原子力規制委員会は12月21日、第59回原子力規制委員会で、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」を決定し、翌22日0時から2023年1月20日深夜までのパブコメを始めました。これは、岸田政権の「GX実現に向けた基本方針」に呼応するもので、原発の「40年で原則廃炉」と「例外中の例外としての20年延長」を定めた「40年ルール」が、2023年初めの通常国会で改変(=事実上の撤廃)されようとしています。理不尽な「大転換」を許してはなりません。
大晦日と正月をはさんで1ヶ月間ですので、意見提出がしにくい期間に敢えてぶつけたとしか思えません。この点での怒りも込めて、2023年1月20日深夜締切までに怒りの意見を提出しましょう。
以下は若狭ネット資料室長が本日提出した意見です。今後も追加提出する予定です。(その2とその3を追加提出しました。)
参考にしてください。
<原子力規制委パブコメへの意見例(その1)>
該当箇所 前文と1および2の項目
意見 原子力規制委員会が設置された経緯と原子力規制委員会設置法の原点に戻り、「40年で原則廃炉、延長は例外中の例外」であることを再確認すべきです。2020年7月29日の声明を撤回すべきです。
理由 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は、そもそも、福島事故を教訓として、原発の再稼働に反対する圧倒的多数の国民世論をバックに、与野党の合意で、原子力規制委員会を三条委員会として行政から独立させ、原子力規制委員会設置法の附則の中に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉基法)」を取り込み、そこに導入されたルールです。つまり、「40年ルール」は、原子力規制委員会設置法によって規制委に委嘱された、規制委の出発点となる根本原則であり、規制委が国民からその遵守を委託されたのであって、2020年7月29日の声明で「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」としたのは、法成立の経緯を無視し、法解釈を誤った見解に過ぎず、原点に立ち返って、同見解を撤回し、現行の法規定を遵守すべきです。
パブコメ案の項目1および2は、30年以降は10年ごとの審査で延々と運転期間を延ばすことが前提になっていますが、これは「40年ルール」の改変であり、撤回すべきです。これまで、10年ごとの高経年化技術評価で審査してこなかった添付書類のデータを使って「10年後も技術基準に適合しているか」を審査し、データの測定方法も審査するとしても、「より厳格になる」とは言えません。山中委員長は特別点検は「40年目で実施する予定」だと言いますが、パブコメ案には明記されていません。「40 年目で行われている試験というのは、かなり特殊な、例えば圧力容器の胴回り 100%超音波試験をしなさいとか、あるいはコンクリートのコア抜きをして破壊強度等の試験をしなさいとか、非常に特殊なものが追加されています。むしろ50年に追加して、それぞれの炉で特徴のあるところを私は試験をしたほうがいい。特別点検と比べて劣るかどうかというのは、これはそれぞれ見解を持たれるところだと思うのですけど、私はそれぞれの炉に対して必要なところを50年目に対してプラスアルファで60年見るべきだ。」とも言っています。40年目の特別点検はむしろ強化し、廃炉を前提に、厳格に審査し、20年の延長限度も遵守すべきです。
<原子力規制委パブコメへの意見例(その2)>
該当箇所 1、2および6の項目
意見 「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」を堅持し、40年の特別点検の抜本的強化を求めます。また、40年時点の特別点検がどのように改変されるのか、その具体的内容を明示した上でパブリックコメントをやり直すべきです。
理由 項目6では、「長期施設管理計画の認可の基準は、劣化評価が適確に実施されていること、発電用原子炉施設の劣化を管理するための措置が災害の防止上支障がないものであること及び計画の期間において生じる劣化を考慮しても技術基準に適合することのいずれにも適合していることとする。」としていますが、「災害の防止上支障がない」との基準は「高経年化技術評価」であり、「劣化を考慮しても技術基準に適合すること」との基準は「運転期間延長認可」です。ところが、その前提となる項目1と2に基づけば、30年時点での認可後、「運転開始後40年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならない」ことになり、10年先の「50年運転時点」までの技術基準適合性評価になります。これは、現在の運転40年までに20年先の「60年運転時点」までの技術基準適合性評価とは明らかに異なります。また、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」に定められた「申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検」(以下「特別点検」という。)が、項目6の「劣化評価」とも異なり、「特別点検」の中身が弱められるのではないかと危惧されます。「40年ルール(運転40年で原則廃炉、20年延長は例外中の例外)」は福島事故を踏まえた国民の意思を反映させた原則であり、これを堅持し、延長する場合には例外中の例外とするにふさわしい「40年時点での特別点検」の抜本的強化を求めます。
また、現在の案には、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」第四十三条の三の三十二(運転の期間等)の変更に伴い、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第百十三条および第百十四条が変更され、さらには、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」も変更されるにもかかわらず、それらには一切言及されていません。法律が変更されることに伴う40年時点での特別点検がどのように変えられるのかについて国民への説明が一切ないままに、このような法律の変更だけに留めたパブリックコメントを行うのは、重大な変更内容を隠蔽するに等しいのではないでしょうか。法律変更後に規則以下を検討するというのは、国民だましもいいところではないでしょうか。40年ルールをどのように変更しようとしているのかについて、明確にした上で、パブリックコメントをやり直すべきす。
<原子力規制委パブコメへの意見例(その3)>
該当箇所 1、2および11の項目
意見 1および2の認可はそれぞれ40年および50年を超えるまでに行われなければならないことを明記し、11の新制度施行日によっては1と2が骨抜きにされるため、新制度施工日を明記し、パブコメをやり直すべきです。
理由 原子力規制委員会記者会見録(2023.1.11)によれば、泊1号機と2号機は現在、運転33年と31年ですが、黒川総務課長は「30年を超えていますけれども、運転をするときまでに認可を受ければよい」とし、また、柏崎刈羽1号機と2号機は運転37年と32年ですが、黒川総務課長は「経済産業省が恐らく法改正をしまして、運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正をされますので、40年でもう一切運転できないというくびきはなくなる」とも答えています。ところが、原子力規制委員会の運転期間は暦年によるのであって、休止期間も含むはずです。また、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」(2022.12.23原子力関係閣僚会議)でも、「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする」とし、「運転期間40年というところから止まっていた期間を除くという改正」ではありません。国民を混乱させるような記者会見での上記発言を撤回し、正確に説明し直すべきです。
1および2によれば、40年を超えて運転しようとする場合は、(1)30年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けていなければならず、さらに、(2)40年を超えて運転するための「10年を超えない期間における長期施設管理計画」の認可を受けなければならず、これらが満たされない限り40年を超えては運転できないことになるはずです。たとえば、柏崎刈羽1号機が(1)の認可を受ける期限は2025年9月18日(運転開始40年後)であり、これを過ぎても(1)が認可されていなければ、40年を超えての運転はできないというのが、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」の1および2の趣旨のはずです。ところが、黒川総務課長の発言によれば、(1)の認可を受けていなくても、40年を超えた段階でも申請があれば、(1)と(2)の認可を段階的に、または、同時に受けて、40年を超えての運転が可能であるかのように見えます。
さらに、同11では「新たな制度への円滑な移行を図るため、次のような準備行為その他所要の経過措置を設ける」とし、「新制度施行までの一定の期間中、あらかじめ長期施設管理計画の申請及び認可ができ」、「新制度の施行前に認可を受けたときは、新制度が施行された日に、新制度下での認可を受けたものとみな」し、「新制度の施行前に認可を受けていないときは、新制度が施行された日に、新制度下の申請とみなす」ともされています。これは、40年を超えていても「新制度施行までの一定の期間」内に(1)の認可を受ければ、(1)の条件は満たされたものとし、(2)の認可は50年を超えるまでに受ければよいということになります。つまり、「新制度施行」日を(1)の長期施設管理計画の策定と認可に必要な経過措置期間後に設定することで、1と2の規制が事実上効かないようにできることを意味しています。「新制度施行」日を明示した上で、その妥当性についてもパブリックコメントで問い直すべきです。
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