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高浜原発の使用済燃料乾式貯蔵施設設置に関する審査書案のパブコメに2つ目の意見を提出しました。

<該当箇所> 25頁19行目以降

<意見>
審査書(案)の「放射線からの放射線業務従事者の防護(第30条関係)」(25頁19行目以降)の項では、「申請者は、使用済燃料乾式貯蔵施設は、放射線業務従事者の受ける放射線量を低減できるよう、遮蔽、使用済燃料乾式貯蔵容器の配置等の放射線防護上の措置を講じた設計とするとしている。また、使用済燃料乾式貯蔵施設は、放射線管理区域を設定し、放射線業務従事者が立ち入る場所については、サーベイメータによる外部放射線に係る線量当量率の測定を行うとともに、作業場所の入口付近等に線量当量率を表示する設計としている。規制委員会は、申請者の設計方針が、外部放射線による放射線障害防止上の措置を講じた設計とするとしていること、また、放射線管理に必要な情報を表示する設計としていることを確認したことから、設置許可基準規則に適合するものと判断した。」と記載しているが、疑念がある。
 第1320回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合,資料1-5(2025.2.20)における関西電力「使用済燃料乾式貯蔵容器の4つの安全機能について(閉じ込め機能)」,高浜発電所1号、2号、3号及び4号炉設置許可基準規則への適合性について(使用済燃料乾式貯蔵施設)<補足説明資料>16条 燃料体等の取扱施設及び貯蔵施設、によれば、「一次蓋ー二次蓋間圧力異常時の乾式キャスク移送手順等について」の第2図で、乾式貯蔵施設敷地内で7基のキャスクが格納設備なしで放置された状態になるが、高浜発電所敷地境界外の周辺監視区域外で50マイクロSv/年以下を確認してはいるものの、乾式貯蔵施設敷地境界で管理区域境界線量率基準値0.0026mSv/h以下を満たすかどうかのチェックが行われた形跡がない。これを確認した上で、「設置許可基準規則に適合するものと判断した」と言えるかどうかについて、再確認されたい。

高浜原発の使用済燃料乾式貯蔵施設設置に関する審査書案のパブコメに意見を提出しました。

<該当箇所> 19頁11~23行目

<意見>
 審査書(案)の「1.燃料体等の貯蔵容量」(19頁11~23行目)の項には、「申請者は、既に許可を受けたとおり、各号の使用済燃料貯蔵設備に各号原子炉の全炉心燃料及び1回の燃料取替えに必要とする燃料に十分余裕を持たせた貯蔵容量を確保する方針としている。加えて、使用済燃料乾式貯蔵施設を新たに設置することにより、使用済燃料乾式貯蔵容器22基分の貯蔵容量を新たに確保するとしている。規制委員会は、既に許可をした設計方針に基づき燃料体等の貯蔵容量を確保する方針であることを確認した。」と記載しているが、事実関係に大きな過誤、欠落がある。実際には、「使用済燃料乾式貯蔵容器22基分の貯蔵容量を新たに確保する」のではなく、「使用済燃料乾式貯蔵容器22基分の貯蔵施設を設置するが、これは貯蔵容量を新たに確保するものではない」とすべきであり、「規制委員会は、既に許可をした設計方針に基づき燃料体等の貯蔵容量を確保する方針であること、加えて、使用済燃料乾式貯蔵容器22基分の貯蔵施設の設置は貯蔵容量を新たに確保するものではないことを確認した。」と書き改めるべきである。

<理由>
 関西電力は第1247回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合(2024.4.23)で、申請の経緯を説明し、「当社は、使用済燃料対策を着実に実施していくため、使用済燃料対策ロードマップを2023年10月に策定。(ロードマップ(抜粋))使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出、さらに搬出までの間、電源を使用せずに安全性の高い方式で保管できるよう、発電所からの将来の搬出に備えて発電所構内に使用済燃料乾式貯蔵施設の設置を検討。」「ロードマップの確実な実現に向けた取り組みとして、2030年頃に操業開始する中間貯蔵施設への搬出に備え、2030年頃までに美浜、高浜、大飯の3発電所に合計700トンの乾式貯蔵施設設置の計画を2024年2月に公表。」「2024年3月15日に高浜発電所第1期分の設置変更許可を申請。(美浜、高浜第2期分、大飯については、今後申請予定)」「高浜第1期分は、2025年に工事を開始し、2027年頃までに施設の運用開始を計画。」と述べている。
 本審査会合で、関西電力は「使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」と「貯蔵容量」との関係について一切説明していないが、同ロードマップ(2023.10.10)の中では、「本ロードマップの実効性を担保するため、今後、原則として貯蔵容量を増加させない」と明記し、福井県知事や福井県議会への説明の場で、それを文書で示し、繰り返し説明してきた。つまり、乾式貯蔵施設は「使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出」を目的としたものであり、「使用済燃料乾式貯蔵容器22基分の貯蔵施設の設置は貯蔵容量を新たに確保するものではない」のである。
 現に、第41回原子力小委員会(2024年10月16日)資料5の電気事業連合会「原子燃料サイクルの早期確立・確実な推進とプルサーマルの着実な推進に向けた取組み」における「各原子力発電所における使用済燃料の貯蔵量と使用済燃料対策完了後の管理容量」の表注7にも「美浜、高浜、大飯については、乾式貯蔵施設竣工後も原則として貯蔵容量を増加させない。」と明記されている。さらに、電気事業連合会の「使用済燃料貯蔵対策について(「使用済燃料対策推進計画」)」(2025年2月6日)では、「法令要求上は、貯蔵容量から 1炉心分を差し引いた容量が必要」と注記した上で電力各社の「法的要求容量」を記載しているが、関西電力だけが法的要求容量に乾式貯蔵容量を加算していない。これらは、明らかに原子力規制委員会の審査会合で説明した内容とは異なる。
 本来なら、関西電力が審査会合の場で、これを自ら説明すべきところ、敢えてそうせず、「乾式貯蔵施設の設置は貯蔵容量を増加させるものである」と誤解させる説明を次のように行なった。
 設置許可基準規則第16条燃料体等の取扱施設及び貯蔵施設(第2項第1号ロ)に基づき、「使用済燃料の貯蔵設備は、乾式キャスク貯蔵分も含めて、全炉心燃料の約130パーセント相当数の燃料集合体数に十分余裕を持たせた貯蔵容量を有する設計とする。」「1炉心分と燃料取り換え分の1/3炉心分を考慮し、全炉心燃料の約130パーセント相当数の燃料集合体数に十分余裕を持たせた貯蔵容量を有する、全炉心燃料の最大約340パーセント相当分とする設計としている。」
 この340パーセントは乾式貯蔵容量528体が全炉心157体の3.36倍に相当することを意味している。このように説明されれば、原子力規制委員会も「使用済燃料乾式貯蔵容器22基分の貯蔵容量を新たに確保する」ものだと錯覚させられても仕方がないと言える。乾式貯蔵施設の設置は関西電力のロードマップに示された通り、「貯蔵容量の増強ではなく、中間貯蔵施設への円滑な搬出のため」であり、原子力規制委員会も、そのように認識しなければ、設置許可基準規則第16条燃料体等の取扱施設及び貯蔵施設(第2項第1号ロ)を遵守することにはならないと考える。保安規定においても、このことを明記させ、それに違反しないように、管理・監督すべきである。

地球温暖化対策計画(案)に3つ目の意見を提出しました

○該当箇所:第3章第2節1(1)①E(b)「原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで発電が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と技術自給率を有する自律性が高い電源であり、他電源と遜色ないコスト水準で変動も少ない。」(p.60)

○意見の概要:2024年12月発電コスト検証WG試算では原子力は太陽光・風力より高い。AP1000やEPRなど革新軽水炉の建設費は1兆~2兆円に上がっていて、原発新設の経済性はすでにない。「他電源と遜色ないコスト水準」は撤回すべきである。

○意見:2024年12月の発電コスト検証WGの試算によれば、2040年新設では、太陽光(事業用)7.0~8.9円/kWh、太陽光(住宅用)7.8~10.7円/kWhに対し、原子力は12.5円/kWh以上と高い。しかも、新設電源の比較であるにもかかわらず、原子力の資本費は、旧型原発の建設費5,496億円+追加的安全対策費1,707億円=7,203億円と設定している。ところが、新設原発の建設費はAP1000やEPRなど革新軽水炉では1兆数千億円~2兆数千億円に上がっているにもかかわらず、それが反映されていない。三菱重工業のSRZ-1200は基本設計段階のため建設費を見積もることすらできない。原発新設の経済性はすでに失われているのであり、「他電源と遜色ないコスト水準」というのは撤回すべきである。

○理由:2024年12月の発電コスト検証WGの試算によると、2023年新設の太陽光(事業用)が10.9円/kWhに対し原子力は12.6円/kWh以上と高い。火力は、LNG火力19.1円/kWh、石炭火力24.8円/kWhで、もっと高い。2040年新設では、太陽光(事業用)7.0~8.9円/kWh、太陽光(住宅用)7.8~10.7円/kWh、原子力12.5円/kWh以上で太陽光の優位が高まる。原子力だけ「以上」となっているのは重大事故による損害賠償・廃炉費に事故発生確率をかけたコストによって変わるからであり、事故発生確率には恣意性が残る。しかも、新設原発を対象にしながら、その資本費を旧型原発の建設費5,496億円+追加的安全対策費1,707億円=7,203億円と設定している。これは「旧型原発を建てて福島事故後の平均的な追加的安全対策費を加える」ものであり、今後新設対象となるAP1000やEPRなど革新軽水炉とは異なる。AP1000やEPRなど革新軽水炉の建設費は1兆数千億円~2兆数千億円へ跳ね上がっている。三菱重工業のSRZ-1200は基本設計段階のため建設費を見積もることすらできない。原発新設の経済性はすでに失われているのであり、「他電源と遜色ないコスト水準」と断言するのは根拠がない。

地球温暖化対策計画(案)に2つ目の意見を提出しました

○該当箇所:はじめに「従来のような再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。」(p.10)

○意見の概要:再エネと原子力を最大限活用するための施策は正反対であり、両立し得ない。原発優先・再エネ抑制の現施策を撤回し、脱原発・再エネ優先の施策へ転換すべきである。

○意見:再エネと原子力を最大限活用するための施策は正反対であり、両立し得ない。太陽光・風力の最大限活用には、欧州連合EUで具体的に実施されて実績を上げてきた「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」が不可欠である一方、原子力の最大限活用には、「原子力・石炭火力などのベースロード電源優先」と「送電部門の電力会社支配維持」が不可欠であり、再エネ最大限活用のための施策とは根本的に対立する。太陽光・風力は限界費用が最も安く、メリットオーダーによれば真っ先に優先給電されるはずだが、低需要期には出力制御されて給電できず、送電容量制限を口実に優先アクセスも保障されない。このような現施策の延長線上では、再エネの抜本的拡大はあり得ず、原子力最大限活用も再エネ最大限活用も期待通りには進まず、共倒れになる。再エネと原子力は、恣意的な議論によってではなく、客観的な施策において二項対立になっているのであり、「原子力・石炭火力などのベースロード電源優先」と「送電部門の電力会社支配維持」の現在の原発優先・再エネ抑制の施策から「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」の脱原発・再エネ優先の施策へ転換すべきである。

○理由:「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論」は決して恣意的な課題設定によるものではなく、現行のエネルギー政策そのものが「原子力優先施策」を次々と具体化する一方、「再エネ優先施策」を排除し、後退させ、「二項対立」させているからである。電力需給に係る施策では、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」と「再エネ優先給電」は互いに対立し、両立することなどあり得ない。電力送電に係る施策では、原子力推進のためには「送配電部門の電力会社支配」が不可欠である一方、太陽光・風力など再エネ推進のためには「送電部門の所有権分離」が不可欠であり、両者は二律背反である。

第六次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むと書き込みながら、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」から「再エネ優先給電」へ転換せず、「送電部門の所有権分離」を拒否し続けて「送配電部門の電力会社支配」を維持してきた。すべては原発再稼働を進め、原発新増設を復活させるためであり、その結果、太陽光・風力発電は、固定価格買取制度FITで一時的に普及したものの、進展速度が低下した。国内最大の発電会社JERAによる電力市場相場操縦事件、関西電力など電力四社によるカルテル事件、送配電会社顧客情報等の漏洩事件など「電力会社の市場支配力行使」によって、ピーク時の約16%もの新電力が廃止・解散・取消または休止へ追い込まれた。この現実を教訓とすれば、再エネを一層急速に拡大するためには、「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」の2大施策を断行するしかないことは明らかだ。日本と同様に、石炭火力中心の電力構成で、EUのような国際的連系線もないオーストラリアでは、2022年5月に発足した労働党のアルバニージー政権が、エネルギー政策を大転換させ、「2030年までに再エネ比率82%」、「2038年までに石炭火力ゼロ」を目標に掲げた。再エネ比率はすでに2022年度発電電力量の37%(太陽光16%、風力13%、水力・その他8%)に達し、南オーストラリア州では太陽光と風力が74%を占めており、決して非現実的な目標ではない。「太陽光16%」の6割強が屋根置き太陽光発電(主に自家消費)であり、大規模太陽光発電は4割弱に過ぎない。決して「広大な土地」が太陽光発電を広げているわけではない。「メリットオーダーによる再エネの優先給電」と「送電部門の所有権分離」は、すでに実現していて目標実現の条件はすでにできている。日本もオーストラリアのエネルギー基本計画を見習うべきである。

地球温暖化対策計画(案)に意見を提出しました

○該当箇所:第2章第1節「2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す。」(p.19)

○意見の概要:地球温暖化対策計画(案)では、「2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す。」(p.19)としているが、2035年度目標を「2013年度から66%削減」へ引上げるべきである。

○意見:地球温暖化対策計画(案)では、「2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す。」(p.19)としているが、これでは「オーバーシュートしない又は限られたオーバーシュートを伴って温暖化を1.5℃(>50%)に抑える」(p.9)ための責任を果たすことができない。AR6統合報告書では、「2030年までに2019年の水準から約43%(34%~60%)削減し、2035年までに約60%(49%~77%)削減する必要」(p.9)があるとしており、これを日本政府の「2013年度」基準へ換算すると、「2013年度から2030年度51%削減、2035年度66%削減、2040年度73%削減する必要がある」となる。2040年度はかろうじて平均レベルだが、2035年度は60%ではなく、少なくとも平均レベルの66%へ引き上げるべきである。

○理由:地球温暖化対策計画(案)では、「AR6統合報告書に基づくと、オーバーシュートしない又は限られたオーバーシュートを伴って温暖化を1.5℃(>50%)に抑えるためには、世界全体の温室効果ガス排出量を2030年までに2019年の水準から約43%(34%~60%)削減し、2035年までに約60%(49%~77%)削減する必要があり、1.5℃目標達成に向けた取組は大幅に不足しており、世界全体で、この10年の間に全ての部門において大幅で急速な、そして即時の排出削減を行い、2025年までに世界全体の排出量のピークを迎える必要がある。」(p.9)と「はじめに」の項で強調しておきながら、本文の第2章第1節では、「2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す。」(p.19)と腰砕けになっている。AR6統合報告書の「2019年度」基準を日本政府の「2013年度」基準へ換算すると、「2013年度から2030年度51%削減、2035年度66%削減、2040年度73%削減する必要がある」となる。2040年度目標は73%でかろうじて平均レベルだが、2035年目標は平均レベルの66%に満たない。これでは、産業革命以来、温室効果ガスを排出して地球温暖化を進めてきた先進国の一員としての責任を果たすことができない。脱炭素社会実現を目指す企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップICLP」は「2013年度から2035年度に75%以上削減」を政府に提言しているが、本文にはこのような提言があったことすら触れていない。なぜ、AR6統合報告書が指摘する「2013年度から2035年度66%削減」ではなく、提言された「75%削減」でもなく、「60%削減」なのか、国民が納得できる理由を本文中に説明できない以上、少なくとも平均レベルの「66%削減」とすべきである。

第7次エネルギー基本計画(案)に4つ目の意見を提出しました

意見4:第7次エネルギー基本計画(案)では、「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。」としているが、再エネと原子力を最大限活用するための施策は正反対であり、両立し得ない。太陽光・風力の最大限活用には、欧州連合EUで具体的に実施されて実績を上げてきた「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」が不可欠である一方、原子力の最大限活用には、「原子力・石炭火力などのベースロード電源優先」と「送電部門の電力会社支配維持」が不可欠であり、再エネ最大限活用のための施策とは根本的に対立する。太陽光・風力は限界費用が最も安く、メリットオーダーによれば真っ先に優先給電されるはずだが、低需要期には出力制御されて給電できず、送電容量制限を口実に優先アクセスも保障されない。このような現施策の延長線上では、再エネの抜本的拡大はあり得ず、原子力最大限活用も再エネ最大限活用も期待通りには進まず、共倒れになる。さらに、第7次エネルギー基本計画(案)では、「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替え」の「具体化を進めていく」と踏み込んでいる。しかし、「次世代革新炉への建て替え」は百万kW級原発1基当り1兆数千億円~2兆数千億円の建設費を要し、これを電気料金(託送料金)に転嫁する方針であることから、建て替えが進むほど電気料金は高騰せざるをえない。原子力の電気を使いたくないために新電力へ契約変更した消費者からも原発建て替え費を徴収するのは、商法違反でもある。福島事故の実態に即しても次世代革新炉の安全性は実証されておらず、福島事故を繰り返すリスクも決して小さくない。福島事故を繰り返さないためにも、現行の「可能な限り原発依存度を低減する」方針を堅持し、「次世代革新炉への建て替え」を認めず、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むという現エネルギー基本計画を具体化するため、「再エネ優先給電」と「送配電部門所有権分離」へ転換すべきである。

理由4:「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論」は決して恣意的な課題設定によるものではなく、現行のエネルギー政策そのものが「原子力優先施策」を次々と具体化する一方、「再エネ優先施策」を排除し、後退させ、「二項対立」させているからである。電力需給に係る施策では、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」と「再エネ優先給電」は互いに対立し、両立することなどあり得ない。電力送電に係る施策では、原子力推進のためには「送配電部門の電力会社支配」が不可欠である一方、太陽光・風力など再エネ推進のためには「送電部門の所有権分離」が不可欠であり、両者は二律背反である。これらの「二項対立的施策」のどちらをとるかで第7次エネルギー基本計画の性格が決まる。第六次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むと書き込みながら、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」から「再エネ優先給電」へ転換せず、「送電部門の所有権分離」を拒否し続けて「送配電部門の電力会社支配」を維持してきた。すべては原発再稼働を進め、原発新増設を復活させるためであり、その結果、太陽光・風力発電は、固定価格買取制度FITで一時的に普及したものの、進展速度が低下した。国内最大の発電会社JERAによる電力市場相場操縦事件、関西電力など電力四社によるカルテル事件、送配電会社顧客情報等の漏洩事件など「電力会社の市場支配力行使」によって、ピーク時の約16%もの新電力が廃止・解散・取消または休止へ追い込まれた。この現実を教訓とすれば、再エネを一層急速に拡大するためには、「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」の2大施策を断行するしかないことは明らかだ。

日本と同様に、石炭火力中心の電力構成で、EUのような国際的連系線もないオーストラリアでは、2022年5月に発足した労働党のアルバニージー政権が、エネルギー政策を大転換させ、「2030年までに再エネ比率82%」、「2038年までに石炭火力ゼロ」を目標に掲げた。再エネ比率はすでに2022年度発電電力量の37%(太陽光16%、風力13%、水力・その他8%)に達し、南オーストラリア州では太陽光と風力が74%を占めており、決して非現実的な目標ではない。「太陽光16%」の6割強が屋根置き太陽光発電(主に自家消費)であり、大規模太陽光発電は4割弱に過ぎない。決して「広大な土地」が太陽光発電を広げているわけではない。「メリットオーダーによる再エネの優先給電」と「送電部門の所有権分離」は、すでに実現していて目標実現の条件はすでにできている。日本もオーストラリアのエネルギー基本計画を見習うべきである。

 また、第7次エネルギー基本計画(案)では、「次世代革新炉への建て替え」を打ち出す一方、「安定的に事業運営できるような事業環境の整備」とか「原子力事業者の予見可能性確保」とかの抽象的表現で、1基当り1兆数千億円~2兆数千億円もの巨額の建て替え費用を国民に転嫁する方針を検討するとしている。原発が経済性を有するものであれば、このような「事業環境の整備」など不要だ。2024年12月の発電コスト検証WGの試算によると、「2023年新設」の太陽光(事業用)が10.9円/kWhに対し原子力は12.6円/kWh以上と高い。火力は、LNG火力19.1円/kWh、石炭火力24.8円/kWhで、もっと高い。「2040年新設」では、太陽光(事業用)7.0~8.9円/kWh、太陽光(住宅用)7.8~10.7円/kWh、原子力12.5円/kWh以上となり、太陽光の優位が高まる。原子力だけ「以上」となっているのは重大事故による損害賠償・廃炉費に事故発生確率をかけたコストによって変わるからだ。しかも、原発の建設費はAP1000やEPRなど革新軽水炉では1兆数千億円~2兆数千億円に上がっている。最新のポーランド第1原発(AP1000×3基計375万kW)計画の総投資額は約450億ユーロ(約7.3兆円、1基2.4兆円)と見込まれている(原産新聞2024/12/20)。にもかかわらず、旧型原発の建設費5,496億円+追加的安全対策費1,707億円=7,203億円と設定している。これは旧型原発を建てて福島事故後の平均的な追加的安全対策費を加えたもので、AP1000やEPRなど革新軽水炉とは異なる。三菱重工業のSRZ-1200は基本設計段階のため建設費を見積もることすらできない。原発の経済性はすでに失われており、「次世代革新炉への建て替え」を断念し、「事業環境の整備」を検討することを含めて一切やめるべきである。

第7次エネルギー基本計画(案)に3つ目の意見を提出しました

意見:再生可能エネルギーについて、第六次エネルギー基本計画では「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入」とされていたが、第7次エネルギー基本計画(案)では「最優先の原則の下で」が削除された。また、「再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく。」とされ、再エネに過度に依存しない枠内での「最大限導入」であることが明示されている。これでは、「再エネを主力電源として最大限導入」することなどできない。欧州連合EUでは、2001年EU再エネ指令で「再エネ優先給電」を義務化するとともに再エネ目標を明記し、2009年電力指令で送電部門の所有権分離、ITO型分離、ISO型分離のいずれかを義務付け、これらを車の両輪として、太陽光や風力など再エネを抜本的に拡大してきた。ところが、日本では、原子力や石炭火力などのベースロード電源を優先させ、送電部門を法的分離に留め、電力会社による電力市場支配を容認し続けている。再エネを主力電源として最大限導入するためには、EUのように「再エネ優先給電」へ転換し、「送電部門の所有権分離」を断行する以外にない。でなければ、再エネはほとんど進まず、日本は再エネ後進国へ転落し、石炭火力やLNG火力に大きく依存し続けることになる。2050年カーボンユートラル実現に向けて第7次エネルギー基本計画が歴史的に最重要な計画になることを改めて認識し、抜本的な転換を図るべきである。

理由:欧州連合EUでは電力指令が3回出されている。1996年第1次電力指令では送電部門の「会計分離」、2003年第2次電力指令では「法的分離(資本関係のある別会社化)」、2009年第3次電力指令では「所有権分離、ITO型分離(法的分離だが、所有権分離に相当する厳しい行為規制・役職者就任条件・中立性を担保するための役職者設置で中立性を確保)、機能分離(送配電設備の所有権を残したまま運用・整備計画を独立系統運用機関ISOに移譲、ISO型分離ともいう)」のいずれか」が義務付けられた。これら3つの電力指令に符合して、2001年と2009年に再エネ指令が出された。2001年第1次再エネ指令では、電力消費に占める再エネの目標が明記され、再エネの優先給電(Priority Dispatch,)が義務化され、再エネの優先アクセス(Priority Access, 送電線への接続手続きの優先、電力市場への優先送電、送電線逼迫時の優先送電)が選択可能とされた。2003年第2次再エネ指令では、最終エネルギー消費に占める再エネの目標(国別)が明示され、再エネの「優先給電」義務化に加えて、再エネの優先アクセス(Priority Access, 系統接続された再エネの電力市場への接続ルールに則った送電:定義が微修正された)か、保証アクセス(Guaranteed Access, 系統接続された再エネの電力市場への最大限の送電)か、いずれかの導入が義務化され、優先接続(Priority Connection, 接続されていない再エネの送電線への優先接続)の導入も選択可能とされた。

このように、EUでは、電力需要を再エネで優先的に満たす優先給電の義務化、それを送配電網の利用を通じて実現するための優先アクセス/保証アクセスの義務化によって再エネの急速な拡大が図られたのである。前者の「優先給電」は再エネの限界費用ゼロの特性とメリットオーダーによる給電によって、後者の「優先アクセス/保証アクセス」は所有権分離による送電部門の中立化によって担保され、実現された。要するに、電力需給面での「再エネの優先給電」と送電線による電力送電面での「送電部門の所有権分離=中立化」は車の両輪であり、これらがEUでの再エネの急拡大を推し進めたと言える。

ところが、日本では、原子力や石炭火力等のベースロード電源が優先され、再エネが出力制御されている。その出力制御ルールは、(1)火力(石油、LNG、石炭)の出力制御、揚水・蓄電池の活用、(2)他地域への送電(連系線)、(3)バイオマスの出力制御、(4)太陽光、風力の出力制御、(5)長期固定電源(水力、原子力、地熱)の出力制御となっている。真っ先に火力が出力制御されるとはいえ、太陽光・風力のように発電停止になるのではなく、契約された最低出力率(石炭火力の6割弱が31%以上の出力)まで低減されるだけで、51%以上の出力までしか出力制御されない石炭火力が2割程度もある。原子力は全く出力制御されないため、原発の再稼働が進むほど、再エネの出力制御量が増え続ける。しかも、太陽光発電で出力制御の最も多い第1四半期(4~6月)は太陽光発電量の最も多い時期でもあり、出力制御の影響は極めて大きい。再稼働される原発が増え、アンモニア混焼で石炭火力が延命されればされるほど、再エネの出力制御も長期化し、再エネが増えるに伴って出力制御量も増えていき、それが再エネの「最大限の導入」にブレーキをかける。第7次エネルギー基本計画(案)では「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要」、「バランスの取れた電源構成の確保を目指」すというが、現実そのものが二項対立的になっている。

この悪循環を断ち切るには、エネルギー基本計画を「ベースロード電源(原子力と石炭火力)重視」から「再エネ優先給電」へ転換させることが不可欠である。それを送電面で保証するために「送配電子会社の所有権分離」が必要であり、少なくともITO型分離が不可欠である。出力制御ルールの(4)と(5)を逆転させれば、石炭火力の廃止が加速され、原発再稼働も抑制される。原子力の「出力変動運転」が必要となれば、「連系線による域外送電や系統接続蓄電池」の増強で事実上可能だ。再エネ用を原子力用と見なせば済み、柔軟性のない原子力の統合コストが最も高くなる。脱原発による再エネ拡大しか解決の道はない。

第7次エネルギー基本計画(案)に2つ目の意見を提出しました

意見2:六ヶ所再処理工場は、1993年の着工から32年後の今なお操業開始の目処が立たず、2024年8月には2026年度末までの27回目の竣工時期延期が発表されている。ところが、アクティブ試験を強行したため、六ヶ所再処理工場の主工程は極度に放射能汚染されており、設計工事認可審査で耐震補強工事が必要になっても工事ができないという「レッド・セル問題」を抱えていて、審査不合格になる可能性が高い。たとえ、操業できても、プルサーマル実績から10%操業に留まらざるを得ない。にもかかわらず、第7次エネルギー計画(案)では、むつ市中間貯蔵施設での50年貯蔵後の搬出先を六ヶ所再処理工場とするため、六ヶ所再処理工場の「(操業期間40年以上の)長期利用」が打ち出され、これまで「第二再処理工場」で再処理する計画だった「使用済MOX燃料」を六ヶ所再処理工場の処理対象に加える方針までもが謳われている。もんじゅ廃炉や第二再処理工場計画消失で一層明確になった「プルトニウム利用の核燃料サイクル」の破綻を率直に認め、「軽水炉でのプルトニウム利用=プルサーマルの中止」と「高速炉開発からの撤退」を第7次エネルギー基本計画に明記すべきである。そして、行き先のない使用済燃料をこれ以上生み出さないため、ドイツを見習って脱原発へ転換し、すべての原発を1日でも早く閉鎖することである。第7次エネルギー基本計画では、その道筋をこそ国民に示すべきである。

理由2:第7次エネルギー基本計画(案)では、「中間貯蔵施設等に貯蔵された使用済燃料は六ヶ所再処理工場へ搬出するという方針のもと、そのために必要となる同工場の安全性を確保した安定的な長期利用を進める。」と明記し、むつ市中間貯蔵施設での50年中間貯蔵後の使用済燃料搬出先を六ヶ所再処理工場と明示している。当初は「40年操業」が前提とされ、再処理等拠出金単価も「800tU/年×40年操業=総処理量32,000tU」を前提に算定されてきた。しかし、その前提そのものが崩れ、今や800tU/年のフル操業は夢物語となり、実際には10%程度の操業(総再処理量約3,200tU)しか見込めず、これでは、2024年6月末現在19,738tU(原発サイト16,770tU、六ヶ所再処理工場2,968tU)の一部しか再処理できないばかりか、2024年6月現在15.10兆円に膨れ上がった再処理事業費を賄えなくなっている。というのも、原子力委員会は「我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方」(2018.7.31)において「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う。」との方針に転換したが、2009~24年の15年間にプルサーマルで消費された英仏プルトニウムは5.7トン、年平均0.38トンにすぎないからである。こうなったのは、輸入MOX燃料費が輸入ウラン燃料費の10倍と高く、認可されたMOX燃料装荷体数の1/3程度しか装荷されていないこと、仏MOX燃料加工工場の品質欠陥で1/3操業となっていて、日本へのMOX燃料輸送が遅れていることなどによる。仮に、六ヶ所再処理工場が800tU/年の再処理量でフル操業すれば毎年6.6トンのプルトニウムが生み出されることから、年平均0.38トンの消費に見合う六ヶ所再処理工場の操業度は平均5.8%程度に留まらざるを得ない。福島事故後の長期停止などを除外して、「13ヶ月運転・3ヶ月定期点検のサイクルで連続的にプルサーマルが実施される」と過大想定しても、年平均0.692トン、10%程度の操業に留まる。これでは、仮に、六ヶ所再処理工場が操業開始できたとしても、現在貯蔵されている使用済燃料2,968tUを処理するのがやっとであり、仮に、原発サイトや中間貯蔵施設に貯蔵された使用済燃料を六ヶ所再処理工場へ搬入できたとしてもほとんど再処理できないことになる。最大のプルトニウム所有者である東京電力は原発再稼働そのものが実現不可能で、プルサーマルの見込みは全くない。このような操業状態で、40年以上へ利用期間を延期してもほとんど問題の解決にならない。六ヶ所再処理工場が仏再処理工場と同様に老朽化のために故障や事故を多発させ、重大事故を起こす危険性すらあり、MOX燃料加工工場も品質欠陥でほとんど操業できない事態に陥るリスクもある。こうなれば、国内製造MOX燃料費は輸入MOX燃料よりさらに高騰せざるを得ないであろう。このように、時を経るに連れて、六ヶ所再処理工場・MOX燃料加工工場の抱える問題点が顕在化していかざるを得ない。それは現時点ですでに十分な根拠をもって見通せるのであり、これを無視して「長期利用」で国民の目を欺き、嘘をつき続けるのは、もうやめるべきである。

また、第7次エネルギー基本計画(案)では、これまで「第二再処理工場」で計画されてきた「使用済MOX燃料の再処理については、国際連携による実証研究を含め、2030年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めるとともに、その成果を六ヶ所再処理工場に適用する場合を想定し、許認可の取得や実運用の検討に必要なデータの充実化を進める。」と明記し、六ヶ所再処理工場の再処理許可条件に使用済MOX燃料を加える方針を初めて打ち出した。すでに亡霊化していた「第二再処理工場」建設の可能性は跡形もなくなったと言えるが、それを六ヶ所再処理工場に押しつけることで、使用済MOX燃料の搬出先がなくなることを回避しようというのであろうが、姑息である。プルサーマルによる使用済MOX燃料を再処理しても、回収されるプルトニウムは非核分裂性プルトニウムの割合が多く、劣化していて使い物にならない。

六ヶ所再処理工場の操業が、原発サイト内で溜まり続ける使用済燃料の問題を解決する「最後の切り札」とされているため、すべての矛盾が六ヶ所再処理工場に集中するという結果を招いている。これを解決する道は、再処理をやめ、プルサーマルや高速炉開発などのプルトニウム利用を断念することである。そして、脱原発へ転換して、行き先のない使用済燃料をこれ以上生み出すのをやめることである。第7次エネルギー基本計画ではその道筋をこそ国民に示すべきである。

第7次エネルギー基本計画(案)に意見を提出しました

意見1:福島第一原発炉心溶融事故を教訓とするのであれば、事故の原因と結果、国の責任について教訓を具体的に明らかにし、その教訓を活かすことを最優先とすべきである。したがって、第六次エネルギー基本計画の基本精神、すなわち、「安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」を削除せずに残し、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むとの記述の中の「最優先の原則の下で」を削除せずにそのまま残し、再エネで原子力を速やかに置き換える方針をこそ示すべきである。また、「悲惨な事態」による直接の被害者である低線量被ばく者への医療費減免措置の段階的撤廃を中止し、原爆被爆者援護制度に倣い、健康手帳を交付して、将来にわたる医療保障を行うための法制度の整備を謳うべきである。

理由1:第7次エネルギー基本計画(案)の「はじめに」には、福島第一原発炉心溶融事故の原因と結果、原子力災害の甚大さと廃炉の困難な状況について、具体的には全く記載されていない。「II. 東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み」には、「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、前述した我が国を取り巻く情勢変化も踏まえ、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する。その上で、今後も原子力を活用し続ける上では、安全性の確保を最優先とし、『安全神話』に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという反省を一時たりとも忘れてはならない。」とは記載されているものの、なぜ、「悲惨な事態」を防ぐことができなかったのか、「反省」すべき事故の原因と国の責任が明らかにされていない。福島事故による「悲惨な事態」の具体的内容には一切触れられず、政府として「悲惨な事態」をどのように把握し理解しているのかも不明である。原子力災害に伴う放射線被ばくの被害は14年後のこれから将来に向けて顕在化する可能性が高いにもかかわらず、医療費等減免措置の段階的撤廃を進めるなど被災者切り捨て施策を進めており、「悲惨な事態」を隠蔽しようとする姿勢しか見えない。「福島復興」の名の下に「福島事故の隠蔽」が図られているとしか思えない。低線量被ばくの危険性を暴いた国際核施設労働者調査(INWORKS)の最新論文では、100mSv以下は元より50mSv以下の集団でも、被ばく線量に応じて固形がんが統計的に有意に増えていることが示されている。これを踏まえれば、福島事故被害者への医療保障を将来にわたって講ずるべきであり、「悲惨な事態」に真摯に向き合うべきである。さらに、デブリ除去などの廃炉作業が具体的に進む見通しはほとんどなく、ひとたび重大事故を起こせば数十兆円の経済的損失が生じることが明白であるにもかかわらず、福島事故を経験した日本で、福島事故による悲惨な事態を国内外に知らしめ、原子力推進に警鐘を発すべきところ、「原発依存度を低減する」のではなく、なぜ、「今後も原子力を活用し続ける」のか、その説明が全くない。

このように第7次エネルギー基本計画の基本的考え方が、福島事故を顧みない形で示され、第六次エネルギー基本計画の基本精神、すなわち、「安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」を削除し、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むとの記述から「最優先の原則」を削除し、原子力を再エネと並べて、「今後、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。」へ大転換しようとしている。また、「既設炉の最大限活用」を新たに項立てし、「再稼働の加速に向け、原子力事業者を始めとした産業界は、『再稼働加速タスクフォース』の下に連携し、泊、大間、東通、女川、柏崎刈羽、東海第二、志賀、浜岡、敦賀及び島根において、原子力規制委員会による設置変更許可等の審査への適切な対応、使用前事業者検査の的確な実施、現場技術力の維持・向上を進める。国も、事業者間の協力強化等を指導していく。」としている。しかも、原子力規制委員会発足の大前提であった「原則40年で廃炉、例外としての1回限りの20年延長」には全く言及せず、「原子力発電所の運転期間については、GX脱炭素電源法に基づき、運転期間に最長60年という上限を設ける従来の枠組みは維持しつつ、利用政策の観点から、原子力事業者から見て他律的な要素により停止していた期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外することを認める新たな制度が整備された。」とし、既定路線として「40年超運転」だけでなく、「60年超運転」もGX方針を追認する形で導入している。これらは、福島事故を顧みず、フクシマを繰り返すことを厭わない暴挙である。

2ヶ月半かけてやっと出てきた「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正について(案)に関する御意見及び御意見に対する考え方(案)」で明らかになったものは?

 2022年6月8日の第15回原子力規制委員会で、ようやく意見募集への結果が明らかにされ、「基準地震動等審査ガイドの改正」が審議されました。
 意見募集は2022年2月25日~3月26日(30日間)で、意見数は62件(のべ96件)でした。
私の出した3つの意見はNo.86、No.87、No.66に全文が掲載され、原子力規制庁の「考え方」が示されています。それぞれの「考え方」に続いて、私の(「考え方」への批判)を載せていますので、ご覧ください。

【別紙1】基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド等の一部改正について(案)に関する御意見及び御意見に対する考え方(案)(出典:原子力規制庁「基準地震動等審査ガイドの改正」,第15回原子力規制委員会,資料1(2022.6.8)

<意見86>———————
 新旧対照表pp.18-19の「(解説)」は「3.3.2 断層モデルを用いた手法による地震動評価」の(4)の詳細項目①~③をほぼそのまま転記し、「(4)「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」を用いて地震動評価を行っている場合には、レシピに示された関係式及び手順に基づいて行われていることに留意する必要がある。また、レシピに示されていない方法で評価を行っている場合には、その方法が十分な科学的根拠に基づいていることに留意する必要がある。」と追記したものである。
 このレシピには「(ア) 過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合」と「(イ) 長期評価された地表の活断層長さ等から地震規模を設定し震源断層モデルを設定する場合」の2種類があり、検討用地震に対応する地震観測記録が存在しない場合には、(ア)を用いてはならず、(イ)を用いるべきであることが示されている。たとえば、日本地震学会2016年度秋季大会(2016.10.5)で東京大学地震研究所の纐纈一起教授は、「『震源断層を特定した地震の強震動予測手法』と熊本地震」(予稿集S15-06)を発表し、2016年4月の熊本地震の震源断層評価結果に基づき、「詳細な活断層調査を行っても震源断層の幅の推定は困難であるので、活断層の地震の地震動予測には『手法』(イ)の方法を用いるべきであることを確認した。」と結論づけている。
 したがって、(4)として追記された前半部分について、「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」を用いて地震動評価を行っている場合には、検討用地震に対応する地震観測記録に基づいて震源断層が適切に推定されているケースでは(ア)を用い、地震観測記録がないケースでは(イ)を用いることとし、レシピに示された関係式及び手順に基づいて行われていることに留意する必要がある。」と修正すべきである。

<考え方>
➢御指摘の規定は、事業者が地震動評価においてレシピを引用している場合には、その手順等に基づいて評価を行っているか、審査において留意して確認すること等について規定しているものであり、レシピの中で示される手法の適用条件に関して規定する必要はないと考えます。
➢なお、新規制基準では、震源として考慮する活断層の評価に当たって詳細な調査を求めていることから、事業者が、過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合に用いる(ア)法で評価していることを審査において確認しています。
 以上より、原案のとおりとします。

(「考え方」への批判)
 島崎邦彦元原子力規制委員長代理による入倉式批判や熊本地震に基づくレシピの検証などで、地震観測記録等から震源断層を推定できない場合には、レシピ(イ)を使うべきで、レシピ(ア)を使うべきではないと地震学界で主張されているにもかかわらず、原子力規制庁の「考え方」は、「レシピの中で示される手法の適用条件に関して規定する必要はない」と断言し、事業者が「レシピ(イ)を用いず、レシピ(ア)を用いた」ことを「審査において確認」しながら、その妥当性については審査の対象外だと明言したことは、極めて重大である。

 地震調査研究推進本部のレシピでは、レシピ(ア)とレシピ(イ)が明確に区別されており、検討用地震に関する地震観測記録によって地下の実際のすべり分布が分からなければ震源断層の広がりを正確に推定することなどできず、将来活動しうる震源断層の広がりを推定することも、その不確かさを判断することもできない。にもかかわらず、検討用地震に関する地震観測記録がない中で、事業者がどのようにして「過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層をモデルを設定(震源断層を推定)」できるのか、という根本問題から目を背けている。つまり、原子力規制庁は、レシピ(ア)が適用できるかどうかの判断を回避している。レシピ(ア)の適用ありきであって、その妥当性に疑問を差し挟むことは許さないという姿勢を明確にしたと言える。これでは、地震動評価について審査しないと言うに等しい。

<意見87>———————
 新旧対照表pp.20-21の「(解説)」は「3.3.3 不確かさの考慮」の(2)の詳細項目①と②をほぼそのまま転記し、①に「なお、アスペリティの応力降下量( 短周期レベル) については、新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえた不確かさが考慮されていることに留意する必要がある。」と追記したものである。
 しかし、新潟県中越沖地震で得られた知見から「アスペリティの応力降下量( 短周期レベル)」を1.5倍にする場合、応力降下量を1.5倍にし、すべりの重ね合わせ数を1/1.5にして短周期レベルも1.5倍にする場合は妥当だが、統計的グリーン関数法で要素地震の応力降下量を最初から1.5倍にする方法では短周期レベルは「1.5の2/3乗」倍に留まり、1.5倍にならない。この誤りを避けるには、「アスペリティの応力降下量および短周期レベル」と書き換えるべきである。
 また、2012年8月17日に原子力安全・保安院が出した「活断層による地震動評価の不確かさの考慮について(考え方の整理)」では「応力降下量について1.5倍又は20MPaの大きい方※」とされ、※印の注意書には「※断層のずれのタイプや地域特性について十分な検討が行われた場合、これ以外の数値を用いて評価しても良い。」とされている。
 さらに、新潟県中越沖地震で得られた知見は震源特性が1.5倍も大きかったという知見であり、これまでの審査でも、アスペリティだけでなく震源断層の平均についても応力降下量と短周期レベルは1.5倍にされている。
 結論的には、「アスペリティの応力降下量( 短周期レベル)」を「応力降下量※および短周期レベル」に書き換え、「※アスペリティの応力降下量については1.5倍又は20MPaの大きい方」と注記すべきである。

<考え方>
➢改正案における「なお、アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については、新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえた不確かさが考慮されていることに留意する必要がある。」との記載は、改正前の3.3.2(4)①2)のアスペリティの応力降下量(短周期レベル)に関する記載について、より適切な位置に記載を移動し、表現を適正化したものです。
 この記載は、短周期領域における加速度震源スペクトルのレベル(短周期レベル)を保守的に設定する観点で、アスペリティの応力降下量の不確かさ考慮について、応力降下量に一定の倍率を考慮していることを確認していることを表したものであり、アスペリティの応力降下量と短周期レベルの両方について別々に不確かさを考慮しなければならないという意味ではありません。
➢御意見のうち「アスペリティの応力降下量については1.5倍又は20MPaの大きい方」については、新規制基準では、応力降下量の不確かさについて定量的な要求はしておらず、審査において、施設ごとに必要に応じて断層のずれのタイプや地域特性について十分な検討が行われた上で、不確かさが考慮されていることを確認しています。
以上より、原案のとおりとします。

(「考え方」への批判)
「アスペリティの応力降下量と短周期レベルの両方について別々に不確かさを考慮しなければならないという意味ではありません」としているが、これそのものが、原子力規制庁の断層モデルに関する無知をさらけ出すものだと言える。断層モデルによる地震動評価法における「アスペリティの応力降下量と短周期レベル」の関係については、旧原子力安全委員会の地震動解析技術等作業会合(平成21年4月23日)の資料第1−1号「波形合成法の基本的考え方」(東京電力株式会社)で詳しく解説されている。この知識を前提として、意見を述べたところ、恐ろしいことに、原子力規制庁には、この知識がなかったことが判明した。

 その知識を要約すると次のようになる。
 ①手法A:基本モデルと同じ要素地震波を用い,応力降下量補正係数Cと重ね合わせ数nを新たに設定する。この考え方は,通常の入倉法におけるΔσのCによる補正と類似しており,経験的グリーン関数法と統計的グリーン関数法のいずれにも適用できる。
⇒応力降下量補正係数C’=1.5C,すべり量の分割数n’D=nD/1.5(長さL方向と幅W方向の分割数nLとnWは同じ)と設定すると、応力降下量は1.5倍、短周期レベルAも1.5倍になる。
 ②手法B:要素地震の応力降下量Δσeを基本モデルから変更し,基本モデルと同じCとnを用いる。この考え方は,要素地震波を人工的に作成する統計的グリーン関数法にのみ適用できる。
⇒要素地震の応力降下量をΔσ’e=1.5Δσとし,CとnDは同じ(nLとnWも同じ)と設定すると、応力降下量は1.5倍だが、短周期レベルAは「1.5の2/3乗」倍になり、1.5倍より小さくなる。

 この評価に基づき、翌日の第19回耐震安全性評価特別委員会(2009.04.24)で報告され、入倉特別委員会委員長が次のようにまとめている。
「・・・バックチェックにおいて中越沖地震の反映の一つとして、短周期レベルを基本モデルに対する1.5倍をばらつきとして検討すべきというのが保安院の指示にあったわけですけれども、それについて事業者の方法について必ずしも明確ではないのではないか。実際に1.5倍というものはどういうものかについて、必ずしも方法論が正確に行われているかどうか、ご意見がございましたので、作業会合において特にこの論点に絞ってご説明いただきました。

 先ほどご説明がありましたように、もちろん、こういう計算法にはいろんな手法があるわけですが、典型的な手法としては2つに分けることが出来る。1つは応力降下量、実際には実効応力というべきなんですけれども、実効応力を1.5倍にすると同時に短周期を1.5倍にするという、そういう手法で基本モデルに対する基準地震動の計算に対して、短周期レベルが1.5倍になるような計算をする、そういう方法についてご説明いただいたのと、もう一つの方法は実効応力は1.5倍になるけれども、実効応力を1.5倍ということを拘束条件として計算すると、短周期レベルは必ずしも1.5倍にならない。大体の値としては1.3倍程度という少し高周波というか、短周期が足りないような計算法もある。
 そういう2つの方法が混在して説明されている可能性があるということで、これまでに例えば柏崎刈羽であるとか、北陸電力の説明の中で北陸電力に関しては混在があったわけですけれども、東京電力に関しては両方とも1.5倍になるということ、そういうことが分かりました。そういう意味で、保安院の指示に従って基準地震動を評価する場合には、短周期レベルが1.5倍になるような計算法をとるべきではないかということが、昨日の作業会合では確認されたわけです。」(速記録pp.15-16
 原子力規制庁は、このように重要な応力降下量と短周期レベルの関係について無知であることを恥じることなく、「新規制基準では、応力降下量の不確かさについて定量的な要求はしておらず、審査において・・・確認しています」としていることも重大である。そもそも、新潟中越沖地震が起こらなければ「応力降下量(短周期レベル)1.5倍」という不確かさの定量的な要求は出てこなかったのであり、それを考慮しなくてもよいというのであれば、その根拠を「考え方」で示すべきである。

<意見66>———————
 新旧対照表pp.21の「(解説)」の「(2)必要に応じた不確かさの組み合わせによる適切な考慮」は「3.3.3 不確かさの考慮」の(2)の詳細項目②をそのまま転記し、「②地震動評価においては、震源特性( 震源モデル) 、伝播特性( 地殻・上部マントル構造) 、サイト特性( 深部・浅部地下構造) における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確かさ要因を偶然的不確かさと認識論的不確かさに分類して、分析が適切になされていることに留意する必要がある。」としているが、偶然的不確かさについては「破壊開始点」のバラツキぐらいしか考慮されておらず、地震動そのものの確率論的バラツキがこれまで一貫して全く考慮されていない。わざわざ不確かさを偶然的不確かさと認識論的不確かさに分類したにもかかわらず、「地震動そのものの確率論的バラツキ」が偶然的不確かさから除外されている。このようにするのであれば、その根拠を解説で明記すべきである。
 他方、「4. 震源を特定せず策定する地震動」で導入された標準スペクトルの策定時には、M5~M6.5の地震観測記録の基盤波の平均に対して標準偏差の3倍のバラツキが考慮されており、不整合であり、ご都合主義である。「3. 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」における検討用地震に対しても、地震学界で常識的に認められている地震動の1標準偏差で「倍半分」程度のバラツキを考慮し、平均像として求められた現在の基準地震動に対して2倍のばらつきを考慮すべきである。

<考え方>
➢御指摘の「地震動そのものの確率論的バラツキ」の意味するところが必ずしも明らかではありませんが、不確かさに関する扱いについてはNo.19の御意見に対する考え方を参照してください。
➢「震源を特定せず策定する地震動」に関する御指摘について、標準応答スペクトルは、震源を特定せず策定する地震動のうち全国共通に考慮すべき地震動として策定したものです。その策定に当たっては、地域的な特徴を極力低減させて普遍的な地震動レベルを設定するために、地表に明瞭な痕跡が見られない地震(Mw6.5程度未満)として、推定誤差等を考慮し、Mw5.0~6.6の震源近傍の多数の地震観測記録(89地震)を統計処理しています。

➢したがって、各種調査により評価対象となる断層を特定するなどし、震源断層モデル等を設定した上で策定する「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」とは、不確かさの扱いを含め、地震動評価の手法が異なることから、「不整合であり、ご都合主義である」との御指摘は当たりません。
➢標準応答スペクトルの策定の詳細については、「「震源を特定せず策定する地震動に関する検討チーム」の検討結果について-全国共通に考慮すべき「震源を特定せず策定する地震動」に関する検討報告書-」(令和元年8月28日第24回原子力規制委員会資料3)を参照ください。
 以上より、原案のとおりとします。

(「考え方」への批判)
 原子力規制庁は、「『地震動そのものの確率論的バラツキ』の意味するところが必ずしも明らかではありません」としているが、地震動を確率論的に評価する場合には、同一の地震と見なす地震の母集団を定め、その地震観測記録を地震基盤などの統一的に評価可能な地震波に変換した上で、その地震波集合を母集団とみなして地震動の偶然変動を抽出することになる。この偶然変動を一般にもわかりやすい表現で「バラツキ」と称するのはごく普通のことである。それを明らかでないというのは、偶然変動そのものを理解していないからである。参照すべきという「No.19の御意見に対する考え方」(下記参照)は、断層長さやマグニチュードなど震源断層モデルのパラメータ推定における精度に関するものであり、地震動そのものの偶然変動とは別の次元のものである。これを参照せよということは、確率論的モデルについて全く混乱しているとしか言いようがない。

 また、「『敷地ごとに震源を特定して策定する地震動』とは、不確かさの扱いを含め、地震動評価の手法が異なる」というが、「だから地震動の偶然変動を考慮しなくてよい」という理由にはならない。震源断層モデルのパラメータにおける不確かさの扱いを含めて評価手法が異なっても、各評価手法によって算出される地震動はそれぞれの震源断層モデル・パラメータに基づく平均的な地震動評価にすぎず、実際には、それを中心にして地震動は偶然変動するのであり、その偶然変動はいずれの地震においてもほぼ「倍半分」のバラツキをもっている。たとえば、新潟県中越沖地震を教訓とした応力降下量(短周期レベル)1.5倍の震源パラメータに基づく地震動評価結果も、その仮定の下での平均的な地震動評価結果に過ぎず、実際の地震観測記録を見れば一目瞭然だが、平均に対して「倍半分」がほぼ「±1標準偏差」となってばらついている。
 標準応答スペクトルの元になった地震波は「Mw5.0~6.6の震源近傍の多数の地震観測記録(89地震)」だが、これを単一の母集団と見なして「平均+3標準偏差」となるように標準応答スペクトルを定めたものであり、母集団の設定に疑問は残るが、地震動の偶然変動を考慮したものと評価できる。にもかかわらず、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」では、このような偶然変動を考慮する必要はないと主張するのは、まさに「不整合であり、ご都合主義である」と言える。原子力規制庁は、それを理解できないほど知識水準が落ちてしまったのであろうか。

<No.19の御意見に対する考え方>
➢No.1の御意見に対する考え方のとおり、今回の改正は、審査実績等を踏まえた表現の改善等を行うものです。
➢改正前の基準地震動審査ガイド3.2.3(2)の規定に係る改正については、複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものであることに注意して審査を行うべきとする、従来からの趣旨をより明確に記述するためのものであり、審査の内容を変更するものではありません。
➢なお、基準地震動審査ガイドにおいては、従来から、地震動評価に大きな影響を及ぼす支配的なパラメータの不確かさを十分に考慮することにより、保守的な地震動評価が行われていることを審査官等が確認する趣旨を規定しています。一方で、当該不確かさの考慮に更に経験式の元となった観測データのばらつきを上乗せすることは、震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)で示された方法ではなく、かつそのような方法に係る科学的・技術的知見を承知していないため、元々規定していません。
➢審査ガイドの目的に関する御指摘については、No.8の御意見に対する考え方を参照ください。
 以上より、原案のとおりとします。

<No.1の御意見に対する考え方>
➢今回の改正は、審査実績等を踏まえた表現の改善等を行うものであり、規制要求や審査の緩和を行うものではありません。
➢原子力規制委員会は、令和2年度から、審査実績を踏まえた規制基準等の記載の具体化・表現の改善に計画的に取り組んでおり、今回の改正もその一環です。
➢なお、審査ガイド(原子力規制委員会が作成するガイドのうち、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく基準規則等に関する審査に用いるためのもの。)は、基準規則やその解釈等のように規制要求を定めるものではありません。
 以上より、原案のとおりとします。

<No.8の御意見に対する考え方>
➢基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(以下「基準地震動審査ガイド」という。)は、従前から「基準地震動の妥当性を厳格に確認するための方法の例を示した手引」として策定しているものです。
➢審査ガイドの位置付けについては、「審査ガイドの位置付け」(令和3年6月16 日原子力規制委員会了承)を参照ください。
 以上より、原案のとおりとします。