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福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

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5月23日の原子力規制委員会との交渉を踏まえ、緊急申し入れを行いました

5月23日の原子力規制委員会との交渉を踏まえ、緊急申し入れを行いました

5月23日の原子力規制委員会との交渉を踏まえて、下記の緊急申し入れを行いました。

呼びかけ団体:川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

賛同団体・個人(5月24日現在86団体、777個人)

2016年5月31日
原子力規制委員会委員長 田中俊一様

5月23日の話合いを踏まえた、熊本地震と川内原発に関する緊急申し入れ

(「緊急申し入れ」のpdfはこちら)

私たちは5月12日、貴職に「2016年熊本地震を踏まえた川内原発の基準地震動に関する公開質問状」を提出し、5月23日の原子力規制庁(職員2名)との話合いの場で口頭回答を受けました。
その中で、原子力規制庁は「現時点で、川内原発の基準地震動の見直しを働きかける、ないし、運転停止命令を出すというところにはない」と説明されましたが、熊本地震と川内原発に関する私たちの主張、すなわち、①熊本地震の前震であるM6.5の地震で1,000ガル超(はぎとり波換算)の地震動が起きた可能性、②益城観測点の地下地震観測記録が川内1・2号の基準地震動を超えた可能性、③地震動評価手法の一つである耐専スペクトルが大幅な過小評価である可能性については、事実として認めざるを得ませんでした。
そして、原子力規制庁は、「今回の地震の観測記録について、きちんと分析すべきということで・・・規制委員会として大きな地震があった後にですね、きちんと情報収集をしていくという姿勢自体はそれはそう思っております。」と説明し、「熊本地震はまさに今調査をやっているところでございますので、そういう知見を踏まえて、その位置づけ(今回のM6.5の地震の益城観測点での地震観測記録を「震源を特定せず策定する地震動」に組み入れること)についても検討していきたいと思います。」と回答されました。また、「現時点で詳細はぎとり波解析をやるというところまで、まだ、我々の知見収集も至っていないので、そこの必要姓があってやっていくということになれば、それは規制委員会、規制庁、旧JNESのグループもありますので、そういった中で解析なんかは当然やっていくことになりますけども。・・・現時点ではあくまで仮定の話なので、ここで詳細はぎとり解
析をやりますというふうに私が何か宣言するようなことはできません。」と言い訳をされました。2016年熊本地震では横ずれ断層によるM6.5の地震で震度7の激震観測記録が益城観測点で採れており、これを詳細に分析し、基準地震動の策定に反映させることは原子力規制委員会の義務だと私たちは考えます。
さらに、原子力規制庁は、炉規法上の「法的権限で認められている範囲内であれば止める権限はある」としながら、「現時点で、何かこの概算のはぎとリ波で、Ss-1を比較上超えているので、現時点で止めましょうというそこまでの権限を我々は有していない。」「ある種概算で、もしかしたら、川内の原発の直下で同じような地震がもし起これば、仮に1,000ガルを超えるかも知れない、その段階で、九州電力に対して停止命令を出せる、そこまでの権限ではない。」と居直っています。「地下地震観測記録を2倍にするはぎとり波の概算」で私たちが示した上記の①~③の知見に基づき、更なる詳細なはぎとり解析を行って基準地震動に反映させるのは当然のことですが、フクシマを繰り返さないため、手遅れにならないため、少なくとも解析を終えるまでの間、川内原発の運転を停止させ、再稼働審査を凍結させるのが、原子力規制委員会の義務だと私たちは考えます。
このような観点から、以下のことを緊急に申し入れますので、真摯にご検討下さり、速やかに対応して下さるよう強く求めます。

1.4月14日のM6.5の地震では震源断層近くで1,000ガル超の地震動(はぎとり波換算)が発生した可能性が高く、至急、再現モデルを構築して地震動解析を行ってください。また、得られた知見を基準地震動に反映させて下さい。

2.4月14日のM6.5の地震に関する益城観測点での地震観測記録を詳細にはぎとり解析し、これを「震源を特定せず策定する地震動」に位置づけ、基準地震動に反映させて下さい。

3.2の詳細解析によるはぎとり波を川内原発の市来断層帯市来区間M7.2の耐専スペクトルと比較し、耐専スペクトルが大幅な過小評価になっていることを確認し、耐専スペクトルを抜本的に改定してください。

4.上記解析を行う間、川内原発の運転を停止させ、再稼働のための適合性審査をすべて凍結して下さい。
以上

(「5・23交渉のまとめ」のpdfはこちら)
(「5・23交渉の記録」のpdfはこちら)

5・23原子力規制委交渉の成果を踏まえ、
川内1・2号運転中止、再稼働認可取り消し、
基準地震動見直しを原子力規制委に求めよう!

呼びかけ: 川内原発建設反対連絡協議会、川内つゆくさ会、反原発・かごしまネット、まちづくり県民会議、川内原発活断層研究会、さよなら原発:アクションいぶすき、原発ゼロをめざす鹿児島県民の会、かごしま反原発連合有志、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

2016年熊本地震の余震が継続し、震源の不気味な広がりを危惧しながら、私たちは5月23日、原子力規制委員会・原子力規制庁と交渉し、川内1・2号の運転停止、再稼働認可取り消し、基準地震動の見直しを強く求めました。公開質問状への賛同は86団体・777個人(5月24日現在)に達し、市民側参加者35名で原子力規制庁の安全管理調査官ら2名を1時間半にわたり厳しく追及しました。
原子力規制庁は「現時点で、川内原発の基準地震動の見直しを働きかける、ないし、運転停止命令を出すというところにはない」と居直りました。しかし、熊本地震と川内原発に関する私たちの主張そのものについては、「現時点では即対応すべきとは考えていない。」「現時点で、詳細はぎとり波解析をやるというところまで知見収集も至っていない。」としながらも、事実上、①熊本地震の前震であるM6.5の地震で1,000ガル超(はぎとり波換算)の地震動が起きた可能性、②益城観測点の地下地震観測記録が川内1・2号の基準地震動を超えた可能性、③地震動評価手法の一つである耐専スペクトルが大幅な過小評価である可能性については、事実として認めざるを得ませんでした。その概要は以下の通りです。

熊本地震による重大な警告を直視せよ!

私たちは、2016年熊本地震において、4月14日に震度7の激震をもたらしたM6.5の益城(ましき)観測点での観測記録から、次のことが言えると主張しました。

(1)原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁へ統合)による地震動解析結果との比較から、4月14日のM6.5の震源近傍では1,000ガルを超える地震動が襲った可能性が高い。(図1と図2参照)

(2)同地震の益城観測点での地下地震観測記録はぎとり波は川内原発の基準地震動を応答スペクトルの一部で超えている。(図3参照)

(3)同はぎとり波の応答スペクトルはM7.3の市来断層帯市来区間(等価震源距離はほぼ同じ約14km)の耐専スペクトルを超えており、耐専スペクトルでは過小にすぎる。また、断層モデルによる地震動解析結果は耐専スペクトルの1/2~1/3にすぎず、大幅な過小評価になっている。(図3参照)

1,000ガル超の可能性があることは認める

原子力規制庁は、JNESの最大加速度分布図に益城観測点のデータを載せた図2について、益城観測点の地下地震観測記録(NSで237ガル、これを2倍にした簡易はぎとり波の最大加速度470ガル)のほうが少し大きめですが、JNESの最大加速度分布図に良く合うこと、M6.5の震源断層により近いところに地震計があれば1,000ガル超(1,500ガル程度の可能性すらある)の地震動が観測されていた可能性があるとの指摘については否定しませんでした。その代わりに、JNESの断層モデルは「どの程度の年超過確率となるのかを確認する目的でパラメータをいじって評価するものであり、基準地震動と対比させて議論するようなものではない」と逃げたのです。しかし、この議論は過去2回の議論ですでに破綻しており、年超過確率を議論するためにも正確な地震動評価ができていなければ、得られた年超過確率自身が無意味になるのです。しかも、昨年1月の交渉時には、「JNESの解析結果は北海道留萌支庁南部地震の地震観測記録にも良く合う」ことを私たちから示され、原子力規制庁は、それまで主張していた「厳しいパラメータ設定だ」との主張を撤回した上で「専門家を含めて再現性について改めて検討すべき」と認めていたのです。この経緯を詳しく説明すると、原子力規制庁は沈黙せざるを得ませんでした。
検討をサボタージュしてきたのは原子力規制庁なのですから当然です。沈黙の末に、「今回の地震の観測記録について、きちんと分析すべきということで、規制委員会としては、我々審査する側もさることながら、旧JNESが統合した系列基盤グループもありますので、規制委員会として大きな地震があった後にですね、きちんと情報収集をしていくという姿勢自体はそれはそう思っております。」といいながら、「現時点で即対応すべき点があるかというご質問であれば、現時点ではまだそういうふうに考えていない」と逃げたのです。

「震源を特定せず策定する地震動」に加えるべき

その次に持ち出したのは、今回のM6.5の地震は「起こるべきところで起こった」日奈久断層帯での地震であり、「震源を特定せず策定する地震動」ではなく、「震源を特定して策定する地震動として評価すべきではないか」という主張です。しかし、M6.5の地震は地表に痕跡が残らないため、地表をいくら精査してもわかりません。川内原発の直下でM6.5の地震が起きる可能性を否定できないため、「震源を特定せず策定する地震動」が考慮され、留萌支庁南部地震の観測記録(はぎとり波)が基準地震動として採用されているのです。今回のM6.5の地震が既知の活断層による地震活動の一部として起きたとは言え、横ずれ断層によるM6.5の地震の激震記録が初めて採れたのですから、それを基準地震動に反映させるのは当然だと言えます。M6.5の地震が既知の活断層で起ころうが、活断層のないところで起ころうが、その地震動に本質的な違いはないはずです。
活断層のないところで同様の記録が採れるまで待つという悠長な姿勢では、フクシマの二の舞になってしまいます。原子力規制庁は、私たちの厳しい追及にたまらず、「熊本地震はまさに今調査をやっているところでございますので、そういう知見を踏まえて、その位置づけについても検討していきたいと思います。」と引き取らざるを得ませんでした。益城観測点の地震観測記録を基準地震動に反映させることができるかどうかは今後の運動にかかっていると言えます。

詳細はぎとり波解析を行う義務がある

3番目に持ち出したのは益城観測点の地下地震観測記録を2倍にしたものは「はぎとり波」ではないという主張です。確かに、図4左のとおり、地下地震計の地震観測記録は入射波E’と地表から反射して戻ってくる反射波F’が重なっており、後者を取り除いた上で、上部地層をはぎとった表面に地震計を置いたと仮定して得られる入射波E(この仮想表面では反射波は入射波に等しい)を2倍にして「はぎとり波」を作成しなければなりません。そのためには、正確な地盤データを用いた地表・地下の地震観測記録の突き合わせ解析が必要です。その前段として、まず、地下地震観測記録を2倍にして大きさを概算評価するという手法がとられており、北海道泊原発の審査でも行われています。原子力規制庁も「2倍化する方法自体は先ほど説明頂いた泊の審査でもスクリーニングの過程では当然使っています」と認めましたが、それを基準地震動等と直接比較して「この周期帯で超えたといって、そういった比較ができるものではない」と主張し、図3のような比較はできないと言い張りました。
ところが、詳細解析を行っても短周期側では高々10~20%程度の差にしかならないはずです。図3の基準地震動に対しては、0.2~0.3秒の周期帯で益城観測点での「地震観測記録を2倍にした概算はぎとり波」が1.5倍程度に超えており、市来断層帯市来区間M7.2の耐専スペクトルに対しても周期0.1秒以上で2倍程度になっているのです。つまり、この事実を認めるのであれば、詳細はぎとり波解析を行って、より正確に確認すべきです。そして、原子力規制庁も遂に、「地盤モデルとかもないし、実際の解析もできないので、どのぐらい下がるのか、定量的には言えない」と逃げ、「現時点で詳細はぎとり波解析をやるというところまで、まだ、我々の知見収集も至っていないので、そこの必要姓があってやっていくということになれば、それは規制委員会、規制庁、旧JNESのグループもありますので、そういった中で解析なんかは当然やっていくことになりますけども。ただ、すみません、現時点ではあくまで仮定の話なので、ここで詳細はぎとり解析をやりますというふうに私が何か宣言するようなことはできません。」「詳細解析を金輪際やりませんと申し上げているわけではなくて」と言い訳をしたのです。

現時点で川内原発を止める権限はない

益城観測点での地震観測記録を2倍にした概算はぎとり波に基づいて川内1・2号の運転中止を求めた点については、炉規法上の「法的権限で認められている範囲内であれば止める権限はある」としながら、「現時点で、何かこの概算のはぎとリ波で、Ss-1を比較上超えているので、なので現時点で止めましょうというそこまでの権限を我々は有していないです。」「ある種概算で、もしかしたら、川内の原発の直下で同じような地震がもし起これば、仮に1,000ガルを超えるかも知れない、その段階で、九州電力に対して停止命令を出せる、そこまでの権限ではない。」と居直りました。つまり、私たちの主張した内容については事実としてそうなっているということを確認しながら、事態の緊急性を認めようとしなかったのです。
「川内原発の直下でM6.5の地震が起きてからでは遅い」「フクシマを繰り返すな」という私たちの声を原子力規制庁は踏みにじり、「必要があれば、そういったはぎとり解析とか数値検証とか当然やっていくべき話でありますけど、現時点でそういったものを見立てて、直ちに川内原子力発電所を停止すべきと、そういうような、止めるのか止めないのか、止めるべきかどうかという議論をするような知見の状態では今ないということを申し上げている。」と平然と居直ったのです。

九州電力による説明は誤りと認める

最後に、適合性審査の事業者ヒアリングで九州電力が原子力規制庁に行った説明が根本的に誤っており、原子力規制庁はその誤りに気付かないという重大な過誤をおかしたのではないかという点を問い質しました。これは断層モデルによる短周期側の地震動評価で、九州電力が「応力降下量を15.9MPaから25.1MPaへ引上げても地震動解析結果は変わらない」と主張していたものです。
原子力規制庁は結局、九州電力によるこの説明が誤っていること、原子力規制庁がその説明を聞いて誤りを指摘しなかったことについては認めました。
しかし、原子力規制庁は「間違いに気付かなかったというか、必要ないというふうに考えてました。」と論点をすり替えてきました。「九州電力に対してこれでは説明になってないですよという指摘をしておけば良かったのかというと、それはそういうことなんですかね。ただ、実際、その短周期側については先ほどから申し上げているように、改めての資料とかはいらないので、この資料について九州電力に対してここはおかしいよとヒアリングの場では言ってない」というのです。私たちは、原子力規制庁側から短周期側でも地震動解析を行うようにと指示されなければ、九州電力がわざわざこのような資料を準備して説明することもなかったはずだと詰め寄りましたが、原子力規制庁は、そもそも必要なかったととぼけ続けたのです。水掛け論になってしまいましたので、議論を打ち切りましたが、九州電力がとんでもない誤りを冒したことだけは確かであり、原子力規制庁もその誤りを認めたのですから、九州電力の誤りを今後追及することが課題になります。もし、この短周期地震動解析を行っていたら、基準地震動を超えていた可能性があり、適合性審査がいかにずさんなものであるかが明らかになるからです。

大衆運動の力で規制委員会の姿勢を転換させよう

熊本地震は「原発はM6.5の直下地震に耐えられない」ことを事実で示しています。益城観測点における地下地震観測記録はそれを如実に示しています。原子力規制委員会・原子力規制庁は見て見ぬ振りを決め込んでいますが、大衆的な運動の力でそのような姿勢を転換させる必要があります。
熊本地震は、どこで起きても不思議ではないM6.5の小さな地震で1,000ガル超の大きな地震動が起きた可能性があること、益城観測点の地震観測記録は川内原発の基準地震動を超えた可能性が高く、耐専スペクトルの大幅な過小評価を暴いていることを明らかにしました。これらの事実そのものを原子力規制庁は否定できませんでした。これらを広く伝え、原子力規制委員会に川内原発の即時運転中止と再稼働認可取り消しを求め、基準地震動の抜本的見直しを求めていきましょう。

nrc01

 

 

 

図1.2016 年熊本地震の前震M6.5、本震7.3と余震分布(震央分布,KiK-net 観測点▲を追記)

nrc02

 

 

 

図2: 原子力安全基盤機構JNESによるM6.5の左横ずれ断層による地震基盤表面(Vs=2600m/s) での加速度分布図(水平方向,最大値1340.4cm/s2)(右横ずれの場合には上下を反転させた分布図になるため,図1 における震央距離約6kmの益城観測点KMMH16はこの図で震源断層の右斜め下300~400ガルの▲の地点に相当する)

 

nrc03

 

 

 

 

 

 

図3.益城観測点KMMH16の地下地震観測記録のはぎとり波(2倍化)の擬似加速度応答スペクトルと川内1・2号の基準地震動Ss-1および耐専スペクトル(水平方向)の比較(防災研データから長沢が作成)

 

nrc04

 

 

 

図4.はぎとり波の概念図(東京電力:柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉敷地における地震波の増幅特性についてコメント回答,第246回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合,資料3 (2015.7.3))

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