足提出データ・資料)」,川内発電所1、2号機の地震等に係る新基準適合性審査に関する事業者ヒアリング(35),資料番号TC-C-064(2014.6.4)(pdfはこちら

ところが、これには短周期側の地震動評価結果がなく、長周期側の地震動評価結果しか掲載されていませんでした。しかも、短周期側では応力降下量を引き上げても地震動評価結果は変わらないという、とんでもない九州電力の主張が載っており、これを原子力規制庁がその間違いに気付かず、了承していたのではないかとの疑惑が持ち上がり、改めて追加の資料請求を8月12日付けで行いました。ところが、再三督促しても回答が引き延ばされ、ようやく提出されたのは9月9日、川内原発の審査書を了承した原子力規制委員会の会議の前日でした。あまりにひどい対応に唖然とします。下記に追加資料請求の内容原子力規制庁の回答回答へのコメントを記しておきます。

追加資料請求1.6月4日事業者ヒアリング(35)の九州電力資料TC-C-064(pdfはこちら)のp.17-18 で「短周期側領域では地震モーメントが変わっても、地震動評価結果は変わらない」としているが、これは、1997年5月13日鹿児島県北西部地震の本震地震動についてであって、検討用地震の地震動については当てはまらない。このような誤った九州電力の主張をヒアリングの場で原子力規制庁が「妥当と判断したのか、検討用地震については妥当でないと主張したのか」が議事概要からは読み取れない。いずれの判断をしたのかを明らかにされたい。また、妥当だと判断したのであれば、その科学的根拠を提出して頂きたい。

(説明)6月4日事業者ヒアリング(35)の九州電力資料TC-C-064のp.17には「要素地震と検討用地震の震源スペクトルの相対関係(イメージ)」図が描かれているが、この要素地震(1984年九州西側海域の地震)は元々 the Global CMT project の地震モーメント1.02×1017Nmを用いてアスペリティ応力降下量を21.02MPaとしており、菊地・山中(1997)とは無関係である。検討用地震の地震モーメントや応力降下量が1.58倍になったからといって、この要素地震の地震モーメントや応力降下量が1.58倍になることはありえない。確かに、1997年5月13日鹿児島県北西部地震の本震・余震の相対関係からアスペリティの応力降下量を導出しており、3つの余震のうちの一つを要素地震として本震の地震波形再現解析をしているため、本震の地震モーメントや応力降下量には無関係に地震波形が求められる。しかし、これは当該余震を要素地震とした場合の話であり、この本震・余震の相対関係は、市来断層帯市来区間など検討用地震とその要素地震(1984年九州西側海域の地震)の間には成立たない。にもかかわらず、検討用地震の応力降下量が1.58倍(15.9→25.1MPa)になったからと言って要素地震の応力降下量も1.58倍(21.02→33.2MPa)になるという必然性はない。

(原子力規制庁の回答)ご指摘の6月4日の九州電力資料TC-C-064で示されている、要素地震のパラメータを1.58倍にするという九州電力の考え方について事業者より説明を受けていますが、原子力規制庁としては、菊地・山中(1997)の地震モーメントを用いて設定したパラメータに基づく経験的グリーン関数法による評価結果が観測記録と概ね整合することから、菊地・山中(1997)の地震モーメントを用いた評価が妥当であると判断しています。
 Ss-1については、応答スペクトルに基づく地震動評価と断層モデルに基づく地震勤評価を行い、それらを包絡するように策定しており、その結果、Ss-1に対して短周期側は応答スペクトルによるものが、長周期側は理論的手法を併用した断層モデルによるものが支配的な影響であったことから、念のためthe Global CMT projectによる地震モーメントを用いて長周期側の影響について評価し、Ss-Lと同等レベルであることを確認しています。
 なお、短周期側の影響については、1997年5月13日鹿児島県北西部地震が2つの破壊領域を持つ地震であったことから、震源過程を詳しく解析した菊地・山中(1997)の地震モーメントの値に信頼性があり、the Global CMT projectのように1つの震源を想定して求めた地震モーメントの値で評価するのは適切ではないと考えております。

回答へのコメント:予想されたことだが、九州電力の説明を是としたのか非としたのかについては、やはり、無回答でした。しかし、「応力降下量を15.9MPaから25.1MPaへ引き上げても地震動評価結果は変わらない」という九州電力の主張は間違いであることを事実上認めたことになります。それにしても、なぜ、正面から間違いだと認めなかったのでしょうか?たぶん、事業者ヒアリングでは間違いに気付かなかったからではないかと推測されます。「念のためthe Global CMT project」による地震モーメントを用いて長周期側の影響について評価」したのであれば、なぜ、「念のため短周期側についても評価」しなかったのでしょうか?それをやると、まずいことになるからでしょうが、支離滅裂です。また、「短周期側の影響については・・適切ではない」というのであれば「長周期側でも適切ではない」とすべきではないでしょうか?首尾一貫しない回答です。この「回答」は個人が書いたものではなく、原子力規制庁の中で「整合性のある回答」になるよう良く議論して決めたものですが、「規制の虜」の状態から脱しえていないのではないでしょうか?

追加資料請求2.7月29日の市民団体との話し合いの場で、原子力規制庁は検討用地震のアスペリティ応力降下量を25.1MPaとした場合の短周期側地震動について、長周期側と同様に計算してSs-1およびSs-Lより下にあることを確認していると回答したが、短周期側の地震動評価結果は6月4日事業者ヒアリング(35)の九州電力資料TC-C-064には存在しない。原子力規制庁が確認したと主張する地震動評価結果は実際には存在せず、間違った回答をしたのか、それとも、他に存在するのか。存在するのであれば、それを提出して頂きたい。

(原子力規制庁の回答)7月29日の会合において、短周期側についてもthe Global CMT project の地震モーメントに基づく地震動評価を行ったという趣旨の発言を原子力規制庁の担当者が行ったことについては、間違った回答であり、上記のとおり訂正させていただきます。

回答へのコメント:1への回答に合わせて、「間違った回答」だったと認め、発言を「訂正」しています。前半は正直で良いのですが、後半の「訂正」は、長周期側だけ「念のため」に地震モーメントを大きくして影響を評価し、短周期側は「適切ではない」という意味が不明です。

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