○該当箇所:はじめに「従来のような再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。」(p.10)
○意見の概要:再エネと原子力を最大限活用するための施策は正反対であり、両立し得ない。原発優先・再エネ抑制の現施策を撤回し、脱原発・再エネ優先の施策へ転換すべきである。
○意見:再エネと原子力を最大限活用するための施策は正反対であり、両立し得ない。太陽光・風力の最大限活用には、欧州連合EUで具体的に実施されて実績を上げてきた「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」が不可欠である一方、原子力の最大限活用には、「原子力・石炭火力などのベースロード電源優先」と「送電部門の電力会社支配維持」が不可欠であり、再エネ最大限活用のための施策とは根本的に対立する。太陽光・風力は限界費用が最も安く、メリットオーダーによれば真っ先に優先給電されるはずだが、低需要期には出力制御されて給電できず、送電容量制限を口実に優先アクセスも保障されない。このような現施策の延長線上では、再エネの抜本的拡大はあり得ず、原子力最大限活用も再エネ最大限活用も期待通りには進まず、共倒れになる。再エネと原子力は、恣意的な議論によってではなく、客観的な施策において二項対立になっているのであり、「原子力・石炭火力などのベースロード電源優先」と「送電部門の電力会社支配維持」の現在の原発優先・再エネ抑制の施策から「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」の脱原発・再エネ優先の施策へ転換すべきである。
○理由:「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論」は決して恣意的な課題設定によるものではなく、現行のエネルギー政策そのものが「原子力優先施策」を次々と具体化する一方、「再エネ優先施策」を排除し、後退させ、「二項対立」させているからである。電力需給に係る施策では、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」と「再エネ優先給電」は互いに対立し、両立することなどあり得ない。電力送電に係る施策では、原子力推進のためには「送配電部門の電力会社支配」が不可欠である一方、太陽光・風力など再エネ推進のためには「送電部門の所有権分離」が不可欠であり、両者は二律背反である。
第六次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組」むと書き込みながら、「原子力・石炭火力などベースロード電源優先」から「再エネ優先給電」へ転換せず、「送電部門の所有権分離」を拒否し続けて「送配電部門の電力会社支配」を維持してきた。すべては原発再稼働を進め、原発新増設を復活させるためであり、その結果、太陽光・風力発電は、固定価格買取制度FITで一時的に普及したものの、進展速度が低下した。国内最大の発電会社JERAによる電力市場相場操縦事件、関西電力など電力四社によるカルテル事件、送配電会社顧客情報等の漏洩事件など「電力会社の市場支配力行使」によって、ピーク時の約16%もの新電力が廃止・解散・取消または休止へ追い込まれた。この現実を教訓とすれば、再エネを一層急速に拡大するためには、「再エネ優先給電」と「送電部門の所有権分離」の2大施策を断行するしかないことは明らかだ。日本と同様に、石炭火力中心の電力構成で、EUのような国際的連系線もないオーストラリアでは、2022年5月に発足した労働党のアルバニージー政権が、エネルギー政策を大転換させ、「2030年までに再エネ比率82%」、「2038年までに石炭火力ゼロ」を目標に掲げた。再エネ比率はすでに2022年度発電電力量の37%(太陽光16%、風力13%、水力・その他8%)に達し、南オーストラリア州では太陽光と風力が74%を占めており、決して非現実的な目標ではない。「太陽光16%」の6割強が屋根置き太陽光発電(主に自家消費)であり、大規模太陽光発電は4割弱に過ぎない。決して「広大な土地」が太陽光発電を広げているわけではない。「メリットオーダーによる再エネの優先給電」と「送電部門の所有権分離」は、すでに実現していて目標実現の条件はすでにできている。日本もオーストラリアのエネルギー基本計画を見習うべきである。
コメントを残す