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8月1日に原子力規制委員会へ緊急申し入れを提出

8月1日に原子力規制委員会へ緊急申し入れを提出

2014年8月1日
原子力規制委員会委員長
田中 俊一 様

7月29日の話し合いを踏まえた川内1・2号審査書案に関する緊急申し入れ
(pdfはこちら)

原子力規制委員会・規制庁と私たちとの7月29日の話し合いは非常に実り大きいものでした。そこで明らかになったことを踏まえ、緊急に以下の内容を申入れます。真摯にご検討くださるようお願い申し上げます。

1.原子力安全基盤機構JNESが2001~2009年の報告書で算出していた地震動=「M6.5の横ずれ断層による震源近傍で1340ガルの地震動」(図1参照)を「震源を特定せず策定する地震動」として取り入れてください。

(説明) JNESの報告書は、2006年の耐震指針改定時に「震源を特定せず策定する地震動」として採用された加藤ら(2004)の「上限レベル」における元データが極めて少なく、他の地震データを除外した「予め予測できる」とする根拠も薄弱であったことから、地震観測記録の不足を断層モデルによる地震動評価で補充するため、また、参照すべき年超過確率曲線(ハザード曲線)を導出するために行われたものでした。規制庁は当初、「仮想の地盤での仮想の地震発生による地震動評価」だと主張していましたが、その地震動評価が仮想のもので使い物にならないのであれば、その結果として得られる超過確率も使えないことになり、矛盾します。また、アスペリティ応力降下量と高周波遮断特性について「平均±σ」のバラツキを考慮していますが、これはごく普通に起こりうる範囲内のゆらぎにすぎず、「極めて起こりにくい特殊な例」ということにはなりません。規制庁も、最後には「低い確率ではこういう地震も考えられる」と認められました。ところが、「この地震動は実際にはまだ起きていない」という理由で取り込みを拒む一方、「実際に起こった地震の観測記録についてはそれぞれのサイトの特性を踏まえたうえで、取り込む必要があるものについては取り込む。」とされました。これでは、「自然の後追い」です。これまで基準地震動が5回も乗り越えられましたが、自然が新たな基準地震 動を乗り越えるのは時間の問題でしょう。それでは遅いのです。福島第一原発重大事故の教訓を何ら真摯に受け止めようとしない姿勢です。M6.5の見えない小さな地震による1340ガルもの地震動の発生を警告する評価結果が規制庁の手元にあるのですから、それを無視しないでください。「震源を特定して策定する地震動」でも、実際には起きていない仮想の地震について地震動評価をしているのですから、同様に扱うべきです。

図1.横ずれ断層モデルM6.5による地震動評価結果(Vs=2600m/sの地震基盤表面上に設定した231評価点における各周期ごとに求めた地震動応答スペクトルの平均値,標準偏差,最大・最小値であり,特定の評価点での応答スペクトルではない.「最大値」は,アスペリティ実効応力「大」,高周波遮断特性「平均+標準偏差」の場合である)

2.川内1・2号の周辺活断層による地震動評価について、「アスペリティ平均応力降下量25.1MPa」を「基本ケース」とし、その上で、断層上端や応力降下量などの不確かさを考慮するようにやり直してください。

(説明) 九州電力は1997年5月13日鹿児島県北西部地震の地震モーメントを数ある数値の中で最も小さい値にしてアスペリティ平均応力降下量を15.9MPaと設定しています。しかも、この未飽和断層に対する評価結果をそのままM7.2~7.5の飽和断層に用いています。その結果、図2のように断層モデルによる地震動評価結果が耐専スペクトルの1/2~1/3に留まっています。私たちは、要素地震の地震モーメントにthe Global CMT project の値を採用しているのだから、1997年5月13日鹿児島県北西部地震の地震モーメントにも同機関による値を採用し、アスペリティ平均応力降下量を25.1MPaに設定すべきだと主張してきました。規制庁は表向き、これを全面拒否しながら、ヒアリングの場でこっそり、25.1MPaのケースを計算させていました。規制庁は長周期側の地震動の確認だと主張していますが、このような姑息な対応をやめ、アスペリティ応力降下量を25.1MPとする断層モデルを「基本ケース」として、さらに不確実さを考慮するように地震動評価をやり直してください。

図2.市来断層帯市来区間の耐専スペクトルと断層モデルによる地震動評価結果の比較

3.耐専スペクトルを早急に再構築し、新たな耐専スペクトルで地震動評価をやり直してください。

(説明) JNESは図3のように、縦ずれ断層による地震動評価結果を耐専スペクトルと比較して、等価震源距離で20km程度離れた「平均値」ではほぼ同等だとする一方、震源近傍(図3の「最大値」)では耐専スペクトルは断層モデルの1/2~1/5にすぎないことを示しています。規制庁もこれを認め、耐専スペクトルを作った日本電気協会が見直しを進めていることを明らかにしました。JNESを統合した規制庁でも、研究部門で地震動の研究を引き続き続ける意向です。そうであればなおさら、最近20年間の震源近傍の地震観測記録を取り込み、JNES報告書などで震源近傍での観測記録の不足を補い、耐専スペクトルを再構築し、審査をやり直すべきです。その際、耐専スペクトルには「倍半分」の偶然変動によるバラツキを考慮して、2倍の「余裕」を持たせるべきです。

図3.北海道留萌支庁南部地震M6.1に基づく川内原発の解放基盤表面はぎとり波および耐専スペクトル(内陸補正後、図中では「スペクトル距離減衰式(2002)」と記載)と縦ずれ断層モデル(地震発生層3~20km)による地震動評価結果の比較(M6.0)

4.田中委員長が鹿児島県民や薩摩川内市民に直接、審査書案を説明し、地元住民の声を聞いてください。

(説明) 田中委員長は「安全とは申し上げない」と何度も公言し、規制庁も「事故が起こる可能性は否定しない」と回答しています。9月29日の話し合いに鹿児島から参加した方は「安全を保証できないのにどうして地元自治体に報告できるのか」と規制庁に迫りました。また、規制庁は「安全目標をクリアできているかどうかは審査しておらず確認していない」としていますが、「鹿児島県知事は住民への避難説明会で、100万炉年に1回の安全目標があるという資料を示しており、おかしい」と指摘しています。原子力規制委員会は「安全」を保証せず、事業者に安全の第一義的責任を転嫁し、政府は「安全のお墨付き」を原子力規制委員会に求め、自らは再稼働の判断をしません。九州電力は国に「再稼働の合意形成」を求めています。こんな無責任な状態で川内原発が再稼働へ突き進むのは誰もがおかしいと疑問を呈しています。川内原発の審査書案を決定した最高責任者として、田中委員長自ら地元へ説明に出向き、地元住民の声を聞き、直接対話すべきです。
以上

添付資料:原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉記録(pdfはこちら)

呼びかけ団体:川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、東電福島原発事故から3年-語る会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

賛同団体・個人(2014.7.28現在100団体、483個人)

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