若狭ネット

福井と関西を結び脱原発をめざす市民ネットワーク

大阪連絡先 dpnmz005@ kawachi.zaq.ne.jp
若狭ネット資料室(室長 長沢啓行)
e-mail: ngsw@ oboe.ocn.ne.jp
TEL/FAX 072-269-4561
〒591-8005 大阪府堺市北区新堀町2丁126-6-105
「エネルギー基本計画(案)に対する意見の募集」に5つの意見を提出しました

「エネルギー基本計画(案)に対する意見の募集」に5つの意見を提出しました

「エネルギー基本計画(案)に対する意見の募集」はこちら

————- 意見その1 ——————————————————————————————
・該当箇所:第5章(6)-②2191-2199行
「安全かつ円滑に廃止措置を進めていく上では、廃棄物の処理の最適化も必要である。海外事業者の豊富な実績や技術を国内作業に活かすことが重要であり、国内において適切かつ合理的な方法による処理が困難な大型機器については、関連する国際条約や再利用に係る海外の実例等を踏まえ、相手国の同意を前提に有用資源として安全に再利用される等の一定の基準を満たす場合に限り例外的に輸出することが可能となるよう、必要な輸出規制の見直しを進める。また、クリアランス物については、廃止措置の円滑化や資源の有効活用の観点から、更なる再利用先の拡大を推進するとともに、今後のフリーリリースを見据え、クリアランス制度の社会定着に向けた取組を進める。」
・意見内容
 廃止措置に伴う放射性廃棄物の輸出・国外処分は国内外法で禁止されており、例外的にも輸出すべきではない。クリアランス物の利用は業界内に限り、トレーサビリティ確保を徹底させ、拡大すべきではない。
・理由
廃止措置(解体撤去)に伴う放射性廃棄物については、国内処分が原則であり、国外への輸出および国外での処分は国際法(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約など)および国内法(外国為替及び外国貿易法など)で禁止されている。これを「例外的に輸出することを可能」とするのは法令違反であり、また、放射性廃棄物処分のあり方について国際的に範を示すべき「原子力先進国」にとって、他国への放射性廃棄物押しつけによる処分は「恥さらし」でもある。さらに、「法改正なしの通達で対応」(2021/9/19朝日新聞)するのは、国会での公の議論を回避して秘密裏に実施することを画策するものであり、国民への裏切り行為ですらある。
「クリアランスレベル以下の放射性廃棄物」は、放射性廃棄物として扱う必要がないとされ、一般市場での再利用が可能とされてはいるが、法制度導入時には「クリアランス制度が定着するまでの間、事業者が自主的に搬出ルートを確認し、業界内で再利用」(2005 年 10 月第 163 国会での政府説明)することに限定され、「制度定着」の判断は「国が適切な時期に広く意見を伺いつつ」行うとの答弁が行われ、現在も状況は変わっていない。環境省も当時、「(クリアランスされた廃棄物を廃棄物処理法と)同じ廃棄物として扱っていいかというと、もしもの、もしもの、もしもの場合が出てきた場合、しっかりどこに行ってしまったのか判断しなければいけない。トレーサビリティをしっかり持たないといけないと考えております。」(2010 年 4 月 9 日衆議院文部科学委員会環境省政務官)と答弁しており、実際にトレーサビリティ確保のため 2016 年度からクリアランス廃棄物情報システムが運用されている。クリアランス物は、検認を厳格にして構内利用に限り、トレーサビリティ確保を徹底すべきであり、フリーリリースにすべきではない。
原発の廃止措置は「即時解体撤去」ではなく、100年程度の安全貯蔵期間をとるべきである。というのも、福島第一原発や使用済核燃料とは異なり、廃止措置対象の原子炉建屋内の主な汚染源は誘導放射能のコバルト60(半減期5.27年)であり、100年経てば100万分の2程度へ下がる。現に、保管中の蒸気発生器の汚染レベルは減衰が進んでいる。放射線管理区域の「即時解体撤去」をやめればクリアランスそのものが不要になる。

————- 意見その2 ——————————————————————————————
・該当箇所:第1章(2) 283-289行
「汚染水からトリチウム以外の核種を環境放出の際の規制基準以下まで浄化処理したALPS処理水については、2021年4月に公表した「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議決定)を踏まえ、厳格な安全性の担保や政府一丸となって行う風評対策の徹底を前提に、東京電力が原子力規制委員会による認可を得た上で、2年程度後を目途に、福島第一原子力発電所において海洋放出を行う。」
・意見内容
 東京電力と政府は「ALPS処理水は関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」、「希釈しない、排水せずタンクに貯留する」との約束を守り、トリチウム汚染水は「海洋放出」せず、タンク貯蔵を続けるべきです。
・理由
トリチウム汚染水(政府が「ALPS処理水」と称しているもの)の海洋放出は、(1)「トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超えるサブドレン及び地下水ドレンは、希釈しない、排水せずタンクに貯留する」との運用方針に違反します。また、(2)「ALPS処理水は関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」との東電・国の約束に違反します。
とくに、(1)の「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」は、東電・政府からの強い要請を受け、県漁連など福島県側が苦渋の決断で、2015年9月に受け入れたものです。当時、農林水産物に含まれるセシウムなどの放射能レベルは、ほとんどが基準値の100Bq/kgを下回り、明るさが見え始めたときでした。それでも、原発建屋周辺から汲上げた地下水を放出するわけですから、たとえ運用目標の濃度未満のもののみ放出するとしても、影響は免れません。強い反対の声があったものの、「建屋への大量の汚染水流入を止めるためには仕方がない」と泣く泣く、苦渋の決断で受け入れたのです。この運用方針に従って、トリチウム濃度が1,500Bq/Lを超える6.5万トンの地下水ドレン水がタンクに貯められています。125万トンの貯留量の5%強を占めます。ところが、今年7月26日に脱原発福島県民会議など8団体が「トリチウム汚染水海洋放出方針決定」の撤回を求めて行った対政府交渉で、経産省は「地下水ドレンはALPS処理水とは別物」と主張し、「タンク貯蔵水をALPSで処理した後は運用方針に従う必要はなく、希釈・排出できる」と言い張り、(1)の運用方針を骨抜きにしたのです。これは明白な約束違反であり、発言を撤回し、2015年の約束を遵守すべきです。
(2)の約束は、福島県漁業協同組合連合会からの要望書(2015年8月11日)に対する政府の回答(「経済産業大臣臨時代理 国務大臣 高市早苗(当時総務大臣)」名で2015年8月22日付)および東京電力の回答(同年8月25日付)ですが、福島県では、県漁連をはじめ農林水産業者が一斉に反対の声を上げ、36市町村議会が反対、撤回、懸念の意見書を採択していて、全漁連も「絶対反対」を貫いています。「関係者の理解」など得られていません。これについても、経産省は7月26日の交渉で「放出までの期間を利用して理解を得る」と主張し、約束違反であることを認めず、「理解が得られていなくても希釈・海洋放出方針は決定できる」、「放出までに理解を得るよう努めるが、理解が得られなくても放出できる」との中身にすり替えたのです。その後8月24日と25日に出された政府の「取りまとめ」と東電の「検討状況」には、どこにも「放出までの期間を利用して理解を得る」との文言はなく、その代わりに「農林漁業者等の生産者に対する説明会や意見交換を重ね、今回の決定の背景や検討の経緯等への理解を深めていただく」としています。「理解を得る」とは「同意を得る」ことであり、同意権や拒否権に通じます。約束違反に至った「背景や経緯」について知る=「理解を深める」こととは全く違います。福島県民からの公開討論会開催要請を拒み、「関係者の同意なしには処分しない」との約束を「なぜ破るのか」、「緊急避難的に約束を破らねばならない切迫した状況があるのか」について一切説明せず(できず)、「決定の背景や検討の経緯等」のアリバイづくりのための「説明」でお茶を濁そうというのは論外です。一方的な約束違反と押しつけは断じて許せません。
「ALPS処理水の海洋放出」方針を撤回することなくしては、「被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添」(213行)うことなどできないはずです。

————- 意見その3 ——————————————————————————————
・該当箇所:第5章(1) 1096-1100行,第5章(13)3550-3552行および3575-3581行
「原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。」
「このエネルギー需要を満たす一次エネルギー供給は、430百万kl程度を見込み、その内訳は、石油等を31%程度、再生可能エネルギーを22~23%程度、天然ガスを18%程度、石炭を19%程度、原子力を9~10%程度、水素・アンモニアを1%程度となる。」
「原子力発電については、CO2の排出削減に貢献する電源として、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合は、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進め、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組み、電源構成ではこれまでのエネルギーミックスで示した20~22%程度を見込む。」

・意見内容
 「原発依存度の可能な限りの低減」をめざし、「重要なベースロード電源」との原子力の位置づけをやめ、一次エネルギー供給の9~10%程度、電源構成の20~22%程度の原子力比率を「ゼロ程度」とすべきです。

・理由
福島第一原発炉心溶融事故から10年後の今なお、国民の過半数が原発の再稼働に反対しています。福島第一原発事故は未だ収束しておらず、帰還困難区域を始め放射能汚染は続いており、避難指示解除で住居などの経済的支援が打ち切られた避難者の生活は困窮し続けています。福島県民の「生業」(なりわい)は未だ取り戻せていません。その現実を直視しようとしない政府とは異なり、国民は冷静に原発事故がもたらす厳しい現実を十分に理解し認識しています。二度と福島事故を繰り返さないために、国民の過半数が再稼働に反対し続けているのはそのためです。他方で、関西電力は原発新増設に絡んだ贈収賄事件=「森山案件」で刑事告発されており、株主による民事裁判でも会社の責任が追及されています。東京電力は核物質防護能力がなく、施設・機器や安全対策工事の品質管理能力もなく、これらに関する調査報告も根本原因の究明も組織責任の糾明もないズサン極まりないものしか作成できず、電力会社への「国民の信頼」は完全に失われています。このような状況では、たとえ、原子力規制委員会の適合性審査に「合格」したとしても、その再稼働に国民は賛成できません。にもかかわらず、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」(2125-2126行)としていますが、国民の声をこそ尊重し、原発の再稼働は中止すべきです。
「可能な限り原発依存度を低減する」(222-223、758-759行)および「原発依存度の可能な限りの低減といった基本的な方針の下で取組を進める。」(3561行)としながら、どこにも「低減」計画は打ち出されず、むしろ、原子力を「重要なベースロード電源」(1100行)と位置づけ、原子力の比率を一次エネルギー供給の「9~10%程度」、電源構成の「20~22%程度」とするのは、明らかに「現在より原発依存度を高める」ものであり、「原発依存度の可能な限りの低減」という基本方針に反します。2030年の原子力の比率を「ゼロ程度」とし、「ゼロ」へ至る筋道を具体的に示すべきです。

————- 意見その4 ——————————————————————————————
・該当箇所:第4章(2)714-718行
「2050年カーボンニュートラルを実現するために、再生可能エネルギーについては、主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組み、水素・CCUSについては、社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。」

・意見内容
 「(原子力の)必要な規模を持続的に活用」は、「原発依存度の可能な限り低減」に反し、撤回すべきです。再エネを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組み」原子力ゼロへ進む道筋を示すべきです。

・理由
原発新増設を復活させる動きは15年前にもあり、「原子力ルネッサンス」としてもてはやされました。ブッシュ政権が2005年に成立させた包括的エネルギー法は、先進的原発に審査費用補填、最大80%の融資保証、運開後の減税措置などの優遇策を与え、34基の計画が乱立する「原子力ルネッサンス」と呼ばれるバブルを生み出したのです。ところが、その結末は、4基だけの着工と工期延長によるWH社=東芝の破産でした。続いて、三菱重工業も日立製作所もトルコとイギリスへの原発輸出計画でそれぞれ巨額の損失を被り、撤退しています。
これら国内3大原子力メーカーの原発輸出計画の破綻について、現在の第5次エネルギー計画策定時(2018年7月)にはすでに東芝案件が表面化し、三菱重工業や日立製作所でも顕在化しつつありましたが、原発輸出の失敗については一切触れられませんでした。今回の第六次エネルギー基本計画では当然、当時の安倍首相が前面に出た原発輸出計画の失敗が総括されるべきであり、その深刻な反省の上に、国内での原発新増設やリプレースの技術的・経済的困難さについても明記されるべきです。ところが、何の記述もありません。これでは同じ過ちを国内で繰り返すだけです。
WH社破綻後、米で唯一建設が継続されたヴォーグル3・4号では、2021年11月の竣工予定が再々延期され、建設費も2基で290億ドル(約3兆2千億円)に跳ね上がっています。福島事故以降、原発建設費は1兆円時代に入り、再エネFIT制度なみの原発電気買取制度や税制優遇策等が導入されない限り、国内でも原発新増設・リプレースは不可能です。電力会社やその息のかかった経済諸団体は、再エネFIT制度のようなものを原発にも適用するよう自民党や政府に要請しているようですが、とんでもありません。
発電コスト検証ワーキンググループによる「基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告」(2021年9月)では、2030年新設プラントの発電コスト比較で、太陽光(事業用、住宅)と風力は原子力より安いという結果が示され、その一端が裏付けられましたが、原子力の発電コストは過小に見積もられています。原子力の試算では適合性審査申請中の国内既設炉と同じ原発を新増設するケースが想定されていて、第3世代のABWRは含まれるものの、APWRは実績がなく、「第3世代+」の米AP1000や仏EPRなどでは建設費が1兆円以上でとても競争力はありませんが、一切触れられていません。
米国の小型モジュール炉SMR開発は次世代原潜・原子力空母用原子炉開発と一体であり、軍民一体の手厚い優遇策(建設用地提供、技術開発・審査費支援、運転支援金支給など)が講じられ、設置場所もアイダホ国立研究所内で秘密が保持されています。福島事故10年後も再稼働反対が過半数の日本で、原発を優遇するこのような措置の導入を国民が許すことは決してありえません。
「必要な規模を持続的に活用」は、「原発新増設やリプレース、さらには小型モジュール炉の開発」を含意していると思われますが、それは「可能な限り原発依存度を低減する」(222-223、758-759行)および「原発依存度の可能な限りの低減といった基本的な方針の下で取組を進める」(3561行)という方針に反します。原子力について「必要な規模を持続的に活用することは不可能であり、原発ゼロをめざす」と明記すべきです。「必要な規模を持続的に活用」するという方針を撤回し、2030年の原子力の比率を「ゼロ程度」とし、「ゼロ」へ至る筋道を具体的に示すべきです。

————- 意見その5 ——————————————————————————————
・該当箇所:第5章(6)2232-2238行および2325-2329行
「最終処分に至るまでの間、使用済燃料を安全に管理することは核燃料サイクルの重要なプロセスであり、使用済燃料の貯蔵能力の拡大へ向けて政府の取組を強化する。あわせて、将来の幅広い選択肢を確保するため、放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの技術開発を進める。
 核燃料サイクル政策については、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、再処理やプルサーマル等を推進するとともに、中長期的な対応の柔軟性を持たせる。」(2232-2238行)
「(b)核燃料サイクル政策の推進
(ア)再処理やプルサーマル等の推進
 我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としている。」(2325-2329行)

・意見内容
 「使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針」とする核燃料サイクル政策推進政策を根本的に転換し、「再処理やプルサーマル等の推進」は中止すべきです。

・理由
使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウムは、本来、高速増殖炉もんじゅで利用されるはずでしたが、もんじゅはナトリウム漏えい火災事故等で廃炉になり、仏ASTRID計画も2019年で仏予算が打ち切られ、日仏共同研究も継続できない状態で、高速「増殖」炉も高速(超ウラン元素焼却)炉も将来の見通しは全くありません。国際的に再処理・プルトニウム利用からの撤回が鮮明になる中、日本では「高速増殖炉実用化までのつなぎ」に過ぎなかったプルサーマルが「本命」であるかのように見なされていますが、余剰プルトニウム問題で原子力委員会が「我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方」を改定(2018.7.31)し、プルトニウムが減らない限り、六ヶ所再処理工場を操業させない方針へ転換しています。つまり、国内でも、核燃料サイクルはすでに破綻し、使用済燃料の行き先に困った電力会社と政府が再処理を口実に使用済燃料を生み出し続け、使用済燃料の「中間貯蔵」を進めているにすぎません。「再処理がなくなれば原発を動かせなくなる」ことを案じて、動かなくなった核燃料サイクルが動いているかのように国民を騙し続けているのです。このような茶番劇はもうやめにして、再処理・プルトニウム利用政策を中止し、プルサーマルも中止し、核燃料サイクル政策を抜本的に転換すべきです。
むつ市に計画中の使用済燃料中間貯蔵施設だけでなく、原発サイト付近に乾式貯蔵施設ができても、「中間」とは名ばかりで、「永久貯蔵」になるのは必至です。なぜなら、六ヶ所再処理工場は、たとえ、新規制基準に適合して竣工しても、フル操業できないからです。
その理由は、プルサーマルが進まないからです。仏からの輸入MOX燃料費がウラン燃料の10倍と高く(高浜3・4号の1999~2017年の輸入ウラン燃料は1.0億円/体に対し、輸入MOX燃料は5.4~10.6億円)、国内のMOX燃料ではさらに数倍高くなるため、電力自由化の下では核燃料費の高騰は原子力の再エネに対する競争力を蝕むからです。そのため、電事連の「プルサーマル計画」では、1基で毎年核分裂性プルトニウム(Puf)が0.4tPuf消費されると仮定し、高浜3・4号、玄海3号、伊方3号の4基で1.6tPufが毎年消費されるかのように想定されていますが、実際は違います。高浜3・4号では3年ごとに16体ずつしか発注されておらず、2基で0.32tPuf/年、玄海3号と伊方3号は残りの仏保管分計0.10tPufは大間原発へ譲渡する予定で、MOX燃料に加工できるプルトニウムがありません。英に計1.7tPufのプルトニウムが存在しますが、英にはMOX燃料加工工場がなく、発注できないのです。つまり、現在プルサーマル可能な4基では0.32tPuf/年(非核分裂性を含む全プルトニウムで0.49tPu/年)、「プルサーマル計画」の1/5程度しか消費できないのです。  電気事業連合会は、玄海や伊方の英保管分を東電等の仏保管分と交換してMOX燃料加工する案を画策していますが、他の電力会社のプルトニウムでプルサーマル利用するのは地元の理解が得られないでしょうし、九州電力と四国電力がわざわざ他社の高価なMOX燃料を使って電力自由化の下で経済的不利益を受け入れるとは考えられません。
つまり、英仏保管のプルトニウム量を大量には減らせず、六ヶ所再処理工場の操業は進まず、使用済燃料は中間貯蔵施設からなかなか出て行かないのです。むつ市の中間貯蔵施設も受入れから50年後には搬出元へ返却する約束ですから、搬出元の原発へ戻される以外にありません。ところが、その頃には原発は廃炉になっていて、立地自治体が受け入れを拒否すれば、そのまま「永久貯蔵」になる恐れが高まるのです。むつ市等が懸念しているのは、まさに、このことです。国民をだまし続けるのはもうやめにして、核燃料サイクル政策を抜本的に転換すべきです。また、「処分先」のない使用済燃料はこれ以上生み出さないのが原則であり、「原発依存度を可能な限り低減」させ、原発ゼロへ進むべきです。

このエントリーをはてなブックマークに追加

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です