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原子力規制委員会へ緊急時被ばく限度引き上げ反対の意見を提出しました

原子力規制委員会へ緊急時被ばく限度引き上げ反対の意見を提出しました

原子力規制委員会は、原発重大事故に備えて緊急時被ばく限度の250mSvへの引き上げを策動しており、厚生労働省へ働きかけて電離則や運用指針を改定させ、原子力規制委員会も管轄内の規則を改定しようとしています。その規則改正案が今、パブリックコメントの最中ですので、下記の3つの意見を提出しました。

規制基準を満たしても破局的な原発重大事故を防げないため、労働者に「健康を犠牲にして破滅的事態を防げ」というのはひどすぎます。そんな原発の再稼働は認めるべきではありません。川内原発をはじめ、原子炉設置許可(再稼働認可)を即刻取り消すべきです。

——<意見1>—————————————————————————————————

原子力規制委員会は、規制基準を満たしても重大事故は起こりうるため、それに備えて緊急時被ばく限度を250mSvへ引き上げるとしているが、「公益との比較考量」により正当化されれば、この限度を超えることすら容認する運用姿勢がうかがえる。すなわち、原子力規制庁が第8回原子力規制委員会(2015.5.20)で示した資料「緊急作業時の被ばくに関する規制の改正及びそれに伴う意見募集の実施について(案)」によれば、「法令上は限度と規定するが、限度超過時の対応に関しては、(1)従事者のリスクと公益との比較考量より不要な被ばく(=正当化原則に当てはまらない)、或いは(2)不適切な防護措置による限度超過、と認められた場合には、法令に基づき所要の措置を行う運用とする(緊急作業時の被ばく線量のあり方に関する、国際的な考え方での参考レベルを考慮)。」(p.5)とある。これでは、事実上、原子力事業者が「公益との比較考量で正当化される」と判断すれば、重大事故発生時の緊急作業で労働者に無制限の被ばくを強要することさえ可能になってしまう。

実際、原発重大事故の進展過程でベント作業などが必要になった場合などでは、この250mSvの限度を超える事態すら起こりうる。事前のいかなる想定をも超えて進展するのが原発重大事故の本質的性格である。原子力規制委員会は、「規制基準を満たしていても重大事故は起こりえるし、どのように事態が発展するのか計り知れないから、それに対応できるように緊急時被ばく限度を250mSvへ引き上げる」というのだが、250mSvを超えない範囲で破滅的事態への事故の推移を防ぐことができるという保証はない。だからこそ、運用姿勢として「正当化されない限度超え被ばく」は認めないが、「正当化されうる限度超え被ばく」は許容する方針を採っているのではないか。

もし、そうではないというのであれば、「100mSvでは破滅的事態への進展を防ぐことができず、250mSvであれば防ぐことができる」という科学的・技術的な根拠を示すべきである。そうでなければ、250mSvへの被ばく限度引き上げによって、事実上、無制限の被ばくを許容することになってしまうのは目に見えている。

このような高線量被ばくを労働者に強要しなければ成立たない原発の再稼働は認めるべきではなく、そのような事態を万が一にでも防ぐことができないと原子力規制委員会が判断しているのであれば、「緊急時被ばく限度を250mSvへ引き上げるという小手先の対応で破滅的事態への進展を防ぐことができる」という非科学的幻想を国民にばらまくのではなく、原子炉設置許可(再稼働認可)を取り消すのが、本来、原子力規制委員会としてやるべき仕事であろう。

——<意見2>—————————————————————————————————

原子力規制庁が第8回原子力規制委員会(2015.5.20)で示した資料「緊急作業時の被ばくに関する規制の改正及びそれに伴う意見募集の実施について(案)」によれば、「確定的影響を回避でき必要な作業を迅速に行える値として250mSv」(p.4)と、250mSvが急性放射線障害すなわち確定的影響を回避できる閾値であるかのように扱われている。しかし、原子力規制委員会の依拠しているICRPによっても「150mSvで精子数の減少」という確定的影響が生じることは明白であり、広島・長崎の原爆被爆者や入市被爆者においても250mSv以下で急性症状が発生している例も見られる。現在の特定高線量作業従事者に対する100mSvの被ばく限度内においてさえ、短期間に被ばくすれば、確定的影響が回避できるかどうかは疑わしいのが実態である。250mSvで確定的影響を回避できるとする科学的根拠を明示すべきである。それができない限り、労働者の緊急時被ばく限度を100mSvから250mSvへ引き上げるのは、いかに志願する者に限定されるとはいえ、労働者の健康に生きる権利を侵害するものであり、憲法違反である。

また、緊急時と通常時の線量を区別して管理し、「全就労期間中(18才から50年間を想定)に受ける総実効線量、いわゆる生涯被ばく線量は、両線量を合算して1000mSvを超えない範囲とする。」(同上p.6)としているが、これは極端な高線量・大量被ばくを労働者に強要し、急性放射線障害とがん・白血病のリスクは極めて高くなり、他のどの職業と比べての特段に高い労働災害リスク(年間)を強要することになる。原子力規制委員会は放射線被曝のリスクについてはICRPを根拠としているが、ICRPは低線量を分散被曝する通常被曝と高線量を集中被曝する緊急被曝とでDDREF(線量・線量率効果係数)を変えており、緊急被ばく線量を通常被曝線量と単純に合算してリスク評価するのはICRPに則しても問題である。緊急被ばく線量のDDREFをICRPのように2とするのであれば、緊急時被ばくの250mSvは通常被ばく線量では500mSvに相当すると見なさねばならない。そうすれば、緊急作業で250mSvを被ばくした者は通常被ばく限度の観点から25年間は被ばく労働から排除されるべきである。いずれにせよ、労働者に一層の被曝を強要し、急性放射線障害や晩発性障害のリスクを他の労働現場よりはるかに高めるような規則改正は行うべきではない。

 ——<意見3>—————————————————————————————————

緊急被ばく限度の100mSvから250mSvへの引き上げは自動的に原子力事業者の判断で行われることになっているが、これは「迅速さ」を理由にした原子力規制委員会の責任放棄であり、また、規制基準の重大な欠陥を示すものにほかならない。

原子力規制庁が第8回原子力規制委員会(2015.5.20)で示した資料「緊急作業時の被ばくに関する規制の改正及びそれに伴う意見募集の実施について(案)」によれば、「始期について、現在設定されている100mSv の被ばく限度においては、従来どおり、事業者の判断とする。その上で、原子力事業所の敷地境界や管理区域の外に放射性物質の漏えいが確認、あるいはその蓋然性が高い場合(原災法10条通報事象の一部及び同法15条対象事象に該当)、迅速に行動を開始できるよう対象となる事象の通報により自動的に250mSv に限度を引上げ。」(p.2)とある。原子力事業者から「通報」を受けてから政府や原子力規制委員会が事態を把握して原子力緊急事態宣言を発令し、緊急被ばく限度を引き上げる余裕もないという事態とは一体どのような事態を想定しているのか。

仮に、原子力事業者の判断が間違っていて破滅的事態への進展のおそれがない場合でも、「通報」さえあれば、労働者に緊急時被ばく限度までの被ばくが強要されることになる。それが後で間違っていたと分かっても、原子力事業者の責任が問われることはなく、原子力規制委員会が責任を問われることもない。これでは、極めて無責任に労働者の緊急時被ばく限度が引き上げられることを意味し、法的な無責任状態が生じ、労働者保護の観点からも、また、憲法に保証された健康に生きる権利が無責任に侵害されるという観点からも、重大な問題である。

また、規制基準を満たしても、かくも急速に事故が進展して破滅的事態へ進展するパスが残されていると原子力規制委員会が判断しているとすれば、そのような基準自体に欠陥があると言わざるを得ない。そのような規制基準を満たしていても重大事故を防ぐことはおろか、破滅的事態へあっという間に進展してしまうと判断しているのであれば、そのような原子炉の設置許可(再稼働認可)は行うべきではない。即刻、川内原発をはじめ、これまでの原子炉設置許可を取り消すべきである。

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