若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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若狭ネットニュース第163号を発行しました

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第163号(2016/11/8)(一括ダウンロード4.5M
巻頭言-どうして8.3兆円を電気の託送料金へ転嫁するの? おかしいよ!
電力消費者に負担を押しつけないで!
「電気の託送料金」への原発コスト転嫁反対署名を拡げよう!
(1)生物多様性アクション大賞 「たべよう」部門 優秀賞受賞
(株)森と暮らすどんぐり倶楽部 代表 松下 照幸
(2)島崎氏による問題提起の顛末 — 「結論ありき」で情報操作 を行う原子力規制庁とそれを見抜けない原子力規制委員会
大阪府立大学名誉教授 長沢啓行 (生産管理システム)

<巻頭言>

「電気の託送料金」への原発コスト転嫁反対署名を拡げよう!

私たちは、24の呼びかけ団体(11月16日現在25団体になっています)で、経産大臣宛の 下記署名「福島事故関連費と原発コストを『電気の 託送料金』に転嫁しないでください」を始めました。

福島事故関連費と原発コストを『電気の 託送料金』に転嫁しないでください

署名用紙・ダウンロード署名用紙Word版はこちらリーフレット・ダウンロード(呼びかけ団体に「さかいユニオン」と「日本消費者連盟」が2016年11月8日夜に加わりました。「大阪自主労働組合」が2016年11月16日に加わりました。。「社民党福島県連合」、「フクシマ原発労働者相談センター」が2016年11月20日に加わりました。)
政府と九電力会社・電気事業連合会は、原発の廃炉積立不足金1.3兆円、福島事故損害賠償費(一般負担金)3兆円、福島事故処理・廃炉費4兆円の計8.3兆円を「電気の託送料金」に転嫁し、新電力契約者を含めたすべての電力消費者に負担を義務づけようとしています。
2017年初の通常国会で、そのための法令整備を行い、費用が増えても自動的に負担額を増やせるようにしようとしています。
私たちはこれに反対します。
この8.3兆円は本来、福島事故に責任をもつべき東京電力や原発を有する九電力会社が自らの経営努力で負担すべきものであり、原発を持たない新電力から競争力を不当に奪い、電力自由化の趣旨に反します。
東京電力にはすでに9兆円(損害賠償費5.4兆円、除染費2.5兆円、中間貯蔵施設1.1兆円)の資金援助が進められていますが、東京電力と電気事業連合会は、これでも損害賠償費2.6兆円、除染費4.5兆円の計7.1兆円が不足するとして、国にさらなる支援を求めています。
福島事故処理・廃炉費についても、東電の経営努力で2兆円が準備されていますが、4兆円が不足すると東電は主張し、これに対しても国に支援を求めています。
これらを合わせると、福島事故関連費は22.1兆円に達し、さらに増えることは避けられません。
事故を起こした東京電力とそれを支え、共に推進してきた電力会社、株主、銀行・金融機関そして歴代政権は、事故の責任を何ら明らかにせず、責任をとらず、とろうともしていません。
そのようなままで、なし崩し的に電力消費者や国民に20兆円を超えるツケを回すのは許せません。
「電力自由化を機に新電力に切り替え、原発の電力を使わない選択をした電力消費者」に原発コストの負担を義務づけるのはもってのほかです。
経産省は新電力や消費者団体に反対され、ごまかすための策を弄していますが、原点に立ち返るべきです。
私たちは福島事故関連費や原発コストを電気の託送料金に転嫁して電力消費者に負担を義務づけることに反対し、次のことを求めます。
1.原発の廃炉積立不足金など原発コストおよび福島事故に関する損害賠償費(一般負担金)と事故処理・廃炉費など8.3兆円を「電気の託送料金」に転嫁する法改正を行わないでください。
2.20兆円を超す福島事故関連費は東京電力と電力会社の責任で負担させてください。それが不可能なら、破産処理など東京電力等に事故の責任をとらせ、国の責任で累進課税に基づき対処してください。

電気の「託送料金」とは?
新電力などの小売事業者が電気を家庭に売るためには送電線を使って電気を送る必要があります。
その送電線使用料が「託送料金」で、電気代に含まれます。
電力会社の送配電事業者が経産省の審査を受けて、「託送料金」が決められますが、地 域ごとに異なり、家庭等の低圧電力では、東京で8.57円/kWh、関西で7.81円/kWhです。
原発を持た ない新電力の電気代には原発コストは入っていませんが、今回の「8.3兆円の原発コストの託送料金への転嫁」が決められると、新電力へ切替えたとしても、原発コストを負担させられることになってしまうのです。
それは、原発を持たない新電力から競争力を不当に奪うことになります。
今回の法令改定でその枠組みが決められるた め、今後も増え続ける福島事故関連費が、知らぬ 間に、どんどん託送料金へ上乗せされていく恐れ があります。
2005年10月に再処理積立金制度が改 定された際、それまでの使用済核燃料分については「例外的に15年間に限り託送料金に上乗せして回収する」ことになりましたが、今回の「託送料金への原発コスト転嫁」制度によって、これが恒常化し、電力会社の廃炉費等だけでなく、再処理費、高レベル放射性廃棄物処分費などの原発コストも次々と転嫁されていくことになります。このような原発優遇の理不尽な転嫁は断じて許せません

この署名は来年の通常国会会期中に提出するため、第一次締め切りを1月31日としています。状況によってはそれ以降も続けますが、予断を許しません。
一人でも多くの声を政府に届け、電気の託送料金への原発コスト転嫁をやめさせるため、署名の拡大にご協力ください。

年内とりまとめ、来年通常国会で法令改定

経済産業省は今、「東京電力改革・1F問題委員会」で「東電救済と言われない事実上の救済策」を検討し、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の下に「財務会計ワーキンググループ」と「市場整備ワーキンググループ」の2つを設けて「福島原発事故処理・廃炉・汚染水対策費や損害賠償費などを巧みに託送料金へ転嫁して事実上東電を救済する仕組み」を検討しています。
このドサクサに紛れて、九電力会社の原発コスト(廃炉費積立不足金や未償却資産の廃炉後回収)を託送料金へ転嫁しようとしています。年内には報告書をとりまとめ、来年早々の通常国会で法令改定を行い、「東電救済・電力会社優遇の託送料金」を実現させようとしています。
しかし、新電力や消費者団体などから反対の声が強く、経済産業省の思惑通りには進んでいません。
「原則として東京電力や電力会社の負担とし、新電力には負担させない」と報道させる一方、「廃炉になった原発は特例にする」とか、「損害賠償費(一般負担金)については今後、新電力にも一定の負担を求める」とか、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構に基金を設けて東電1社に積み立てさせ、託送料金で巨額の利益が出ても利用者へ還元せず基金へ回させ、足りない分は機構が一時的に立て替え、後で返済させる」とか、託送料金への転嫁の仕組みがどうなるのかが非常に見えにくく、わかりにくい議論が進められつつあります。これは経済産業省の得意な、国民だましのあくどいやり方です。
いずれにせよ、福島事故関連費と原発コストの計8.3兆円を託送料金に転嫁しないと、東電は破産し、電力会社も電力自由化の下で危機に瀕することだけは確かです。だから、必死なのです。経済産業省の巧妙な手口にだまされず、東電救済と電力会社優遇の託送料金への改定を許さないため、署名拡大にご協力ください。
11月23日(水:祝日)にはそのための討論集会を開きます。ふるってご参加ください。

これ以上の東電救済は許せない!

今回の「託送料金」制度の見直しは、東電救済策と不可分です。これを検討する「東京電力改革・1F問題委員会」では、福島原発事故関連費について①国が肩代わりして東電は現状維持、②公的資金を投入して東電は長期公的管理、③国が東電を放置して東電は法的整理、④国が必要な対応を行って東電は改革を実行、という4つのシナリオのうち、最初から④以外の選択肢を排除した上で、④の改革の方針を検討しているのです。③ のシナリオで明らかなように「このまま放置すれば東電は破綻する」のであり、これを選択肢から外して「東電を破綻処理しない」ことを最初に確認しているのです。
また、福島原発事故関連費を「国が肩代わり」したり「公的資金を投入する」ことには国民の理解が得られないことから、①②の選択肢を外し、東電が自力で費用負担するかように見せかけて費用を捻出するための「国の対応」を検討し、それに合わせた改革を東電が実行するという④の選択肢を検討しているのです。
その柱が「託送料金」制度の見直しであり、柏崎刈羽原発の再稼働で東電の経営を立て直すことなのです。何のことはない、東電の事故責任を棚上げにして、託送料金を通して電力消費者にわからないよう8.3兆円の費用を吸い上げ、東電が原発を動かせるように条件整備を行うことが「東京電力改革・1F問題委員会」の任務になっているのです。
柏崎刈羽原発を東電が動かすことへの反対は、新潟県知事選で明らかなように地元でも根強く、運転主体を東電以外の別会社にする以外にありません。そのために考案されたのが「原子力事業の別会社への分離」案ですが、同じ沸騰水型原発を有し今後連携を求められる東北電力と北陸電力は二の足を踏んでいます。日本原子力発電は生き残りをかけてこれにのる可能性がなきにしもあらずですが、株主の九電力会社は自社原発の再稼働に手を取られている状況で、火中の栗である連携をすんなり受け入れるかどうは不明です。

託送料金への原発コスト転嫁反対署名の拡大を!

フクシマ事故が5年半を経た今なお、原発再稼働に反対する国民の声は過半数を占め、鹿児島県と新潟県での相次ぐ原発再稼働慎重派知事の誕生、再稼働を認めない判決や仮処分決定など、多くの人々の「脱原発への願い」が結実してきています。
国民の脱原発への努力は「節電」にも現れ、猛暑や厳寒の中でも電力需要は減少し、電力がだぶついています。再稼働を強行した九州電力は、川内原発の電力が余ったため「オール電化の宣伝」を強め電力消費を促しています。何のための再稼働だったのかは明らかです。電力不足とは無関係で、電力会社の利潤追求のためなのです。その利潤も福島原発事故関連費や廃炉費などの負担がかさむと帳消しになるため、託送料金制度で電力消費者に転嫁しようとしているのです。こんなことは許せません。
これ以上の東電救済を許さず、東電を破産処理し、東電をはじめ電力会社、株主、銀行・金融機関そして歴代政権の責任を明確にした上で、国の責任で累進課税に基づき対処すべきです。ドイツ、台湾に続き、脱原発の方針を明確に打ち出すべきです。
そのためにも、今回の「託送料金」制度の改悪を阻止しましょう。そのため、署名拡大にご協力下さい。

原発は「安かった」はずでは?
原発の発電コストについて、経産省は、相変わらず「2014年に1キロワット時当たり10.1円と、他の電源に比べて安いと試算し、原発事故対応費用が1兆円増えても発電コストに与える影響は同0.1円以下にとどまり、原発の優位性は保たれる。」と公言しています。
「安い」というのは、机上の空論です。原発が重大事故を起こさず、年70%稼働すると仮定しての試算であり、フクシマ原発事故以降の稼働率はゼロまたはゼロに近いのです。経産省の役人も「稼働率をどう置くのかは難しい」と認めています。
安いどころか、フクシマ事故以降は原発の維持・管理費すら工面できず、電気料金値上げでしのいできたのです。美浜1・2号や敦賀1号の廃炉で原発の維持・管理費が浮き、電気料金をその分下げられるようになった事実(関電はサボタージュ)を見れば明らかなように、「原発を廃炉にすれば安くつく」状態になっているのです。
では、どうして「原発は安い」と「ウソ」をつくのでしょうか。それは、原発が事故を起こさず、40年以上高稼働率で運転し、巨額の廃炉積立不足金や廃炉時点で減価償却の済んでいない原発資産、使用済核燃料の再処理費、高レベル放射性廃棄物処分費を電気料金に転嫁して回収できれば、「電力会社にとっては安く」つくからです。
しかし、福島第一原発事故では、東電や電事連の試算でも事故処理・廃炉費や損害賠償・除染費は20兆円を超えるとされており、これを東京電力や九電力会社だけで負担するとなれば「電力会社にとって安い」とはとても言えません。
また、40年で廃炉になってしまうと、廃炉費積立金すら賄えません。何となれば、原発の「安い」コストは、原発重大事故を起こさず、40年以上、70%以上の設備利用率で稼働することが前提だからです。フクシマ事故以降は、その前提が崩れているのです。
ところが、フクシマ事故処理・廃炉・損害賠償費や廃炉費などを「電気の託送料金」に転嫁して原発の稼働とは無関係にこれらを回収できれば、新電力との競争力も回復して、原発は息を吹き返し、「電力消費者にとっては高くても、電力会社にとっては安く」なり、電力会社が原発で儲けられるようになるのです。
これは、原発コストを電力消費者に強制的に転嫁して初めて得られる「電力会社の利益」です。私たち電力消費者は、こんな理不尽な原発コストの転嫁を許せるでしょうか。
フクシマ事故が繰り返されても、電力会社の負担できない事故処理費などを私たち消費者が全面的に引き受ける前例を作ることになってしまいます。
それは原発再稼働を促し、重大事故を顧みない電力会社のモラルハザードを一層高めてしまうでしょう。

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